【大河ドラマ べらぼう】小田新之助役・井之脇海さん、うつせみ役・小野花梨さんインタビュー「祭りのラストシーンは幻想的で希望に満ちていた」

大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で小田新之助役を演じる井之脇海さんと、うつせみ役の小野花梨さんにお話をうかがいました。第12回では、俄にわか祭りのなか姿を消した二人。恋する女郎たちのつらく悲しいシーンが続いたので、うつせみたちの再会に安堵された方も多かったと思います。命がけで恋する二人の姿をどのように演じているのか、役作りや撮影の裏話についてもお聞きしました。

幻想的で豊かで希望に満ちたシーン

うつせみの背中を押す松の井(久保田紗友さん)。感動的なシーンでした

――第12回の台本を読んだときの感想は?

井之脇さん:まず二人の足抜けが失敗した第9回まで読んだとき、森下さんの本だなぁとすごく思いました(笑)。逆に12回は二人が希望の中で消えていくように書かれていたので、良い意味で驚きました。でも、本当に大丈夫なのかな、まだ何かありそうだぞ、と少し気になりましたが、12回の時点では純粋によかったと思いました。

小野さん:うつせみはお客さんの名前を腕に彫られたり、折檻を受けたり、花魁のなかでも闇的な部分を担わせていただいた自覚がありました。ですが12回の台本を読み、私自身、彼女の幸せを心から望んでいたんだと気づきました。うつせみが新様と再会でき、光の先に進んでいくことで、安心してくださる視聴者の方も多いかなと思うと、それもうれしいです。

うつせみはつらいシーンが続きました

――祭りでのラストシーンはいかがでしたか?

井之脇さん:引き裂かれてから俄祭りまでの数年間、新之助はうつせみの様子を蔦重に聞くなど一途に思い続けていたのです。そんな彼女と祭りで再会できた。そのときの言葉にできないわきあがる感情を大切にして演じました。大勢の人がいるなか、うつせみをすぐに見つけられたのは、きっと第六感が働いたのだろうと思います。

第六感でうつせみを発見!

小野さん:大門を出るとき、前みたいに見つかったらどうしよう、この先の生活はどうなるのかなど、現実的に考えると心配になります。でも今回のシーンでは、ネガティブなものを出さず、幻想的で豊かで希望に満ちていていいと監督に仰っていただきました。そんな演出も含めて、大好きなシーンです。

クランクインは河原でのアクション

――幸せな12回と比べると、9回は残酷でした。大門を出たあと、すぐに捕らえられました。

井之脇さん:実は、ドラマ全体のクランクインがあの河原で捕まるシーンでした。まだ何も演じていない段階で、いきなりあの場面を撮ると聞き、ウソでしょ、と思いました(笑)。でも、目の前のことにがむしゃらに取り組む僕たちの姿が、二人の恋の暴走と重なって表すことができればいいのではないかとポジティブに考えました。

最初の足抜けは未遂に終わりました

――あのアクションシーンの後、二人が恋仲になる場面を作り上げていかれたのですね。

井之脇さん:恋してはいけないのに間夫になってしまった新之助の心の止められない動きを丁寧に表現しないと、あの河原でのアクションがただのみっともないシーンになってしまう。そうならないよう、二人の恋を純度高く、見ている人が応援したくなるような二人でいられるよう、演技を積み上げていきました。

小野さん:うつせみは、罰を受けると分かっていても、藁にも縋る思いで足抜けしたと思います。そんな切羽詰まった状況を第9回までいかに作り上げていくか。出演シーンが限られるなか、恋愛シーンのみならず、花魁として積み重ねていく部分も大事だと思いました。

――河原で新之助が刀を抜き、ちょっと情けない感じで抵抗する場面や、その後自害を試みるシーンも印象的でした。

井之脇さん:編集されたものは短くなっていますが、実はあの河原でのシーンではきちんと立ち回りをつけていました。「怖いけどやるしかない」という新之助の気持ちになって刀を振り回したら、自然と情けない感じになりました。また、自害のシーンでは刺そうとして「痛い」と言った部分に人間臭さが出ていていいなと思いました。

厳しい折檻を受けるうつせみ。見るのもつらいシーンでした

――折檻など、うつせみにはつらいシーンも多くありましたが、不安はありませんでしたか。

小野さん:インティマシーコーディネーターの方もいますし、何の不安もなく演じられています。ただ、やはり女郎の現実を視覚的に見せつけられると、なんて世界だと思います。吉原を描くのは繊細な作業ですので、そこに挑むスタッフさんに対するリスペクトも感じています。また、吉原の事実を知るのも、今の時代に生きる自分にとって必要だとも思いますので、学びの場としてこの機会をいただけたのは財産になっています。

井之脇さんの人柄が新之助からあふれ出ている

――共演されて、役者としてお互いの魅力はどう感じられましたか?

井之脇さん:花魁は芯の強い方が多いなかで、うつせみは強さだけでなく柔らかさや愛らしさがにじみ出ていて、それは小野さん自身がもつパワーなんだと感じています。他の作品を拝見しても、全部役ごとに顔が違うのに、人間臭さや瑞々しさがあふれているのが小野さんの素敵なところだと思います。

天女のようなうつせみに新之助は一目ぼれ

小野さん:井之脇さんのもつ人柄が、新之助という役からあふれ出ていると実感します。なぜうつせみが新之助さんに惹かれたのか。佇まいや言葉にならない部分に惹かれたのだなと演じながら感じました。井之脇さんがもつ価値観や人生観、今まで積み重ねてこられた軌跡があふれているのだと思います。

浮世絵が楽しみ

――今回江戸中期を演じて、好きになった江戸文化はありますか?

井之脇さん:浮世絵に興味が出てきました。カフェなどには西洋画が多く飾られ、自分でもよく見ているのですが、浮世絵は今まであまり意識したことがありませんでした。人の描き方など西洋とは違う技法で、はかない瞬間がつめこまれている作品が多く、興味が出たので今後調べてみたいです。僕は絵師たちとお芝居するパートにいないので、ドラマで見るのが楽しみです。

小野さん:草履を編むシーンがあるので、プロの方に教えていただき自分で編んでみたのですが、それがおもしろくて。本当に一本のただの藁がなぜか靴になるので、魔法みたいでした。一個一個手作業でモノを作るのはこういうことかと実感できましたし、すごく楽しかったです。

――今後も楽しみにしています。ありがとうございました。

(ライター・田代わこ)

井之脇海(いのわきかい)さん 1995年生まれ、神奈川県出身。子役時代から活躍し、映画『トウキョウソナタ』で複数の新人賞を受賞。主な出演作品は、ドラマ『義母と娘のブルース』『晩餐ブルース』など。NHKでは、連続テレビ小説『ごちそうさん』『ひよっこ』、大河ドラマ『平清盛』『おんな城主 直虎』などに出演。

小野花梨(おのかりん)さん 1998年生まれ、東京都出身。2006年にデビュー。主な出演作品は、『鈴木先生』『初恋、ざらり』『私の知らない私』など。映画『ハケンアニメ!』で、第46回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。NHKでは『きれいのくに』『お別れホスピタル』、連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』などに出演。

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