インバウンド消費急ブレーキ、百貨店免税売上が3カ月連続前年割れ
日本百貨店協会は24日、5月の免税売上高が前年同月比41%減だったと発表した。3カ月連続の前年割れとなる。訪日客(インバウンド)数自体は好調だが、円高傾向が続く中で客の財布のひもが堅くなっており、各社は原因の究明と対策を急いでいる
調査対象となった全国87店舗での免税購買客数は同5.4%減の53万6000人と38カ月ぶりで前年同月実績を下回った。1人あたりの購買単価も同37%減の約7万9000円と大幅に減少した。百貨店売上高の総額は同7%減だったが国内顧客向けの売り上げは0.8%の減少にとどまっており、インバウンドが足を引っ張ったかたちだ。同協会は発表資料で「継続する円高傾向」が免税売り上げに影響したとの見方を示した。
足元の為替相場は昨年より円高傾向で推移しているが、5月訪日外客数は同月として過去最高を更新するなど、インバウンドの勢い自体に衰えは見られない。それでも百貨店の免税売り上げが落ち込む背景にはさまざまな要因がある。日本百貨店協会の西阪義晴専務理事は、多様化で訪日客の買い物への価値観や消費志向が変わった面もあると述べ、免税売り上げは当面厳しい状況が続くとの見方を示した。
インバウンドを巡ってはオーバーツーリズムの弊害なども指摘されており、政府・自民党が訪日外国人への課税を強化する案も浮上していると日本経済新聞が今月報道、購入品にかかる消費税の免税廃止や国際観光旅客税の引き上げ案が出ているという。かつては「爆買い」で注目されたインバウンド消費の先行きが怪しくなっている。
6月以降の販売について高島屋によると、15日までの状況では免税売上高が前年同月比約35%減だという。5月は42%減だった。 三越伊勢丹ホールディングスも同期間、首都圏を中心に国内顧客の売上高が堅調に推移しているものの海外顧客分は前年実績に届いていない。
三越伊勢丹HDはインバウンド客の関心が高級バッグなどから化粧品や食品などに広がることで、単価が下がっていると説明した。同社は3月に海外顧客をターゲットとした アプリを立ち上げた。外国人に興味を持たれそうなイベント情報や割引クーポンなどを提供し、売り上げを支える訪日客とのつながりの確立を目指している。
J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店は、昨年はラグジュアリーブランド価格改定前の駆け込み需要があったことに加え、春節以降から円高の進行に伴い高額品消費は落ちついてきていると説明した。同社の24年のインバウンド売上額は約1208億円で、百貨店売り上げ全体の約16%を占めるという。
第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは、5月のリポートで、今後もインバウンド需要は高水準を保つことが予想される一方で、増加ペースは鈍化する可能性が高いと指摘。「これまでインバウンド需要が景気の下支え要因として大きな役割を果たしてきただけに、今後の景気に与える影響が懸念される」とした。
岩井コスモ証券の菅原拓アナリストは、前年同時期の免税売り上げが異例の好調でハードルが高かった面もあり、弱めの数字が出ることは百貨店各社ともある程度計画に織り込んでいると指摘。各社は外国人向けの施策に取り組んでおり、投資家としては下期に施策の効果や免税売り上げの回復を見極めたいのではないかと述べた。
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