明日の株式相場に向けて=フィナーレでキオクシアの咆哮はあるか
きょうも前日同様にTOPIXの上昇が目立っていたが、朝方は軟調だった日経平均も気がつけばTOPIXに追随する動きとなった。これはファンダメンタルズ面からのアプローチで必ずしも妥当性を欠いているわけではない。日経平均ベースの1株利益は2025年末時点で約2650円であった。しかし、企業の決算発表が本格化した前週末8日現在の試算で3120円程度まで500円近くも上昇している。トランプ関税によるデメリットは警戒されるものの着地点が朧気(おぼろげ)で変数としての要素が強く、企業の業績見通しに織り込みづらいという点はある。だが、中東有事による影響はいかんともし難い。原油価格の高騰など企業にとって経営コスト上昇が明確となるなか、企業側にそれほど強気なガイダンスは見込めないというのが、多くの市場関係者の見方だった。ところが蓋を開けてみれば、これが見事に覆され大幅に利益水準がアップしている。
一つ言えるのは企業の業績がおしなべて好調ということではないという点だ。1株利益を引き上げているのは AI・半導体関連 に属する勝ち組企業群である。これに為替市場における急激な円安進行も概ね輸出採算の向上要因となり、収益面にプラス材料として寄与している。そして企業の自社株買いが活発であり、分母が縮小する分だけ1株利益に押し上げ効果が働くというテクニカル的な要因も見逃せない。
また、ハイテクセクター以外でも今の外部環境が追い風となっている業態も実は少なくない。大手商社や資源開発に携わる企業は原油をはじめとするエネルギー市況の上昇は商機を高める。そしてメガバンクをはじめとする銀行も世界的な金利上昇がフォローウインドだ。国内ではこれから日銀が遅かれ早かれ政策金利を引き上げていくわけで、自動的に利ザヤ拡大の恩恵を享受していくことになる。 では、これまでのモノサシであったPERは「日経平均ベースで15倍前後」というのがここ十数年にわたるスタンダードであったが、これに関してはどうか。直近データの1株利益3120円で換算してもPER15倍で4万6800円止まりである。ただし、これまで失われた30年と言われたデフレ経済下からは舞台が回り、今は明らかにインフレのステージに片足を突っ込んだ状態だ。ここはどんぶり勘定にはなるが、市場では「PER20倍妥当説でもそれほど無理矢理な感じはしない」(中堅証券ストラテジスト)という声が強いようだ。仮に20倍で計算すれば6万2400円ということになる。今後更に1株利益が上昇傾向を続けるとみなせば、きょうの終値である6万3272円も修正不可避といえるほど高値圏にあるとはいえない。AI・半導体関連相場の持続性を占う試金石となり得るのがきょう引け後に開示されたソフトバンクグループ<9984>の決算と週末15日に予定されるキオクシアホールディングス<285A>の決算である。厳密には決算発表を受けた両銘柄の株価の値動きということになる。ソフトバンクGは26年3月期の最終利益が前の期比4.3倍の5兆22億円と過去最高を更新した。米国のナスダック市場の値動きをみれば、ソフトバンクGの好決算は概ね予想がつくが、それでも事前コンセンサスを大きく上回る水準で文句のつけようがない。最終利益の5兆円超えは日本企業で初というおまけ付きである。ただ、今のところPTSの値動きは限定的であり、明日以降のマーケットでのパフォーマンスが待たれる。そして15日のキオクシアは27年3月期のガイダンスがポイントとなるが、市場期待がかなり高いだけに、いったん利益確定売りに押される公算は大きそうだ。問題はいったん下値を探った時にどの程度の押し目買いニーズが発現するかで、全体地合いにもよるが来週月曜日の動きは要注目となる。
あすのスケジュールでは、4月のマネーストック、週間の対外・対内証券売買契約のほか、前場取引時間中に30年物国債の入札が行われる。国内主要企業の決算発表では、大成建設<1801>、ENEOSホールディングス<5020>、フジクラ<5803>、三井E&S<7003>、ホンダ<7267>、ニトリホールディングス<9843>、キリンホールディングス<2503>、楽天グループ<4755>、ブリヂストン<5108>、ダイフク<6383>などがある。海外では、1~3月期の英国内総生産(GDP)速報値のほか、週間の米新規失業保険申請件数、4月の米小売売上高、4月の米輸出入物価指数、3月の米企業在庫などが注目される。また、ウィリアムズNY連銀総裁やクックFRB理事が講演を予定している。このほか、アプライド・マテリアルズ<AMAT>の決算発表にマーケットの関心が高い。(銀)