15IAを追加調達、画期的なイスラエル製航空機も開発

イスラエルは2024年にF-15IAを25機購入すると発表していたが、イスラエル国防省は2日「F-35IとF-15IAを各1個飛行隊分(25機ずつ)追加購入する」と表明し、ネタニヤフ首相も「イスラエルは兵器と防衛技術の国内生産に投資する一環として画期的なイスラエル製航空機を開発する」と言及した。

参考:Israel buying more F-35s, F-15IAs fighter jets, Netanyahu announces

イスラエル国防省は2024年11月「次世代F-15購入に関する巨額な契約を締結した」「F-15IA×25機を52億ドルで購入する」「この契約には25機の追加購入オプションが含まれている」「納入開始は2031年で年4機~6機のペースで引き渡される」と発表。

העסקה נחתמה: משרד הביטחון רוכש טייסת של 25 מטוסי F-15 מתקדמים עבור חיל האוויר בשווי של 5.2 מיליארד דולר.

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— משרד הביטחון (@MoDIsrael) November 7, 2024

国防総省も2025年12月「イスラエル空軍向けF-15IA×25機の契約をBoeingに授与した」「この契約にはF-15IA×25機の追加オプションも含まれている」「Boeingに授与された契約の上限額は85億7,770万ドルだ」と発表し、Janesは「イスラエル国防省の発表額と金額が異なるのは25機の追加オプションが契約に含まれているためだ」「初期購入に関連する非反復費用を除いても契約額が2倍に跳ね上がった」「2031年から年4機~6機のペースでF-15IAが引き渡される見込みだ」と報じていたが、イスラエルはF-35IとF-15IAをさらに1個飛行隊分を追加購入すると表明した。

イスラエル国防省は2日「調達委員会がF-35Iを装備する第4飛行隊とF-15IAを装備する第2飛行隊向けの機体を同時取得する計画を承認した」「これは首相と国防相が承認した国防軍の10カ年戦力増強計画の第一弾となるもので、10カ年計画には3,500億新シェケル=約18.6兆円もの専用資金が割り当てられる」「今回の承認を受けて国防省はただちに米国との手続きに入るよう指示した」と発表。

שתי טייסות קרב חדשות לצה״ל: ועדת השרים להצטיידות אישרה את תכנית משרד הביטחון וצה״ל לרכש שתי טייסות קרב חדשות מסוג F35 ו-F15IA, בהיקף של עשרות מיליארדי ש”ח

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צילומים: לוקהיד מרטין ובואינג pic.twitter.com/8GoqxkWOk0

— משרד הביטחון (@MoDIsrael) May 3, 2026

ネタニヤフ首相も「我々のパイロットはイランの空域のあらゆる地点に到達でき、必要であればいつでもそうする準備ができている。我々は素晴らしい航空機と素晴らしいパイロットを擁している。強化に関して言えば我々はF-35とF-15IAという2個飛行隊の最新鋭機を取得している。これらの航空機はイスラエルの圧倒的な制空権を強化するものであり、その優位性はライジング・ライオン作戦、そして現在のロアリング・ライオン作戦で証明されている」と述べた。

イスラエルはF-35Iを3個飛行隊分=75機を発注済みなので、今回の追加取得を合わせるとF-35Iの保有数は100機に到達し、F-15IAに関して25機調達契約に含まれる追加購入オプションを行使した格好になり、F-15IAの保有数も倍増して50機になる予定で、米空軍もF-15EXの保有数を従来計画の129機から267機に増やす計画なのでボーイングのF-15EX受注は最大317機まで増加する可能性を秘めている。

出典:Israeli Air Force

Breaking Defenseは「イスラエルのF-35I保有数は100機に増加し、これよりも多くのF-35を調達する国は米国、英国、イタリア、日本のみだ」と報じたが、米国から周辺国に対する軍事的優位の確保=Qualitative Military Edge(質的軍事優位性)が保証されているイスラエルのF-35Iは米国以外のF-35とは完全に別物だ。

米国はF-35Iの基本ソフト上に独自ソフトウェアをインストールすることを認めているため、イスラエルはF-35Iが収集したデータを独自のC4システムとシームレスに共有可能で、イスラエル以外の米同盟国・パートナー国は同じことが出来ない。

出典:Elbit Systems

Lockheed Martinは2025年4月「Ramstein Flag Multi-Domain Operations Exercise中にオランダ空軍のF-35Aがオランダ軍のC4システムにリアルタイムでデータを送信することに成功した」「オランダ軍のC4システムはF-35Aのデータをロケット砲システム(恐らくPULS)に中継して地上目標を破壊することに成功した」「データ共有から目標への攻撃までにかかった時間は数分だった」「米国以外のF-35が機密情報=F-35が収集したデータを米国以外のC4システムとデータを共有したのは初めてだ」と発表。

これはF-35に採用されているLink16よりも秘匿性が高いMADL経由の通信を「Lockheed MartinのOpen Systems Gatewayを介してオランダ軍のC4システムに共有した」という意味で、F-35を購入しても収集データの活用に自由がないこと、如何に軍事分野のデータ主権が制限的で、米国と同盟国の間でもF-35が収集したデータ活用で大きな差があることを浮き彫りにしており、これをF-35I導入時から独自にできるイスラエルが如何に優遇されているかを物語っている。

出典:U.S. Air Force photo by Tech Sgt. Jacob Stephens

F-15IAも同様で、イスラエル国防省もF-15IA調達を初めて発表した際「F-15IAには画期的な独自システムを含む最先端の兵器システムが搭載され、航続距離やペイロードの拡張、あらゆる運用状況に対応した能力向上に関するアップグレードが施される予定だ」と述べているため、F-15IAは米空軍向けのF-15EXとは異なる構成になる可能性が濃厚で、独自開発のミサイルを統合するだけでも気が遠くなるような時間をかけて米国を説得しなければならない米同盟国・パートナー国とは根本的に違うのだ。

ちなみに、イスラエルには米国から累計3,100億ドル以上(経済援助と軍事援助の合計)の援助が流れ込んでおり、さらにオバマ政権は「2028年まで年38億ドルの軍事援助を提供する」と約束、この資金の大半はイスラエルが対外有償軍事援助を通じて調達する米国製兵器の支払いに充てられているが、ネタニヤフ首相はトランプ大統領やその支持者らが「無償援助を嫌っているためイスラエル支持の維持が困難になる」と判断して「米国からの援助を段階的に削減してゼロにしたい」と昨年述べていた。

出典:Prime Minister of Israel

2028年に期限切れを迎える対イスラエル援助について「今年5月に両国間の協議が開始される」「これまでの協議は援助額の増額に焦点が当てられてきたが、今回は対イスラエル援助額を最急的に縮小していくことに焦点が当てられる」と報じられており、無償援助を削減して各プログラム毎に共同研究・開発という形をとって技術やノウハウを資金と交換する方向にシフトするらしい。

イスラエルメディアも米国の援助削減について「これまで援助を理由に米国の意向へ従うことを余儀なくされ、主要防衛装備の調達先や協力関係も米国に限定されて防衛産業の発展や成長が阻害されてきたが、援助削減によって独自の政策を選択しやすくなる」「欧州との協力関係を拡大したり主要防衛装備の調達先を多様化することができる」と考えており、他国からみれば羨ましい状況でもイスラエルはイスラエルで色々思うことがあるようだ。

ישראל תהיה חזקה מאי פעם pic.twitter.com/jlJXW5wmMy

— Benjamin Netanyahu – בנימין נתניהו (@netanyahu) May 3, 2026

イスラエル国防軍の10カ年戦力増強計画は国内の防衛産業発展と規模拡大にも重点が置かれており、ネタニヤフ首相もF-35IとF-15IAの追加調達に言及した際「イスラエルは兵器と防衛技術の国内生産に投資する一環として画期的なイスラエル製航空機を開発する」と言及した。これが何を意味するのかは不明だが、もし画期的なイスラエル製航空機が次世代戦闘機を指しているのなら政治的な対米関係は新たな局面に差し掛かっていることを示唆しており、不変と考えられてきたイスラエルと米国の関係性にも変化が生じはじめている。

とにかく、イスラエルですら安全保障の後ろ盾を「米国への単独依存」から多様化や分散に方針転換しており、日本もいい加減「日米一体化」という硬直化した考え方から脱した方が良い。別に米国と手を切れという意味ではなく政治的な状況次第で米国が当てにならない状況が発生し、その時になって「こんなに尽くしたのに裏切られた」と恨むのではなく「ケースバイケースで対応できる政治的選択肢」を増やしておく方が不安定で不確実な時代に適しているのだ。

出典:U.S. Department of State

トランプ大統領が4年の任期を終えたら米国の不確実性が元に戻るなら、ウクライナとロシアの戦争が終われば2022年以前のリベラルな国際秩序に戻るならいいが、米国の大統領が誰になっても、ウクライナとロシアの戦争が終結しても不安定で不確実な時代は今後何十年も続く可能性が高く、カナダのカーニー首相もダボス会議での演説で「世界秩序の崩壊、心地よい物語の終焉、そして大国間の地政学がいかなる制約も受けない過酷な現実の始まり」について語っている。

“力を持たざる者は誠実さから始まる。私たちは大国間の競争という時代に生きていることを思い知らされている。ルールに基づく秩序が薄れつつあること、そして強者は成したいことし、弱者は耐えねばならぬ苦しみを味わうのだ。トゥキディデスの格言は避けられない国際関係の自然な論理が再燃していると示唆しており、この論理に直面したとき多くの国々は波風を立てないよう同調し、妥協し、トラブルを避けようとする。従順でいれば安全を買えると期待するのだ”

出典:左 WHITE HOUSE / 右 Taylor Budowich

“しかし、それは不可能だ。この世界で私たちにはどのような選択肢があるだろうか。チェコの反体制派ヴァーツラフ・ハヴェルは『力なき者の力』というエッセイを1978年に書いた。その中で彼は単純な問いを投げかけた。共産主義体制はどうやって維持されているのか?と。彼の答えはある八百屋の話から始まる。その店主は毎朝、店の窓に「万国の労働者よ、団結せよ!」というスローガンを掲げるが、彼を含めた誰もがそれを信じていない。これはトラブルを避けるため従順であることを示すためのもので、上手くやっていくためにスローガンを掲げるだけなのだ”

“そして、あらゆる通りのあらゆる店主が同じことをするため共産主義体制は存続することになる。嘘だと分かっているスローガンを掲げる儀式に一般人が参加することで体制が維持されるのだ。ハヴェルはこれを「嘘の中で生きる」と呼び、共産主義体制の持続性は真実にあるのではなく「誰もがそれが真実であるかのように振る舞うという意思」から生まれるのだ。逆に共産主義体制の脆さも同じ根源にある。たとえ一人でも振る舞うのをやめたとき、つまり八百屋が看板を下ろしたとき体制の幻想に亀裂が入り始めるのだ”

出典:Truth Social

“今こそ、企業も国家もスローガンを下ろすべき時だ。何十年もの間、カナダのような国々は「ルールに基づく国際秩序」と呼ばれるものの下で繁栄してきた。私たちは国際秩序という枠組みに加わり、その原則を称賛し、その予測可能な世界から利益を得てきた。その保護の下で価値観に基づいた外交政策を追求することができたが、同時に国際秩序の物語が部分的には偽りであることも知っていた。強者は自らの都合に合わせて例外を作り、貿易ルールは不均衡に適用され、国際法は被告や被害者の立場によって厳格さが変わるということを”

“勿論、このフィクションは枠組みに参加した多くの国にとって有益で、米国の覇権は開かれた航路、安定した金融システム、集団安全保障、紛争解決の枠組みといった公共財の提供を貢献した。だからこそ我々は米国を支持するというスローガンを掲げて儀式に参加したのだ。だからこそルールに基づく国際秩序のレトリックと現実の乖離を指摘してこなかったのだ。しかし取引はもう成立しない。正直に言おう。私たちは秩序の移行期ではなく崩壊期の真っ只中にいる”

出典:Mark Carney

“これに対処するには共通の基盤を持つパートナーと課題ごとに機能する連合を築くことだ。場合によっては大多数の国家がこれに参加することになるかもしれない。 そして貿易、投資、文化にわたる密接なネットワークを構築し、将来の課題や機会に備える。中堅国家は共に行動しなければならない。なぜなら「交渉テーブルに着けなければメニューに載せられて食い物にされる」からだ。大国は独力でやっていく余裕がある。市場規模、軍事力、条件を押し付けるレバレッジを持っているが中堅国家にはそれがない”

“しかし、私たちが覇権国と二国間交渉するときは弱者の立場で交渉することになるだろう。提示された条件を受け入れ、誰が最も従順であるかを競い合うことになる。それは主権ではなく従属を受け入れながら主権がある振りをしているだけだ。大国間の競争世界において中間に位置する国々には選択肢がある。大国の寵愛を求めて互いに競い合うか、あるいは団結して影響力のある「第三の道」を切り開くかだ。ハードパワーの台頭に目を奪われ、正当性、誠実さ、そしてルールの持つ力が依然として強力であることを見失ってはならない。私たちが共にそれを行使することを選びさえすればそれが可能だ”

出典:首相官邸

“ここでハヴェルの話に戻ろう。中堅国家にとって「真実の中で生きる」とはどういう意味だろうか? それは現実を直視することだ。ルールに基づく国際秩序が今も機能しているかのように持ち出すのをやめることだ。システムをありのままに呼ぼう。それは大国間の競争が激化し、最も強力な国々が経済統合を威圧の武器として使い、自国の利益を追求している時代であると。これに対抗するには一貫して行動することが重要だ。同盟国にも競合国にも同じ基準を適用することが肝要だ。ある中堅国家が大国の経済的脅迫を批判しながら別の脅迫に沈黙を守るとき、私たちは大国のスローガンを掲げていることになる”

トランプ政権にとってイタリアのメローニ首相は「米国の立場を支持して対立する欧州の指導者との仲介に尽力する忠実な同盟者」であり、トランプ大統領自身もメローニ首相のことを「欧州の頼れる同盟者であり偉大な指導者だ」と称賛してきたが、イタリアメディアは両者の決定的な決裂を受けて「ホワイトハウスと誰が最も親密であるかを競うチキンレースは終わった。もはや誰にとってもその競争に意味はない」と切り捨てており、トランプ大統領の復権から僅か1年強で波風を立てないよう同調し、妥協し、トラブルを避け、従順でいれば安全を買えると期待する国は激減した。

出典:Palazzo Chigi-Presidenza del Consiglio dei Ministri

繰り返しなるが、米国に従順でいれば安全を買えると期待する国が激減しただけで米国と手を切ったのではない。利害が一致すれば握手することがあっても「安全保障を米国にだけ依存しない方向」にシフトしただけで、欧州を含む多くの西側諸国は安全保障を多様化・分散する時代に突入しており、米国の顔色を伺うだけの国が激減しただけだ。

トランプ政権に同調していた欧州の極右政党=フランスの国民連合、ドイツのための選択肢、フィデス・ハンガリー市民連盟ですら「トランプ政権に近いと映るのは不利益しかない」と考えて距離を取り始めており、この1年強で様々なものが様変わりした。

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※アイキャッチ画像の出典:Israeli Ministry of Defense

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