「甘味」と「塩味」を感じる順番に個人差 味覚は脳内処理と共感性が影響している可能性 国立障害者リハビリテーションセンター

甘味と塩味を感じるタイミングの調整に個人差があることが報告された。国立障害者リハビリテーションセンターの研究グループの研究によるものであり、論文が「Scientific Reports」に掲載された。

研究結果の概要:塩味と甘味が混ざった味の感じ方の個人差と発達特性の関係

自閉傾向が強い人は、混ざった味の食べ物を苦手と感じる傾向がある。国立障害者リハビリテーションセンター研究所は産業技術総合研究所と共同で、新たに開発した実験装置を用いて、味の感じ方について調査した。

実験では、参加者の舌先に砂糖水(甘味)と食塩水(塩味)を順々に呈示し、どのような順番で感じたか回答してもらった。刺激は「甘味→塩味」または「塩味→甘味」いずれかで呈示され、参加者は感じた順序をボタンで回答した。また、一部の実験では砂糖水と食塩水の混合液を呈示したが、そのことは参加者には伝えずに行った。

その結果、砂糖水と食塩水を順々に呈示した場合には、多くの参加者が味の順序を概ね正確に答えた。一方、混合液を呈示した場合の回答には、大きな個人差があった。

甘味と塩味は、それぞれ異なる受容体によって感知される。舌(末梢)にある味覚受容体の性質から、混合液の場合、本来は塩味が先に感知されると考えられる。しかし実際には、甘味を先に感じたと回答する参加者も多く、このことから、脳内で味の「到達時間」が調整されている可能性が示唆された。

解析の結果、共感化傾向※1の高い人は、混ざった味を「甘味が先」と感じやすいことがわかった。味覚受容体の性質から推測される順序(塩味→甘味)と異なる結果となったことから、共感性の高い人では、脳内における味覚情報の時間的な調整がより強く働くことが示唆された。

本研究では「混ざった味が苦手」という食行動と明確に結びつく味知覚の特徴は見つからなかったが、味知覚の特徴と自閉傾向に関連した性格特性が関係している可能性が示された。

研究の背景:混ざった味の感じ方と自閉傾向や食行動との関連を探る

自閉スペクトラム症※2の当事者は、苦手な食べ物が多く、食べられるものが限られているなど、食の困りごとが多いことが知られている。苦手な食べ物が多いことは、日常生活の中で献立選びが難しくなるだけでなく、食の偏りから低成長や生活習慣病へつながる可能性もある、医学的に重大な課題。以前に同センターの研究者らが実施したWEBアンケートでは、自閉傾向が高い人は、「甘じょっぱい」(甘味・塩味)といった混ざった味の食べ物を苦手と感じる傾向が明らかになっていた(DOI: 10.1002/erv.2931)。

一方、味覚は味蕾※4にある味細胞※5の表面の味覚受容体により感知される。塩味はイオンチャネル共役型受容体※6により感知されるため応答が素早く、甘味は代謝型受容体※7で感知されるため高感度ながら応答がゆっくりであることが知られている。過去の研究でも脳活動において、塩味応答のほうが甘味応答に比べて0.1秒程度早いことが報告されている。

このように、味覚受容の基本的なメカニズムは徐々に明らかになってきているものの、これまでのところ塩味と甘味の組み合わせのような、「混ざった味」がどのように感じられるかなど知覚に関する研究は少なく、それが自閉傾向や食行動とどのように関連しているのかはほとんど明らかになっていなかった。そこで今回、複数の味刺激を呈示することができる味覚刺激装置(図1)を新たに開発して、「混ざった味」(塩味と甘味)の感じ方について調査した。

図1 味覚刺激装置

実験参加者には、孔のあいたチューブに舌先をあててもらい、そこに流れてくる味刺激(甘味・塩味)についてボタンで答えてもらった。チューブの中には、舌先で36℃程度になるように加温した脱イオン水が常に流されており、そこを気泡で区切られた味刺激の列が流れてくるようになっていた。どのタイミングで味刺激が届いたかについては、着色された味刺激の溶液(食塩水または砂糖水)を吸光度センサにより検出した(実際の味刺激は食紅によりすべて同じ赤に着色)。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

研究の具体的内容と成果

(1)塩味と甘味のどちらかをあてる課題(味覚弁別課題)

定型発達の30名を対象に、まず、塩味と甘味のどちらが呈示されたのかを答えてもらう課題(味覚弁別課題)を行った。この課題では、塩味刺激または甘味刺激がランダムに呈示され、参加者には呈示された味刺激が、どちらであったかボタン押しで答えてもらった(図2)。

図2 塩味と甘味のどちらかをあてる課題(味覚弁別課題)

この課題では、塩味刺激(食塩水)または甘味刺激(砂糖水)のどちらかが呈示される。刺激の長さは、およそ0.4秒(400ミリ秒)で、刺激がどちらの味かわかった場合には、速やかにボタン押しをする必要があった。予備実験により、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)と砂糖水(スクロース水溶液)の濃度は、概ね同じくらいの濃度に感じられるように調整していた。なお、食塩水も砂糖水も実際には赤く着色されていた。図中の味刺激の後の薄い色は、各刺激の後、洗い流しのため少し着色が残っていたことを表している。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

その結果、今回の実験条件では、塩味か甘味の区別は、正確に行えることがわかった(図3左)。従って、次に行った時間順序判断においても、主観的な味の感じやすさの差が順序判断に影響する可能性は低いと推測された。一方、正解だった時の反応時間を調べてみると、塩味刺激に対する応答は、甘味刺激に対する応答に比べて、少し早いことがわかった。この差は、統計的に意味のあるものだった。先行研究でも塩味応答は甘味応答に比べて早いことが知られており、今回の実験でも矛盾しない結果になった。

すなわち、味刺激がどちらであるかを当てるシンプルな課題では、反応時間は末梢の受容体の性質に依存することがわかった。

図3 味覚弁別課題の結果

左のグラフが正答率、右のグラフが、正解だった時の反応時間を表している。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

(2)塩味と甘味の順序を答える課題(味覚時間順序判断課題)

実験参加者が、塩味刺激、甘味刺激を正確に区別できることを確認したうえで、次に味刺激の順序を答えてもらう課題を行った。この課題では、味刺激は「塩味→甘味」(塩味先条件)あるいは「甘味→塩味」(甘味先条件)の順で呈示された。加えて、3分の1の試行では、実際には塩味刺激(食塩水)と甘味刺激(砂糖水)が混ざった混合液(混合味条件)を呈示した(図4)。刺激条件はランダムに呈示(バイアスの影響を防ぐため6試行ごとの疑似ランダムで呈示)され、いずれの試行においても、実験参加者は、その順序をボタンで再現する必要があった。つまり、混合液条件では、二つの刺激の刺激時間差がゼロの時の応答を評価することができる。

図4 塩味と甘味の順序を答える課題(味覚時間順序判断課題)

この課題では、塩味刺激(食塩水)または甘味刺激(砂糖水)が順番または同時に呈示される。刺激は、およそ0.4秒(400ミリ秒)で、間を隔てる気泡が0.1秒(100ミリ秒)であるため刺激の時間差はおよそ0.5秒(500ミリ秒)だった。一方、混合味条件では、塩味刺激と甘味刺激が混合されており、刺激はおよそ0.9秒(900ミリ秒)だった。実験参加者には、「塩味→甘味」または「甘味→塩味」のいずれかの順で回答するように伝えられており、ボタン押しで再現してもらった。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

図5左のグラフの縦軸は「塩味が先と判断した割合」であり、全問正解の場合、塩味先条件では1、甘味先条件では0となる。従って、塩味先条件と甘味先条件においては、多くの実験参加者が、刺激の順序を概ね正確に答えられていたことがわかる。一方、混合液条件の応答は、平均すると概ねチャンスレベル(0.5;偶然の確立のこと)になったが、参加者ごとにみると、応答は大きく異なった。参加者によっては、混合液条件のほとんどの試行で「塩味が先」と回答している一方、ほとんどの試行で「甘味が先」と回答する参加者もいた。

図5 味覚時間順序判断課題の結果

左のグラフは味覚時間順序判断での参加者の応答を表している。グラフの横軸は刺激の時間差で、プラスの場合は塩味が先に刺激されたことを示す。一方、縦軸は実験参加者が「塩味が先に来た」と回答した割合。つまり甘味先条件ではゼロ、塩味先条件では1が全問正解を表す。青色の太線が平均の結果を示し、グレーの線が各参加者の応答を示している。右のグラフは、混合液条件の時の応答について、塩味先条件・甘味先条件の時の応答も考慮に入れたうえで指標化したもの。縦軸のプラス方向は、混合液を「塩味が先」と回答しがちな傾向を示している。一方、横軸は、各参加者の共感化指数(EQ)の値を示している。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

混合液条件における応答の違いを指標化したうえで、自閉傾向に関連した認知スタイル(自閉症スペクトラム指数AQ※8、共感化指数EQ※9、システム化指数SQ※10)との関連をみたところ、自閉傾向(AQで評価)と関連するかもしれないという先行研究からの予測とは異なり、共感化傾向(EQで評価)との明らかな関連が判明した(図5右)。すなわち、共感化傾向が高い人では、混合液を「甘味が先」と回答しがちな一方で、共感化傾向が低い人では、混合液を「塩味が先」と回答しがちなことが判明した。

この結果に関して、「甘味に対する感受性が高い人は甘味を素早く感知している可能性」、すなわち塩味と甘味に対する感受性の違いが結果に影響を与えた可能性が考えられる。しかし、味覚弁別課題での反応時間からは、塩味の反応時間が平均して早いことが判明しており、シンプルな甘味感受性の個人差では説明が困難。むしろ二つの味が混在しているときには、同時性を調整するメカニズム(較正)が働いていて、それが共感化傾向の個人差と関連していたのではないかと考えられる。

(3)主観的な味の感じ方や食行動との関連

混合液条件における応答の違いについて、主観的な味の感じ方や食行動との関連についても調査した。その結果、主観的な味の感じ方に関する質問の中で、甘味に関して後味を長く感じがちな人(「甘味がずっと口の中で残るような気がする」と答えた人)は、むしろ混合液を「甘味が先」と回答する傾向が強いことがわかった。一方、食行動の特徴に関する質問との間に関して、多重比較を考慮した場合には、明らかに関連のある項目は見つからなかった。

結果の解釈と展望:食のノーマライゼーションにつながる成果

本研究から、共感化傾向が高い人は、甘味と塩味が混ざった場合には、甘味を先に感じやすく、共感化傾向が低い人は、反対に、塩味を先に感じやすいことが示された。なぜ同じ混合液に対して、このような感じ方の違いが生じるのかについて、研究グループは以下の仮説を述べている。

末梢レベル(図6上)では、イオンチャネル共役型受容体によって生じる塩味応答は、甘味応答に比べてより早く生じる。このことは、味覚弁別課題では、塩味応答の反応時間の方が早かったという今回の結果からも支持される。一方、視覚と聴覚では、到達時間差の調整が生じるように、味覚についても、脳の中(中枢;図6下)で時間的な調整が働く可能性が考えられる。なお、視聴覚で生じる時間的な調整は個人差が大きく、例えば自閉スペクトラム症の人では、条件によっては調整がほとんど生じないことも知られている。今回の実験で塩味と甘味の到達時間差の調整が生じない場合には、混合液は「塩味が先」と知覚されるはずと言える。実際、共感化傾向(EQスコア)が低い参加者では、このような結果が得られており、末梢の受容体特性に忠実な知覚が生じているものと考えられる。

図6 結果の解釈

上の段は、感覚器レベル(末梢)での神経応答を概念的に表しており、下の段は、脳の中(中枢)での神経応答を概念的に表している。その結果生じると考えられる感じ方(知覚)を下に示す。

(出典:国立障害者リハビリテーションセンター)

一方、反応のピークで時間的な調整が生じると考えると、本来、両者は同時に知覚されるはずで、その場合、混合液に対する応答はチャンスレベル(偶然の確立)となるはず。しかし、代謝型受容体によって感知される甘味応答では、間に酵素反応を介しているため、反応のバラツキ(分散)が大きい可能性がある。その場合、ピークが同時になるように調整後には、むしろ「甘味が先」という一見逆転した判断になると考えられる。今回、「甘味に関して後味を長く感じがち」と答えた人の方が、むしろ混合液を「甘味が先」と回答する傾向がみられたということも明らかになっており、この可能性を支持する結果と言える。

以上のように、本研究からは、混ざった味に対する味知覚の特徴と共感性との関連が示唆された。なぜ共感化傾向との関連がみられたのかを明らかにするのは、今後の課題だが、共感性に関わるとされる脳領域は島皮質とよばれる領域で、味知覚にも関わることも知られている(一次味覚野)。この重なりが今回観察されたような関連を生じさせたのかもしれない。

研究者らは、「今回、『混ざった味が苦手』といった食行動との関連は明確ではなかったものの、味知覚の特徴と自閉傾向に関連した認知スタイルが関係するかもしれないという知見を得ることができた。今後、今回の研究を通じて得たノウハウを生かして、食行動の背景にある味知覚との関係を明らかにし、食の困りごとに対する啓発や食のノーマライゼーションに貢献していきたいと考えている」としている。

関連情報

甘味と塩味を感じるタイミングの調整に個人差~発達特性に関連した共感化傾向との関連を確認~(国立障害者リハビリテーションセンター)

文献情報

原題のタイトルは、「Temporal calibration in taste temporal order judgment is associated with empathizing traits」。〔Sci Rep. 2026 Jan 10;16(1):5001〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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2026年 前期 セミナー開催日程

第1回 スポーツ栄養の必要性 エネルギーと糖質の摂取

ライブ配信:2026年4月21日(木) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年4月25日(土)~5月1日(金)

スポーツ栄養とは? その意義とアスリートにおける栄養摂取の基本的考え方からスタート。エネルギー摂取と代謝のメカニズム、最も重要なエネルギー源である糖質摂取の意義、糖質の選び方・食べ方、シーンに応じた摂取目安量、タイミング、グリコーゲンローディングやリカバリー活用のしかたなどについて詳しく解説します。

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第2回 タンパク質、ビタミン、ミネラルの摂取とサプリメントの活用

ライブ配信:2026年5月12日(火) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年5月16日(土)~5月22日(金)

アスリートの脂質、タンパク質、ビタミン・ミネラルの摂り方を取り上げます。特に、タンパク質の適正な摂取量を知り、リカバリーや筋合成のためにどのように摂るとよいかを詳しく解説。摂りきれなかった栄養素を補うサプリメントの利用、競技力向上を目的に栄養素以外の成分をサプリメントで摂取するエルゴジェニックエイドとしての活用についても学びます。

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第3回 アスリートの食事、スポーツ栄養マネジメントを用いた栄養管理システムの活用

ライブ配信:2026年6月11日(木) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年6月13日(土)~6月19日(金)

アスリートの運動量に応じた適正量を知り、目標達成のためにどのような食品をどのタイミングで食べるか、食材選び、食事構成、補食・間食のとり方の極意を講義します。理に適った糖質とタンパク質の摂り方、食塩摂取の考え方、生活リズムと朝食の関係など、具体的なノウハウを学びます。

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第4回 試合期・遠征時の栄養管理

ライブ配信:2026年7月14日(火) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年7月18日(土)~7月24日(金)

通常の食事と試合期の食事は異なります。緊張や興奮からくる栄養状態への影響と対策を考えた試合前、試合当日の食事の原則・栄養管理のポイント、TPOに応じた糖質やタンパク質、水分摂取について講義します。

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第5回 アスリートにおける栄養面の課題~増量、エネルギー不足、貧血、疲労骨折を中心に~

ライブ配信:2026年8月20日(木) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年8月22日(土)~8月28日(金)

アスリートにおける栄養面の課題をテーマに、エネルギー不足による健康問題、治し方、予防策、様々な理由による貧血、疲労骨折の原因と予防、増量・減量の正しい行い方を講義します。"エネルギー不足"の弊害は、実はまだあまり知られていませんが、アスリートに限らず、子どもや高齢者、女性など、あらゆる世代に関わる大きな問題です。

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第6回 対象アスリート別栄養管理~ジュニアアスリート、女性アスリート、パラアスリートを中心に~

ライブ配信:2026年9月17日(木) 13:30~17:00 見逃し配信:2026年9月19日(土)~9月25日(金)

選手の目標・課題達成のためのサポート計画に基づいた「スポーツ栄養マネジメント」の流れ、対象者別コンディション管理、評価のしかたを中心に講義を行います。女性の三主徴、発育発達期のエネルギー摂取の考え方、シニアやパラアスリートのサポートについても詳しく解説。

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スポーツ栄養WEB編集部


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レジスタンストレーニングにより筋力や除脂肪体重に対する、異なるタンパク質ベースのサプリメントの効果を、ネットワークメタ解析により比較した研究結果が報告された。健康な成人においては、コラーゲンおよびホエイプロテインのサプリの有効性が示唆されるという。ブラジルの研究者らによる論文。

健康な成人では、どのタンパク質ベースサプリが筋トレ効果を最も高めるのか?

レジスタンストレーニングによる筋力と除脂肪体重の増加を、いくつかのサプリメントがサポートすることが知られており、とくに筋タンパク質の合成およびその刺激に必要とされるタンパク質ベースのサプリメントの有用性に関するさまざまな研究が報告されてきている。

最近の研究では、摂取するタンパク質の量が等しくても、どの食品由来のサプリかによって筋力や除脂肪体重に対する影響が異なることも示されている。この差には、アミノ酸組成や消化・吸収速度の違い、および食品マトリクス効果の潜在的な差異などが関与していると考えられている。

ただしこれまでのところ、異なるタンパク質ベースサプリの筋力等への影響を直接比較した報告は多くない。報告されているものの大半はサルコペニアを有する高齢者や慢性疾患患者を対象としたものが中心であり、健康な成人を対象に比較検討した研究は乏しい。

これを背景として今回紹介する論文の著者らは、健康な成人の筋トレに対するタンパク質ベースのサプリのサポート効果を比較するため、異なる介入試験の結果を統合して介入効果を比較する統計学的手法である、ネットワークメタ解析を用いた検討を実施した。

ネットワークメタ解析により、異なるRCTの結果を統合して比較

システマティックレビューとメタ解析のための優先報告項目(PRISMA)の拡張版である、ネットワークメタ解析のガイドライン(PRISMA-NMA)に準拠して、PubMed、Scopus、Embaseに2024年5月までに収載された論文を対象とする検索を行った。

包括基準は、疾患のない健康な成人を対象に、タンパク質ベースのサプリとレジスタンストレーニング(resistance training;RT)を組み合わせた場合の筋力および除脂肪体重(fat-free mass;FFM)への影響を評価した、無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)とし、発行日や言語は制限しなかった。無作為化されていない試験、観察研究、症例報告、タンパク質ベース以外のサプリとの複合効果を検討した試験、未発表の学術論文(学位論文など)、査読を受けていない記事、総説などは除外した。

一次検索で2,650報がヒットし、重複削除後の1,911報をタイトルと要約に基づくスクリーニングで135報に絞り込み、全文を入手不能な2報を除外して133報を全文精査の対象とした。これらは2名の研究者が独立して行い、採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により合意を得た。

43報が適格と判断され、それらの論文の参考文献のハンドサーチにより、さらに35報を追加し、最終的に78件の研究報告を適格と判断した。

タンパク質サプリの中ではコラーゲンとホエイプロテインの効果が高いという結果

ネットワークメタ解析による主要評価項目は筋力への影響であり、副次評価項目として除脂肪体重への影響を比較した。

筋力への影響

筋力への影響に関しては68件の研究報告があり、13種類のタンパク質ベースサプリが検討されていた。合計2,401人が参加し、筋力の評価手法として多くの研究は、1回だけ施行可能な最大負荷量(one repetition maximum;1RM)を用いていた。

解析の結果、調査されていたタンパク質ベースのサプリの中で、レジスタンストレーニング(RT)による筋力のサポート効果が最も高いのは、コラーゲンであることが示された。コラーゲンは、カゼイン(標準化平均差〈SMD〉=0.55〈95%CI;0.10~1.00〉)、ミルクプロテイン(SMD=0.53〈0.12~0.93〉)、およびプラセボ(SMD=0.41〈0.09~0.73〉)と比較して有意に筋力増強効果が優れていた。

ホエイプロテインもプラセボと比較して有意な筋力増強効果を示し(SMD=0.15〈0.03~0.27〉)、コラーゲンとともに統計的に有意性が観察された。

SUCRA解析の結果、筋力増強効果が高いと考えられる順に、コラーゲン(SUCRA=88.05%)、ウシ初乳(同76.81%)、牛肉プロテイン(66.66%)、ホエイプロテイン(64.34%)、エンドウ豆プロテイン(62.89%)、乳酸アルブミン(62.02%)はSUCRAが60%以上であり、プラセボよりも有効な可能性が示唆された。一方、ミルク(23.59%)やカゼイン(23.46%)などはSUCRAが低く、効果的な選択肢である可能性は低いと示唆された。

研究間の異質性は無視できる程度と判断された(I2=5.6%〈0.0~29.9%〉)。

除脂肪体重(FFM)への影響

除脂肪体重(FFM)への影響に関しては63件の研究報告があり、11種類のタンパク質ベースサプリが検討されていた。合計2,354人が参加し、FFMの評価手法として多くの研究は、二重エネルギーX線吸収測定(dual-energy X-ray absorptiometry;DXA)法を用いていた。

解析の結果、調査されていたタンパク質ベースのサプリの中でRTによるFFMのサポート効果が最も高いのは、コラーゲンであることが示され(SMD=0.94〈95%CI;0.48~1.40〉)、効果が際立っていた。コラーゲンは、ウシ初乳(SMD=0.70〈0.08~1.32〉)、カゼイン(SMD=0.87〈0.35~1.39〉)、魚プロテイン(SMD=0.96〈0.05~1.87〉)、ミルクプロテイン(SMD=0.83〈0.32~1.35〉)、ピーナッツプロテイン(SMD=0.91〈0.24~1.58〉)、米プロテイン(SMD=0.88〈0.15~1.62〉)、大豆プロテイン(SMD=0.78〈0.31~1.25)と比較しても、FFMのサポート効果が有意に優れていた。

ホエイプロテインもプラセボと比較して有意な筋力増強効果を示し(SMD=0.16〈0.05~0.28〉)、コラーゲンとともに統計的に有意性が観察された。

SUCRA解析の結果、FFMに対する効果が高いと考えられる順に、コラーゲン(SUCRA=98.92%)、牛肉プロテイン(77.00%)、ウシ初乳(64.12%)、ホエイプロテイン(60.23%)と続いた。魚プロテイン(34.34%)、ピーナッツプロテイン(37.30%)、昆虫プロテイン(38.35%)、カゼイン(40.72%)などはSUCRAが低く、効果的な選択肢である可能性は低いと示唆された。

研究間の異質性は観察されなかった(I2=0%〈0.0~29.3%〉)。

著者らは、研究報告数の少ないサプリに関してはネットワークメタ解析による順位付け推定値の信頼性が低下することを限界点として挙げたうえで、「コラーゲンとホエイプロテインは、健康な成人のレジスタンストレーニングによる筋力と除脂肪体重への効果を一貫して向上させるサプリメントして特定された」と結論づけている。

文献情報

原題のタイトルは、「Which Protein-Based Dietary Supplements Most Effectively Enhance Fat-Free Mass and Strength Gains in Healthy Adults Undergoing Resistance Training? A Network Meta-Analysis」。〔Transl Sports Med. 2026 Feb 2:2026:5557511〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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スポーツ栄養Web編集部


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アイスランドの17~18歳の青少年を対象に、習慣的なエナジードリンク(ED)の摂取、およびその摂取時間帯を横断的に調査した結果が報告された。習慣的にEDを飲む若者は睡眠時間が短く、健康的な食品の摂取頻度が低いという。また、とくに15時以降にEDを飲む習慣は、より睡眠時間が短いことも示されている。

エナジードリンク(ED)の摂取タイミングは睡眠に及ぼす影響を左右するか?

エナジードリンク(energy drink;ED)の消費量は年々増加しており、とくに未成年層で増加していることが報告されている。EDは一般的にカフェインを多く含んでおり、その摂取習慣が、就寝時刻の遅延、睡眠時間の短縮、日中の眠気などと関連していることが報告されている。また、食事の質の低下との関連を示す報告もある。ただ、EDをいつ摂するかという摂取タイミングと睡眠に及ぼす影響との関連はあまり知られておらず、とくに10代後半の若者での研究はほとんど行われていない。

今回取り上げる論文の著者らは、10代後半の若者において、(1)ED摂取習慣の有無による睡眠習慣の差異、(2)EDを摂取する時間帯による睡眠習慣の差異(3)ED摂取習慣の有無による食習慣の差異という3点を明らかにすることを目的とする横断研究を実施した。

エナジードリンク(ED)を飲む若者の多くが、安全上の懸念の生じるカフェインを摂取

この研究はアイスランドの首都であるレイキャビク近郊の学校3校の生徒を対象に実施された。17~18歳の生徒420人のうち184人(44%)が研究参加に同意し、データ欠落のない171人(女子62.6%)を解析対象とした。

過半数がEDを習慣的に摂取し、18時以降に飲む若者も多い

57.3%の生徒が習慣的にエナジードリンク(ED)を摂取しており、男子(48.4%)より女子(62.6%)のほうが高かった(p<0.001)。<>

ED摂取習慣のある生徒において、18~21時に飲む習慣のある割合は、男子が25%、女子は45%だった。さらに21時から翌朝6時の間に飲む習慣のある生徒も存在し、その割合は男子12%、女子27%だった。

睡眠習慣については、平日の睡眠時間が6.5±1.1時間、休日は8.3±1.1時間であり性別による有意差はなく、平日・休日の就床時刻・起床時刻も性別による有意差はなかった。

欧州食品安全機関の安全性基準を超えるカフェインを摂取している若者も多い

欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA)は、カフェイン摂取量が1.4mg/kgを超えると睡眠への影響の懸念があり、3.0mg/kgを超えると安全性上の懸念が生じるとしている。

本研究では、過去3カ月間の平均的な食品・飲料の摂取量を報告してもらっている。その回答に基づき推計したカフェイン摂取量が上記の値を超える生徒の割合を割り出したところ、男子ではED摂取習慣のある生徒の過半数にあたる55%が1.4mg/kgを超えて摂取しており、女子でも半数近くの46%が1.4mg/kgを超えて摂取していた。さらに、3.0mg/kgを超える量を摂取していると考えられる生徒が、男子は32%、女子は18%存在していた。

15時以降にEDを飲む習慣は睡眠時間の短縮と関連

推定カフェイン摂取量が3mg/kg/日の男子は、3mg/kg/日未満の生徒と比較して、平日の睡眠時間が有意に短かった(6.1±1.0 vs 7.0±1.0時間、p=0.007)。ただし休日の睡眠時間には有意差がなかった。また、1.4mg/kg/日以上と未満での比較では、男子においては平日・休日ともに睡眠時間に有意差がなかった。

一方、女子では推定カフェイン摂取量が3mg/kg/日の生徒は、3mg/kg/日未満の生徒と比較して、平日(6.2±1.0 vs 6.9±1.2時間、p=0.029)、休日(8.2±1.2 vs 9.0±0.7時間、p=0.022)ともに睡眠時間が有意に短かった。さらに、1.4mg/kg/日以上と未満での比較においても、前者の群は平日の睡眠時間が有意に短かった(6.4±1.0 vs 7.0±1.2時間、p=0.003)。休日の睡眠時間には有意差がなかった。

EDを15時以降に飲む習慣のある若者は、睡眠時間6時間の割合が有意に高い

次に、エナジードリンク(ED)の摂取時間帯と睡眠時間との関連に着目すると、EDを習慣的に飲むものの15時以降は習慣的に飲まない群(35人)に比較し、15時以降にも習慣的に飲む群(63人)は、睡眠時間が6時間以下の割合が有意に高かった(p=0.007)。それに対して、EDを習慣的に飲むものの15時以降は習慣的に飲まない群は、EDを習慣的に飲まない群(73人)と、睡眠時間が6時間以下の割合に有意差がなかった。

EDを習慣的に摂取している若者には、食事指導が必要な可能性

続いて、ED摂取習慣と食行動との関連が解析された。

その結果、男子ではED摂取習慣のある生徒は乳製品の摂取頻度か有意に低く、人工甘味料飲料、コーラ、アルコール飲料の摂取頻度が高いという有意差が認められた。また、有意水準未満ながら、ED摂取習慣のある生徒の野菜摂取頻度が低い傾向がみられた(p=0.055)。菓子やスポーツドリンク、加糖飲料の摂取頻度は有意差がなかった。

女子ではED摂取習慣のある生徒は、人工甘味料飲料、加糖飲料、コーラ、スポーツドリンク、アルコール飲料の摂取頻度が高いという有意差が認められた。

著者らは、「アイスランドの若者において、とくに女子の間でEDが習慣的に摂取されており、15時以降に摂取された場合に睡眠時間が短くなることが示された。またED摂取習慣のある若者は栄養価の高い食品の摂取量が少なく、食習慣が良くなかった」と結論づけ、「今後の研究では、これらの行動の長期的な影響を調査し、若者に対して健康的な習慣を促進するための介入策を検討すべきである」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy drink consumption, sleep behavior, and food choices of Icelandic adolescents」。〔Food Nutr Res. 2026 Jan 29:70〕 原文はこちら(Örebro University Holding)

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スポーツ栄養Web編集部

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格闘技選手の急速な減量が免疫系に及ぼす影響をシステマティックレビューに基づき総括した論文を紹介する。韓国の研究者によるもので、具体的な推奨項目も示されている。

免疫機能を維持しパフォーマンスを最適化するアプローチの模索

格闘技選手の多くが、試合における優位性を得るために急速な減量(rapid weight loss;RWL)を行う。このRWLは免疫学的に大きなストレスを与え、自然免疫と獲得免疫の双方の機能を低下させる可能性が報告されている。とくに、体重の減少幅と減少速度が重要な決定要因と考えられている。一方で段階的な体重管理、栄養の最適化、バイオマーカーのモニタリングなど、エビデンスに基づいた戦略により、免疫抑制が軽減される可能性もある。今回紹介する論文の研究は、格闘技特有の減量プロトコルにおけるギャップを明らかにし、免疫機能を維持しつつパフォーマンスを最適化するための統合的なアプローチを提案している。

著者は、システマティックレビューとメタ解析の報告に関するガイドライン(PRISMA)に準拠し、PubMed、Scopus、Web of Science、Google Scholarという四つの文献データベースを用いて、2000年1月~2025年9月に収載された論文を対象とする検索を行った。検索キーワードは、急速な減量、減量、格闘技、テコンドー、柔道、レスリング、免疫応答、サイトカイン、ナチュラルキラー(natural killer;NK)細胞、分泌型免疫グロブリンA(secretory immunoglobulin A;sIgA)、炎症などを用いた。

包括基準は、現役の格闘技(テコンドー、柔道、レスリング、ボクシングなど)の選手を対象として、RWLプロトコルへの曝露(通常は7日以内の期間で体重の3%以上の減少で定義)による免疫機能パラメーター(直接的に数値化される測定値としての免疫細胞数、サイトカインプロファイル、粘膜免疫マーカー、および関連する生体分子指標から推測される指標)への影響を検討し、査読システムのあるジャーナルに掲載された英語で執筆されている論文。除外基準は、減量期間が長期(4週間以上)の研究、非アスリート集団を対象とした研究、査読を受けていない文献など。

一次検索で278報がヒット。重複等を削除後の187報を2名の研究者がタイトルと要約に基づきスクリーニングを実施し91報に絞り込み、全文精査の対象とした。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。

抽出された研究報告の特徴

最終的に日本からの3報を含む10報が適格と判断された。それらの研究の対象選手は、テコンドーが5件、柔道が4件、総合格闘技が1件であり、8件は男性選手、2件(いずれもテコンドー)は女性選手を対象に行われていた。

論文では10報の報告に基づき、急速な減量(RWL)による免疫能低下のメカニズムが総括されている。具体的には、厳格な摂取エネルギー制限や脱水および集中的なトレーニングによって、視床下部-下垂体-副腎(hypothalamic–pituitary–adrenal;HPA)軸が活性化され、コルチゾール上昇に伴い自然免疫と獲得免疫が抑制されること、それに伴う変化として、リンパ球増殖、NK細胞の細胞傷害性低下、好中球の貪食能低下、sIgA分泌低下、IL-6、TNF-α、CRPの上昇などの急性期反応が生じること、そして試合後にも免疫抑制状態が持続し上気道感染症のリスクが高まり回復が遅れることなどが解説されている。

このようなメカニズムの解説に続き、考察において「実践的な意味合いとエビデンスに基づいた戦略」として以下のようにまとめられている。

実践的な意味合いとエビデンスに基づいた戦略

統合的アプローチの第一の柱は、減量プロセスの期間設定と言える。急激で厳しい摂取制限に頼るのではなく、アスリートは少なくとも2週間かけて徐々に体重を減らす構造化された計画を採用すべき。

第二の柱は栄養の最適化である。減量期間中は、総エネルギー摂取量を10kcal/kg/日以上に維持することが推奨される。タンパク質の摂取量は、免疫グロブリンの合成をサポートし、体タンパク質の異化を抑制するために、理想的には1.4~2.0g/kg/日を維持する必要がある。さらに炭水化物を5~7g/kg/日確保することで、好中球とNK細胞の機能を維持できる。ω3脂肪酸(EPA/DHA 3g/日)とビタミンD3(2,000IU/日)のサプリメントは、抗炎症性サイトカインの発現を促進し、制御性T細胞を増やす可能性がある。そのほかに、ビタミンC、ビタミンE、セレン、亜鉛などの微量栄養素に関する一定のエビデンスがみられる。

水分補給戦略は、体重管理のさまざまな段階に合わせて慎重に周期化する必要がある。競技前のテーパリング中は、十分な水分(例えば26mL/kg)と適切なナトリウム(約3.2g/L)を摂取することが、血漿量の維持と腎臓クリアランスのサポートに役立つ可能性がある。

また、バイオマーカーのモニタリングにより、データに連動して個別化した介入戦略が可能になる。唾液コルチゾール、sIgA、IL-6、CRP、CD4/CD8比、制御性T細胞などの評価により、有害な傾向を早期に検出可能。それらの測定結果が閾値から外れた場合は、免疫学的回復力と最適なパフォーマンスを確保するために、減量の一時停止、カロリー摂取量の増加、高強度トレーニングの延期などの調整を検討する必要がある。

統合的な推奨事項

減量戦略

週あたりの減量ペースを総体重の1%未満にするべき。この段階的なアプローチにより、代謝と免疫系の適応が可能になり、急速な減量でよく見られる異化ストレス(HPA軸の活性化)を最小限に抑えることができる。

競技直前の72時間で体重を5%以上減らすことを目指すことは、免疫学的リスクを著しく高める。リンパ球機能とsIgAレベルの著しい低下が確認されている。そのようなRWLプロトコルは厳格に避けるべき。

栄養摂取戦略

栄養介入においては、免疫細胞にエネルギーを供給し、腸管バリア機能を維持するために、十分な基質供給を確保することを最優先事項としなければならない。

エネルギー制限中であっても、グリコーゲン貯蔵量を保護し、コルチゾールの過剰な上昇を防ぐために、最小限の炭水化物(5g/kg/日)を維持する必要がある。また、計量後48時間は免疫回復にとって重要。グリコーゲンと免疫細胞の回復を促進するために、計量直後に炭水化物ローディング(例えば8~10g/kg/日)を開始する。

除脂肪体重の減少を防ぎ、免疫細胞の合成に必要なアミノ酸(BCAAなど)を供給するためには、タンパク質を一定量(1.4~2.0g/kg/日)摂取することが不可欠。さらに、ビタミンC、E、亜鉛など、免疫機能に重要な微量栄養素にも注意を払う必要があり、食事からの摂取が不十分な場合はサプリメントで補う。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Rapid Weight Loss on the Immune System in Combat Sports Athletes: A Systematic Review」。〔Int J Mol Sci. 2026 Jan 3;27(1):508〕 原文はこちら(MDPI)

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スポーツ栄養Web編集部


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当サイトの「アンチ・ドーピング情報コーナー」では、サプリメントの活用と選び方、選手がドーピングから身を守るための防衛術、アンチ・ドーピングの基礎知識、最新の認証製品リストなど、現場で役立つ最新情報をお届けしています。

このたび、Chapter3「INFORMED CHOICE」「INFORMED SPORT」の製品リストに新しいアイテムが加わり情報を更新しましたのでお知らせします。

INFORMED-SPORT 追加製品

  • KAXEL model S/DIMENSIONING BODY LAB Inc.
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INFORMED-SPORTの製品リスト

INFORMED-CHOICE 追加製品

  • Active Inner Resource/大塚製薬(株)
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  • ネイチャーメイド マルチビタミン/大塚製薬(株)
  • ネイチャーメイド カルシウム・マグネシウム・亜鉛/大塚製薬(株)
  • SYNCRON KOWA COOL MODE(レモン)/興和(株)
  • ランショット(シトラス)/新田ゼラチン(株)
  • CLEVER高吸収プロテイン/(株)ネイチャーラボ
  • Vital STRONG/ビーアイシーグループ(株)
  • レピールまめ鉄/(株)feileB
  • NEXT-18 PROTEIN(ココア)/Hongo Co., Ltd.
  • inゼリー エネルギーアミノ酸/森永製菓(株)
  • inゼリー プロテイン15g/森永製菓(株)
  • inゼリー プロテイン5g/森永製菓(株)
  • inゼリー マルチビタミンカロリーゼロ/森永製菓(株)
  • inゼリー マルチミネラル/森永製菓(株)
  • inゼリー マルチビタミン/森永製菓(株)
  • inゼリー エネルギーブドウ糖/森永製菓(株)
  • inゼリー エネルギー/森永製菓(株)
  • inバー プロテイン/森永製菓(株)
  • アミノタブレット/森永製菓(株)
  • リカバリーパワープロテイン/森永製菓(株)
  • マッスルフィットプロテイン/森永製菓(株)
  • マッスルフィットプロテインプラス/森永製菓(株)
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  • ウエイトダウンプロテイン/森永製菓(株)
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INFORMED CHOICE(LGC)の製品リスト

アンチ・ドーピング情報

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筋力トレーニングの経験のない男子大学生を対象に、液体プロテイン摂取の並行介入を行うことで、筋力や筋量に上乗せ効果を期待できるとする研究結果が報告された。中国で行われた8週間の無作為化比較試験の結果であり、胸囲やベンチプレスなどでの裁断筋力の変化量に、対プラセボ(水)で有意差がみられたという。

先行研究が意外に少ない、筋トレ経験のない若年者を対象とする介入研究

アスリートにとっては筋力の強さが有利に働く場面が多くあり、アスリートのレジスタンストレーニング(resistance training;RT)の効果を高める栄養介入について、数多くの研究がされてきている。なかでも筋タンパク質の同化に必要なプロテインベースのサプリメントの有用性は、多くの知見が蓄積されている。またアスリート以外に、おもに高齢者のサルコペニアのリスク抑制という点でも、RTとタンパク質サプリの組み合わせによる介入効果が多く検討されてきている。

しかし、アスリート以外で筋肉量の不足が問題となるのは、なにも高齢者に限ったことではない。非高齢者であっても筋肉量が少ないことが、心血管代謝疾患や呼吸器疾患のリスク増大と関連していることが知られている。そのため、若年期から筋肉量を維持しておくことが、将来のそれら慢性疾患のリスク抑制につながる可能性も考えられる。今回取り上げる論文の著者らによると、それにもかかわらず若年者を対象としてRTにタンパク質サプリを上乗せすることの有用性は、これまであまり検討されていないとしている。

バイオアベイラビリティーの高い液体プロテインを用いたRCT

これを背景として著者らは、過去にRTの経験のない男子大学生を対象とする、RT単独介入とRT+液体プロテイン介入の2群間で、筋肉量や筋力に差が生じるかを無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)により検討した。

なお、液体のサプリを用いたのは、粉末や固形に比べ液体は迅速に消化・吸収され生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)が高く、RT直後の筋タンパク同化作用が亢進している時間帯に速やかに利用されるためと述べている。また、RT後には腸管粘膜障害のマーカーである腸管型脂肪酸結合タンパク(intestinal fatty acid-binding protein;I-FABP)が35%上昇するという報告があり、吸収効率を考慮してサプリの形態を選択することの意義も付記している。

筋トレ経験のない若年男子を2群に分けて8週間介入

この研究の参加者は、18~35歳でBMI 18.5~23.9のレジスタンストレーニング(RT)経験のない健康な男子大学生であり、食品アレルギーや慢性疾患、アルコール使用障害を有する人、サプリメント使用者、喫煙者などは除外された。

事前の統計学的検討から、有意性の検証に必要なサンプルサイズは各群15人と計算され、30人が募集された。体脂肪率とタンパク質摂取量(3日間〈平日2日、休日1日〉の食事記録を基に推定)の分布に差が生じないよう配慮したうえで、無作為に15人ずつの2群に分類。両群ともに週3回のRTを8週間にわたって継続してもらった。各RTセッション終了後30分以内に、1群には液体プロテイン、他の1群には水を300mL摂取させた。なお、割り付けは盲検化されなかった。

液体プロテインは600kJ(143kcal)で、タンパク質25g(カゼイン、ホエイ、コラーゲンの混合)、炭水化物6.9g、脂質0.9gのほか、14種類のビタミン・ミネラルが含まれていた。RTセッションは1回40分で、指定のジムにおいてトレーナーの監督下で行われた。セッションの10%以上(2回以上)を欠席した1人(RT単独群)は、その時点で介入を中止した。

RT+液体プロテインで胸囲と最大筋力がより大きく増大

ベースラインにおいて、BMI、体脂肪率、タンパク質摂取量に有意差はなく、また採血検査の平均値はRT単独群とサプリ上乗せ群の両群とも基準範囲にあった。エネルギー量、炭水化物、脂質、食物繊維の摂取量も同等だった。

また、介入期間中もエネルギー量、炭水化物、脂質、食物繊維の摂取量は同等だった。ただし、タンパク質、カルシウム、およびビタミンDの摂取量はサプリ上乗せ群が有意に高かった。

胸囲の変化に有意差

胸囲、ウエスト・ヒップ・上腕・大腿周囲長のうち、ウエストを除いて両条件ともに、介入後は介入前より有意に高値となっていた。ウエスト周囲長は両条件ともに有意な変化がなかった。これらのうち、胸囲については変化幅に有意差が認められ、サプリ上乗せ群のほうがより大きく変化していた(p=0.015)。

BMIや体脂肪率の変化については有意な群間差がなかった。また、下肢や上肢などの局所の筋肉量についても、介入前後の変化に有意差はなかった。

ベンチプレスとディープスクワットの最大筋力に有意差

筋力はベンチプレスとディープスクワットにより評価された。いずれも両群ともに介入によって有意に上昇していたが、上昇幅はサプリ上乗せ群のほうがより大きかった(ベンチプレスはp=0.007、ディープスクワットはp=0.018)。なお、筋持久力(反復回数)についての介入前後の変化については、ベンチプレスとディープスクワットのいずれも、群間差が非有意だった。

以上に基づき論文の結論は、「トレーニング後の液体タンパク質補給を組み合わせることで、最大筋力がより向上し、胸囲の増加も増大することが示唆された。適切なタンパク質摂取は、レジスタンストレーニング中の筋肉適応をサポートする」とまとめられている。ただし、盲検化をしていないこと、トレーニング後の炭水化物摂取は参加者の判断で自由に摂取できたことなどの限界点があり、慎重な解釈が必要と付け加えられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of an 8-week liquid protein supplementation on resistance training adaptations in untrained healthy college students」。〔PeerJ. 2026 Feb 11:14:e20778〕 原文はこちら(Informa PLC)

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スポーツ栄養Web編集部


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今回は、スペイン栄養学会が先ごろ「Nutrients」誌に掲載した、スポーツにおける栄養戦略に関する合意文書(コンセンサス ドキュメント)の一部を紹介する。結論として、すべてのアスリートに推奨可能な普遍性のある単一の食事戦略は存在しないと述べるとともに、高炭水化物食、低炭水化物食などの代表的な食事パターンについて、アスリートへの適用可能性と注意点、競技別の栄養戦略などが掲げられている。

イントロダクション

ソーシャルメディアの普及により内容を簡略化したメッセージが好まれるようになり、栄養の領域でもそのような情報の人気が高まっている。そのようなメッセージはしばしば科学的エビデンスを欠いていることが多く、適切ではない食事・栄養戦略が用いられやすくなる。その結果として必須栄養素の不足、ホルモンバランスの乱れ、身体パフォーマンスの低下、摂食障害のリスク増大といった潜在的な負の影響の懸念が高まっている。

例えば、持久系スポーツのパフォーマンスの最適化に関してエビデンスが多数ある高炭水化物食に変わり、低炭水化物食やケトジェニック食の関心が高まっている。しかしその有効性の報告は一貫性がなく議論の余地が残されている。また断続的断食は体組成や代謝に対する人気の食事パターンとなっているが、スポーツへの適用可能性は不明点が多い。

他方、スポーツ栄養学はより個別化したアプローチが重視されるように進化してきている。競技の種類、競技レベル、シーズンにおけるタイミング、アスリート個々の生理学的および心理学的特性に基づいた戦略が模索されている。さらに、食の選択に対する文化的、倫理的、環境的な配慮も要求される傾向が強くなっている。

このような背景から、アスリートにパフォーマンス向上のための普遍的な栄養戦略を推奨することは困難であり、むしろパフォーマンスや健康に負の影響を及ぼさないアプローチを示すことが求められる。以上の考え方に基づき、スペイン栄養学会は、アスリート、コーチ、栄養士、管理栄養士、医療専門家向けの参考ガイドとして、本レビューを公開した。詳細な解説が加えられているが、本稿では表形式でまとめられている以下の情報のみを紹介する。

スポーツにおける各食事戦略の概要

高炭水化物食

推奨される状況
高い解糖系の需要、迅速な回復の必要性、長時間・高強度のトレーニングセッション。持久系スポーツやチームスポーツで多い。
潜在的メリット
グリコーゲン貯蔵量を最大化し、高強度運動のパフォーマンスと回復をサポートする。
潜在的リスク
エネルギー摂取量増大の調整が適切でない場合、低強度トレーニングには不必要となる。
留意点
セッションごとの負荷にあわせた摂取量とタイミングが重要。

低炭水化物食

推奨される状況
有酸素運動の基礎トレーニング、代謝の柔軟性向上、体脂肪を減少させる段階、超長距離持久力トレーニングの準備段階。
潜在的メリット
脂質酸化と代謝の柔軟性を高める。
潜在的リスク
嫌気性運動パフォーマンスの低下、微量栄養素不足のリスク。
留意点
短期間にとどめる。高強度運動期には避ける。適応状況をモニタリングする。

低炭水化物・高脂肪食

推奨される状況
低炭水化物食と同様だが、脂質摂取量が多く代謝変化がより顕著。
潜在的メリット
脂質酸化への依存度が高まる。特定の状況下では持久力向上につながる可能性がある。
潜在的リスク
高強度運動に対する耐性の低さ、運動継続の難しさ、栄養不良。
留意点
モニタリングによる慎重な評価。

ケトジェニック食

推奨される状況
減量、特定の代謝管理または準備段階。
潜在的メリット
脂質酸化を促進し、体脂肪を減少させ、炎症を軽減する可能性がある。
潜在的リスク
高強度運動パフォーマンスの低下、消化管障害、栄養不良を惹起し得る。
留意点
短期間適用する。バイオマーカーを用いたモニタリングが必要。

断続的断食

推奨される状況
体組成の改善、代謝健康の改善。レクリエーションアスリートまたはオフシーズンに適用。
潜在的メリット
体脂肪の減少、代謝マーカーの改善、インスリン感受性の向上。
潜在的リスク
除脂肪体重の減少、高負荷トレーニングに対する耐性の低下。
留意点
個々の状況に合わせて調整。競技期間中や高強度トレーニング期間中は避ける。

ベジタリアン/ビーガン食

推奨される状況
心血管の健康、倫理面・持続可能性の動機がある場合、体系的な長期計画。
潜在的メリット
パフォーマンスとの両立性が高く、心血管疾患のリスクを低減する。
潜在的リスク
ビタミンB12、鉄分、ω3脂肪酸の不足。エネルギー密度の低さ。継続可能性はさまざま。
留意点
高品質のタンパク質を摂取し、主要栄養素摂取量をモニタリング。必要に応じてサプリメントを使用。

旧石器時代食(パレオダイエット)

推奨される状況
体組成の改善、血糖管理。オフシーズンに適用。
潜在的メリット
栄養価の高い食品。血糖値のコントロールをサポートする。
潜在的リスク
炭水化物摂取量、カルシウム、ビタミンDの不足。
留意点
高強度トレーニング期間中は避ける。個々の状況に合わせて計画を立てる。

炭水化物摂取量の周期的調整(carbohydrate periodization)

推奨される状況
セッション間で炭水化物の利用可能性を調節することにより、代謝適応を促進する。
潜在的メリット
代謝効率と基質利用の柔軟性を向上させる。
潜在的リスク
複雑であり、誤った方法では過度の疲労を引き起こす恐れ。
留意点
特定のセッション(低負荷トレーニング日)で使用し、高負荷トレーニング日と交互に使用する。

スポーツカテゴリーごとの各食事戦略の適用可能性

持久系競技

高炭水化物食
とくに推奨される。グリコーゲンを最大限に活用し、長時間にわたる高強度運動をサポートする。
低炭水化物食
基礎トレーニングや脂肪燃焼促進には有効だが、競技期には適していない。
低炭水化物・高脂肪食
超長距離競技における潜在的なメリット。長時間の競技中に炭水化物への依存度を低減する。
ケトジェニック食
極限の持久力トレーニングや減量期には効果的だが、競技会直前には推奨されない。
断続的断食
低強度フェーズでの使用が可能。エネルギー供給状況をモニタリングする。
ベジタリアン/ビーガン食
適切なエネルギーと栄養素の摂取計画を立てれば適しており、心血管系の健康をサポートする。
旧石器時代食(パレオダイエット)
血糖コントロールと体組成の改善に効果があるが、高強度の運動には炭水化物の摂取量が不十分な場合がある。
炭水化物摂取量の周期的調整(carbohydrate periodization)
代謝適応を促進する強力なエビデンスがあり、幅広いスポーツカテゴリーに適用可能。

パワー系競技

高炭水化物食
高負荷トレーニングの日には有効だが、最大努力時にはそれほど重要ではない。
低炭水化物食
効果は限定的であり、高強度または瞬発的なパワーを阻害する可能性がある。
低炭水化物・高脂肪食
推奨されない。嫌気性代謝とリン酸分解酵素系に悪影響を及ぼす。
ケトジェニック食
パワーが低下するため、推奨されない。
断続的断食
筋力向上効果の低下や回復力の低下のリスク。
ベジタリアン/ビーガン食
筋力トレーニングに適用は可能だが、タンパク質の品質と鉄分・ビタミンB12の摂取量が管理されている必要がある。
旧石器時代食
オフシーズン中は許容可能だが、パワー系トレーニングに必要なグリコーゲン供給量が不足する可能性がある。
炭水化物摂取量の周期的調整
トレーニング刺激を最適化するのに役立つ。極めて高強度のトレーニングを行う日は、高炭水化物摂取とする。

団体競技

高炭水化物食
試合日や、繰り返しスプリントが必要となる過密なスケジュールに推奨される。
低炭水化物食
加速やスプリントは代謝コストが高いため、推奨されない。
低炭水化物・高脂肪食
断続的な高強度負荷のため、フィット感が良くない。
ケトジェニック食
不適切。高強度パフォーマンスを低下させる。
断続的断食
長時間の絶食を伴う午後/夕方のセッションでは、パフォーマンスが低下する可能性がある。
ベジタリアン/ビーガン食
エネルギー摂取量がトレーニングの要求を満たしている場合には適切。
旧石器時代食
炭水化物摂取が制限されるため、シーズン中は推奨されない。
炭水化物摂取量の周期的調整
高負荷と低負荷を交互に行うトレーニングに最適。

スプリント競技

高炭水化物食
反復スプリントパフォーマンスをサポートし、試合前の準備に役立つ。
低炭水化物食
一般的に、スプリント競技には対応していない。
低炭水化物・高脂肪食
スプリントランナーには禁忌。
ケトジェニック食
禁忌。最大パワーとスプリント速度を低下させる。
断続的断食
推奨されない。エネルギー不足は神経筋機能に悪影響を及ぼす。
ベジタリアン/ビーガン食
タンパク質摂取のタイミングを最適化すれば有効。クレアチンやβ-アラニンのサプリメント摂取を推奨。
旧石器時代食
スプリント競技のエネルギー補給には通常不十分。
炭水化物摂取量の周期的調整
スプリントセッション前後のグリコーゲン最適化をサポートする。

体重別階級競技

高炭水化物食
慎重なエネルギー管理が必要であり、期間設定が適切でないと体重が増加する可能性がある。
低炭水化物食
短期的な減量に役立つ可能性があるが、疲労を注意深く観察する。
低炭水化物・高脂肪食
減量期に役立つ可能性があるが、パフォーマンス低下のリスクもある。
ケトジェニック食
短期間の急速な減量を目的とする場合は、専門家の監督下で適用可能。
断続的断食
専門家の監督下であれば、短期間の減量期間に検討される可能性がある。
ベジタリアン/ビーガン食
個別プランニングに適しており、タンパク質摂取に留意する。
旧石器時代食
減量期に有効。カルシウムとビタミンDの摂取量を確保。
炭水化物摂取量の周期的調整
体重目標を維持しながら、柔軟なエネルギー供給を可能にする。

審美系競技

高炭水化物食
摂取量を適切に管理すれば適用可能だが、手法を誤るとエネルギー過剰摂取のリスクがある。
低炭水化物食
トレーニングの質を低下させ、自覚的運動強度を高める可能性がある。
低炭水化物・高脂肪食
高強度、高跳躍、高出力が求められるため、適していない。
ケトジェニック食
疲労感を増大させ、除脂肪体重を減少させる可能性があるため、推奨されない。
断続的断食
エネルギー供給不足およびRED-S(スポーツにおける相対的エネルギー不足)のリスクがあるため、注意が必要。
ベジタリアン/ビーガン食
一般的な選択肢の一つ。鉄分、ビタミンB12、ω3脂肪酸のモニタリングが必要。
旧石器時代食
体脂肪を減らすという目標達成に役立つ可能性があるが、栄養不良のリスクもある。
炭水化物摂取量の周期的調整
エネルギー供給が確保されている場合に適している。

文献情報

原題のタイトルは、「Consensus Document of the Spanish Nutrition Society (SEÑ) on Nutritional Strategies in Sports」。〔Nutrients. 2025 Dec 11;17(24):3862〕 原文はこちら(MDPI)

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女性アスリートの月経中の怪我の発生率は非月経期と有意差がないものの、受傷後の試合やトレーニングからの離脱期間が長く、重症度は高い可能性があるとする研究結果が報告された。スペインの女子サッカーの最上位リーグであるリーガFに所属するチームの選手を、4シーズンにわたり継続的に観察した結果であり、著者らは女性アスリートの月経周期をモニタリングすることの重要性を強調している。

月経は女性アスリートの受傷リスクを高めるのか?

月経は1周期あたり4~8日続く子宮内膜の出血を特徴とし、1日あたり約1mgの鉄が失われる。アスリートの場合、鉄の喪失に伴う易疲労、回復の遅延、および月経症状により、怪我のリスクが高まると考えられ、実際にそのことを示した複数の研究報告がある。しかしその一方で、月経と受傷リスクとの間に有意な関連はみられないとする報告もあり、結論は得られていない。

これを背景に今回取り上げる論文の著者らは、スペインのリーガF所属チームの選手を、2019/20~2022/23の4シーズンにわたり継続的に観察し、月経と受傷リスクとの関連の有無を検討した。リーガF(旧:リーガ・イベルドローラ)は同国内の最上位リーグであり、本研究の対象としたチームは欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグで、前記の期間に優勝を2度果たしている。

研究参加選手は合計33人(25.72±4.27歳)で、複合ホルモン避妊薬を使用している選手、無月経の選手は除外された。19/20シーズンは17人、20/21は20人、21/22は18人、22/23は22人であり、11人は4シーズンすべてに参加した。

発生率は有意差がないが、戦線離脱期間は月経中に発生した怪我のほうが有意に長い

月経の状態は記録アプリを用いて自己申告に基づき判断された。月経周期は平均31日であり、月経期間(卵胞期初期の出血のある期間)は4日であり、臨床的に正常の範囲だった。

怪我の発生件数と発生率の比較

4シーズンにわたる観察期間中に、合計852回の月経周期が記録された。また4シーズンで80件の怪我が発生していた。

月経期と非月経期での比較

そのうち69件(86.2%)は非月経期に発生し、月経期に発生したのは11件(13.7%)だった。1,000時間あたりの怪我の発生率は、6.42件(95%CI;5.09~7.99)であり、非月経期は6.48件(5.11~8.21)、月経期5.36件(2.97~9.69)であって、有意差はなかった(p=0.5519)。

試合中とトレーニング中とでの比較

なお、全体の18件(22.5%)は試合中に発生し、62件(77.5%)はトレーニング中に発生していた。1,000時間あたりの怪我の発生率としてみると、同順に5.94件、6.41件であり有意差はなかった(p=0.7762)。

怪我の重症度の比較

月経期と非月経期での比較

次に、試合やトレーニングからの離脱期間に着目すると、1,000時間あたり283日(274~293)であり、非月経期に発生した怪我では206日(197~215)、月経期に発生した怪我では684日であって、月経期に発生した怪我のほうが有意に長かった(p=0.0027)。

試合中とトレーニング中とでの比較

なお、試合中に発生した怪我での離脱期間は261日、トレーニング中に発生した怪我では290日であり、有意差はなかった(p=0.2260)。

女性アスリートの月経周期を把握しトレーニング等を考慮することが重要

著者は本研究の限界点として、受傷リスクに影響を及ぼすことが知られている、睡眠の質、栄養状態などを把握していないこと、観察期間の初期(主に2019/20シーズン)は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響を受けたために受傷リスクが変化した可能性のあること、および、4シーズンにわたる観察期間中にコーチや選手が入れ替わり、サンプル内に異質性が生じている可能性があることなどを挙げている。

そのうえで得られた結果を、「エリート女子サッカー選手を対象とした4シーズンにわたる縦断研究で、月経期と非月経期の怪我の発生率は類似していたものの、月経期に発生した怪我はその負担が大きく重症度が有意に高かった。これらは、月経が怪我の可能性を高めるわけではないが、怪我が発生した場合により深刻な結果につながる可能性があることを示唆している」と総括。また、「本研究は、怪我の予防戦略においてアスリート個々の月経周期を把握すること、そしてトレーニング負荷、疲労、症状の重症度といったホルモン因子と非ホルモン因子の双方を考慮することの重要性を強調するものである」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Menstruation and injury occurrence; a four season observational study in elite female football players」。〔Front Sports Act Living. 2025 Dec 16:7:1665482〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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地球温暖化の主要な原因とされている二酸化炭素(CO2)の増加が、ほうれん草とケールの収穫や栄養価にどのような変化をもたらすかを、これまでの研究のデータを統合したメタ解析により検討した結果が報告された。CO2の増加はほうれん草とケールの収穫を増やすこと、その反面で重要な栄養素の含有量を低下させることが示されている。

微量栄養素の供給源として重要なほうれん草とケール

気候変動、とくに地球の温暖化が、食料供給に前例のない負荷をかけていることがしばしば報告されている。温暖化のおもな原因の一つはCO2の増加であって、CO2の増加が世界の人々の主要なエネルギー源であり、かつタンパク源とされる畜産物の飼料である穀物や豆類の収量に及ぼす影響については、すでに複数の報告がある。

一方、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素の供給源である野菜類に及ぼす影響は十分研究されていない。野菜類の中でも、ほうれん草は各種ビタミンに加えて鉄、マグネシウムなどの必須ミネラルが豊富であり、アスリートの高い微量栄養素需要を満たすのに適している。ケールもまた各種ビタミンとミネラルが豊富な野菜として知られている。

今回紹介する論文は、これら2種類の野菜の収量、バイオマス、栄養価が、CO2濃度の上昇に伴いどのように変化するかを、既報論文のシステマティックレビューとメタ解析により検討した結果を示したもの。

システマティックレビューとメタ解析でCO2濃度上昇の影響を予測

システマティックレビューには、PubMed、Scopus、ScienceDirect、Web of Science Core Collection、Google Scholarなど、複数の文献データベースを用いた。検索は2024年3月12日までに行った。

包括条件は、ほうれん草とケールに対する高濃度CO2(650~3,000ppmを超える)環境で生育させることの影響を、比較対象条件(CO2濃度が400~450ppm程度)を設けて検討し、査読システムのあるジャーナルに収載されている論文として、報告された時期は制限しなかった。対照条件が設けられていない研究、高濃度CO2曝露以外の負荷(高温や干ばつなど)の影響も同時に評価していて高濃度CO2曝露のみの影響を解析に用いることができない研究、著者に複数回連絡しても全文または解析に必要なデータを入手できなかった研究などは除外した。

一次検索で872報がヒットし、重複削除後の734報をタイトルと要約に基づくスクリーニングにより42報に絞り込み、全文精査によって13件の研究の報告を抽出した。

抽出された研究の特徴

抽出された研究の多くは2000年代に入ってから報告されており、とくに2020年代以降に増加していた。

13件の研究で合計346項目の効果量が検討されており、外れ値を含む項目を除外した339項目をメタ解析の対象とした。多くは米国の報告(134項目/CO2濃度は720~60,000ppm)であり、次いで韓国(112項目/700~1,600ppm)、中国(43項目/700~800ppm)が続き、それらの国では複数のCO2濃度で検討されていた。それに対して、インド(33項目/650ppm)、イタリア(11項目/800ppm)、日本(7項目/800ppm)、カナダ(6項目/1,000ppm)は単一の高濃度CO2で検討していた。

生育期間は14~80日に分布しており、最頻値は28日で170項目が検討されていた。評価されていた項目の多くは収量またはバイオマスであり約4割(39%)を占めた。そのほかに、窒素化合物(18%)、ミネラル(14%)、光合成成分(10%)、植物性化合物(7%)、ビタミン(6%)、炭水化物(5%)が調査されていた。全体として、8割(79%)はケールを調査し、ほうれん草に関する調査は2割(19%)だった。

ほうれん草はCO2濃度上昇に伴い収穫がより大きく増えるが、栄養価がより大きく低下

CO2濃度上昇で収量とバイオマスは増加する

メタ解析の結果、CO2濃度の上昇はほうれん草とケールの成長と収量を増加させることが示された(効果量〈Hedgesのg〉=1.04)。CO2濃度の上昇のバイオマスに対する影響をほうれん草とケールを個別にみると、ほうれん草(g=1.21)のほうがケール(g=0.97)よりやや大きかった。

CO2濃度上昇で栄養素含有量は低下する

メタ解析の結果、CO2濃度の上昇は、ほうれん草(g=-0.76)とケール(g=-0.61)ともに、重要な栄養素の含有量を減少させることがわかった。タンパク質はほうれん草とケールの両方で減少し、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルはほうれん草でより顕著に減少した。

ほうれん草はケールよりもCO2濃度の上昇に伴う成長の加速が大きいものの、栄養素の損失もより大きかった。

CO2上昇が野菜の栄養素を希釈させ、欠乏症等のリスクを押し上げる

著者らは、「このような変化はこれらの野菜を必須ビタミンや必須ミネラルの供給源としている多くの人々に影響を与える可能性がある。CO2濃度の上昇が今後も続くならば、野菜類に含まれる栄養素の希釈が微量栄養素の欠乏や関連疾患リスク上昇などの健康問題につながるだろう」と述べている。また、「明らかになった結果は、気候変動下における食料需要を満たしつつ栄養価を維持するための農業戦略が必要であることを強調するものだ。本研究は、政策立案者、農業従事者、および科学者が、公衆衛生を守る持続可能な食料システムを計画する際に有用なエビデンスである」と付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Elevated CO2 on Yield and Nutritional Quality of Kale and Spinach: A Meta-Analysis」。〔Biology (Basel). 2026 Jan 15;15(2):152〕 原文はこちら(MDPI)

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プロバイオティクスが運動能力にプラスの効果を発揮する可能性のあることが、システマティックレビューとベイズメタ解析の結果として示された。中国の研究者らによる研究であり、「Frontiers in Nutrition」に論文が掲載された。とくに有酸素持久力への有効性が高いと考えられるという。

プロバイオティクスのスポーツパフォーマンスに対する有効性を探る

近年、プロバイオティクスの研究が精力的に行われており、整腸作用にとどまらず、生活習慣病やがん、メンタルヘルス関連疾患など、幅広い疾患の予防や治療に役立つ可能性が報告されてきており、さらにスポーツ栄養の領域での研究も進められている。

例えば、国際スポーツ栄養学会(International Society of Sports Nutrition;ISSN)はポジションスタンドとして、「特定のプロバイオティクス株がエネルギー代謝を調節し、栄養吸収を促進し、酸化ストレスと炎症を制御することで、パフォーマンス、とくに筋力と持久力を向上させる可能性がある」と述べている。ただし、健康な成人におけるパフォーマンス向上に関する知見は依然として一貫性がない。また、観察されているパフォーマンス向上効果も、プロバイオティクスによるエネルギーシステムや筋肉機能への直接的な働きかけというより、消化管機能や免疫システムの調節を介したものである可能性が考えられる。

加えて、これまでの研究によるエビデンスをシステマティックに統合し評価したメタ解析は実施されていない。これらを背景として、今回紹介する研究では、健康な被験者を対象にプロバイオティクスの影響を、持久力、筋力、スピードという視点で評価し、至適用量・菌株を探る検討を行っている。

文献検索について

PubMed、Embase、Web of Science Core Collection、Scopusなど、6種類の文献データベースを用いて、それぞれの開始時から2025年7月1日までに収載された論文を対象とする検索を行った。包括基準は、アスリート、健康な成人、高齢者を対象に、プロバイオティクスを経口投与し、対プラセボで運動能力を比較した無作為化比較試験(並行群間試験またはクロスオーバー試験)であり、英語で発表されている原著論文とした。除外基準は、疾患有病者対象の研究、他の介入を同時に行っておりプロバイオティクス単独の影響を分離して解析することのできない研究、経口以外の投与方法による研究、レビュー、エディトリアル、レター、学会発表、学位論文など。

一次検索で4,226報がヒットし、重複削除後の3,033報を2名の研究者が独立してタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は他の2名の研究者の討議により解決された。86報を全文精査の対象とし、最終的に21件の研究報告を適格と判断した。

抽出された研究

21件の研究の63.6%はアジア諸国から報告されており、次いで米国18.2%、欧州13.6%、オセアニア4.5%だった。

研究参加者数は合計685人であり、12件はアスリート対象、8件は非アスリート成人対象、1件は高齢者対象に行っていた。性別については、9件は男性のみ、2件は女性のみ、9件は男性と女性を含めており、1件は性別の情報が記されていなかった。

介入に用いたプロバイオティクスは、12件では単一の菌株、9件は複数の菌株であり、16件はカプセル、3件は飲料、2件はヨーグルトとして投与していた。

また、13件の研究はなんらかの金銭的サポートを受けたことを開示し、8件はサポートを受けていないことを宣言していた。

プロバイオティクスは有酸素持久力に対する有意な効果を示す

21件のデータを統合したベイズメタ解析の結果、プロバイオティクスの摂取は運動パフォーマンスを小~中程度改善する可能性が示唆された(標準化平均差〈SMD〉0.38、95%信用区間〈CrI〉0.17~0.60)。 評価指標別の解析:

各研究で評価されていた指標に基づき、筋力、耐久力、持久力、有酸素持久力、嫌気性持久力、スプリントなどに分類したうえで解析すると、持久力(SMD0.74〈95%CrI;0.39~1.10〉)と有酸素持久力(自転車エルゴメーターによるVO2maxがSMD2.21〈0.64~3.68〉)という2項目において有意な改善が示唆された。

対象集団別の解析

研究対象集団別に解析すると、アスリート(SMD0.38〈0.08~0.69〉)および成人(SMD 0.46〈0.11~0.81〉)において有意な改善が示唆された。

菌株や投与量別の解析

介入に用いられた菌株別の解析では、Lactobacillus plantarumで有意な改善が示唆された(SMD0.82〈0.12~1.50〉)。また、単一菌株(SMD0.33〈0.04~0.62〉)と複数菌株(SMD0.45〈0.12~0.79〉)のいずれも有効性が示された。用量別の解析では、中等量のみが有意な効果を示した(SMD0.38〈0.14~0.62〉)。

金銭的サポートを受けた研究と受けていない研究とに分類した解析の結果、有意差は認められなかった。

この結果に基づき論文の結論は、「プロバイオティクスの摂取は、健康な成人の運動能力をわずかではあるが、実質的に意義のある程度の上昇と関連しており、単一菌株製品と複数菌株製品の両方で効果が認められ、中等量の摂取で最も一貫した効果が示された」とまとめられている。

同時にまた、「現在のエビデンスの基盤は、サンプルサイズの小ささ、介入期間の短さ、投与量のばらつき、標準化されていないアウトカム指標によって制限されており、精度と一般化可能性が制約される。得られた知見をスポーツ栄養に適した実践的なガイダンスに変換するために、今後の研究は、多施設共同、盲検化、菌株の投与法に関する正確な報告、標準化されたテストプロトコルで実施され、かつ事前に規定された指標での評価が求められる」と付言している。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of probiotic intake on athletic ability in healthy people: a systematic review and Bayesian meta-analysis」。〔Front Nutr. 2026 Jan 30:13:1731627〕 原文はこちら(Frontiers Media)

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肥満者を対象として、夕食での栄養素・食品摂取状況とその晩の睡眠行動との関連、および、睡眠行動と翌朝の朝食の栄養素・食品摂取状況との関連を解析した結果が米国から報告された。夕食時の炭水化物、糖類、青魚、オリーブオイルの摂取量が多いほど、その晩の睡眠パラメータが良好となり、摂取エネルギー量、脂質、コレステロール、タンパク質、アルコール、赤身肉、フライドポテトの摂取量が多いほど、その晩の睡眠パラメータが不良であって、睡眠時間が長いほど翌朝の朝食の食事の質が高いといった関連がみられたという。

自由生活下での夕食―睡眠―朝食の関連を検討

肥満者には非肥満者と異なる食事パターンがみられることが報告されている。また、食事パターンと睡眠行動との間にも関連のあることが報告されている。ただし、肥満者の食事と睡眠の関連を同時に調査した研究は多くない。この研究ギャップを埋めるために、今回紹介する論文の研究では、肥満者の夕食とその後の睡眠、および朝食という一連の流れに有意な関連があるか否かを検討した。

研究参加者は、新聞広告または著者らの所属大学・医療機関を通じて募集された。適格基準は、BMI 30~40で過去2カ月にわたり体重が安定していて(変動幅が3%以内)、習慣的な摂食の時間帯が1日のうち11時間以上あることとされ、除外基準は、減量中、心血管代謝疾患・睡眠障害・摂食障害の既往、運動を妨げる状態、夜間またはシフト勤務、妊婦・授乳婦などとされていた。

研究参加者187人に2週間にわたり加速度計を身に着けて生活してもらうことで、睡眠行動を把握。食事摂取状況と摂取タイミングについては非連続の2日または1日に摂取したものを栄養士のインタビュー調査により把握した。

睡眠行動に関するデータが不十分(観察期間の70%未満)であった参加者を除外し、146人を解析対象とした。主な特徴は、年齢が中央値49歳(四分位範囲42~55)、男性52.1%、BMI中央値34.6(同31.6~37.4)であり、夕食と睡眠行動の関連について178件、睡眠行動と朝食との関連について180件のデータが取得された。

夕食とその晩の睡眠との関連

夕食での栄養素摂取量とその晩の睡眠行動の関連を、年齢、性別、BMI、身体活動などの交絡因子で調整して検討した結果、以下の関連が示された。

夕食の栄養素と睡眠の関連

夕食の摂取エネルギー量、タンパク質・脂質・飽和脂肪・多価不飽和脂肪・コレステロール・アルコール摂取量は、入眠時刻と相関が認めらた(すべてρ≧0.22、p≦0.036)。炭水化物と糖類の摂取量は総睡眠時間と正の相関を示した(いずれもρ≧0.16、p≦0.034)。飽和脂肪の摂取量、および、炭水化物と糖類の摂取量の比は、睡眠時間と負の相関があった(いずれもρ≧-0.15、p≦0.047)。

夕食時の食品と睡眠の関連

夕食時の青魚の摂取は睡眠効率と正の相関があり(ρ=0.16、p=0.034)、中途覚醒とは負の相関があった(ρ=-0.18、p=0.019)。一方、フライドポテトの摂取は睡眠効率と負の相関があった(ρ=-0.22、p=0.003)。

夕食時のオリーブオイルの摂取は起床時刻と負の相関があった(ρ=-0.15、p=0.042)。一方、豚肉、牛肉、羊肉などの摂取は睡眠時間と負の相関があった(ρ=-0.15、p=0.048)。

睡眠行動と翌朝の朝食との関連

前記同様に交絡因子を調整後の解析で、睡眠行動と翌朝の朝食との間に以下の関連が示された。

睡眠時間は、朝食の炭水化物、食物繊維、一価不飽和脂肪、炭水化物と糖質の比、およびオリーブオイルの摂取量と正の相関があった(すべてρ≧0.16、p≦0.030)。反対に、睡眠時間は朝食のコレステロールおよび飽和脂肪の摂取量と負の相関があった(いずれもρ≧-0.16、p≦0.034)。

睡眠の継続性(睡眠効率が高いこと、および/または中途覚醒が少ないこと)は、朝食の脂質、飽和脂肪、一価不飽和脂肪、および多価不飽和脂肪の摂取量と正の相関があり、炭水化物、およびジュースの摂取量とは負の相関があった(すべてp≦0.033)。

入眠時刻は、摂取エネルギー量、炭水化物、食物繊維、タンパク質と正の相関があり、飽和脂肪の摂取量とは負の相関があった。

夕食と睡眠との関連より、睡眠と朝食との関連がより強固

本稿では触れなかったが、本研究では対象者を代謝的に健康な肥満とそうでない肥満に分類したうえでの解析、および、夕食・朝食の摂取時間帯が速いか遅いかで分類したうえでの解析も行われている。

それら一連の結果を基に、論文の結論は、「自由生活下の肥満成人において、夕食の食事摂取量とその後の睡眠の質との関連性は弱い一方、睡眠の質はその後の朝食の食事摂取量と関連していることが示された。この相互の関係は、この集団における代謝状態、食事のタイミング、睡眠時間によって変化する可能性がある。これらは今後の肥満管理のための介入に有用な知見となり得る」とされている。

文献情報

原題のタイトルは、「From plate to pillow, and vice versa: diet-sleep dynamics in free-living adults with obesity」。〔Eur J Nutr. 2026 Feb 16;65(2):63〕 原文はこちら(Springer Nature)

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NBAが創設された1946年以降の全選手の死亡原因を調査した結果が報告された。傾向としては米国の一般男性と同様に、癌死と心血管死が多いことが示されたが、アフリカ系の選手は欧州系の選手より死亡リスクが高い傾向があることや、身長が高いほど癌死・心血管死のリスクが高いことなども明らかにされている。

競合リスクを考慮してNBA選手の死因を分析

一般に健康的と考えられることの多いアスリート集団の死因について、それが一般人口の傾向と異なるのか否かなどを明らかにすることが公衆衛生戦略において重要とされ、医学研究の的とされてきている。そのような観点から、米国で最も人気の高いスポーツである男子バスケットボールのプロリーグNBA(National Basketball Association)の選手を含む、エリートアスリートの死因に関する研究報告が既に存在する。ただしその研究では、競合リスクが考慮されていないこと、死因に関する情報をオンラインソースから得ており正確性が不足している可能性のあることなどが指摘される。

これを背景として今回紹介する論文の研究では、元NBA選手および現役のNBA選手全員を対象とし、死亡ケースの死因を詳細に調査したうえで、競合リスクを考慮した解析を行った。なお、死因における競合リスクとは、先に発生したある原因による死亡が、その後に発生する可能性のあったほかの原因による死亡の評価を妨げるという関係を指す。

1946年のNBA創設以来、全選手の死因を追跡

解析の対象は、1946年にNBAが創設されて以来、2019年7月までにNBAでプレーした全選手4,374人。なお、1967~1976年に存在したABA(American Basketball Association)のみでプレーした選手は解析から除外したが、NBAとABAの両方でプレーした選手は含めた。

選手の死亡に関する情報は、NBA関連の情報サイト、新聞記事のデータベース、オンラインサイトで確認し、信頼に足ると判断される死因が明らかになった場合はその情報を採用した。死因に関する情報が疑わしい場合は、死因の特定は不能と扱った。

2名の研究者が独立して、癌死、心血管死(心筋梗塞、脳卒中、肺塞栓症、心不全など)、外因性死亡(外傷、転倒、暴行、精神活性物質による障害、自傷、自殺、火災、溺死など)、特発性(死因が不明確なもので、突然死を含む)、その他(死因を特定できたもの)、という五つのカテゴリーに分類。複数のカテゴリーに該当する場合、より主要な死因と考えられるカテゴリーに分類した。研究者間で分類の判定の意見が一致しない場合、討議により解決した。

身長と人種/民族による死因別死亡リスクの差が明らかに

2019年7月までに、4,374人の19.8%にあたる864人が死亡していた。死因のカテゴリーは特発性が411人(47.5%)と最も多く、次いで心血管死が156人(18.1%)、癌死が148人(17.1%)であり、外因性死亡は61人(7.1%)で、その他(死因を特定できたもの)が88人(10.2%)だった。

死亡時年齢別に傾向をみると、60歳以降では癌死と心血管死が主流となり、これら二つの死因は95歳までの死因の6割以上を占めていた。

アフリカ系の選手は心血管死リスクが高い

アフリカ系選手と欧州系選手に二分しCox比例ハザードモデルにて死因別リスクを比較すると、アフリカ系選手は年齢の影響を調整後も心血管死のリスクが有意に高いことがわかった(ハザード比〈HR〉1.69〈95%CI;1.17~2.44〉)。癌死、外因性死亡のリスクについてもアフリカ系選手のほうが高い傾向にあったが有意ではなかった。

身長が高い選手は死亡リスクが高い

次に、身長と死因別死亡リスクとの関連をみると、身長が高い選手ほど年齢の影響を調整後も死亡リスクが高い傾向が認められた。とくに、癌死(HR1.102〈1.013~1.2〉)と心血管死(HR1.13〈1.04~1.23〉)については、身長が5cm高いごとの比較で有意なリスク差が観察された。外因性死亡のリスクについてもその傾向がみられたが有意ではなかった。

より最近にプレーしていた選手ほど死亡リスクが低い

続いてNBAでプレーしていた時期と死亡リスクとの関連が検討された。結果は事前の予測どおり、より最近になるまで現役であった選手は年齢の影響を調整後も、より古い時代にプレーしていた選手よりも死亡リスクが低く、癌死、心血管死、外因性死亡、および、その他(死因を特定できたもの)という四つの死因すべてにおいて、有意差が観察された。

アスリートの身長を考慮した、引退後も含めた健康介入が必要

以上の結果に基づき著者らは、「身長の高いNBA選手は心血管疾患と癌による死亡リスクが高いことが明らかになった。この知見は、このエリートアスリート集団における死亡パターンに関する新たな洞察を提供し、身長と人種/民族を考慮し個別化された健康介入の必要性を強調するものだ。この点は、選手の現役時代だけでなく、引退後においても同様である」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Causes of death in NBA players: a competing risks analysis」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2026 Jan 30;12(1):e002917〕 原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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公益財団法人日本アンチ・ドーピング機構(Japan Anti-Doping Agency;JADA)は、4月1日に一部改定された「検査及びドーピング調査に関する国際基準」を公開した。2026年の改定箇所は、Annex DおよびAnnex Iであり、それ以外については変更ないという。

ここでは、「検査及びドーピング調査に関する国際基準(ISTI)2026年の改定ポイント」のみ紹介する。その他の変更や詳細については下記リンク先を参照のこと。

(出典:JADA)

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味の素株式会社が運営する栄養・食の情報サイト「あじこらぼ」は、味覚教育に活用できる「5基本味体験キット」の実践事例を紹介する「Ajico Report Vol.14」を公開しました。製菓専門学校と中学校での具体的な授業事例が紹介されており、体験型の学びを通じて味覚理解を深める取り組みとして注目されています。

本レポートでは、甘味・塩味・酸味・苦味・うま味の「5基本味」を軸に、座学と体験を組み合わせた授業設計が紹介されています。味の感じ方を可視化し認識することで、単なる知識習得にとどまらない深い理解へとつなげている点が特徴です。

Ajico Report Vol.14へ

「5基本味体験キット」は「あじこらぼ」で無料公開

今回の事例からは、5基本味を単体で学ぶだけでなく、味の「組み合わせ」を実感することで、より実践的な学びにつながることが示されています。とくに、味覚を数値化したり可視化するプロセスは、食育だけでなく商品開発や栄養教育にも応用可能と考えられます。

「あじこらぼ」では、「5基本味体験キット」を授業やイベントで活用するためのマニュアルやスライド、ワークシートなどを無料で公開しています。教育現場や食育活動でぜひご活用ください!

「5基本味体験キット」の詳細はこちら

Ajico Report Vol.14へ

【あじこらぼ】Ajico Report&Ajico News バックナンバー

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スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)に対する薬物療法と非薬物療法の影響を、システマティックレビューとメタ解析により比較検討した研究論文を紹介する。英バーミンガム大学の研究者によるもので、REDsに対する初期対応としては非薬物療法が支持され、薬物療法では骨密度に対して限定的だが有望なエビデンスがみられるという。

REDsの治療に関する現時点の知見をシステマティックレビューで総括

REDs(relative energy deficiency in sport)は、「アスリートが問題のある(長期的または重度の)利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)に曝露することで、生理学的・心理学的な機能の低下を来す症候群」とされ、比較的近年になり提唱され研究が進められている臨床モデル。REDsにより、生殖機能、筋骨格の健康、免疫、グリコーゲン合成、心血管系への悪影響が生じ、それらが相乗的に進行することがある。またアスリートのキャリアを阻害する怪我のリスクの上昇、スポーツパフォーマンスの低下につながり得る。

REDsの蔓延と深刻な健康への影響の理解の深まりとともに、効果的な管理・治療戦略の確立が模索されている。現時点では非薬理学的な治療が要となっており、とくにREDsの基盤にあるLEAという問題に対処することに重点が置かれている。一方、非薬物療法の効果が十分でない、または緊急性のある場合は薬物療法が検討される。ただし、いずれもエビデンスが確立していない。

以上を背景として今回取り上げる論文の研究では、システマティックレビューとメタ解析によりこのギャップを埋めることを試みている。

文献検索について

システマティックレビューとメタ解析のための優先レポート項目(PRISMA)に準拠して、CINAHL、MEDLINE、SportDiscus、ERIC、Embaseという五つの文献データベースを用いた検索が行われた。各データベースの開始から2025年7月までに収載された文献を対象とした。包括基準は、エリートまたはレクリエーションレベルのアスリート、および活発な身体活動を行っている女性のREDsに対する介入を行った研究とした。男性対象の研究は報告数が限られていることから除外した。また、介入を行っていない横断的デザインによる研究や、学会報告、学位論文、レビュー、エディトリアルなども除外した。言語については制限しなかったが、英語以外の文献は翻訳後に理解が困難な場合は除外した。

ヒットした文献の重複削除後、182報を2名の研究者がタイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は別の研究者との討議により解決した。32報を全文精査し、最終的に19件の研究報告を適格と判断した。

解析対象研究の特徴

19件の研究の参加者数は合計759人で、年齢は解析可能な研究(12件)の平均が20.9歳だった。アスリート対象研究が12件、活動的な女性対象の研究が5件であり、その他は分類されなかった。

非薬物療介入研究は15件であり、アスリート対象が9件、活動的女性対象が5件、非分類対象が1件だった。薬物療法介入は4件で、アスリート対象が3件、バレイダンサー対象が1件だった。なお、アスリートの競技としてはランニングが最多で、次いで自転車だったが、複数の競技アスリートが含まれており、全体として競技別参加者数の算出は困難だった。

国別では米国からの報告が最多で12件を占め(非薬物介入10件、薬物介入2件)、次いでドイツが3件(すべて非薬物介入)だった。

介入にかかわったスタッフの大半は栄養士

評価されていた主な臨床項目は無月経であり、そのほかに体脂肪率、エネルギー可用性(energy availability;EA)、関連性のあるバイオマーカーが評価されていた。非薬物介入の手段は、摂取エネルギー量の増加、食事・栄養カウンセリングなどであった。

介入に関与したスタッフの多くは栄養士であり、非薬物介入では15件中12件(80%)、薬物介入でも4件中1件(25%)に栄養士が中心的に関与していた。非薬物療法の介入期間に関するデータを入手できた12件の研究において、その期間は平均28.3±15.8週であった。

REDsの非薬物療法による介入効果

非薬物療法を評価した研究の中で、最も頻繁に報告された指標は、月経機能の回復(8件)、エネルギー利用可能性(EA)の改善(5件)、体組成の変化(7件)、関連バイオマーカーの変化(9件)だった。

月経機能の回復

8件のうち7件では、統計的に有意な月経機能改善が報告され、推定効果量は大きかった(0.8~1.2)。この8件以外の1件の症例解析では統計分析は行われていなかったが、臨床的に意義のある回復が認められたと報告されていた。

GRADEに基づくエビデンスの確実性の評価により、非常に低いが1件、低いが5件、高いが2件であり、全体的に高くはないが結果の一貫性から、妥当な信頼度をもって受け止めることができると判定された。

エネルギー利用可能性(EA)

5件の研究のすべてで統計的に有意な改善が報告され、推定効果量は0.5~1.0の範囲だった。GRADEに基づく評価で、すべて確実性が低いと位置づけられたが、一貫性があることから妥当な信頼度をもって受け止めることができると判定された。

体組成

7件のうち6件で、体重、脂肪量、体脂肪率などの少なくとも1項目以上の指標に統計的に有意な改善が報告され、推定効果量は0.5~2.5の間であった。

脂肪量に関しては3件の研究に基づくメタ解析が行われ、平均差2.21(95%CI;1.34~3.08)と有意な改善が示されて、異質性は中程度だった(I2=32%)。また、体脂肪率に関しても同じ3件の研究のメタ解析から、平均差1.36(0.68~2.04)という有意な改善が示され、異質性は観察されなかった(I2=0%)。

バイオマーカー

9件の研究で、レプチン、トリヨードサイロニン(T3)、コルチゾール、エストラジオール、黄体形成ホルモン(LH)などが評価されており、8件の研究で統計的に有意なバイオマーカーの改善が報告されていた。推定効果量は0.5~0.8の範囲だった。なお、T3に関して3件の研究を対象としたメタ解析が行われ、平均差2.37(-5.57~0.83)と有意な影響はみられず、高い異質性が認められた(I2=91%)。

REDsの薬物療法による介入効果

薬物療法を評価した研究の中で、最も頻繁に報告された指標は、骨密度や骨代謝、ホルモンプロファイル、月経機能の回復などだった。

骨密度については4件の研究があり、効果を認めたものとそうでないものが混在していた。GRADEの評価は、非常に低い、低い、高い、非常に高いというものであり、全体として信頼度は中程度であった。

ホルモンプロファイルについては3件の研究があり、GRADE評価は、非常に低い、低い、非常に高いであって、全体として信頼性評価は低く、結果に一貫性が欠如していた。

月経機能の回復については3件の研究があり、いずれも統計的に有意な改善を示していた。GRADE評価は全体として中程度であり、結果の一貫性から妥当な信頼度をもって受け止められると考えられた。

骨代謝マーカーは1件の研究で検討されており、GRADE評価から確実性が高いとされたものの、再現性の検証が必要と判断された。

REDsには栄養療法と行動療法を第一選択として優先

論文の結論は以下のようにまとめられている。

まず、非薬物療法については、「とくに食事によるエネルギー回復とトレーニング負荷の調整は、REDsを抱えるアスリートにおいて、臨床的に重要なアウトカムに一貫して有益な効果を示している。しかし、報告されている研究は、サンプルサイズが小さい、追跡期間が短い、アウトカム指標にばらつきがあるといった方法論的な制約のため、このエビデンスの確実性は低~中程度にとどまる」としている。

一方、ホルモン療法を含む薬物療法については、「骨密度や特定のホルモンパラメータを改善するようであるが、エネルギー不足という根本的な問題には対処しておらず、真の生殖機能回復を不明瞭にする可能性がある」と指摘。これらの考察のうえで、REDsの治療に関するさらなる研究の必要性を述べ、「得られた知見は、栄養療法と行動療法を第一選択の管理法として優先し、薬物療法は慎重に選択された症例に限定して、生理的回復の継続的なモニタリングを行うことの重要性を強調している」と総括している。

文献情報

原題のタイトルは、「Pharmacological vs. Non-Pharmacological Treatment in the Management of Relative Energy Deficiency in Sport (REDs): A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Sports (Basel). 2025 Dec 15;13(12):453〕 原文はこちら(MDPI)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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スポーツ栄養Web編集部


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ハムストリング筋損傷(肉離れ)はスプリント競技のアスリートに好発し、治癒後の再発も少なくないが、その再発には受傷に伴う「筋スティフネス(筋肉の伸びにくさ)」の上昇が長期間続いていることが一因ではないかとする論文が、「Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports」に掲載された。早稲田大学スポーツ科学学術院の宮本直和氏らの研究によるもので、超音波剪断波エラストグラフィーにより大腿二頭筋長頭のスティフネスを横断的および縦断的に解析した結果、明らかになった。

ハムストリング肉離れはなぜ再発するのか? 受動的な筋スティフネスの検討

ハムストリングの肉離れ(hamstring strain injury;HSI)は、陸上競技、サッカー、ラグビーなどのスプリントが要求されるスポーツで好発し、とくに大腿二頭筋長頭(biceps femoris long head;BFlh)での発生が大半を占める。HSIは再発しやすく、再発の最も強固なリスク因子がHSIの既往であるとされている。初回のHSI時に筋肉の構造や力学的特性に永続的な変化が生じ、それが再発リスクにつながると捉えられている。例えば、組織学的な研究から、筋損傷後にはコラーゲンリモデリングや細胞外マトリックスの構造的な変化が起こることが報告されている。

一方、HSIの潜在的に修正可能なリスク因子として、「受動的な筋スティフネス」が注目されている。受傷後の瘢痕形成などの組織リモデリングが筋肉の受動的な筋スティフネスを増加させ、その変化が再発リスクを高める可能性が示唆されている。よって、受傷後の受動的な筋スティフネスの経過を詳細に把握することが、HSIの既往歴を「修正不可能なリスク因子」から「修正可能なリスク因子」へと変える治療・リハビリテーション戦略の開発につながる可能性が想定される。

とはいえ、筋肉のスティフネスを正確に評価することには技術的なハードルがあり、従来用いられてきた関節可動域や関節硬直テストなどは、筋肉に特異的な評価ではなく、腱や靭帯、筋膜なども含めた組織複合的な挙動を評価したものであり、検査時の疼痛も正確な測定を妨げていた。さらにHSIはBFlhに好発するにもかかわらず、これらの評価ではハムストリングを構成する個々の筋肉の状態を個別に把握することはできていなかった。

それに対して近年、超音波剪断波エラストグラフィー(ultrasound shear wave elastography;USWE)が、生体内の組織の硬さを定量的に評価する手法として、肝硬度の測定などに臨床応用されるようになった。宮本氏らはこのUSWEを用いてBFlhのスティフネスを受動的に評価。HSI後の筋スティフネスの横断的解析、およびHSI発生前から発生後の縦断的解析を行った。

この研究の参加者は全員が男性の陸上競技(短距離または跳躍)選手であり、競技レベルは地域・地方大会出場レベルまたは全国大会出場レベルだった。横断研究、縦断研究の順に紹介する。

横断研究:過去にハムストリング肉離れが発生した脚は、反対の脚より筋肉が硬い

横断研究の参加者は、大腿二頭筋長頭(BFlh)の肉離れの既往のある13人(20.4±1.6歳)。全員が過去12カ月以内にBFlhの肉離れを経験し、研究参加時点では無症状(競技中にも疼痛や違和感なし)だった。

過去に肉離れが生じた脚、および対照脚(肉離れの既往のない脚)のBFlhのスティフネスを超音波剪断波エラストグラフィー(USWE)で受動的に測定した結果、過去の肉離れが生じた脚の筋スティフネスのほうが有意に高いという結果が得られた(p=0.001、効果量〈Cohenのd〉=1.189)。

ただしこれは横断研究であるため因果関係は考察できず、筋スティフネスの差が肉離れにより生じたとは判断できない。そこで以下の縦断研究による検討を行った。

縦断研究:ハムストリングの肉離れが発生すると、筋肉が硬く変化する

縦断研究は、プレシーズンにUSWEによりBFlhの受動的なスティフネスが評価されており、シーズン中にBFlhの肉離れを経験した7人(19.9±1.2歳)を解析対象とした。既にBFlh肉離れの再発経験のある選手は除外されている。対象選手は受傷後、重症度にあわせて構造化されたリハビリテーションプログラムを受けていた。

USWEによる筋スティフネスの測定は、ベースライン(プレシーズン〈受傷以前〉)、急性期(測定に支障ない程度に疼痛が軽減した時点〈受傷1~3週間後〉)、リハビリテーション中(受傷の27.6±7.3日後)、競技復帰後(受傷の60.1±23.4日後以降)という4時点で、受傷脚および対照脚に対して行われた。

受傷脚はリハビリ期以降に、受傷前より筋スティフネスが高値になる

受傷していない対照脚では、急性期のBFlhのスティフネスが、ベースライン時やリハビリテーション中、および競技復帰後よりも有意に高いことが示された(急性期 vs ベースライン:p<0.001、d=5.165/急性期>

一方、受傷脚では、リハビリ期のBFlhのスティフネスがベースライン時よりも有意に高かった(p=0.049、d=1.465)。また、競技復帰後の筋スティフネスはベースライン時と有意差がないものの高い傾向にあり、小さくない効果量が認められた(p=0.094、d=1.261)。

急性期までは筋スティフネスに左右差はなく、リハビリ期に有意傾向、復帰後には有意となる

次に左右の脚を比較したところ、ベースライン時および急性期には、受動的なBFlhのスティフネスに有意な左右差は認められなかった。しかし、リハビリ期には有意水準未満ながら、受傷脚のBFlhスティフネスが高い傾向にあった(p=0.057、d=0.890)。さらに競技復帰後には、受傷脚のスティフネスが有意に高くなっていた(p=0.017、d=1.231)。

著者らは本研究には、サンプルサイズが十分でないこと、対象者が男子陸上競技選手のみであり女子選手や他の競技の選手が含まれていないこと、対象者のBFlh肉離れの重症度にばらつきがあることなど、解釈の限界点があるとしている。

そのうえで、「肉離れによって、大腿二頭筋長頭の受動的な硬さが慢性的に高い状態が生じるという、横断的および縦断的なエビデンスが得られた。これらの知見は、肉離れによる生体力学的変化が競技復帰後にも持続し、筋機能に影響を及ぼす可能性を示唆している」と結論づけている。

文献情報

原題は、「Changes in Passive Muscle Stiffness Following Biceps Femoris Strain Injury in Track-and-Field Athletes: Cross-Sectional and Longitudinal Analyses」。〔Scand J Med Sci Sports. 2026 Mar;36(3):e70254〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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スポーツ栄養Web編集部

0.001、d=5.165/急性期>

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国内の栄養職者にとってバイブルともいえる厚生労働省「日本人の食事摂取基準」を、産科の視点から概観した、慶應義塾大学医学部産婦人科の春日義史氏らの論文が「The Journal of Obstetrics and Gynaecology Research」に掲載された。エビデンスの不足や実臨床との乖離、妊娠前の栄養に言及していないことなど、いくつかの課題を指摘し、今後の方向性が述べられている。要旨を紹介する。

イントロダクション:妊婦・授乳婦の適切な栄養を巡る課題

胎内環境(お母さんのお腹の中の環境)は周産期予後だけでなく、児の成長後の健康リスクにも関係する。胎内環境に影響を与える因子として、喫煙、飲酒、薬剤、ストレス、そして栄養などが挙げられる。とくに我が国においては、低出生体重児の割合が他の先進国よりも高く、これに妊娠前の低体重や妊娠中の不十分な体重増加が関与していると考えられている。

一方、国民の健康の維持・増進のために多くの国が食事摂取基準(dietary reference intakes;DRI)を定めている。国内でも厚生労働省が、かつては「日本人の栄養所要量」、2005年からは「日本人の食事摂取基準」を策定し、性別やライフステージにあわせたエネルギー・栄養素量の目安等を掲げており、多くの項目に妊婦・授乳婦の付加量が示されている。

ただし、妊婦や授乳婦の最適な栄養素摂取推奨量を規定することは、介入研究が倫理的に許容されないというハードルが存在するために困難。また、周産期管理における栄養の重要性が、妊婦や臨床医の間で十分に認識されているとは言えない現状もある。さらに現行の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」(以下、DRI2025)には、妊娠中のエネルギー付加量を妊娠初期・中期・後期という三つのステージに分けて示しているものの、妊娠前のBMIが考慮されていないという点を、課題として指摘できる。

妊婦の栄養

エネルギー量

DRI2025では妊婦の必要エネルギー量の1日あたり付加量として、妊娠初期は50kcal、中期は250kcal、後期は450kcalとしている。これらは妊娠していない女性が40週間で11kgの体重増加を達成するために必要なエネルギー量に基づき推定された。つまり臨床に基づくものではないため、生理学的な観点で十分な根拠があるとは言えない。

また、前述のようにDRI2025は妊娠前のBMIを考慮しておらず、妊娠中の体重増加の目安も示していない。それに対して日本産科婦人科学会は2020年に、妊娠前のBMIカテゴリー別に妊娠中の体重増加の目安を示した(詳細はこちら)。この遵守が周産期有害事象発生リスクの低下と関連していることも報告されている(DOI: 10.1111/jog.15863)。

ただし、この体重増加を達成するために、妊娠中どのようにエネルギー摂取量を増やしていくべきかを検討した研究はまだなく、今後の課題となっている。

栄養素量

DRI2025において、妊婦の栄養素必要量は同年齢の日本人女性のデータを参考に、妊娠中の需要増大を勘案して定められている。とはいえ、その計算に利用できるエビデンスは少なく、とくに日本人でのエビデンスは限られている。

また、周産期合併症(悪阻、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群など)の治療のための栄養管理に関する情報は、DRI2025に限らず十分とは言えない。例えば、関連学会等から妊娠糖尿病については、血糖管理目標、主要栄養素の比率、葉酸、ビタミンDなど、妊娠高血圧症候群については塩分摂取制限の言及があるものの、その他の栄養素については触れられていない。もっともDRIに関して言えば、DRIは基本的に健常者を対象とするという位置づけであることから、周産期合併症治療のための栄養について記載を求めることに無理があるかもしれない。

授乳婦の栄養

DRI2025において、授乳婦の必要エネルギー量は母乳の産生に必要なエネルギー量を勘案し、1日あたり350kcalを付加量としている。また、多くの栄養素についても付加量が示されている。

一方、こども家庭庁の調査によると、完全母乳育児を行っているのは34.5%であり、人工乳が11.7%、混合授乳が53.8%という実態が示されている。このような授乳行動の差異、および、ライフスタイル等により必要とされる栄養素量は異なると考えられ、授乳婦に対する推奨は妊婦に対する推奨よりも、策定が困難な可能性がある。

妊娠前の栄養(プレコンセプションケアとしての栄養)

妊娠前のケア(プレコンセプションケア)は、良好な周産期予後を得るために重要であり、妊娠前の栄養は母体の健康と胎児の発育に影響を与える。とくに胎児神経管閉鎖障害のリスク抑制のために、妊娠前の葉酸摂取は妊娠中の葉酸摂取よりも重要である。しかし、DRI2025には妊娠前の栄養に関する推奨事項は掲げられていない。

また、妊娠前の質の高い食事は、妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群、早産、低出生体重児などの周産期合併症リスクの低さと関連していることが報告されている。周産期合併症を発症する前の女性は健康な状態であることから、DRIの対象に該当すると理解される。よって今後のDRIには、妊娠前ケアを正式に組み込む必要がある。

さらに近年、パートナーの栄養状態が、周産期合併症や児の成長後の疾患リスクと関連しているという知見が蓄積されてきている。したがって、妊娠前のパートナーの栄養の重要性に関する認識を高める必要があり、この点も今後のDRIでは言及することを検討する必要がある。

プレコンセプションケアやDOHaDの啓発活動

以上、論文の要旨を紹介した。

なお、春日氏らは現在、医学部生や栄養学科の学生とともに、プレコンセプションケアやDOHaD(胎児期と出生後早期の環境が生涯の健康リスクを左右するという考え方。Developmental Origins of Health and Diseaseの略)の概念を広めるために、インスタグラムを用いた活動を行っている。栄養に関しても、実体験に基づく幅広い情報が共有されており、エビデンスと日常生活との橋渡しとなる実践的な内容が発信されている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Dietary Reference Intakes for Japanese (2025): Overview and Future Directions for the Pregnant and Lactating Women's Section」。〔J Obstet Gynaecol Res. 2026 Mar;52(3):e70236〕 原文はこちら(John Wiley & Sons)

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スポーツ栄養Web編集部


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摂取エネルギーは「食べた量」だけでなく、「どの程度消化・吸収されるか(吸収効率)」によって大きく左右されることが、文献レビューの結果として示された。国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所や東北大学の研究グループの研究によるものであり、論文が「Advance in Nutrition」に掲載されるとともに、プレスリリースが発行された。

研究のポイント

この研究では、過去50年分の国内外の文献のレビューが行われた。その結果、食べ過ぎた場合には糞便中へのエネルギー排泄量は増加するものの、エネルギー吸収割合は比較的安定しており、一方で食物繊維やナッツ類を摂取した場合にはエネルギー吸収効率が低下するという一貫性が確認されたという。ただし、70歳以上の高齢者などでのエビデンスは依然として不足しているとのことだ。

概要と本研究成果の意義:食べた量から吸収され利用されるエネルギーの実態を探る

これまでの体重管理は、主にエネルギー摂取量と消費量のバランスで議論されてきたが、摂取したエネルギーのうち、実際にどれだけが消化・吸収されて利用されるかについてのエビデンスは、体系的に整理されていなかった。今回、過去50年分のヒトを対象とした研究を系統的にレビューしたことで、食事量や食事内容、加齢、疾患が消化可能エネルギー摂取量(DEI)※1および代謝可能エネルギー摂取量(MEI)※2に影響することを明らかにした。

本研究は、食品表示のエネルギーと実際に体内で利用されるエネルギーとの差を理解する基盤となり、肥満や低栄養、高齢者のフレイル対策など、幅広い体重管理・栄養戦略の科学的根拠を強化する成果と言える。

研究の背景:エネルギーの消化・吸収効率について、体系的な整理がされていなかった

世界的に肥満人口は増え続ける一方、南アジアやアフリカにおける子どものやせや、高齢者における意図しない体重減少やフレイル(虚弱)も深刻な課題となっている。このように、過剰でも不足でもない適正な体重を維持することは、年齢や健康状態を問わず、世界共通の重要な課題。

体重を左右するエネルギーバランスは、摂取量と消費量だけでなく、摂取したエネルギーのうち、実際に体内に取り込まれて利用されるDEIやMEIも重要。近代栄養学の父とも称されているアトウォーター氏は、今から100年以上も前に、食品のたんぱく質・脂質・炭水化物からMEIを算出するエネルギー換算係数※3を提唱した。“アトウォーター係数”として知られるこの換算係数は、栄養学や食品表示の基盤となっており、日本でも食品表示法に基づく熱量(エネルギー)の算出は現在も修正アトウォーター法が基本として用いられている。また、「日本食品標準成分表」は、八訂からエネルギーは組成成分ごとの換算係数を乗じる方法で算出されている。

しかし、同じエネルギー量の食事であっても、食品の種類や食事内容、年齢や健康状態によって、DEIやMEIは異なる可能性がある。こうしたエネルギーの消化・吸収効率に影響する要因については、これまで体系的に整理されていなかった。

本研究は、過去50年分のヒトを対象とした研究を体系的に整理し、食事条件や栄養素、加齢、疾患がDEIおよびMEIに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実施した。

本研究の内容:23件の研究報告を基に解析

成人を対象としてボンブ熱量計※4によりエネルギー吸収試験を実施した論文を、複数の文献データベースから収集したところ、1973~2024年に報告された論文数は23件だった。

食事量の影響

過食では糞便中へのエネルギー排泄量が増加するものの、DEIやMEIの割合は全体として大きくは変化せず、体内での適応的な調節が示唆された。一方、食事摂取量を減らした場合においても、エネルギー吸収割合が大きく変化する明確な傾向は認められなかった。

食事内容の影響

高食物繊維食やナッツ類の摂取により、DEIおよびMEIの割合が一貫して低下した。これは、食品の種類や構成がエネルギーの吸収効率に大きく影響することを示している。とくにナッツ類を摂取した場合では、表示されているエネルギーよりも、実際に体内で利用されるエネルギーが少ない可能性が示された。

食事パターンや運動の影響

時間制限食では研究間で結果が一致せず、ある研究ではエネルギー排泄量の増加がみられた一方、別の研究ではDEI・MEIに差は認められなかった。また、レジスタンス運動による明確な影響は確認されなかった。

加齢や疾患の影響

60代の高齢者や短腸症候群、腸管不全などの消化管疾患を有する人では、DEIやMEIの割合が健康な成人よりも低い傾向がみられた。とくに在宅静脈栄養を受けている腸管不全患者では、エネルギー吸収率が大きく低下していた。一方、70歳以上を対象とした研究は現時点で報告されておらず、消化管疾患以外の疾患患者を対象としたエビデンスについても依然として不足している。

図1 各研究の平均年齢別にみた消化可能エネルギー平均値のプロット

(出典:医薬基盤・健康・栄養研究所)

本研究は全体として、食品から摂取したエネルギーの吸収効率が、食事内容、加齢、健康状態によって大きく左右されることを示している。一方で、高齢者や疾患患者を対象とした研究は限られており、今後の研究の充実が求められる。

プレスリリース

同じ食事内容でも吸収されるエネルギーは異なる? ~食事や健康状態で変わる「消化可能エネルギー」の最新レビュー~(医薬基盤・健康・栄養研究所)

文献情報

原題のタイトルは、「Digestible and Metabolizable Energy Intake in Humans: a Systematic Review」。〔Adv Nutr. 2026 Mar;17(3):100597〕 原文はこちら(Elsevier)

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スポーツ栄養Web編集部


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味の素株式会社が運営する栄養士・管理栄養士向け情報サイト「あじこらぼ」は、第72回日本栄養改善学会学術総会(2025年9月12日~14日・東京農業大学世田谷キャンパス)のランチョンセミナーをまとめたレポート「おいしい減塩、本当にできるか?」を公開しました。相模女子大学の吉岡有紀子先生と女子栄養大学の武見ゆかり先生が登壇し、減塩とおいしさを両立する工夫や、健康につながる食事のポイントがわかりやすく紹介されています。

減塩でもおいしく食べられる

講演1の吉岡先生の講演では、大学と企業が協力して開発した減塩弁当「おいしい宝箱」が紹介されました。この弁当は、健康的な食事の基準を満たしながら、食材や調理法の工夫によっておいしさにも配慮されています。実際に通常の味付けと減塩の料理を食べ比べたところ、「減塩のほうがおいしい」と感じた人もいるなど、減塩であっても工夫しだいでおいしくなることが実証されました。食塩量は約3.1gから2.0gに抑えられており、減塩とおいしさの両立が可能であることが示されています。

食環境整備による「減塩+増カリウム」の推進

講演2の武見先生の講演では、産官学連携による減塩施策についてお話しいただきました。ご存知のとおり塩分の過剰摂取は高血圧の原因となり、健康に大きく影響します。この課題を克服するために、減塩に加えてカリウムの摂取量を増やすことのメリットをお話しいただきました。

カリウムは野菜や果物、乳製品に多く含まれ、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。実際の取り組み事例として、企業においてスマートミール弁当を導入した結果、従業員の食塩摂取量と尿ナトカリ比が改善したことが報告されました。また、岐阜県飛騨市では行政と食品関連事業者が連携し、減塩食品の普及を推進。その結果、高血圧が改善したことが確認されています。

これらの結果から、個人への啓発だけでなく、誰もが自然に健康的な食事を選べる「食環境の整備」の重要性が示唆されました。

減塩は無理なく続けられる

今回のレポートから、減塩は我慢するものではなく、工夫によっておいしく続けられることがわかります。日々の食事で調味料や食材を見直すことが、無理のない健康づくりにつながります。

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スポーツ栄養Web編集部


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肥満や糖尿病のリスク抑制のために推奨されている「ゆっくりよく噛んで食べる」という食習慣に関連のある因子が明らかになった。40歳以上では性別にかかわらず、「味わって食べる」こと、および「口いっぱいにほおばらない」ことが関連しているという。国立保健医療科学院生涯健康研究部の石川みどり氏らが行ったwebによる全国調査の結果であり、「Scientific Reports」に論文が掲載された。

健康づくりに推奨される「ゆっくりよく噛んで食べる」が身についている人の特徴は?

近年、「食べる速度」が速いことが肥満リスクと関連していることや、「よく噛んで食べる」ことがインスリン分泌や消化管ホルモンの分泌を刺激し食後血糖の上昇を抑制することなどが報告され、「ゆっくりよく噛んで食べる」ことが推奨されることが増えている。例えば、食育基本法に基づく食育推進基本計画では、ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やすという目標が掲げられている。

ただしこれまでの研究の多くは、「ゆっくり食べる/速食いする」、「よく噛んで食べる/あまり噛まずに食べる」という習慣を個別に扱ってきており、「ゆっくりよく噛んで食べる」ことの関連因子は十分検討されておらず、どのような人や習慣に対する介入を強化すべきかが明らかになっていない。石川氏らはこの研究ギャップを埋めるため、「ゆっくりよく噛んで食べる」こととの関連のある因子の特定を試みた。

40~70代の日本人約1,600人を対象にwebによる横断調査

この研究のための調査は、web調査企業のパネル登録者を対象として横断的デザインで実施され、年齢層を40代、50代、60代、70代とし、それぞれ男性と女性が各200人を超えるまで回答を受け付けた。質問内容は、厚生労働省の国民健康・栄養調査や農林水産省の食育に関する意識調査などを参考に作成し、目的変数を「ゆっくりよく噛んで食べているか」として、説明変数を社会経済的因子(6項目)、全身の健康状態(7項目)、食事・健康行動(12項目)、口腔内の状態(14項目)とした解析が可能になるように設計した。

「ゆっくりよく噛んで食べているか」という質問に対する回答の分布

解析は年齢層および性別に行われた。報告された身長・体重に基づき計算されたBMIが10未満などの極端な回答者を除外し、解析対象数は合計1,644人となった。

目的変数である「ゆっくりよく噛んで食べているか」の回答カテゴリーの分布は、「ゆっくりよく噛んで食べている」が男性8.2%、女性8.9%、「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べている」が同順に26.8%、31.4%、「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べていない」が44.0%、43.8%、「ゆっくりよく噛んで食べていない」が21.0%、15.9%だった。

論文ではまず、この回答カテゴリーの分布に有意差の存在する説明変数を示し、そのあとでロジスティック回帰分析の結果として独立した関連のある因子を示している。本稿もこの順に紹介していく。

「ゆっくりよく噛んで食べているか」の回答カテゴリーの分布に有意差のある説明変数

社会経済的因子

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群はそうでない群に比べて 、50代では子どもがいない人が多く、教育歴が長く、60代では子どもがいる人が多く、70代では独居者が多かった。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では子どもがいない人や独居者または夫婦世帯の人が多かった。

全身の健康状態

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では普通体重(BMI 18.5~25未満)が多く、50代では腎臓病と貧血が多く、70代では普通体重または低体重が多かった。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、50代と70代において脳卒中既往者が少なかった。

食事・健康行動

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は年齢層にかかわらず、食事を味わい、口いっぱいに食べ物をほおばらずに食べる人が多かった。また、50代を除き、満腹になるまで食べない人が多かった。 50代では時々間食をする人が、ゆっくりよく噛んで食べる群で多かった。

女性

男性と同様に、ゆっくりよく噛んで食べる群は年齢層にかかわらず、食事を味わい、口いっぱいに食べ物をほおばらずに食べる人が多く、50代を除き満腹になるまで食べない人が多かった。 50代と70代では間食をほとんどしない人が多く、また50代では家族と朝食を食べる頻度が高い人が多かった。60代では1日に少なくとも2回はバランスのよい食事をとる頻度が高い人が多かった。

口腔内の状態

男性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代では歯の喪失が少なく、硬い食べ物の咀嚼に支障がなく、飲み物でむせることが少なかった。50代では歯の喪失が少なく、歯の数が20本以上あるという2項目に有意差が認められた。60代では歯や歯茎の痛み、歯周病、ドライマウスが少なかった。70代は未治療の齲歯(虫歯)がない人が多いという差が観察された。

女性

ゆっくりよく噛んで食べる群は、40代と50代では硬い食べ物の咀嚼に支障がない人が多いという差がみられた。また50代では未治療の齲歯がないこと、義歯を使用していることに関しても差がみられた。60代では歯の数が20本以上あることと、飲み物でむせることが少ないという2項目に差が認められた。70代ではゆっくりよく噛んで食べる群において、硬い食べ物の咀嚼に支障がないことと、硬い食べ物の咀嚼に支障があるという双方の回答が多かった。

「ゆっくりよく噛んで食べている」ことに独立した関連のある因子

続いて、ロジスティック回帰分析により、「ゆっくりよく噛んで食べている」ことに関連のある因子が性別に検討された。解析は、強制投入法(モデル1)とステップワイズ法(モデル2)で行われた。

その結果、性別にかかわらず、「食事を味わって食べる」が非常に強く関連しており、次に「口いっぱいにほおばらない」が関連していた。男性は「歯槽骨の減少がないこと」(モデル2のみ)、女性は「満腹になるまで食べない」と「歯や歯茎に痛みがない」ことも有意に関連していた。

その一方で、間食の頻度、バランスの良い食事の頻度、食事の多様性スコア、朝食欠食頻度、喫煙・飲酒・運動習慣、硬いものの咀嚼の困難さ、飲み物でむせる頻度、口渇などは、関連がみられなかった。

有意な関連因子の詳細は以下のとおり。

男性

食事を味わって食べることは、モデル1でオッズ比(OR)10.81(95%CI;4.96~23.57)、モデル2でOR11.20(同5.28~23.76)。口いっぱいにほおばらないことは、同順に、OR3.43(2.24~5.27)、OR3.34(2.23~5.00)。歯槽骨の減少がないことはモデル2でOR2.06(1.22~3.50)。

女性

食事を味わいながら食べることは、モデル1でOR12.18(4.73~31.39)、モデル2でOR11.48(4.63~28.46)。口いっぱいにほおばらないことは、OR3.05(1.89~4.93)、OR2.60(1.65~4.10)。満腹になるまで食べないは、OR1.69(1.16~2.47)、OR1.67(1.16~2.40)。歯や歯茎に痛みがないは、OR2.23(1.04~4.74)、OR2.72(1.44~5.16)。

ゆっくりよく噛むために、まず、口いっぱいにほおばらないこと

著者らは本研究が自己申告に基づく解析であること、横断研究のため因果関係の考察が制限されること、40代未満の若年層を対象に含めていないこと、摂食や咀嚼との関連が示唆されている加工食品の摂取頻度などを調査していないことなどを限界点として挙げている。

そのうえで、「40歳以上のほぼすべての年齢層の男女において、食事を味わうことと口いっぱいに食べ物をほおばらないことが、ゆっくりよく噛んで食べることと有意に関連していた。男性では歯槽骨の減少がないこと、女性では歯や歯茎の痛みがないことなども関連していた」と総括。また、「よく噛むためにはそもそも、口にいっぱいほおばらないことが重要なのではないか」との考察も付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary and oral factors associated with eating slowly and chewing well: a National web-based study」。〔Sci Rep. 2025 Nov 19;15(1):40677〕 原文はこちら(Springer Nature)

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スポーツ栄養Web編集部


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ゴルフ場で働く人たちの熱中症リスクを抑制するための具体的な方策が明らかになった。武蔵丘短期大学健康生活学科の長島洋介氏らが、関東地方にある500近くのゴルフ場の従業員を対象に行った研究の結果であり、「Temperature」に論文が掲載された。エアコンの効いたスペースでの休憩を計画的にとることや、冷却機能を備えたウエア(冷却ベストなど)を着用するといったことが、労作性熱中症(EHI)のリスクを有意に抑制する可能性があるといい、従来の一般的な熱中症対策から一歩踏み込んだ対策立案につながる知見が示されている。

ゴルフ場ではプレーヤーだけでなく、従業員も熱中症リスクに曝される

地球温暖化とともに、屋外スポーツアスリートの熱中症対策が強化されるようになってきた。熱中症のリスクは一般に、高温・高湿度の環境で高強度の運動を長時間続けるほど高くなると考えられており、夏季のゴルフはそれらのすべてが当てはまるといえ、国際ゴルフ連盟などによる注意喚起がされてきている。長島氏らも以前に、国内のアマチュアゴルファーの43.5%がプレー中に「労作性熱疲労(exertional heat exhaustion;EHE)」を経験していることを報告している。なお、EHEでは倦怠感や吐き気、めまい、局所の痙攣などを呈し、その一部は全身性の痙攣や虚脱などを来して時に昏睡等の致死的な状態になる「労作性熱射病(exertional heat stroke;EHS)」へと進行する。EHEとEHSをあわせて「労作性熱中症(exertional heat illness;EHI)」と呼ばれる。

このように、ゴルファーのEHEリスクについては、長島氏らの研究も含め徐々に知見が蓄積されてきている。しかし、ゴルフ場の広大なフィル―ドで日光曝露を受け、長時間にわたる身体活動を行っているのはプレーヤーのみでない。キャディーやコースメンテナンススタッフなどの従業員も同じような負荷を受ける。それにもかかわらず、ゴルフ場従業員の熱中症リスクはほとんど調査されていない。この研究ギャップを埋めるため、同氏らは今回、関東地方のゴルフ場の屋外労働者を対象とする横断的な検討を行った。

関東ゴルフ連盟加盟ゴルフクラブ491施設の従業員を対象に調査

この研究のための調査は2025年9月20日~10月31日に、関東ゴルフ連盟に加盟しているゴルフクラブ491カ所で実施した。Webベースのアンケートを作成し、そのQRコードを印刷したチラシを配布し回答者を募集。回答が不十分なものなどを除外し388人を解析対象とした。なお、事前の統計学的検討では、必要なサンプルサイズは384人以上と計算されており、これを上回る回答を得られた。

アンケートの質問内容は、人口統計学的要因、EHE関連症状の有無(2025年の夏季の勤務中に、めまい、頭痛、嘔気、倦怠感などを経験したか否か)、EHEの組織的要因(職種、勤務歴、労働時間、作業強度、熱中症対策教育の有無など)、生活習慣(睡眠時間、食習慣〈朝食欠食の頻度、バランスの良い食事の頻度、飲酒習慣〉、主観的な体力や熱中症に関する知識)、勤務中の食行動(飲水、塩分摂取、サプリメント摂取、冷菓の摂取など)、職場環境(エアコンや遮光のための設備の有無など)、休憩(勤務中の休憩時間とその柔軟性など)、ウエア(通気性や吸湿性、速乾性、遮光性の有無、および冷却ベスト等の着用など)で構成されていた。

ゴルフ場従業員の63.7%が、2025年の夏に労作性熱疲労(EHE)を経験

解析対象者388人のおもな特徴は、男性が58.8%、年齢は約半数(49.7%)が40~50代、BMIは約7割(70.4%)が18.5~24.9であり、4人に1人(25.0%)は何らかの慢性疾患を有していた。職種はキャディーが37.4%で最も多く、次いでコースメンテナンススタッフが35.0%を占め、その他が27.6%だった。全体として半数強(54.9%)が、職場内での熱中症対策教育を受けていた。

2025年の夏季に労作性熱疲労(EHE)の症状を経験していた従業員は、247人(63.7%)だった。EHE症状の経験の有無で二分したうえで単変量解析を行った結果、以下のような有意差が認められた

人口統計学的要因と組織的要因

性別では女性にEHE症状を経験した人が多く、年齢層では40歳未満で多くて60歳以上は少なかった。また、慢性疾患を有する人はEHEを経験した割合が高かった。BMIの分布は、EHE経験の有無による有意差がなかった。

職種ではキャディーにEHE症状の経験が多く、また、作業強度が高いと回答した人、および、職場内での熱中症対策教育を受けていない人に多かった。職歴や勤務頻度は有意な差がなかった。

生活習慣と食行動

睡眠時間が6時間未満の人は6時間以上の人よりもEHE症状の経験が多く、熱中症に関する知識があると回答した人はEHE症状の経験が少なかった。

朝食欠食やバランスのとれた食事の頻度、睡眠中のエアコン使用、主観的な体力、および、勤務中の食行動(飲水、塩分摂取、サプリメント摂取、冷菓の摂取など)は、有意な差がなかった。

職場環境、休憩、ウエア

職場環境に関する因子(高温、高湿度、強い日差し、無風など)、および、休憩に関する因子(計画的または柔軟に休憩をとることができない、休憩エリアにエアコンがないなど)は、評価した項目のすべてが、EHE症状の経験と有意に関連していた。

ウエアに関しては、素材の通気性や吸水性、遮光・遮熱性能の高さ、および、冷却ベストの着用が、EHE症状を経験しないことと有意に関連していた。素材の速乾性、およびファン冷却式装置の使用は、EHE症状経験の有無と有意な関連がなかった。

EHEのリスク因子と保護因子

続いて、前記の単変量解析でEHE症状経験の有無による2群間のp値が0.10未満となった項目を変数とする多変量解析を実施。性別、年齢、BMI、慢性疾患、飲酒習慣、職種、勤務歴、労働時間、労働日数を調整後、EHE症状のリスク因子と保護因子が以下のように特定された。

EHE症状発現を高める可能性のあるリスク因子

組織的要因

作業強度を四つのレベルに分けた質問に対して、最も軽強度と回答した人を基準とすると、最も高強度と回答した人にはEHE症状の経験者が有意に多かった(調整オッズ比〈aOR〉4.40〈95%CI;1.54~12.56〉)。

職場環境

高湿度(aOR2.94〈1.27~6.86〉)、および無風(aOR2.03〈1.26~3.28〉)が、EHE症状発現に有意に関連していた。

EHE症状発現を抑制する可能性のある保護因子

組織的要因

熱中症対策教育を受けていた人には、EHE症状経験者が有意に少なかった(aOR0.56〈0.34~0.93〉)。

生活習慣

睡眠時間が6時間以上であること(aOR0.49〈0.29~0.83〉)、熱中症に関する知識が豊かであること(aOR0.42〈0.21~0.87〉)は、EHE症状の経験が少ないことと有意に関連していた。

休憩

勤務中の休憩時間が60分未満の人を基準として、90分以上の人ではEHE症状経験者が有意に少なかった(aOR0.39〈0.16~0.90〉)。60~89分の場合、60分未満と有意差がなかった。

また、計画的な休憩(aOR0.33〈0.14~0.74〉)、休憩エリアのエアコン(aOR0.23〈0.11~0.51〉)も、EHEリスク低下と関連していた。日陰エリアの存在は有意な関連がなかった。

ウエア

遮光・遮熱機能のあるウエア(aOR0.52〈0.32~0.85〉)、冷却ベスト(aOR0.55〈0.34~0.90〉)が、EHEリスク低下と関連していた。

従業員個人の努力で回避できないリスク因子には組織的な対応が必要

著者らによると本研究は、ゴルフ場従業員のEHEの広範なリスク因子を体系的に調査した初の研究とみなされるという。研究の限界点としては、自主的に回答した人を解析対象としたことによるサンプリングバイアス、一部の項目は主観的な回答に基づく解析であること、想起バイアスや残余交絡が存在する可能性があることなどを挙げている。

論文の結論は、「国内のゴルフ場で働く屋外従業員の約3分の2が、夏季にEHE関連症状を経験していることが明らかになった。高強度の作業、高湿度、風がないことが主なリスク因子として挙げられ、保護因子としては、エアコンのある休憩エリアの設置、計画された十分な休憩時間、十分な睡眠、熱中症に関する知識、遮光・遮熱機能のあるウエアや冷却ベストの着用、職場での熱中症に関する教育などが挙げられる」と総括。また、「本研究の結果は、熱中症リスクに対する予防的介入の新たな実証的エビデンスであり、組織的な対策が従業員の安全確保に不可欠であることを示している。睡眠習慣やウエアの選択は従業員個人で対処可能だが、それら以外の因子に対しては経営者の積極的な関与が求められる」との提言を加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Scheduled breaks, cooled break areas, and functional clothing are associated with a reduced risk of exertional heat exhaustion in outdoor golf club workers」。〔Temperature (Austin). 2026 Mar 25〕 原文はこちら(Informa UK)

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スポーツ栄養Web編集部


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あじこらぼで公開している人気教材「女性のセルフケアBOOK【基本編】」(監修:鈴木 志保子(神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科教授))の英語版が新たに完成しました。

本冊子は、「健康こそが真の美しさ」という考えのもと、女性の一生にわたる心身の変化と、その時々に必要なセルフケアのポイントを、食事・栄養の視点からわかりやすく整理した教材です。

内容は、思春期から妊娠・出産、更年期、高齢期までのライフステージごとの身体の変化をはじめ、BMIによる体重管理の考え方、筋肉量と基礎代謝の関係、5大栄養素のバランス、さらに“うま味”を活用して食事の満足度と栄養バランスを高める工夫など、日常生活に直結する実践的な情報をコンパクトにまとめています。

特に本冊子は、「難しい理論」ではなく、日々の食事や生活の中で“すぐに実践できる内容”に落とし込まれている点が特長です。例えば、朝・昼・夕の食事に“少し足す”ことで栄養バランスを整える具体例など、現場での指導や日常のセルフケアにそのまま活用できる構成となっています。

外国人向けの健康教育ツールとしてご活用ください!

今回の英語版の公開により、これまで日本語での活用が中心であった本教材が、日本に在住する外国人の方への栄養指導・健康教育にも対応可能となりました。近年、留学生や技能実習生、外国人労働者など、日本で生活する外国人は増加しており、健康支援や食生活の指導において「言語の壁」が課題となる場面も少なくありません。

そのような中、本冊子は、

  • 外国人向けの健康教育資料
  • 企業における多国籍従業員への健康支援ツール
  • 学校や地域での多文化共生に対応した教材
  • 医療・スポーツ現場でのコミュニケーションツール

として、幅広い場面での活用が期待されます。

また、食事・栄養・身体の基礎知識をコンパクトに体系化しているため、専門職だけでなく、一般の方にとっても理解しやすい内容となっており、セルフケアの第一歩としても有用です。

多文化社会への対応が求められる今、日本にいる外国人の健康を支える実践的なツールとして、ぜひご活用ください。

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スポーツ栄養Web編集部


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スポーツ関連脳震盪(sports-related concussion;SRC)の多くは自然に軽快するとされているが、一部は学業や職業、競技生活に支障が生じる。このSRCに対して栄養は、どの程度介入効果を発揮し得るのだろうか。米国スポーツ医学会の「Current Sports Medicine Reports」に掲載されたレビュー論文の要旨を紹介する。

DHA+魚油

長鎖ω3多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid;DHA)は、神経細胞膜の重要な構成要素であり、灰白質に高濃度で存在する。DHAは、膜の流動性、シナプス可塑性、神経炎症の解消にかかわり、これらはいずれも脳震盪後の神経代謝カスケード中に障害される。

外傷性脳損傷(traumatic brain injury;TBI)のモデル動物を用いた研究では、DHAが神経炎症マーカーを減少させ、ミトコンドリア機能を維持し、認知機能を改善することが示されている。さらに、NCAAフットボール選手を対象とした無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)において、プラセボと比較しTBI関連バイオマーカーをDHAが用量依存的に低下させる可能性が示されるなど、ヒトでの研究でもエビデンスが得られてきている。

ヒト対象の研究に基づくと、1日2~2.5gのDHA補給は安全であり、軸索損傷マーカーを低下させ、アスリートの脳の構造的および機能的な回復をサポートする可能性がある。急性期の治療効果に関するエビデンスはまだ限られているものの、症状持続期間を短縮する可能性もある。

マグネシウム

マグネシウムは長年にわたり、神経保護作用があると考えられてきた。TBI直後に中枢神経系におけるマグネシウム濃度は低下し、その低下が頭部ダメージの重症度と相関することが示されている。

SRC後の12~18歳の未成年において、経口マグネシウム補給が脳震盪症状を軽減できるかどうかを検討した結果、鎮痛薬(アセトアミノフェン)と制吐薬(オンダンセトロン)に酸化マグネシウム200mg、1日2回経口投与を上乗せした群は、上乗せしない群よりも、48時間後の症状が統計的に有意に抑制されたことが報告されている。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)

必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA〈バリン、ロイシン、イソロイシン〉)は、脳内の窒素代謝、ミトコンドリア機能、神経伝達物質合成に関与する。TBI後には脳内のBCAA濃度が低下し、シナプスシグナル伝達と神経細胞のエネルギー代謝が損なわれる。TBIモデルマウスでは、予防的に、また損傷後にBCAAを補給することで、運動機能と認知機能の回復が顕著に改善したと報告されている。

このアプローチを評価する最初のヒト対象試験が、2024年に脳震盪と診断された42人(11~34歳)を対象に実施された。21日間の介入で主要評価項目であった処理速度は、対プラセボで有意差はみられなかったが、症状スコアの用量依存的な有意な低下や身体活動レベルとの正の相関が報告された。

予備的な臨床データではあるが、1日30~54gのBCAA補給は、脳震盪後の症状軽減と活動復帰を支援するうえで、安全かつ効果的である可能性が高い。

リボフラビン(ビタミンB2)

リボフラビン(ビタミンB2)もSRC回復の潜在的な治療法として提案されている。リボフラビンはミトコンドリアによるATP産生に必要とされ、抗酸化酵素であるグルタチオンの維持にも役立つ。動物実験では、脳浮腫、グリア機能の改善に有望であることが示されている。

エリート大学アスリートにおけるSRCからの回復時間に関するRCTでは、1日400mgのリボフラビンを摂取したアスリートは、プラセボを摂取したアスリート(平均22.2日)と比較して、平均9.9日と有意に早く回復したという。ただしこの研究は、リボフラビン群(フットボール選手は36%)とプラセボ群(同48%)とで、参加競技が異なる点で慎重な解釈を要する。

メラトニン

SRCでは睡眠障害がよく見られ、脳震盪を起こしてから最初の10日間は睡眠不足が回復時間の延長と関連していることが示されている。メラトニンは睡眠と覚醒のサイクルを調節するホルモンであり、睡眠補助剤としてよく使われている。動物実験では抗酸化作用と抗炎症作用による神経保護特性も示されている。

ヒト対象の研究ではプラセボとの有意差が認められないという報告が複数存在するが、いずれも脳震盪後、数日経過してから投与を開始しており、より早期に用いた場合には結果が異なる可能性もある。

タウリン

タウリンは、抗炎症作用、抗酸化作用、抗アポトーシス作用、浸透圧調節作用など、多くの有益な特性を有しており、細胞膜の安定化、カルシウム流入の抑制、ミトコンドリア機能の維持に有用とされる。TBIおよび脊髄損傷のモデル動物において、タウリンは組織損傷の軽減、神経学的転帰の改善、回復の促進に効果があることが示されている。

イランで最近行われたヒト対象の研究は、ICUに入院したTBI患者に対するタウリンの効果を評価する二重盲検RCTとして実施された。標準的な経腸栄養のみの群に比較して、タウリン(30mg/kg/日、最大3g/日、14日間)を追加した群は、グラスゴーコーマスケール(GCS)スコアの上昇と、APACHE IIスコアやIL-6、高感度CRPレベルの低下など、有意な臨床的改善を示したという。ただし、SOFAスコアや死亡率、ICU滞在期間などには有意差は認められなかったのことだ。著者らはサンプルサイズが小さいことなどの限界点を挙げて、より大規模な研究の必要性を指摘している。

クレアチン

クレアチンは、細胞エネルギー代謝において重要な役割を果たし、ミトコンドリア機能の安定化にもかかわる。脳損傷後、ミトコンドリア機能不全とエネルギー危機は二次的な神経損傷の一因となることから、クレアチンがそれらの抑制を介して神経細胞の生存率を向上させる可能性がある。実際、TBIおよび低酸素モデル動物において、その可能性を示唆する報告がある。それらの研究は、実験的環境において再現性のあるエネルギーおよびミトコンドリア保護効果を実証している。

ヒトでのデータは限られているが、小児TBIでの症状改善効果、外傷後健忘の症状持続期間の短縮と機能的転帰の改善などが報告されている。ただしSRCへの適用可能性は現段階では不明。若年成人の持続性脳震盪後症状に対するクレアチン一水和物を評価するパイロットRCTのプロトコルが発表されているが、結果はまだ報告されていない。

論文では上記のほかに、プロバイオティクス、ビタミンD3、ビタミンCやEなどについても、現時点のエビデンスがまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Role of Nutritional Supplements in the Treatment of Sport-Related Concussion」。〔Curr Sports Med Rep. 2026 Jan 1;25(1):4-8〕 原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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スポーツ栄養Web編集部


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味の素株式会社が運営する栄養士・管理栄養士向け情報サイト「あじこらぼ」で、「Ajico Report Vol.13」が公開されました。今回のテーマは、「おいしい減塩は実現できるのか」です。減塩に対する意識と行動を変える“体験型アプローチ”の有効性が報告されています。

減塩がうまくいかないのはなぜか

食塩摂取量の適正化は健康づくりにおける重要課題ですが、「おいしくない」「続かない」といった理由から、減塩の実践は進みにくい状況にあります。こうした課題に対し、従来の知識提供だけではなく、行動変容につながる新たなアプローチが求められています。

本レポートでは、減塩調味料を活用した料理や弁当を用いた取り組みを通じて、実際に食べ比べを行い、参加者の認識変化を検証しています。

続きはAjico Report Vol.13をご覧ください!

Ajico Report Vol.13へ

【あじこらぼ】Ajico Report&Ajico News バックナンバー

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スポーツ栄養Web編集部


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グルカゴン様ペプチド1(GLP-1)をベースとする肥満症治療における、栄養および生活習慣関連の支持療法について、各国の医師、研究者、および栄養士で構成される、学際的なパネルにより52項目のコンセンサスステートメントが策定され、「Obesity Pillars」に掲載された。一部を紹介する。

イントロダクション

リラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドといったGLP-1受容体またはGIP/GLP-1受容体作動薬は、肥満症の治療に革命的な変化をもたらしたと言える。ただ、用量依存性の消化器症状、栄養不良(とくに微量栄養素の不足)の懸念、長期継続の困難さなどの課題が明らかになっている。それらを指摘している報告は少なくないが、臨床での実践を導く直接的なエビデンスは依然として不足しており、コンセンサスに基づく推奨が必要とされている。

これを背景として、医師、臨床研究者、および栄養士ら15人で構成される国際的な学際的パネルが組織され、PubMed、Embase、Web of Science、Cochrane等の文献データベースを用いた文献検索による推奨の候補の抽出、および、修正デルファイ法による推奨ステートメントの作成が行われた。

ステートメントは、肥満における栄養上の考慮事項、身体活動と減量に関する考慮事項、減量を目的としたGLP-1ベースの治療(glucagon-like peptide 1 based therapies;GBT)を開始する前に考慮すべき事項など7領域にわたる。

デルファイ法でのステートメント作成の流れ

最初の投票ラウンドでは全パネリストが、85項目の声明に対して、1(まったく同意しない)から9(完全に同意する)の9段階評価で評価した。67%以上の同意(15人中10人が7点以上)とした場合にステートメントの候補として採用された。次に、匿名化された仮想会議により、ステートメントへの議論と修正の提案が行われ、そのフィードバックに基づいて議長が修正されたステートメントを作成し、2回目の投票を実施。

2回目の投票で67%以上の同意が得られたものをステートメントとして採択した。また、エビデンスベースではなく臨床経験に基づく推奨として、専門家の意見の多様性を反映するため、中程度の合意(60~67%未満の同意)を得られた意見も含めた。

2回の投票を経て、合計52項目について合意が得られた。

52項目のコンセンサスステートメント(一部のみ抜粋)

52項目のコンセンサスステートメントの一部は以下のとおり。なお、実用に際しては原典を確認のこと。

肥満における栄養上の考慮事項

  • 栄養と生活習慣の推奨事項は、個人の価値観、好み、治療目標にあわせて個別化する必要があり、安全・効果的で栄養的に適切であり、文化的に受け入れられ、長期にわたって遵守できる実現可能な食事療法をサポートするものであるべき。[同意の強さが7以上の割合100%]
  • 大半の患者はガイドラインで推奨されている食事パターンに従うよう努めるべき。[同93%]
  • 栄養管理は、体重減少に加えて、慢性疾患リスクの軽減と生活の質の向上といった健康成果を達成するだけでなく、十分な栄養と水分補給を確保し、除脂肪筋肉量を維持し、悪影響を最小限に抑えることにも重点を置く必要がある。[同93%]
  • エネルギー摂取量が非常に少ない場合には、確立された食事ガイドラインに従って、高タンパク質の経口栄養補助食品および/またはビタミンとミネラルの補給を推奨する必要がある。[同87%]
  • 肥満者は微量栄養素欠乏症のリスクが高く、血液や尿の生化学検査を含むベースライン評価とフォローアップ評価が、食事摂取量、ビタミンおよびミネラルのサプリメントに関する推奨事項の確認に役立つ可能性がある。[同87%]

身体活動と減量に関する考慮事項

  • 運動処方は、長期にわたる遵守を維持し、怪我を防ぐために、各患者のニーズ、好み、能力、肥満度、健康状態に合わせて個別化する必要がある。[同意の強さが7以上の割合100%]
  • 1週間あたり150分以上の中強度から高強度の有酸素運動と筋力トレーニングに基づく個別の運動トレーニングプログラムは、健康的な減量をサポートする。[同93%]
  • 高タンパク質摂取だけでは筋肉量は増加しない。減量中に除脂肪体重(骨量や筋肉量など)を維持するためには、中強度から高強度の筋力トレーニングを中心とした運動トレーニングプログラムが推奨される。[同80%]
  • 患者が週に150分の監督下の運動を実行できない場合は、構造化された運動計画や1日あたり最低4,000~6,000歩など、医療従事者と患者の両者が合意した測定可能な共通の目標を設定した段階的なアプローチが推奨される。[同73%]
  • 高齢、フレイル、または運動不足の患者、あるいはサルコペニアに該当する患者は、減量中に筋肉量が減少するリスクが高まる可能性がある。個々の患者に合わせた身体活動プログラムや栄養介入など、筋肉量を維持するための戦略を検討する必要がある。[同73%]

減量を目的としたGLP-1ベースの治療(GBT)を開始する前に考慮すべき事項

  • 肥満を抱えて生きる患者を効果的に評価するには、偏見のない、中立的な環境が必要。[同意の強さが7以上の割合100%]
  • 治療期間を通して、患者の価値観、好み、治療の目標、反応に応じて個別的なアプローチを適用し、患者の食事に関する経験が変化することに備える必要がある。[同100%]
  • 体重増加の一因となるか減量を妨げる可能性のある修正可能な要因(精神疾患/うつ病、コルチコステロイド、抗うつ薬、抗精神病薬、β遮断薬、インスリンなどの薬剤、ホルモン異常など)を特定し、対処する[同80%]
  • 筋肉量減少のリスクが高い患者(例えばサルコペニア肥満の患者)では、機能検査(例えば握力、椅子立ち上がりテスト)を用いて筋力を評価する。可能であれば、体組成評価の専門施設を紹介する。[同87%]
  • GBTを開始する前に、体重減少と生活習慣の改善を促すため、低カロリーまたは超低カロリーの食事(840kcal/日未満)の処方が検討されることもある。一般的には、1,000~1,200kcal/日の段階的な摂取カロリー現象アプローチが推奨されている。[同73%]

減量段階における考慮事項

  • 患者に食事のタイミングと頻度に注意するよう伝える。[同意の強さが7以上の割合93%]
  • 空腹感や食べ物への欲求が軽減されると、食生活の変更がより容易になる。[同87%]
  • 栄養的に完全な低エネルギー配合製品は、一時的な減量のために「完全な食事代替品」(すべての食事を置き換える)として、または「部分的な食事代替品」(1日1~2食を置き換える)として使用可能。[同87%]
  • GBTの用量調節段階では、十分な水分補給、過度の体重減少、吐き気、嘔吐、下痢などの消化器症状をモニタリングすることが重要。[同87%]
  • GBTの減量期間中は、1日につき実際の体重1kgあたり1.2~1.5g、または1日あたり1,600kcalの25~30%に相当する量のタンパク質摂取が推奨される。[同87%]
  • 推奨される食習慣として、意識的に食べることと、「心地よい満腹感」を感じたら食事を終えることが含まれる。[同80%]
  • 一般的には、個人の推定カロリー必要量より500kcal/日減らし、最低摂取量を1,000~1,200kcal/日とする段階的な減量アプローチが推奨されている。[同80%]
  • 食物繊維摂取量は、女性では1日あたり25g以上、男性では1日あたり30g以上、糖尿病患者では1日あたり35g以上が推奨される。[同73%]

体重減少維持期における考慮事項

  • 肥満関連のサルコペニアのリスクがある患者には、不十分なタンパク質摂取を予防または是正し、食物摂取量の大幅な減少による急激な体重減少に伴う筋肉損失を最小限に抑えるために、適切で高品質のタンパク質摂取が推奨される。[同意の強さが7以上の割合93%]
  • GBTによる減量維持期間中、タンパク質摂取量は1日につき実体重1kgあたり0.8g以上必要。[同93%]
  • GBT使用者は胆石を発症するリスクがあるかもしれない。そのため、脂溶性ビタミンの吸収を助け、胆嚢の排出を促進するために、1日1,200~1,500kcalの食事では25~60g、1日1,500~1,800kcalの食事では35~70gの健康的な脂質摂取が推奨される。食品としては、オリーブオイル、ナッツ類、種子類、脂肪分の多い魚など。[同67%]
  • 腎機能が保たれている65歳以上の高齢者は、筋肉量を維持しサルコペニアを避けるために、65歳未満の人よりも多くのタンパク質を摂取する必要がある場合がある。[同67%]

減量のためのGBTに伴う一般的な副作用の管理と軽減

  • 患者が吐き気や嘔吐を経験した場合、医療従事者は症状をモニタリングし、GBTの投与量を調整し、これらの症状を軽減または消失させるための個別的な食事療法を試みるべき。適切な水分補給を優先する必要がある。[同意の強さが7以上の割合100%]
  • 便秘症状は過体重/肥満の人に多く見られ、GBTの他の消化器系副作用よりも長く続くことが報告されている。一般的な推奨事項としては、十分な量の食物繊維を摂取し、水または無糖の飲料の摂取量を増やすことが挙げられる。食事から十分な食物繊維を摂取できない場合は、食物繊維サプリメントを検討する。食物繊維摂取量は、個々の患者の反応と忍容性に基づいて調整する必要がある。[同87%]

GBTを中止する必要がある場合の考慮事項

  • 可能であれば、管理栄養士に相談し、多領域にわたるチームのサポートを受けて集中的な行動療法を実施する。[同意の強さが7以上の割合100%]
  • GBTを中断する必要がある場合、食事療法はGBT開始時に推奨された食事療法と一貫性を保つ必要がある。体重のリバウンドを最小限に抑えるため、治療後の綿密なフォローアップと生活習慣への継続的な介入が推奨される。[同87%]

文献情報

原題のタイトルは、「Nutritional and lifestyle supportive care recommendations for management of obesity with GLP-1 - based therapies: An expert consensus statement using a modified Delphi approach」。〔Obes Pillars. 2025 Nov 11:17:100228〕 原文はこちら(Elsevier)

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スポーツ栄養Web編集部

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