イベリア収穫アリの異例の生存戦略が明らかに、女王が2種の子孫を産み分け(CNN.co.jp)

(CNN) 南欧に生息する「イベリア収穫アリ(Messor ibericus)」をめぐり、生物学の基本原理を覆す異例の生存戦略が新たな研究で明らかになった。女王アリは、2種類のアリに成長する卵を産めるのだ。 【画像】女王アリから生まれた2種類のアリ(他1枚) この奇妙な生殖特性は、研究チームが不在の種の謎を解明しようとする過程で発見された。暫定データでは、イベリア収穫アリが、地中海地域に生息する別種の収穫アリ「メッサーストラクター(Messor structor)」と交配することで、雑種の働きアリが産まれると見られていた。 だが、これには問題があった。イベリア収穫アリのコロニーが発見されたイタリアのシチリア島は、最も近いメッサーストラクターの個体群から約1000キロメートル離れていたと、仏モンペリエ大学の上級研究員であり、学術誌「ネイチャー」に掲載された本論文の筆頭著者、ジョナサン・ロミギエ氏は説明した。 「この種には何か非常に特異な点があると強く疑っていたが、正直なところ、ここまで異常だとは想像もしていなかった」(ロミギエ氏) 欧州全域で120を超えるアリの個体群を調査し、数百匹のアリのゲノム解析と5年間にわたる実験を行った。その結果、1匹の女王アリが産んだ卵から、毛深いアリとほとんど毛のないアリの2種類が誕生することが明らかになった。 イベリア収穫アリの女王が産む卵は、女王アリが将来の女王アリを産むための交尾相手が必要なのか、もしくはコロニーの99%を占める雑種の働きアリを産む必要があるかによって、発達の仕方が異なることが判明した。

イベリア収穫アリとメッサーストラクターは、かつて同じ種に属していたが、500万年以上前に分岐したと研究者らは述べている。分岐後も両種は欧州の同じ地域に生息していた。仏東部など大陸の一部地域では、現在でも両種が近接して生息している。 おそらく数百万年前に、イベリア収穫アリの女王は、働きアリ(雌)を産む能力を失った。理由は解明されていないが、これにより女王は近隣のメッサーストラクターの個体群と交配し、両種の雑種である働きアリを産むようになった。 こうしてイベリア収穫アリは生存のために、メッサーストラクターに依存するようになり、女王は他種の雄を探し求める、いわば「精子寄生」に頼ることになった。 だが、こうした時間のかかる煩雑な戦略を避けるため、イベリア収穫アリはメッサーストラクターの精子をクローン化する戦略に出た。「生殖の家畜化」と呼ばれる現象である。このような現象は他の動物では観察されたことがないという。 「人類が家畜を飼いならしたのと同様に、彼らは野生で利用していた雄の繁殖を支配するようになった」(ロミギエ氏) 世代を重ねるうちに、イベリア収穫アリは巣の中でクローン化されたメッサーストラクターの雄系統を維持できるようになった。これにより、別種と同じ地域に生息する必要がなくなり、数百万もの雑種の働きアリが地中海全域で侵略的にコロニーを築いた。 イベリア収穫アリは、「異種出産(xenoparous)」などと呼ばれる新しい繁殖様式の例である。「xeno」は「外来の・異質な」を意味し、「parous」は「産む」を意味するという。 「アリに限らず、他種のゲノムを自らの卵を通じて伝達するという異種出産の進化が確認されたのは初めてだ」と同氏は述べている。

CNN.co.jp
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