外国人政策、「共生」から「秩序」へ転換 生活保護の見直しも検討

鈴木春香 二階堂友紀 高絢実

外国人の受け入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議で発言する高市早苗首相(手前から2人目)=2025年11月4日午前10時40分、首相官邸、岩下毅撮影

 高市政権が厳格化を進める外国人政策について、政府は23日、施策の方向性を記した「総合的対応策」をまとめた。外国人の生活保護受給をめぐり、対象者の見直しを検討する方針を新たに明記した。人道上の観点から支給されてきた対象が見直されることになれば、議論を呼びそうだ。

 この日の関係閣僚会議で決定した。外国人との「共生」を中心とした従来の考え方を転換し、「秩序」を共生社会の土台と位置づけた。そのうえで、日本国籍取得や永住許可の要件の厳格化、社会保険料の未納や医療費の不払いへの対応強化などを盛り込んだ。

 生活保護について政府は、外国人は生活保護法上の受給対象者にならないという立場だ。ただ、旧厚生省が1954年に出した通知に基づき、人道上の行政措置として、一部の外国人の利用を可能としている。

 現在の対象は、在日コリアンなどの特別永住者難民認定を受けた定住者、永住者など。

 複数の政府関係者によると、難民申請中の人に別の支援金と重ねて支給している例があれば見直す方向だ。このほか政府内には「公共の負担にならない」との要件を満たして永住許可を受けた人が、生活保護を利用する例を問題視する声がある。永住者が受給することの妥当性や、永住許可の収入要件の引き上げなども検討されている。

 厚生労働省によると、2023年度の生活保護の受給者は約202万1千人。世帯主が外国人の受給者(配偶者や子どもは日本人の場合を含む)は約6万6千人で、全体の3%にとどまる。在留資格別の受給データはなく、27年6月からマイナンバーを使って把握する。

 この日の閣議では、外国人労働者の新制度として27年度から始まる「育成就労」と既存の「特定技能1号」について、28年度末までの受け入れ上限を計約123万2千人とする方針も決定した。

記事の後半では、高市政権の3カ月で何が変わったのか、検討の舞台裏をお伝えします。

外国人の受け入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議で発言する高市早苗首相(右)。左は小野田紀美・外国人との秩序ある共生社会推進担当相=2025年11月4日午前10時41分、首相官邸、岩下毅撮影

 「共生」から「秩序」へ――。外国人政策をめぐる政府の基本方針が刷新された。高市政権の発足から3カ月で、何が変わったのか。

 小野田紀美・外国人担当相は23日、新たな総合的対応策をとりまとめた後の記者会見で、「秩序が共生社会の土台になるという新たな視点のもと、国民の安心・安全のためのパート(項目)を設け、関連政策を網羅的に示した」と述べた。

 総合的対応策の策定は、2018年に外国人労働者受け入れの特定技能制度が創設されたことを受け、「受け入れ・共生」の取り組みを進めるためとして始まった。

 毎年見直されており、石破政権の昨年6月に改訂された際は、冒頭の基本的な考え方に「外国人もまた、日本のルールや制度を理解し、責任ある行動をとることが重要」と追記された。

 だが小野田氏は、共生に軸足を置いた従来版の内容に「ぜんぜん納得していなかった」(内閣官房関係者)という。

 結局、基本的な考え方は全面的に書き換えられた。「全ての外国人を孤立させることなく、社会を構成する一員として受け入れていく」といった記述はなくなり、「ルールを逸脱する行為や制度の不適正利用に、国民が不安や不公平を感じる状況に対処する必要がある」などと記された。

 具体的な項目でも、従来版では「相談体制の強化」「共生社会の基盤整備」などが並んだが、今回は「国民の安心・安全のための取り組み」として厳格化を前面に打ち出した。出入国在留管理庁幹部によると、施策の内容は「秩序6割、共生4割」になったという。

 最終的に、改訂を超える新規策定の位置づけとなり、衆院解散の23日に決定された。官邸幹部は「成果としてアピールできるから選挙前にやることにした」と語った。

担当相、ネット世論を意識

 高市早苗首相は今回、国民が不安や不満を抱いている課題に、漏れなく対応するよう求めたという。制度の「適正化」として挙げられたのは、税・社会保険料の未納や、医療費の不払い対策、そして生活保護の受給対象者の見直しなど。

 政府関係者は「小野田大臣はネットを見て、世間で問題になっていることを拾えているかチェックしている」と話す。

 ただ、例えば生活保護については外国人の受給状況に関する詳しいデータがない。これから国籍や在留資格別のデータを把握する方針だが、実現まで1年以上かかる。政府関係者は「まずはサンプル調査などを行う必要がある」と話す。

 政府の有識者会議は今月の意見書で、制度の適正化にあたり「事実関係や実態を把握せず、憶測等に基づいた対応をとることは厳に慎むべきだ」と指摘した。今後は客観的な根拠に基づく検討が求められる。

政府がまとめた主な外国人政策

 日本国籍取得の居住要件を原則10年以上に引き上げ▽在留外国人が日本語や制度・ルールを学ぶプログラムを創設し、永住許可や在留審査で考慮▽医療費の不払い、税・社会保険料の未納への対策強化▽観光客の一部都市への集中是正と分散推進▽不動産移転登記の際に国籍の届け出を義務化

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この記事を書いた人

二階堂友紀
東京社会部|法務省担当
専門・関心分野
法と政治と社会 人権 多様性
高絢実
くらし報道部|社会保障担当
専門・関心分野
外国人、在日コリアン、社会保障全般

高市早苗首相が「国民の不安」を理由に外国人政策の厳格化を進めています。検討テーマは多岐にわたり、幅広い施策が対象にあがっています。最新ニュースをまとめてお伝えします。[もっと見る]

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