展望2026:政策期待が日本株の追い風、インフレで高PER正当化 日経6万5000円予想も

都内の株価ボード前で2025年12月撮影。 REUTERS/Issei Kato

[東京 23日 ロイター] - 2026年の日本株は、政策期待とAI(人工知能)関連物色の裾野拡大を追い風に堅調との見立てが出ている。高市政権の積極財政が長期の株高レジームを強めるとの見方から、日経平均の高値は6万5000円との予想もある。株価に割高感はあっても企業の1株当たり利益(EPS)が切り上がることで指数が押し上げられるとの指摘や、2―3%のインフレ環境は高い株価収益率(PER)を正当化するとの見方もある。リスクとしては、高市政権の政策の行き詰まりや米ハイテク・AI投資の減速などが意識される。

市場関係者の見方は以下の通り。

◎6─8月に日経5万8000円視野、翌年のリスク意識し年末にかけ調整も

<和キャピタル 運用本部部長 村松一之氏>

日本株は当面、堅調な推移が続き、6─8月にかけて高値を付ける可能性がある。ただ、2027年は注意すべき年とみており、26年後半からは市場でリスク要因が意識され、上げ幅を縮小し始めるだろう。

高市政権の下で国内経済がデフレに回帰する可能性は低く、高圧的なインフレの継続を見込む。2─3%程度のマイルドなインフレは株式市場にとってプラスに作用する。値上げが消費者に受け入れられやすいし、企業業績は名目値で示されるため、値上げによる売上増で自然体で利益が伸びやすい。

コーポレートガバナンス・コード改定やTOPIX改革が進み、日本企業は自己資本利益率(ROE)10%の時代に入っていく可能性が意識される。24年から売り越しとなっている海外投資家の興味を刺激し、条件が整えば10兆円規模の資金流入も視野に入る。自社株買いのフローも加わるため、需給環境は極めて良好だろう。

日経平均は1株あたり利益(EPS)と株価収益率(PER)を考慮すれば、5万8000円水準も現実的で一時6万円を目指すこともあり得る。足元でPERの高さへの懸念も聞かれるが、インフレ時代にデフレ時代の物差しは通用しなくなる。より高いPERが正当化されるようになってくる。

高市政権の経済運営は、リフレ政策を主軸とした安倍政権とは異なり、成長戦略に軸足を置く。本格的な成長戦略を打ち出す政権は長らくなかっただけに、来年の骨太方針でその具体像が示されれば、株高材料になるとみている。26年はロボットや機械をAIで制御するフィジカルAIがテーマになり得る。生成AIに比べると、製造業に強い日本株のサポート要因になりやすい。

米国では中間選挙を控えており、トランプ政権が税還付や住宅投資支援など、なりふり構わぬ景気浮揚策を打ってくる可能性が高い。米景気は巡航速度以上の好調を維持する公算が大きい。中国も新5カ年計画の初年度にあたり、習近平国家主席の4期目となる27年を見据えれば、米国と対立を激化させる局面ではない。米中関係は当面、安定に向かう可能性がある。

もっとも、27年には米中間選挙後の政局不透明感、米中摩擦の再燃、世界の中銀による利上げ路線への転換などが重なりやすい。強気相場の循環のアノマリーを踏まえても、27年はいつ勢いを失ってもおかしくない局面となる。こうしたことへの警戒感が26年末にかけて強まるだろう。

ただ、この局面でも日本株への好評価は継続し、高値からの調整は5万4000-5万6000円程度までにとどまるとみている。年初の株価水準が来年の底値になる可能性がある。

日経平均の2026年予想レンジ:5万円―5万8000円

◎2026年末に5万5000円へ、企業業績が支え リスクはAI株の減速

<ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント ポートフォリオ・ストラテジスト 吉橋諒佑氏>

2026年の日経平均は、年末にかけて5万2500円から5万5000円程度まで上昇していくと予想する。グローバルで市場をけん引する共通テーマはAI関連であり、来年はこれまで上昇が遅れていた銘柄にも物色が広がりそうだ。日本独自の好材料もあり、日本株に対してはポジティブな見方を持っている。

日本独自の要因としては、高い支持率を持つ政権下でAI関連の設備投資が増えるのではないかとの期待があるほか、実質賃金の上昇など、企業業績を後押しするような環境になることが挙げられる。日経平均のバリュエーションは既に高い水準にあるが、EPSが切り上がる形で指数を押し上げていくだろう。25年に比べて米関税など海外由来の不透明感や、国内政治への懸念が大きく後退しているので、政策の実効性への信頼感が高まっているとみている。

物色面では、国内景気に連動しやすいテーマが底堅く推移しそうだ。具体的には、実質賃金の上昇に伴う消費関連やAI関連需要、政策的なインフラ整備に関連する建設株などが相対的に買われやすいのではないか。

一方、最大のリスク要因は、米国の大型ハイテク株の業績減速や、AIの設備投資計画が市場の期待を下回る「想定外の減速」を見せることだろう。その場合は世界共通で売りが伝播し、日本株にも重しとなるため、米ハイテク銘柄の動向は今年同様に、引き続き注目度が高いとみている。

日経平均の2026年予想レンジ:4万8000円―5万5000円

◎政策方向性が長期上昇トレンド示唆、日経6万5000円も 高市改革頓挫がリスク

<武者リサーチ 代表 武者陵司氏>

2026年の日経平均は6万5000円まで上昇する余地があるとみている。2012年の第2次安倍政権以降、日経平均は上昇トレンドをたどっているが、高市早苗首相の就任で長期上昇トレンドの持続性がより確かなものとなった。

重要になってくるのは政策レジームだ。積極財政を掲げる高市政権の誕生により、株価の長期上昇トレンドに弾みがつくとみている。過去の日本の株式市場における大きな転換点は、政策レジームによって決まってきた。平成のバブル崩壊は金融引き締めと業種別の貸付規制から始まり、そこから長期の停滞期が続いた。一方、2012年には第2次安倍政権が誕生した。株価は様々な要素が決めるものの、決定的に重要なのは政策レジームだ。

これまで海外投資家は日本株をアンダーウエートしていたが、持たざるリスクが確認される1年となるのではないか。日経平均はアベノミクスが始まった2012年から平均で12%上昇している。足元のペースでいけば、日経平均は今後5年で10万円、10年後に15万円を達成することも想定できる。

高市首相が目指すとみられる財政出動、減税政策が実現されると、力強い経済成長に株価が連動してくるだろう。日本政府はこれまで税金を取り過ぎており、乱暴ともいえる増税や社会保険料の引き上げが行われてきた。増税は経済成長を損なう。来年は日米ともに減税の実施が想定され、景気の好循環が形成されやすい。

グローバルなAIブームは来年も続くことが想定されるが、物色はコンテンツや知的財産(IP)、フィジカルAIといったインターフェースにも広がってくるだろう。また、減税が実行されると、消費主導の経済に転換し、生活水準が大きく上がる。小売りやエンターテインメント、不動産など恩恵を受ける業種が増えるだろう。

最大のリスクは高市政権の政策が頓挫することだ。高市政権が終わり、緊縮財政を中心とした経済に戻り、成長を追求しなくなると、株高は終焉を迎える。市場は長期経済成長のレジームが始まると期待しているため、はしごが外されることが最大のネガティブサプライズになる。その上でも、早期の解散・総選挙の有無は、株式市場としても関心事になりやすいとみている。

日経平均の2026年予想レンジ:5万円─6万5000円

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