ロシア軍がウクライナに過去最大537発の長距離攻撃を実施、中国製部品で大量生産が可能なドローンに偏重(JSF)

JSF軍事/生き物ライター
ウクライナ空軍より2025年6月29日迎撃戦闘、537飛来475排除(249撃墜+226未到達)

 2025年6月29日のウクライナに対するロシア軍の長距離ドローン・ミサイル攻撃は合計537飛来(ドローン477機+ミサイル60発)、これは1日あたりでは過去最大数となります。ただしドローンはおそらく半数以上は安価な囮無人機です。

 ドローンが477機(自爆無人機は200機前後と推定)という膨大な数の一方で、ミサイルの飛来数は60発であり、ミサイルのみでいえば2年前の基準ならば中規模レベルの攻撃です。ロシアはミサイルの増産にも取り組んでいますが劇的には増やせておらず、容易に数を増やせるドローン(民生部品を多く流用できるので中国から調達しやすい)に頼る傾向が拡大しつつあります。

2025年6月29日迎撃戦闘:ウクライナ空軍司令部

  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×4飛来0撃墜
  • イスカンデルM/KN-23弾道ミサイル×7飛来1撃墜
  • Kh-101/イスカンデルK巡航ミサイル×41飛来34排除(33撃墜+1未到達)
  • カリブル巡航ミサイル×5飛来4撃墜
  • S-300地対空ミサイル対地転用×3飛来0撃墜
  • 敵性無人機×477飛来436排除(211撃墜+225未到達)
ウクライナ空軍より2025年6月29日迎撃戦闘、537飛来475排除(249撃墜+226未到達)

※ウクライナ空軍が観測中に見分けが付かなくなり、Kh-101空中発射巡航ミサイルとイスカンデルK地上発射巡航ミサイルを纏めて集計してある。カリブル艦船発射巡航ミサイルは侵入経路が海からだったので判別されてある。

6月29日の迎撃率(※未到達を除いて計算) 

 長距離ドローンは迎撃率84%、亜音速巡航ミサイルは迎撃率82%、弾道ミサイルは迎撃率9%、転用ミサイルは迎撃率0%でした。低速目標(ドローンと巡航ミサイル)の迎撃率は悪くありませんが、飛来数が多く突破の数が出ています。高速目標(弾道ミサイルと転用ミサイル)は1撃墜しかないことから分かる通り、今日の攻撃ではパトリオット防空システム未配備地域が主に狙われています。後方のウクライナ西部にロシア軍の長距離攻撃のかなりの量が割かれました。(参考飛来図:monitorwar

 また現地からウクライナ中部のポルタヴァ州で撃墜されたキンジャールの残骸の報告がありますが(写真報告:Полковник ГШ)、ただし6月29日のウクライナ空軍の集計発表では弾道ミサイルの撃墜はイスカンデルM/KN-23が1発となっています。写真の残骸の形状はキンジャールまたはイスカンデルMまたはKN-23の可能性が非常に高い弾道ミサイルのセクションです。

Х-47М2 «Кинжал» : Kh-47M2「キンジャール(Kinzhal)」

  • Комплекс 9-А-7660 : システム名称「9-A-7660」
  • Ракета 9-С-7760 : ミサイル名称「9-S-7760」
  • Изделие 292 : 開発名称「製品292」

※キンジャールは極超音速ミサイルを自称しているが実態はイスカンデルM弾道ミサイルの空中発射型になる。NATOコードネームはAS-24キルジョイ(Killjoy)。キンジャールとはロシア語で短剣の意味。

 なお6月29日の迎撃戦闘中にウクライナ空軍のF-16戦闘機が1機墜落しパイロットが死亡しています。状況(宇空軍の説明)から目標のシャヘド自爆無人機を撃墜した際に残骸の破片を自機に浴びた事故の様です。戦闘機が夜間に目標の直ぐ真後ろに着いて機関砲を射撃するのは危険であり禁止すべきで、代わりに安価で大量装備できるレーザー誘導ロケット弾「APKWS」を戦闘機用として供与すべきでしょう。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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