巨大防潮堤、いずれ一斉更新「まるで時限爆弾」重荷背負う自治体は予算確保に四苦八苦 復興マネーを追う(上) 東日本大震災
広田湾が深く切れ込む岩手県陸前高田市の海沿いに観光遊歩道が続く。片方は街、もう片方は海を遠くまで見渡せる遊歩道は、実は防潮堤だ。高さは12・5メートル、総延長は3・9キロ。ビルの4、5階に相当する。
東日本大震災で津波に襲われ、壊滅的な被害を受けた陸前高田市は巨大防潮堤を建設。建設費340億円で5年後の平成28年に竣工(しゅんこう)した。大津波にさらされながら残った「奇跡の一本松」や復興祈念公園が位置し、復興の象徴的な場所でもある。
だが、内陸の造成地には空き地も目立つ。令和2年までの10年間に県人口は9%減少、沿岸12市町村では17%と減少が激しい。税収増は見込めない上、資材費や労賃高騰のあおりも受ける。
巨大防潮堤は宮古市田老地区、釜石市の釜石港などでも建設された。岩手県は令和6年度の1年間だけで、これらの維持管理費に約4億2千万円を負担した。耐用年数は一般に50年程度とされ、いずれ一斉に老朽化する。「まるで時限爆弾」(防災関係者)のように数千億円規模の更新費用がのしかかる。
県の担当者は「維持管理費は今後もずっとかかってくる。設備が機能するよう現状以上の予算を確保しなければ。どの自治体も大変だろう…」。
予算「不用率」低く
震災後、被災地にはこうした巨大インフラが多くできた。岩手県大槌町や宮城県気仙沼市には人口規模を超える復興住宅ができ、修繕積立金の不足が懸念される。宮城県女川町のかさ上げ地に建設された上下水道は水道料収入が想定を下回り赤字が生じている。
震災復興の名の下に誕生した巨大インフラは持続可能なものなのか。
復興事業のうち「住宅再建・復興まちづくり」に割かれたのは14年間で総額13兆5千億円を超える。主な内訳は、市街地のかさ上げや高台移転などに充てる復興交付金3兆3278億円▽橋や道路などの災害復旧公共事業3兆5711億円▽三陸沿岸道路などの国主導の新規事業に充てる「復興に向けた公共事業」4兆5620億円-。
予算額に対する未使用額の割合を示す「不用率」は一貫して低い。数字上は自治体のほぼ要望通りに執行されていることになる。
地方インフラは自治体が維持管理を担うのが前提だ。復興庁の担当者は「被災自治体や住民と議論して整備を決めたので、維持管理は各自治体の業務。それぞれ見通しを立てているはずだ」と話すが、岩手県は国に予算補助を要望しているという。国と自治体で認識に乖離(かいり)はないのか。
「縮小だけでは…」
一方、税収増が見込まれる産業インフラもある。岩手県大船渡市は市民や観光客が訪れる「街のシンボル」として、被災した魚市場を以前の数倍規模で再建した。復興交付金約8億6千万円を充てた。
国際基準にも合致する高度な衛生管理システムを導入し、製品を高品質化することで漁師の収入を安定させることに貢献している。震災後の平成23年度に38億円まで落ち込んだ水揚げ実績の金額は、令和6年度は67億円まで回復した。
インフラ整備や自治体施設の維持管理に詳しい岩手大の南正昭教授(都市計画)は「取捨選択も必要だが、縮小することだけを考えて地域社会をないがしろにしてはいけない」と指摘する。南教授は「沿岸には沿岸の暮らし方や歴史があり、漁協を中心に生活基盤が維持されている場所もある。地域社会とともに雇用を取り戻し、持続可能な街づくりをしていくべきだ」とした。
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東日本大震災から15年。国は岩手、宮城の復興はおおむね完了したとして、令和8年度からは「第3期復興・創生期間」とし、福島県の避難住民の帰還促進に主軸を置く。これまでに復興事業費40兆円超がどのように使われたのか。この先の課題とともに検証する。