BTSが東京ドームに帰ってきた!──RUNからSWIMへ、波に身を委ね自然体で紡ぐ新たな物語

BTSがついに東京ドームへ帰ってきた。最後にここで公演をしたのは約7年半前の「BTS WORLD TOUR 'LOVE YOURSELF'~JAPAN EDITION~」(2018年11月13日、14日)。日本での公演としては、エコパスタジアムで2019年7月13日、14日に行われた「LOVE YOURSELF: SPEAK YOURSELF 」が最後となり、6年9ヶ月ぶりとなる。2020年9月に行われる予定だった「MAP OF THE SOUL TOUR」はコロナ禍で中止となり、その後、2022年12月にJinが入隊し、2025年6月に他メンバーが除隊するまで、グループとしての活動を一時休止することとなる。

そして去る3月20日、「The 5th Album ‘ARIRANG’」をリリースし、BTSは完全体でカムバックした。今回のツアー「BTS WORLD TOUR ‘ARIRANG’」は、アルバムに収録された曲をベースに、彼らの新たな決意と挑戦、そしてこれからの未来を描く構成となっている。

第1幕──苦悩と怒り

「The 5th Album ‘ARIRANG’」のアートワークが施された旗を持ったパフォーマーに続き、ダンサーが舞台へと全速力で走ってくる。それとは対象的に、ゆっくりと落ち着いた足取りでメンバーが舞台へ。ついに東京ドームにBTSが帰ってきた。

レザーやシルクといった光沢のある素材にビジュー、ビス、チェーン、ファーなどの装飾があしらわれたハードなムードのオールブラックの衣装を身に纏い、王者の貫禄を魅せつける。

1曲目は「Hooligan」からスタート。そして「Aliens」「Run BTS」とフルパワーで駆け抜ける。ドームの屋根すれすれまで炎があがり、会場のボルテージは否が応でも高まる。「Run BTS」でJung Kookが飛んできたドローンをキャッチする演出は、このツアーの見どころのひとつだ。

また今回のツアーは円形のステージをぐるりと観客席が囲む360度のステージが特徴で、どこの座席から観ても楽しめる構成となっている。右や左、バックスクリーン方向に向かってパフォーマンスを披露するこのステージは、どこにいても見ているし、どんな状況でも置いていかないよ、というBTSからARMYへのメッセージにも感じられる。

(P)&(C)BIGHIT MUSIC

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オープニングコメント

RM お久しぶりです、皆さん。ご挨拶します。ドゥーセ、バン・タン。全員 こんばんは、BTSです。Jimin 久しぶりですねー。Jung Kook ひさしぶりー! 東京のARMYの皆さん、久しぶりー。ちょっと水を飲みます。LOVE YOURSELFツアーから8年ぶりに東京ドームに帰ってきましたね。ARMY本当に会いたかったです。V はい、そうですよね。本当にたくさんのARMYが来てくれましたね。今日はライブストリーミングとライブビューイングで観ているARMYの皆さんも、一緒に全力で楽しんでくださいねー。Jimin そうです、そうそうそう。僕も会いたかったです。久しぶりに新しいツアーをスタートするので、本当にわくわくしますよね、Jinさん。一生懸命準備した分、かんばります。SUGA 今回のARIRANGツアーでは、いくつか新しい挑戦をしてみました。少し慣れなくても最後まで楽しんでくれたらうれしいです。Jin ARMYの皆さんも楽しんでくれますよね? 全力で楽しめるARMY、make some noise!j-hope さあ、ここからもっと遊びましょうか。みんな後悔しないように公演を楽しんでいきましょう。RM じゃあそろそろいいですね。早速次のステージをお見せします。行きましょう。

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4曲目「they don’t know ’bout us」、5曲目「Like Animals」と「The 5th Album ‘ARIRANG’」の曲が続く。ダンサーたちが持っているタブレットには、嘲笑するような表情の仮面や指、目の画像が映し出され、BTSが置かれてきた、いつも誰かに見られ、指をさされ続けてきた状況を表しているようだ。

次に披露したのは人気曲の「FAKE LOVE」。中央から張り出したステージへメンバーが移動し、ARMYの近くへとやってくる。掛け声と歓声で歌声が聞こえないほどの盛り上がりをみせる。そしてタイトル曲「SWIM」へと続く。白布を波のように見立てた演出が美しく、ここはじっくり曲を聴かせる演出だ。本公演ではこういった緩急の付け方が見事だった。大人になったBTSの歌声にぐっと惹き付けられ、彼らが奏でる音の波へと心地よく溺れていったその先は「Merry Go Round」。ぐるぐると思考を繰り返しても答えのない問いを歌った曲と合わせるように、メンバーは舞台を周り、観客もその渦潮の中に引き込まれていく。そしてゆっくりと舞台を後にし第1幕は終わる。

まだコンサートの序盤なのに、圧巻のパフォーマンスに呆然となり、成熟したBTSの底知れない魅力をこれでもかと見せつけられる。デビューしてから13年。世界的な成功を掴んだ矢先のコロナ禍や、兵役など決して順風満帆ではなかった彼らだからこそ、伝えられる感情や表現がある。デビューから前だけを向いて走り続けてきた少年たちは、兵役によって自分と向き合う時間をもち、肩の力を抜いてゆっくりと大海へと泳ぎ出していく。

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12 Photos

第2幕──アップデートしたBTS

ダンサーによるパフォーマンスとVCRを経て、第2幕へと向かう。赤と青の布を用いたパフォーマンスは太極を舞台に描く。

2幕目は「2.0」から始まる。韓国を代表する名匠パク・チャヌクの映画『オールド・ボーイ』のシーンをオマージュしたMVも必見のこの楽曲は《You know how we do》という歌詞からも分かるように、前半の苦悩パートから一転、自信と余裕を手にした現在のBTSを表す。BTSはバージョン2.0にアップデートされたのだ。続く10曲目は「NORMAL」。スポットライトを浴び続け、世界的スターとして歩んできた彼らの裏側にある虚無感や恐怖はいつしか、彼らにとっての日常、normalになっていた。そんな異常な日々と平凡な日々への憧憬を歌い上げる。

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2幕コメント1

j-hope ARMY本当にすごいです。今日は雰囲気が本当にいいですよね。Jung Kook はい、いいですよねぇ! そうですね。この後も今みたいに楽しんでくれたら、もっと完璧な公演になると思います。V Jiminさん、こっち来い! ARMYの皆さんに次のステージをもっと楽しめる方法を教えてください。Jimin 分かりました。準備できる?V 準備できます!Jimin 僕たちが手を上げて。V みんなも手を上げてくださ〜い。Jimin 僕たちが歌ったら。V みなさんも一緒に歌ってくださ〜い。Jimin できるよね?V できるよね?Jimin 準備できたみたいなので、次のステージへ行きましょう。

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「Not Today」「MIC Drop」「FYA」「Burning Up (FIRE)」と続き、クラブに来たような光の演出と重低音を全身に浴びる。メンバーもARMYも無我夢中で踊り続け、最高潮の盛り上がりに。まるで燃え盛る火を囲んで朝まで踊り続けるフェスのようだ。新曲「FYA」の終盤、レコードを逆回転したようなサウンドが入り、「Burning Up (FIRE)」へと繋がる。そして最後は「FYA」と「Burning Up (FIRE)」がマッシュアップして、新旧“ファイア”は新しい姿へと生まれ変わった。

2幕では、1幕目のオールブラックの衣装から一転し、ベージュやカーキといったアースカラーが基調のデニムやカーゴパンツ×MA-1やライダースへと変わる。ハードで重い衣装を脱ぎ捨て、肩の力の抜けた軽やかな装いは、重圧から解放され、待ちに待ったARMYとの時間をただ心から楽しみたいという彼らの思いが表れているようだ。

2幕コメント2

RM ちょっとJiminさん、Jiminちゃん。お水タイムですか? 早く、Jimin大丈夫かな。Jimin 皆さん。Jin 水タイム、終わります。今日ARMYのエネルギーがすごいですね。Jung Kook 完璧だ!Jin ARMY本当にすごいですね。j-hope 認める!Jin 本当最高です、ARMY!RM そうですね。最後までこのまま楽しんでください。もっと歌いながら手を上げながら、みんなで一緒に盛り上がって楽しんでください。SUGAさん、ここでこの熱気を止めてしまうのはもったいないですよね。SUGA はい、次のステージ行きましょう。すぐやりましょう。Let's go!

「Body to Body」で会場全体でアリランを大合唱したボルテージのまま「IDOL」へ。そしてARMYの近くへ。通常のコンサートであれば、トロッコに乗るのが定石だが、彼らは自分たちの足で歩くことを選んだ。深読みし過ぎかもしれないが、これもきっと彼らの決意の表れなのだと思う。BTSの新章、チャプター2は自分たちで舵を切り、自らの足で歩いていこうという。

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3幕目はsugaがプロデュースした「Come Over」から始まる。本曲はCDやサブスクにはなく「Deluxe Vinyl」にのみ収録されたボーナス・トラックだ。兵役期間中のsugaの苦しみや悲しみとARMYへ救いを求める歌詞に心が苦しくなる。come over=そっちに行ってもいい?という歌詞の通り、ここからはBTSとARMYが一緒に楽しむ時間が始まる。

RMが「皆さんの隣の家の犬のポチでも知っているあの曲」という紹介で「Butter」そして「Dynamite」が始まり、会場は大合唱。そしてARMYお待ちかねの過去曲タイムだ。

先週末に行われた高陽スタジアムでの公演では、「소우주 (Mikrokosmos)」「I Need U」「Take Two」「DNA」「Spring Day」「RUN」を披露したが、東京ドーム初日は「Save ME」と日本オリジナル曲の「Crystal Snow」をパフォーマンス。メンバーがうろ覚えのダンスを披露する姿に、BTSの新章が始まったのだなと改めて感じる。完璧な姿でなくても、BTSとARMYが楽しめるならそれでいい。この瞬間を楽しもう、という素晴らしい演出だった。もちろん一糸乱れぬ激しい群舞も彼らの魅力のひとつなのは確かだが、成熟した今の彼らは他の魅せ方もできるのだ。ステージで肩の力を抜き、素の自分を見せることができるのは余裕と経験があるからこそだろう。

イヤモニを外し、ARMYの声に耳を傾ける姿にもぐっとくる。一方的にパフォーマンスを披露するだけでなく、ファンも精一杯、そのパフォーマンスに掛け声という形で応えるのがK-POPコンサートの良さのひとつだと思うが、そんなお互いの魂の交換の瞬間がここにはあったように思う。

そして最後の挨拶へと公演は移る。

j-hope 最後の感想をお話しましょうか。JK 今日は誰からしますか?Jimin 今日はJung Kookさんから。Jung Kook ジョングック♪(CORTISの楽曲「young creator crew」の一節《영크크(ヤンクック)》のメロディーで)、SUGAから。suga 僕たちがグループで公演したのは、ほぼ6年ぶりになりました。7年前かな。本当に考えてみたら時間があっという間に過ぎました。このように久しぶりに東京ドームに戻ってきて、みなさんと楽しみながら公演をしていたら昔に戻ったような気分になりました。もっと頻繁に頻繁に来たいと思っているので、これからも一緒に楽しく遊びましょう。来てくださってありがとうございました。Jung Kook ジョングック♪。僕の番ですよね、今。チンッチャ逢いたかったよ。僕が本当に逢いたかったんですが、忙しくて。ようやく来ることができて、申し訳ない気持ちと、待っていてくださってありがたい気持ちと、話したいことがたくさんあります。久しぶりに来ているのに、皆さんには変わらない歓声と変わらない笑顔で迎えていただいて、力をもらったような報われたようなそんな気分になりました。今日はそんなことがたくさん感じられてステージをしながらも、ずっと笑顔がこぼれてしまうような感じになりました。皆さんのおかげです。だから今日はむしろ皆さんから力をたくさんもらうことができたことが本当にありがたくて、一日でも多く皆さんに会えるように、できる限りお約束したいと思います。とっても愛しています。本当に会いたかったよ。ありがとうございます。Jin (投げキッスをして)公演の中で色々な時間がありましたが、僕はこの時間をすごく待っていました。皆さんに愛を込めた投げキッスをお届けできるこの時間を、です。いかがですか? 僕の投げキッスで気分が良くなりましたか? ARMYの皆さんにこうやって投げキッスをお届けできるなんて本当に最高の時間だなと。僕の投げキッスをもう一度受け取りたい方は、次のコンサートでまたお会いしましょう。I love you!RM 東京ドーム、8年ぶりですよね。2014年に日本で防弾少年団としてデビューして、東京にもたくさん来ました。でも考えみたら一回も旅行はしたことがなかったんです。コロナの時から東京にプライベートで来るようになりました。その時、ただ街を歩きながら、皆さんのことを沢山考えました。東京の街で。皆さんはこういう景色を観ながら暮らしているんだなってそんな話を、今日はただ皆さんにしたかったです。こうしてまた来ることができてうれしいですし、本当に光栄ですし幸せです。今まで待っていてくれて本当にありがとうございます。日本の、そして東京のARMYの皆さん、心から愛しています。ありがとうございます。V えっと、僕たちは友達だから、今からタメ口で話すね。ごめん、タメ口いい? 昨日、ラーメン食べて、和牛食べた。もし日本でこのお店絶対行ったほうがいいよとか、このジャズパブめちゃ楽しいよって場所があったら、僕にメッセージ送って。次は僕がそのお店の常連になると思う。それから、僕日本大好きだから、ドラマを観ながら日本語の勉強をしたんだけど、新しいドラマを探してまた勉強して来るね。そして、断ってください。ARMY、僕と付き合って! 断ってくださーい。Jimin すごいですね。付き合って? 皆さん、会いたかったですよ。でも問題があります。僕、日本語全部忘れました。なぜなら僕たち軍隊、行ってきましたから、全部忘れました。それでぼくが昨日夜、夜中に手紙をつらつらと書きました。(ポケットから手紙を取り出す)Jung Kook 手紙手紙!Jin 手紙手紙!Jimin 愛してるARMYの皆さん、Jiminです。久しぶりに皆様に会えて、とてもうれしいです。久しぶりにみる皆さんは相変わらず美しいです。本当ですよ。8年ぶりに東京ドームに再び来ることができましたのも皆様のおかげです。本当に心から感謝します。これからはより多くより素晴らしい舞台をもっとたびたび皆様にお見せできるよう、努めてまいります。皆さんに会えてうれしかったですよ。ぼくも心から愛しています。付き合って。以上でした。j-hope 僕は今日韓国語でいきますよ。Jimin 大丈夫です。j-hope ごめん。Jimin 僕たち軍隊行ってきましたから。j-hope 実は少し重い話かもしれませんが、今日の今の気持ちを表現したくてお話してみたいと思います。実は僕が日本に来てすぐ、僕が子供の頃から育ててくださった祖母が亡くなったという知らせに触れました。すごく驚いて動揺したのですが、メンバーとご飯をたべたり、リハーサルをしながら、その心の揺れを落ち着かせたような気がします。日頃から母方の祖母は、僕だけでなくメンバー皆のこともすごく誇りに思ってくれて、今日の公演を空から観てくれていたら、すごく喜んでくれていると思います。その意味をもっとARMYの皆さんがもっと素敵なものにしてくださって、今日はARMYの皆さんにありがとうございますとお伝えしたいです。チンチャチンチャめちゃ大好きです。ありがとうございます。

アンコールとして「Please」「Into the Sun」を披露し、どんな時もARMYと一緒に歩み続けたいというメッセージを伝えた。夜明けから太陽を探してBTSは次のステージへと進んでいく。

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BTSとARMY、心が繋がった瞬間

公演全体を通してとにかく幸せそうなBTSの姿がそこにはあった。ARMYと一体になって、最高のパフォーマンスを届け、ファンは歓声で応える。それはコンサートでは当たり前のことかもしれないが、BTSの東京ドームのコンサートは何かが違った。2日目のコメントでRMが「今日皆さんは、スマホではなく、自分の目で僕たちを見てくれました。この2時間皆さんは僕たちを映画のなかの主人公にしてくれました」と話したように、東京ドームでは、アーティストとファンが目と目を合わせ、心を通わせ、お互いが繋がった瞬間が確実に存在した。その場にいる人すべてが心から楽しそうで、幸せで、誰のことも見捨てないよ、どこにいても繋がっているよと伝える彼らの姿勢が伝わってくるライブだった。「待っていてくれてありがとう」、「戻ってきてくれてありがとう」。BTSとARMYのお互いのその気持ちが溢れて、東京ドームがいつもよりパンパンに膨らんでいるように感じられた。

余談だが、AiScReamの「愛♡スクリ~ム!」を真似て、Jung Kookが「SUGAちゃーん、は〜い」とおどけてみせたり、Jiminが日本エレベーターの音声を真似て「ドアが閉まります」と言ったり、2日目の公演ではポーズ付きで「領域展開」を披露してくれたり、Vが「好きすぎて滅!」を知っていたり、そしてほとんどのコメントを日本語で話してくれたりと、メンバーが日本のカルチャーに敬意を払ってくれていることも素晴らしかった。

現時点で発表されているだけでも世界34都市を周り、2027年3月14日まで全85公演を行う。また戻ってくるよという言葉を信じて、進化し続ける彼らにまた会う日を楽しみに待ちたい。

編集と文・遠藤加奈(GQ)

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