【米国市況】ナスダック100が最高値、パウエル議長発言で-144円後半

24日の米株式相場は続伸。中東情勢の緊張緩和や、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げの可能性についてバランスの取れた発言をしたことが好感された。米国債利回りとドルは低下。円は対ドルで値上がりし、一時144円51銭を付けた。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6092.18 67.01 1.11% ダウ工業株30種平均 43089.02 507.24 1.19% ナスダック総合指数 19912.53 281.56 1.43%

  S&P500種株価指数は2営業日続伸。ナスダック100指数は1.5%上げて、2月以来の最高値更新となった。

  短期金融市場は年内2回の利下げを完全に織り込んだ。9月の方が有力視されているが、7月の確率も1週間前時点のほぼゼロから20%近くに上昇した。米消費者信頼感指数が低下したことも利下げ観測を補強した。

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  パウエル氏は下院金融委員会の公聴会で7月利下げの可能性について問われ、「インフレ圧力が本当に抑制されたままだということになれば、早めに利下げに踏み切ることになろう」と回答。その上で、「特定の会合を指すことは避けたい。経済は依然として強く、急ぐ必要はないと考えている」と付け加えた。

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  ナットアライアンス・セキュリティーズのアンドルー・ブレナー氏は、パウエル議長は「市場にタカ派姿勢を確信させる」ことができなかったと指摘。「パウエル氏はこの日示したよりもずっと速いペースで利下げを実施することになると市場はみている」と指摘。「7月の利下げについてはまだ分からない。弱い雇用統計が必要になるだろう。インフレは今のところ無視してよさそうだ」と話した。

  市場は中東情勢にも引き続き注目している。 トランプ米大統領はこの日、自身が前日発表した停戦合意をイスラエルとイランがいずれも破ったと非難し、合意を順守するよう両国に強く求めた。これを受けて、現時点でイスラエルとイランの双方が停戦合意を順守しているもようだ。

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  カロバール・キャピタル(シカゴ)のハリス・クルシッド最高投資責任者(CIO)は「市場はようやく一息つけるようになってきた」と指摘。「中東情勢の緊張緩和と、パウエル議長がより柔軟な姿勢を示したことが相まって、株式市場に上昇の余地をもたらしている。ボラティリティーもどうにか落ち着いている」と述べた。

  米連邦公開市場委員会(FOMC)は先週、政策金利を据え置いた。FRBのウォラー理事とボウマン副議長はここ最近、7月の利下げの可能性に言及している。

  エバコアISIのクリシュナ・グーハ氏は、「均衡姿勢のパウエル氏」が市場の注目を7月ではなく9月の利下げにとどめたと指摘。「当社とって最も興味深かったのは、パウエル氏が『2回あるいはそれ以上の利下げ』で政策金利が中立水準に戻るかもしれないと発言した点だ」とし、「金融政策は『やや』景気抑制的であるに過ぎないとの認識は、FRBが関税によるインフレと雇用両方への影響を見極めようとする中で、政策を維持することを正当化する」と続けた。

国債

  米国債は上昇。6月の米消費者信頼感指数が予想外の低下となったことに加え、パウエルFRB議長が金融政策について「多くの道筋があり得る」と述べたことが追い風となった。2年債入札を順調にこなしたことも相場を支援した。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.83% -4.1 -0.85% 米10年債利回り 4.29% -5.3 -1.22% 米2年債利回り 3.82% -4.5 -1.15%     米東部時間 16時45分

  金融政策に敏感な2年債利回りは一時6ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)近く下げて約3.81%。パウエル氏はインフレ減速と雇用の鈍化が見られれば、年内に利下げが前倒しで実施される可能性があると述べた。

  国債が上昇する中でも、この日実施された2年債入札(発行額690億ドル=約9兆9800億円)の需要は衰えなかった。最高落札利回りは3.786%と、入札前取引(WI)水準をやや下回ったほか、前回入札時の3.955%も下回った。

  BMOキャピタル・マーケッツの米金利ストラテジスト、ベイル・ハートマン氏は「米国債の上昇はまず、消費者信頼感の予想外の低下が引き金になった」と指摘。「パウエル氏は予想通り中立的だったが、利下げが早まるシナリオに柔軟な姿勢を見せたことで、利回りはじりじりと水準を切り下げた。それが7月の利下げに関する質問への回答だったにもかかわらずだ」と話した。

  アポロ・マネジメントのチーフエコノミスト、トーステン・スロック氏は「9月、または7月に利下げを実施するべきかといった議論が公に行われているのは極めて異例だ。特に、前年比のインフレ率が上昇すると予想されている中ではなおさらだ」とブルームバーグTVで述べた。

外為

  外国為替市場ではドルが下落。米消費者信頼感が予想を下回ったことや、パウエルFRB議長の議会証言が影響した。イランとイスラエルの停戦合意が再開したこともドルが売られる要因になった。

  主要10通貨では対ドルで円やスイス・フランの上げが目立った。円は対ドルで一時1.1%高の1ドル=144円51銭まで買われた。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1201.53 -6.69 -0.55% ドル/円 ¥144.90 -¥1.25 -0.86% ユーロ/ドル $1.1610 $0.0032 0.28%     米東部時間 16時46分

  ブルームバーグ・ドル・スポットは消費者信頼感の発表後に一時0.8%下げた。

  パウエル氏は証言で「当面は、政策スタンスの調整を検討する前に、経済の進路についてより多くの情報が得られるのを待つ態勢が整っている」とも説明した。

  ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は、政策変更が労働市場とインフレに及ぼす影響を当局者が分析する間、金利を据え置くことは「完全に適切だ」との認識を示した。

  クリーブランド連銀のハマック総裁は、現在の金利はわずかに景気抑制的な水準にあるとの認識を示し、当局が当面は政策金利を据え置く可能性があると述べた。

  アトランタ連銀のボスティック総裁は、利下げは必要ないとの考えを示した。企業が関税の引き上げに対応して年後半に値上げを計画していることや、雇用市場が依然として安定していることを理由に挙げた。ロイター通信とのインタビューでの発言

原油

  ニューヨーク原油相場は大幅続落。イスラエルとイランの停戦を仲介したトランプ大統領が、イランによる原油輸出を容認する意向を示唆したことが手掛かり。

  ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は、ここ2日間の下落率が15%近くに達した。中東を揺るがした両国の衝突が著しく緩和する中で、原油相場は大きく下落している。トランプ氏はソーシャルメディアで、中国はイラン産原油の購入を継続できると投稿。また中国が米国産原油も「大量」に購入することを期待していると記した。イスラエルとイランの双方が緊張緩和の姿勢を示したことを手掛かりに、原油は一段と値を下げた。

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  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は、中国がイラン産原油の購入を継続できるとのトランプ大統領の発言は、イランに圧力をかけるため原油輸出に制裁を科してきた米国の戦略から大きな転換だと指摘。こうした緩和措置は停戦の順守や核開発の意図に関する確約が前提だとみられていると述べた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物8月限は、前日比4.14ドル(6%)安の1バレル=64.37ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント8月限は6.1%下落し、67.14ドル。

  金スポット相場は反落。約5週間ぶりの大幅安となった。イスラエルとイランが停戦合意を順守しているとの見方から、安全資産としての金の需要が後退した。 

  金スポットは一時2.2%下落し、1オンス=3295.62ドルをつけた。日中の下げとしては5月16日以来の大きさ。 

  RJOフューチャーズのボブ・ハーバーコーン氏は、「現在のところ相場を動かす主な要素は中東での緊張だ」と述べた。地政学的緊張の高まりに伴う安全資産需要などで、金は今年に入り27%上昇している。

  この日はまた、米経済指標やパウエルFRB議長の議会証言も意識された。

  ハーバーコーン氏は「現在FOMCには強い利下げ圧力がかかっている。もし利下げが実施されれば、金には追い風になるだろう」と述べた。

  金スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、51.82ドル(1.5%)安の1オンス=3316.66ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は61.10ドル(1.8%)下落し、3333.90ドルで引けた。

原題:Nasdaq 100 Hits Record as Yields Fall on Powell: Markets Wrap(抜粋)

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