【特集・シリーズ2025④】雪が降っても出没 相次ぐクマ被害 クマを寄せ付けない対策とは 専門家に聞く今後のクマの動向は…
特集です。シリーズ2025年、4回目は全国各地で出没や人的被害が相次ぎ、今年の漢字に決まった「熊」についてです。林から出てくる親子グマ。あるエリアを境に戻っていく姿が捉えられています。人の生活圏への侵入を防ぐためには…。県内のある自治体の取り組みです。世相を表す今年の漢字。毎年、日本漢字能力検定協会が全国から募集し、最も応募が多かった1字を発表します。力強くしたためられたのは…。「熊」。全国各地で出没や人的被害が相次ぎ、私たちの生活や経済活動にも深刻な影響を及ぼすクマ。4月、飯山市。寺澤達哉アナウンサー「クマはあちらで作業をしている男性を襲った後この道路を渡りました。そして住宅の窓ガラスを割り2階に上っていったということです」玄関などに残る血痕。男女3人が襲われました。6月、大町市の山林内では山菜取りに行っていた男性2人が襲われ、このうち1人が死亡。出没は市街地でも…。リポート「クマの姿があったのはこの辺りです。この通りは宿坊が立ち並び、日中、人通りの多い善光寺の仲見世通りからすぐの場所です」10月、未明に防犯カメラが捉えたクマ。3連休間近で大勢の人でにぎわう観光地への出没。ささらに、雪が積もる中でも…。近所の人「え?まだ?っていう感じで」下高井郡野沢温泉村では除雪作業をしていた男性が襲われ、けがをしました。被害は人だけではありません。上田市のリンゴ畑では器用に実を取って食べるクマの姿が。連日出没し、収穫のピークだった「サンふじ」およそ2トンを食べたとみられています。県によりますと、今年度、県内でのクマの目撃件数は6月の226件をピークに7月以降は減少傾向でしたが、10月には219件と再び増加。今月は29件で、去年、おととしと比べて秋以降の目撃件数の多さが目立っています。阿部知事 「県民の皆さま方の生命・身体しっかりと守り抜いていくことが極めて重要だと」県は11月、「ツキノワグマ対策本部」を設置。「人身被害ゼロ」を目標に掲げ、捕獲する上限数の引き上げなど5つの対策を柱としたパッケージをまとめました。中でも県が重点的に進めていきたいとしているのがゾーニングです。ゾーニングとは「クマが暮らす場所」と「人が暮らす場所」に分類。その中間地点はやぶなどを刈り取って「緩衝地域」に。クマが身を隠すスペースをなくし、里山に寄せ付けないようにする取り組みです。箕輪町 みどりの戦略課 井上貴之さん「ここの河畔林までは緩衝地域でこっちからは排除地域と区分けしている」現在、ゾーニングを積極的に進めているのが上伊那郡箕輪町です。山々に囲まれた箕輪町では去年、農道を1人で歩いていた男性がクマに襲われて負傷。目撃件数も急増していました。箕輪町 みどりの戦略課 井上貴之さん「農地も民家もあればここは小学校の通学路でもある今年は子どもたちがよく歩く道際のやぶを刈ろうと重点的な取り組みを行っている」ゾーニングを行う前は草が生い茂り、もしクマがいても見つけにくい状態ですが…。緩衝地域ではやぶを切り取り、見通しが良くなりました。つまり、クマが身を隠せない“居心地の悪い”場所に。夏に撮影されたクマの映像には、緩衝地域から人の生活エリアに出てきましたがすぐに山林に戻っていく様子が映っていました。この効果もあり去年、山際を中心に19件あったクマの目撃件数は今年10月末時点で9件と減少。箕輪町 みどりの戦略課 井上貴之さん「少なくとも刈り払いは3キロくらいやっていただいた。刈り払いした場所の目撃は抑えられているのである程度の効果はあったと思う。クマにとって居心地の悪い環境をつくっていく。(ゾーニングでは)クマの主要生息エリアを定めている。人とクマの生活圏をある程度明確にしていくことで、全体的に見ればそれぞれクマと人がある程度事故とかも起こりづらい環境の中で生活できるすみ分けを進めていければ」県内でゾーニングを導入する自治体は箕輪町など12市町村。県は来年度中に77市町村全てでの導入を検討しています。冬眠の時季なのに目撃情報が絶えないクマ。今後の動向について専門家は…。信州大学農学部野生動物対策センター竹田謙一センター長「山の実りは不作でそれほど豊かではないんですが。(人里におりて)餌がそれなりにあるという環境では冬眠に入らない。いくら気温が下がっても冬眠に入らない可能性がありますのでそういった意味では、今後、冬眠に入る個体もいれば場合によって入らない個体も見られるかもしれません」クマが人里に出てきやすい状況、つまりクマと人間のエリアの境界線が明確でないことも関わっていると指摘します。信州大学農学部野生動物対策センター竹田謙一センター長
「当然春先には餌を求めてクマは動き出しますので、そういった餌を探している一場面として里で人に出くわすとかでてくるかと。今まで以上に特に春先だけではなくても一年を通してクマに対しては十分警戒を持っていく必要はある」