アングル:日本株の「ニューノーマル」、PER20倍に拡大余地 名目成長率上昇など支え
[東京 13日 ロイター] - 最高値更新を続ける東京株式市場では、日経平均のPER(株価収益率)が17倍台半ばへと上昇、過去数年の中心レンジの上限を上抜けてきた。割高感を指摘する声が多い中、市場では投資家の目線となってきたPERのレンジ自体が切り上がる「日本株のニューノーマル(新状態)」の局面に入ったとの見方が出ている。名目成長率の上昇などを背景に、PERの上限は20倍程度まで拡大する余地があるとの指摘もある。
13日の東京株式市場で、日経平均は前日比556円50銭高の4万3274円67銭と前日に続き終値ベースの史上最高値を更新した。TOPIX(東証株価指数)も連日の最高値をつけた。
日経平均は6営業日で2700円を超す上昇となり、テクニカル面では短期的な過熱感を示唆するサインが出ている。過去数年、中心レンジ14―16倍程度で推移してきた日経平均のPERは12日時点で17.54倍台へ切り上がっており、割高感を意識する声も聞かれる。
とりわけ「昨日から今日にかけての上昇は理屈を超えつつあり、行き過ぎている」(T&Dアセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト兼ファンドマネージャー、浪岡宏氏)との指摘もある。
<低EPS下の「ニューノーマル」>
一方で、長らく続いたデフレからの脱却や東証改革を発端とした企業の変革、アクティビストの台頭などにより、企業の成長期待が高まっており、山和証券の調査部部長・志田憲太郎氏は「日本株がニューノーマルに入った」とみている。
志田氏は「過去20年程度の常識では、日本株はPER17.5倍から18倍が上限と考えられてきた」と指摘。EPS(1株当たり純利益)が改善しないと、それ以上の株価上昇は期待できないとの受け止めが市場にはあると話す。
一方、足元のEPSは2435円。7月末時点(2520円)に比べ切り下がっている中で、日経平均は上昇基調を維持している。
志田氏は、現在は海外勢を中心に「これまでとは違う世界に入ってきた」と認識する投資家も出始めたと指摘、欧米市場と比較して、日本のPER水準はまだ低いと見なされているという。
松井証券のシニアマーケットアナリスト・窪田朋一郎氏は、高PERの中での株高について「日銀はインフレが高止まりしても利上げできなくなっている。実質金利が深いマイナスを持続することを確認したうえで(株価は)上昇している印象がある」とみている。
実質金利が極めて低ければ、債券対比での魅力から、株価は多少割高でも選好されやすいとの見方のほか、実質金利が極めて低いことで、先行き円安が進んで高いPERが正当化されるとの見方が背景にあると窪田氏はみている。
三菱UFJアセットマネジメントのエグゼクティブ・ファンド・マネージャー、石金淳氏は、国内総生産(GDP)の名目成長率がプラスになっている足元と、名目成長率がゼロ付近だったバブル崩壊後の局面とでは、状況が異なると指摘する。
このため石金氏は、PER17倍台が「非常に割高」とはいえないとして「長期でみれば、PERのレンジが15―20倍程度へと切り上がる可能性はある」と話している。
<目先は利益確定と押し目買い交錯か>
一方、株価急騰の中で買い遅れた投資家も多いとみられ、押し目では買いが下値を支えるとみられている。三菱UFJAMの石金氏は、日経平均が7月中旬に3万9000円台後半で推移した局面では一部の投資家は手が出しにくかったと話す。目先は「過熱感を警戒した利益確定と、押し目買いが交錯する動きになるのではないか」との見方を示している。
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