【日下部保雄の悠悠閑閑】復活のプレリュード
プレリュードが復活した。ちょっと振り返ってみると初代は同心円上にある速度と回転のメーターが印象に残っている。4輪ストラットで1750ccのFF。取りまわしのしやすさはアメリカではセクレタリーカーとして女性にも人気だったようだ。
2代目はフロントがダブルウィッシュボーン、リアがストラット形式のサスペンションで端正でFFとは思えないスタイリッシュな2ドアクーペだった。プレリュード人気の始まりである。初期型はツインキャブだったと思う。全高は1295mmしかない。大きなグラスエリアも夢が膨らんだ。
そして今でも忘れられない3代目プレリュード。FFでは到底無理と思われたボンネット高を達成し、フェラーリよりも低いと言われた。目標を決めたら是が非でも実現するホンダの勢いを感じさせたクルマだ。そのための4輪ダブルウィッシュボーン。なおかつ乗用車では世界初となる4輪操舵を実現した。4WSはロッドを持った機械式。少し違和感があったが小まわりと高速でのスタビリティには目を見張った。この頃になるとエンジンも電子制御インジェクションで2.0リッター145PSの4バルブDOHCになっていた。
この後、プレリュードはデートカーからスポーツクーペに変身したが景気の後退と重なって5代目で幕を閉じた。技術的には5代目の左右駆動力配分を使って曲がりやすくしたATTSが興味深かった。耐久レースにも参加してホンダらしく技術にこだわったクルマであることに変わりはなかった。
さて24年ぶりのプレリュードはFFスポーツを極めるシビックTYPE Rの技術を取り入れたシャシーにシビックの2.0リッターe:HEVを組み合わせた4座クーペになる。
大空に飛翔するグライダーをイメージしたクルマ作りはデザインにも現われており、後半部の流れるカーブがテールエンドで完結するところがハイライトだ。
アップダウンのあるサーキットでは低重心でロールの少ないことと、ボディ剛性が高く正確なハンドリングが印象的だった。パワーこそシビックTYPE Rのような突き抜けるような気持ちよさはないが、シビックe:HEVで実証しているように手の内に入るパワーがプレリュードらしく好ましい。
ホンダ独自の2モーターハイブリッドシステムはS+ Shiftによってさらにドライブの楽しさに磨きがかかった。エンジン回転と速度の感覚が合わないのがハイブリッドの常だが、擬似的な変速を巧みに演出し、ドライバーに違和感を与えない。
シフトアップではパドル変速時にいったん出力を抑えてから出力を上げ、シフトダウンではブリッピングで変速を意識させる。これが憎らしいほど巧みなのだ。
ドライブモードはCOMFORTとGT、SPORTがあり、GTでは電子制御ショックアブソーバーはノーマルのまま、SPORTを選択するとメリハリのある硬さに変わる。GTはその名のとおりリラックスしたドライブに適している。これがSPORTに入れるとパワーフィールが鋭くなりステアリングレスポンスも向上する。路面をしっかりつかむ感覚だ。エキゾーストノートも張りのある音になるが、車内では気になるほど大きくない。
基本的にS+ Shiftに3つのドライブモードを組み合わせると6種類のプレリュードが現れるのだ。S+ Shiftを使わなければ穏やかなハイブリッドだ。
個人的には変速感があって気持ちよく走れるS+ Shiftだけでもよいのではと思ったほど。電動化が進む時代、プレリュードは新しいクーペの姿を提案しているようだ。
ちなみにシビックe:HEVにも乗ってみた。履いているタイヤも違うが軽やかなフットワークで改めてベースの良さを感じた次第。