「二度と嫌。痛いなんてもんじゃない」3人に1人が「帯状疱疹」に…これからの季節は免疫力低下に要注意『every.特集』

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皮膚に痛みを伴う水ぶくれが帯状に現れる帯状疱疹。実は、これから暑くなると患者が増える傾向にあるといいます。「二度とかかりたくない」と予防に取り組む人たちを取材しました。

■激しい痛みや赤い斑点…55歳で帯状疱疹に

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ことし2月、55歳で「帯状疱疹(ほうしん)」にかかったという藤井美子さん。

2月に帯状疱疹を発症した 藤井美子さん(55)

「急に背中がかゆいな…と。たくさんポコポコとでき始めた。寝返り打ったとき痛いって、そこで起きちゃう。かかりつけの皮膚科に行ったら『帯状疱疹ですね』って、すぐに言われて」

激しい痛みを伴う赤い斑点や水ぶくれが帯状に現れる帯状疱疹。藤井さんは、抗ウイルス薬と塗り薬で腫れはひいたものの、1か月ほど痛みが続きました。二度とかかりたくないと話します。

■日本人3人に1人が発症「長く続く痛み」…なぜ?

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帯状疱疹による『長く続く痛み』。それはどうしてなのか?専門家に聞きました。

皮膚科専門医 本田まりこ院長

「このウイルスは、神経節の中に潜伏感染する。ずっと一生涯、潜伏感染していて、免疫が落ちると活性化するウイルス」

子どもの頃にかかった水ぼうそうウイルス(=帯状疱疹ウイルス)は神経の根元に残っています。それが再び活性化すると、神経にダメージを与えながら増殖。皮膚や神経自体に激しい痛みが生じるのです。

日本人の9割はこのウイルスを持っており、50代から発症が増え、3人に1人がかかるとされています。

■公費のワクチン接種開始 大切なのは「免疫力」を落とさないこと

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ことし4月からは、原則65歳を対象に公費で行うワクチン定期接種が始まりました。藤井さんは予防のために、50歳以上で可能な自費でのワクチン接種ができないか、相談しに来ました。

2月に帯状疱疹を発症した 藤井さん

「2月に帯状疱疹になって…」

皮膚科専門医 本田院長

「10年、20年後、また帯状疱疹になる可能性がある。心配な方は(ワクチン)打つ方がいい」

ワクチンには、生ワクチンと組換えワクチンの2種類あり、相性や効果の出方が違うため、医師と相談のうえ選んでほしいとのことです。

そして、さらなる予防のためには――

皮膚科専門医 本田院長

「免疫が一番大事。免疫はストレスで簡単に下がってしまう。夏に近づいて帯状疱疹なりやすい。夏バテで」

帯状疱疹の予防にはワクチンの他にも、免疫力を落とさないことが大切。これからの時期、暑さと共に体力が失われ、免疫が落ちやすいので注意が必要だといいます。

相談の結果、藤井さんは今すぐワクチンを打たずに生活習慣を見直すことにしました。

藤井さんは、だ液を郵送して、免疫を調べることができるサービスというものを利用。検査の結果、同年代に比べ免疫力がやや低く、Cランクという判定でした。

そこで免疫力を高めるため、きちんと休みを取り睡眠時間を十分とるよう生活を見直すことに。

2月に帯状疱疹を発症した 藤井さん

「仕事しかしてなかった。自分を一回、立ち止まってみなさいという信号だったと思います」

■高齢者1000人を追跡調査 健康長寿の秘密は「食生活」に

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帯状疱疹にならないため大切な免疫力。十分な睡眠のほかにも大事なことがあります。免疫学の専門家である、生体免疫栄養学講座 内藤裕二教授を訪ねました。

生体免疫栄養学講座 内藤裕二教授

「年をとることにより、次第に免疫力は低下していく」

内藤教授らが注目したのが、100歳以上のご長寿が多い京都北部にある京丹後市。65歳以上の高齢者1000人を追跡調査したところ血管年齢が若く、インフルエンザなどの感染症にかかる割合も少ないことがわかりました。

市内で、毎週健康体操をしているお年寄りたちに帯状疱疹にかかったことがあるか聞いてみると…

「ありません」

「いいえ、ないです」

「ないです、私はなってない」

「1度なった。ほぼ一日で終わった。軽くすみましたね」

内藤教授によると、こうした健康長寿の秘密は主に食生活にあると言います。

生体免疫栄養学講座 内藤教授

「我々は徹底的に栄養調査を行いました。食物繊維が免疫にとって大事なんじゃないかと考えています。一つ目は根菜類、二つ目は豆類、あと海藻などに多い」

■根菜、豆、海藻…免疫力の活性化に腸内細菌

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そこで、帯状疱疹にかかったことがないという、難波敏榮さんのお宅にお邪魔しました。

この日の夕食は豚肉の生姜焼きに、ほうれん草ののり巻き、ワカメの酢の物に、豆が入った具だくさんポテトサラダ。

帯状疱疹にかかったことがない 難波敏榮さん(80)

「野菜はこれぐらいは食べます」

帯状疱疹にかかったことがない 難波澄雄さん(84)

「欠かしたことない。干しブドウと黒豆」

帯状疱疹にかかったことがない 難波敏榮さん(80)

「風邪は何年もひいたことない」

続いても、帯状疱疹にかかったことのないという大久保里美さんのお昼ご飯です。今が旬の地元の海藻・ハバノリの炊き込みご飯に、ワカメのみそ汁、芋などをよく食べるそう。

帯状疱疹にかかったことがない 大久保里美さん(77)

「人参も必ず入れます。やっぱり海のもの山のもの、そういうのでしょうね」

海と山の自然に囲まれた京丹後の食卓で多く食べられている根菜、豆、海藻。実はこれらの食物繊維には、ある特徴があると内藤教授はいいます。

生体免疫栄養学講座 内藤教授

「そういうものを『発酵性食物繊維』と呼ぼうと。おなかの中で腸内細菌のエサになるような『発酵』、それによって腸内細菌が元気になる。発酵性食物繊維を摂取しましょうと推奨されている」

■食事で帯状疱疹予防 お勧めは「具だくさんみそ汁」

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発酵しやすい食物繊維は、元々おなかにいる腸内細菌のエサになります。すると、腸内細菌が体に役立つ成分を生み出し、全身の免疫力の活性化につながることがわかってきました。

さらに、京丹後市の食を参考に、よりおすすめの食べ方もあるそうです。

生体免疫栄養学講座 内藤教授

「日本人にとってこうじ菌由来の発酵食品、みそ・酒・しょうゆ、どうやらおなかと相性がいいのではないか。一番のお勧めは、具だくさんみそ汁」

発酵性食物繊維の具だくさんみそ汁で帯状疱疹予防に取り組もうという人がいます。向山幸子さんは、3年前に帯状疱疹にかかりました。

3年前に帯状疱疹を発症した 向山幸子さん(65)

「ピリピリした。痛いなんてものではなかった。とにかく起き上がれなかった。帯状疱疹は、もう二度と嫌ですね」

そんな向山さんが免疫力向上のため、東京・港区にある「小林メディカルクリニック東京」を訪れました。

■免疫細胞の7割が存在「腸は内と外から鍛えろ」

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腸の専門家である、順天堂大学医学部の小林弘幸教授によると――

順天堂大学医学部 小林弘幸教授

「実は免疫細胞の7割が腸に存在している。『腸は内からと外から鍛えろ』とよく言う。内からというのは食事です。外からというのは運動です」

向山さんは、座ってできる運動や具だくさんみそ汁の指導を受け、2週間続けることにしました。

まずは、座って手足を振って腸に刺激を与える運動を5分ほど。

3年前に帯状疱疹を発症した 向山さん(65)

「汗がじわーっと出てきてます」

さらに、発酵性食物繊維を使った「具だくさんみそ汁」。みそに、発酵性食物繊維が多い玉ねぎをすりおろして加え、そこに、根菜や、海藻、豆など日替わりで好きな具材を入れます。

おやつには、おから入りのワッフルや煮豆などをとるようにしました。

■2週間の運動と食生活見直しで免疫機能が改善傾向に“長く継続を”

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そして2週間後、小林教授の研究室で免疫を調べると――。

順天堂大学医学部 小林教授

「思った以上に良い結果です。大きく3つの結果が得られています。抗酸化力が改善している、ストレスホルモンも改善。実は免疫機能も改善しています。もっと長く継続することで、より良い結果が得られる可能性はある」

2週間で免疫力が改善した 向山さん(65)

「朝起きたときのだるさが違う。スッキリしてる。自分が軽いなと」

2週間の運動と食生活の見直しで免疫力改善が見られた向山さん、帯状疱疹の予防のため今後も続けていきたいと話しています。

(5月26日放送『news every.』より)

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