中国製パーツでノートPCを作ってしまったファーウェイ サプライチェーンを構築した制裁からの6年
山谷剛史の「アジアIT小話」 第216回
米中関係が悪化する中、中国メーカー独自のCPU/メモリー/ストレージ/ビデオカードなどが続々と登場し、中国製品だけで組み立てたPCでWindowsアプリを動かすことができることを本連載では以前紹介した(「中国独自の命令セットのCPUとパーツを用いた「完全中国製PC」でWindowsアプリが動いたと話題に」)。
ノートPCでもパーツの国産化は100%に迫るという
同じく中国製品だけで組み立てたサーバーでLLMモデルをトレーニングしたり、ソフトウェアやサービスでも米国製品の代替が可能になるなど、米国が制裁を強化しても、中国独自にテック環境を構築できるようになりつつある。
中国メーカーの技術で揃えたHUAWEI Mate 60 Pro
この“中国産テクノロジーだけで世界と張り合える”というフレーズは、最近中国でよく報じられる部分で、製品の紹介記事でも「この製品のココがすごい!」という内容以上に「ここまで国産化を達成した!」といった視点が目立っている。
その背景として、ファーウェイのエンティティリスト入りから始まる逆境を耐え抜いて復活したことは多くの中国人が知るところとなっており、愛国的なストーリーもできあがり、中国人の印象はおおむねすこぶるいい。分解すれば中国製のパーツだらけだ、と愛国心も加わるのか、分解記事を見かける機会が増えた。
高価なHUAWEI MateBook Foldを分解するメディア
制裁を受けたファーウェイは「HarmonyOS(NEXT)」を開発。スマホ用のSoCとして、8コアCPUすべてが自社開発のHiSilicon「Kirin 9020」、ノートPC用でも同じくHiSilicon製の「Hi 9600」をリリースした。
3画面スマホの「HUAWEI Mate XT」や折りたたみノートPC「HUAWEI MateBook Fold」といった製品は、ぜいたくなギミックだけでなく、ベンチマークにおいても海外製品に負けないスコアを叩き出し、中国製パーツだけでもここまでできるとアピールする。
機能も値段も尖っておりだけに、販売数が少なく持ってて自慢できる製品なので転売の対象となり、あっという間に売り切れて一層話題になった(「中国社会でも迷惑がられる転売業者 狙われるのはSwitch 2からライブチケット、病院の整理券まで」)。
最後のグローバルモデルの「Mate 40 Pro」は愛用者が多い
一方で、このような自体になる前、グローバル向けとしては最後のハイエンドモデルとなった「HUAWEI Mate 40 Pro」は、発売から5年が経過しようとするのにもかかわらず、好きすぎて買い替えることなく使い続けている中国の愛好者がいることはフォローしたい。
日本でも各メディアやスマホマニアにすこぶる高評価だったこのモデルだが、中国でも当時インパクトを与えた機種だったことは間違いなく、「神機(名機)」扱いをして、「今でも使っている」アピールをよく見かける。中国の反応は愛国的な一枚岩ではなく、あの頃はよかったと思って、使い続ける人もいるわけだ。
近年、中国各都市では中古スマホ販売のチェーン店ができていることから、筆者もこのメモリアルな機種を1000元台、日本円で3万円台で購入した。うまくすれば中古市場で2万円台で買えるかもしれないので、中古市場に注目してほしい。「HarmonyOSでなくAndroidで……」というニーズに応え、HarmonyOSのAndroid化代行をする業者がEC上でも出店しているのは中国らしい(「中国で中古スマホ市場が真っ当化 中華スマホが安く買えるようになった」)
筆者も中古でMate 40 Proを買ってしまった