三重の外国人採用取りやめ検討 背景にある出来事と知事の経歴

毎日新聞 2026/5/12 07:00(最終更新 5/12 07:00) 有料記事 2367文字
外国人の県職員採用の取りやめ検討を表明した一見勝之知事=三重県庁で2025年12月25日午前11時2分、渋谷雅也撮影

 情報漏えいを防ぐため、外国人の職員採用を取りやめる――。

 三重県は「国籍要件」を約30年ぶりに復活させることを検討しており、来年度以降の採用試験での導入を見据える。

 市民団体、県幹部や県議からも「多文化共生に逆行する」などと反対の声があがるが、一見勝之知事は周囲に「私が責任を取る」と語り、導入にこだわりをみせる。

 一見氏が強い思い入れを抱く背景には、自身の経歴と2年ほど前の出来事があるという。【渋谷雅也、長谷山寧音】

 <主な内容> ・反対の声も「決意は固い」 ・「バッティングする」

 ・事態が動いたのは昨年10月

要人警護の情報漏えいも懸念

 「県の情報が他国の法律に基づいて漏らされる可能性がある」。昨年12月の記者会見で一見氏はこう強調した。

 県は1999年度、許認可や立ち入り検査といった公権力の行使が業務の大半を占める5職種を除く44職種の県職員について、国籍要件を撤廃。外国人にも門戸を開いた。

 多様な人材の登用を目的とした取り組みで、記録が残る20年ほど前から9人の外国人が採用された。現在は1人が医療職で働いている。

 これまで、外国人の職員による情報漏えいは確認されていない。だが、一見氏は農業・防災などの秘匿性の高い情報が流出する恐れがあるとし、国籍要件を復活させる方向で検討していることを表明した。

 特定の国名を挙げてはいないものの、一見氏の念頭にあるのは、2017年に「国家情報法」を制定した中国とみられる。組織や個人に国家機関の情報活動への協力を義務付けている。

 県内では首相の伊勢神宮参拝が新春の恒例で、皇族も含めた要人の警護に関する情報の流出の懸念も理由に挙げる。

 ただ、伊勢神宮のお膝元である伊勢市の鈴木健一市長は「そもそも公務員には守秘義務がある」と指摘。伊賀市の稲森稔尚市長は「知事の表明で数多くのヘイトスピーチが渦巻いた。外国人は危ないとの印象を与える」として、反対の立場を鮮明にした。

 人権団体や商工会議所など計190団体のほか大学教授などの研究者ら414人は、県に反対の意見書を提出。連合三重の番条喜芳会長は春闘の基本方針を示した記者会見で「外国人と共にやっていくために県が動いていたのに、後退するのはすごく残念」などと述べた。

 批判の声は大きく、県職員からも「どうにか止められないのか」との声が漏れる。それでも「知事の決意は固い」との見方が強い。

 なぜか。

 県幹部や県議らは2年ほど前の出来事が「大きな引き金になった」と口をそろえる。

「宣誓書」の提出要請を…

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