米中関係、中東秩序、原油は…米イラン情勢の影響、米民間の描くシナリオを読み解く

米国とイスラエルによる対イラン攻撃が始まってから28日で2カ月となった。イラン情勢が国際関係や原油市場に与える影響に関する複数のシナリオが、米シンクタンクや米金融大手から相次ぎ発表されている。恒久的な戦闘終結に向けた米イラン協議の先行きが見通せない中で、あらゆる事態に備える必要性が意識されているようだ。

米中関係~中国のイラン支援・台湾圧力強化まで想定

イラン情勢が米中関係に与える影響を占ったのはシンクタンクの大西洋評議会だ。17日発表の報告書で4つのシナリオ(グラフィック参照)を提示した。

最も望ましいとしたのは、米国が激しくイランを攻撃する一方、中国が抑制的な関与にとどまるシナリオ①だ。しかし、そのためにはトランプ米政権の外交手腕が必要で、実現は難しいと結論付けた。

最も可能性が高いシナリオ②では、ホルムズ海峡がイランの管理下にある状態に米国が甘んじる。中国は積極的に介入せず、安価なイランの原油を輸入。エネルギー価格の上昇に苦しむ日本や韓国、欧州諸国は米国への信頼を低下させ、中国に戦略的な利益をもたらす。

米国の軍事関与が限定的で、中国が積極的に対イラン支援を行うシナリオ③は米国にとって打撃となるが、それ以上に危険なのは米国がイランの核・ミサイル能力を徹底的に破壊し、中国がイランに軍事支援を行うとともに台湾や南シナ海で圧力を強化するシナリオ④だ。米国は冷戦期以降、経験のない二正面作戦を強いられると指摘した。

湾岸諸国~膠着長引けば亀裂大きくなる可能性

イラン情勢の行く末は、中東地域の秩序にも影響を及ぼす。カーネギー国際平和財団は16日発表の報告書で、イランからの攻撃を受けたサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などペルシャ湾岸6カ国について、3つのシナリオを描いた。

第1のシナリオでは6カ国が結束し、地対空ミサイルを共同で調達・生産するとともに、パイプライン敷設や鉄道建設でも協力する姿を想定した。

ただ、湾岸諸国は互いに国境問題や経済的競合を抱えており、結束は難しい。6カ国の協力は現状維持にとどまるというのが第2のシナリオだ。さらに米国やイラン、イスラエルに対する姿勢がばらばらになり、湾岸諸国の対立が深まる第3のシナリオもあり得るとした。

湾岸諸国にとって望ましいのは結束を強化するシナリオだが、報告書はイランでの膠着(こうちゃく)状態が長引けば長引くほど湾岸諸国の亀裂は大きくなるとした。

原油市場~ホルムズ数カ月封鎖なら180ドルも

7日には、金融大手モルガン・スタンレーが原油市場などに関する3つのシナリオを発表した。

ホルムズ海峡が5月上旬ごろに全面開放されるのが第1のシナリオで、今年の原油価格は1バレル80~90ドルと予測した。一方、ホルムズ海峡の通航量が通常の80%にとどまる第2のシナリオだと原油価格は100~110ドル、事実上の封鎖が数カ月続く第3のシナリオでは150~180ドルになるとした。

米中関係、湾岸諸国、原油市場に関するいずれの分析も、それぞれの「最も望ましいシナリオ」の実現可能性について、言及していないか悲観的な見方を示した。米イラン協議の停滞が続けば、悲観的な色合いはさらに深まるとみられる。(ワシントン 杉本康士)

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