米ロ首脳会談直前、市場は停戦や制裁緩和に関わる資産に資金投入

トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領との15日の会談を前に、市場関係者は地政学的リスク対応の「教科書」を引っ張り出し、会談結果が市場の今後の方向性にどう影響するかを探っている。

  会談を控え、投資家はウクライナとの停戦やロシアへの制裁緩和によって恩恵を受けそうな資産に資金を投じている。ウクライナ国債は上昇し、同国の復興で利益を得られる企業や、ロシアにまだ拠点を持つ欧州の銀行の株も上昇している。

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  会談は、今年すでにドイツの財政出動による経済成長期待を背景に好調だった、欧州株全体の上昇にも拍車をかけた。

  調査会社TSロンバードのマネジングディレクター、クリストファー・グランビル氏は「表向きの結果がどうであれ、アラスカ会談は、ウクライナの戦争終結に向けた明確な始まりとなる。短期的な市場への影響はどうあれ、いかなる和平も欧州投資の根本的な魅力を強めることになるだろう」との見方を示した。

  将来的な和平の成立が各資産クラスに与える影響の見通しをまとめた。

株式

  戦争終結への期待が高まり、欧州地域の経済見通しが改善するなかで、中・東欧株が今年、世界の多くの市場を上回るパフォーマンスを見せている。スロベニア、ハンガリー、ポーランド、チェコの主要株価指数は、ブルームバーグが追跡する92の指数のうち、上位10銘柄に入っている。

  西欧では、インフラ関連や紛争への関与度が高い企業といったテーマに投資家の関心が集まっている。電力設備のシュナイダーエレクトリックや再生可能エネルギーのシーメンス・エナジーなど、ウクライナ復興で恩恵を受ける企業で構成されたUBSグループの株式バスケットは、今年に入って32%上昇し、過去最高値圏で取引されている。  

  防衛関連株からのわずかな資金シフトも見られる。ドイツを中心に欧州が数十億ユーロ規模の再軍備投資を進めるなか、防衛株は今年これまでに70%超上昇してきたが、この会談の接近に伴い、7月の高値から最大6%下落している。

  ガマ・アセット・マネジメントのラジーブ・デメロ最高投資責任者(CIO)は、トランプ氏がロシアの貿易相手国に対する二次的関税を撤廃する兆しがあれば、インド株やルピーが上昇する可能性があると述べた。

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債券と通貨

  スタンダード銀行のG10戦略責任者、スティーブン・バロー氏は、「本格的な和平合意、または一時的な戦闘停止であってもその可能性が感じられれば、ドルは下落し、特にユーロが急騰するだろう」と語る。現在ユーロドル相場は1ユーロ=1.16ドル近辺だが、同氏は、ウクライナ侵攻開始前の2021年以来の1ユーロ=1.20-1.25ドルに上昇する可能性があるとみている。

  ウクライナのドル建て債にも注目が集まっている。同国債は7-9月期、投資家に10.6%のリターンをもたらし、ブルームバーグの新興国ソブリン総合リターン指数が追跡する69カ国の中で2番目に良い成績となった。

コモディティー

   首脳会談を前に、原油価格は2カ月ぶりの安値圏で推移している。シティグループは今週、戦争終結に向けた合意が進展すれば、ブレント原油価格は現在の1バレル=約66ドルから60ドル台前半に下落する可能性があると警告した。

  一方、天然ガス価格の上昇は一服している。米国によるロシアの液化天然ガス(LNG)事業への制裁が、直ちに解除される可能性は低そうなためだ。

  この戦争は、金価格の長期上昇を後押ししてきた重要な要因でもある。金は2022年末から今年前半にかけ、価格が2倍になった。停戦の兆しがあれば、安全資産需要は和らぐ可能性がある。銅などの産業用金属は、ロシアが西側諸国との貿易に復帰する兆候に敏感に反応するとみられる。

原題:A Trader’s Guide to the Alaska Talks Between Trump and Putin(抜粋)

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