【日本市況】円が146円台に上昇,米利下げ観測や雇用改定警戒でドル安

9日の日本市場では円相場が一時1ドル=146円台後半に上昇。米国の利下げ観測や雇用者数の大幅下方修正に対する警戒感を背景にドル売りが優勢だった。株式は日経平均株価が初の4万4000円台に乗せた後、失速して反落で終了。債券は超長期債が上昇した。

  米労働統計局は9日、3月までの1年間について雇用者数のベンチマーク(基準)改定を発表する。市場では、3月時点の雇用者数が現在推計されているよりも約80万人少なかったことが分かるとの予想が出ている。これは月平均で約6万7000人の下方修正に相当する。修正幅は100万人近くになるとの予測もある。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは9日付のリポートで、米利下げ再開が近づきドルの上値は重いと指摘した。米雇用のベンチマーク改定については、野村証が想定する60万-90万人程度の下方修正なら米金融当局にとってサプライズにはならないと言う。ただ、トランプ米大統領による統計や米連邦準備制度理事会(FRB)への批判につながる可能性には注意が必要としている。

国内為替・債券・株式相場の動き-午後3時半過ぎ
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.3%高の146円99銭
  • 長期国債先物9月物の終値は前日比4銭安の138円00銭
  • 新発10年債利回りは0.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.56%-午後3時
  • 新発20年債利回りは2bp低い2.65%
  • 東証株価指数(TOPIX)の終値は前日比0.5%安の3122.12
  • 日経平均株価は0.4%安の4万3459円29銭

【為替】

  円相場は一時1ドル=146円台後半に上昇。米利下げ観測や雇用者数修正への警戒からドルに売り圧力がかかった。

  ソニーフィナンシャルグループの石川久美子シニアアナリストは、先週末の弱い雇用統計を受けて一部で50bpの米利下げが織り込まれている状況で、「ドルには下押し圧力がかかりやすい」と指摘。「先週末から148円を超えるとドルの上値が抑えられる状況が続いているため、ポジション調整絡みでドル・円は下押ししている」とも話した。

  国内では石破茂首相の退陣表明を受けて政局の不透明感が高まっている。注目の自民党総裁選は22日告示、10月4日投開票という日程になった。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフストラテジスト兼ファンドマネジャーは、米経済の弱さや日米金利差の面ではドル安・円高方向だと指摘。ただ、大胆な金融緩和や積極財政を主張してきた高市早苗氏の総裁選勝利を見据えた「高市トレード」もあり、「円高のスピードは遅くなる」とみている。

【債券】

  債券は超長期債が上昇(利回りは低下)。利下げ期待から米長期金利が低下した流れを引き継ぎ、買いが先行した。

  明治安田アセットマネジメント債券運用部の大崎秀一シニア・ポートフォリオ・マネジャーは、米国市場で利回り曲線がフラット(平たん)化したことを受けて、超長期債は前日のスティープ(傾斜)化が巻き戻されたと語った。

  10日に実施される5年債入札については、石破首相の辞任表明を受けて「日本銀行の利上げが10月から来年1月にずれ込む可能性が意識されており、足元の利回り水準であれば無難に消化される」との見方を示した。

  大崎氏は、自民党総裁選で財政拡張派の高市氏が優位との見方が強まれば残存期間の長いゾーンは売られやすく、利回り曲線のスティープ化が続く一方、同氏の不利が伝えられれば逆の動きになると予想。同氏の浮沈に債券相場は振らされる展開が続くとみている。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.835% 1.095% 1.560% 2.650% 3.255% 不成立 前日比 +1.0bp 横ばい -0.5bp -2.0bp -2.5bp -

【株式】

  株式は下落。米国で年内の利下げ観測が強まり景気敏感業種が上昇したことを受けて買われた後、利益確定の売りに押された。

  非鉄金属や鉄鋼といった素材関連の下げが大きく、銀行や証券など金融株も安い。半面、アドバンテストなど半導体関連の一角は上昇した。

  三井住友トラスト・アセットマネジメントの上野裕之チーフストラテジストは、これまでの上昇局面に乗れていなかった投資家の買いや空売りの買い戻しが今朝で一巡、短期的な過熱感を受けた利益確定売りが株価指数を押し下げたとの見方を示した。

この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。

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