サーブが無人戦闘機の独自コンセプトを発表、グリペン後継需要は2055年以降

サーブはスウェーデン空軍創設100周年を祝う一環として将来の無人戦闘航空システムのコンセプトモデルを22日に公開、招待したメディア関係者にも今後の見通しについて説明を行い、スウェーデンの次世代戦闘機に関する大まかなロードマップが判明した。

参考:Saab showcases full-scale uncrewed aircraft concept 参考:Saab Unveils Stealthy Supersonic ‘Fighter Drone’ Concept

スウェーデンと英国は2019年7月に「両国の要求を満たす新しい概念の開発」と「戦闘機に関する共同研究を」行うことで合意し、当時「テンペスト・プログラムにスウェーデンが参加した」と報道されたが、スウェーデンはチーム・テンペストには参加せず、サーブが独自にBAEシステムズと協力を行うという範囲での関与に留まり、英国、イタリア、日本が立ち上げた次世代戦闘機開発のための新たな枠組み=Global Combat Air Programへの参加にも否定的な立場だ。

出典:GlobalCombatAir

日本とスウェーデンが締結した防衛装備品・技術移転協定には「GCAPの協力」に関する内容が含まれていたため「最終的にスウェーデンがGCAPに参加する可能性がある」という報道もあったが、スウェーデン国防装備庁のラース・ヘルムリッヒ氏は2023年のパリ航空ショーで「スウェーデンは次世代機を必要とするペースが他国と異なっており、我々が早々に新しい戦闘機計画に着手したのはベストな状態で決定を下すためだ」と説明、空軍司令官のジョナス・ウィクマン少将も「我々は第6世代機に関して他国と異なる意図で協力しており、現時点での取り組みは『調達プログラム』ではなく『事実確認プログラム』だ」と述べた。

スウェーデン関係者はマドリードの会議で「1年前に英国やイタリアとの協力(テンペスト・プログラムのこと)から手を引いた」「我々の次期戦闘機に関する調達方針が決まるのは2031年だ」「現在の選択肢は『独自で開発するか』『誰かと共同開発するか』『完成品を購入するか』の3つだが、今のところ何も決まっていない」「(調達方針に情報を提供する目的で)次期戦闘機に求められるコンセプトを2023年から2025年までに、関連技術を2026年から2030年までに開発する予定だ。この中で運用分析、システムコンセプト、デモンストレーターなどに取り組み、デモンストレーターの開発計画は2026年開始を予定している」と言及。

出典:SAAB

サーブは2024年3月「スウェーデン軍国防資材局から次世代戦闘機の概念研究を受注した」「これはシステム・オブ・システム(System of Systems)の観点に立った有人及び無人ソリューションの概念研究、技術開発、実証実験が含まれ、サーブは軍、各研究機関、産業界のパートナーと緊密に協力していく」と発表、2025年10月には「次世代戦闘機の概念研究継続に関する契約を受注した」と発表、この契約には次期戦闘機に提案されている技術検証機開発と初飛行が含まれており、検証機の初飛行は2027年を予定している。

サーブはスウェーデン空軍創設100周年を祝う一環として将来の無人戦闘航空システムのコンセプトモデルを22日に公開し、招待したメディア関係者に今後の見通しについて説明を行い、スウェーデンの次世代戦闘機に関する大まかなロードマップが判明した。

出典:SAAB

スウェーデンは有人の次世代戦闘機を単独で開発するのか、これを完全に放棄するのか、海外の第6世代戦闘機開発計画に参加するのかは現在も検討中で、この決定は2028年から2030年の間に下される見込みだ。サーブはスウェーデン空軍がグリペンEの後継機=次世代戦闘機を必要とする時期を「2055年以降」と見積もっており、現在はスウェーデン国防省の資金援助で自律型協調プラットフォーム=Autonomous Collaborative Platform(ACP) と命名された2種類の無人技術実証機を開発中している。

このACPは米空軍の協調戦闘機(CCA)と同じ類の無人戦闘機に関する技術実証機で、グリペンE/Fと同じF414を搭載する技術実証機A1は「低観測性を備えた無人機を製造して飛ばすことができる」と実証するためのもの、F414を搭載する技術実証機A2はA1とは異なるデザインの設計でウェポンベイを搭載しており、A1は今後15ヶ月以内に飛行する予定だが、ここからグリペンの僚機として機能する実用タイプのACPを開発するかどうかはスウェーデン国防省の判断次第だ。

22日に公開したACPのコンセプトモデルは「実用タイプのACP開発を受注した場合の可能性」を示すための実物大モックアップ=A3で、サーブ側は「A3のようなACPはグリペンEに大きなメリットをもたらすと考えているが、現時点でA3開発は確約事項ではない」と説明している。

サーブが考えている将来戦闘航空システムは「早期警戒管制機のグローバルアイと連携しながら、1機のグリペンEが戦術任務指揮官として複数のACP(2機から3機を想定)と連携していく」というもので、ACPのコストはグリペンEの約半分=3,500万ドルから4,000万ドルになると予想、グリペンE/F運用国だけでなく他の有人プラットホームとも連携していく可能性も示唆し、この構想にスウェーデン国防省が乗ってくれば2030年頃に開発契約の締結、2030年代初頭にA3の初飛行、2030年代半ばまでに初期運用能力を獲得できると考えているが、顧客確保の見込みがなければA3開発に自社資金の投入は難しいらしい。

出典:SAAB

スウェーデン空軍はグリペンE導入を始めたばかりなので次世代戦闘機の需要は25年後から30年後=2055年以降となり、サーブはグリペンE後継機がどのような展開になるにせよACPプログラムを通じて無人戦闘機分野の先駆者になることを望んでいるものの、潜在的な顧客を確保できないままACPプログラムに自社資金を投資する気はなく、スウェーデンやサーブにとってグリペンEの後継問題や無人戦闘機分野への投資はまだまだ流動的なものなのだろう。

関連記事:SAABが次世代戦闘機の概念研究継続契約を受注、検証機の初飛行は2027年 関連記事:SAAB、スウェーデンから次世代戦闘機システムの概念研究を受注 関連記事:スウェーデンの次期戦闘機問題、グリペンの後継機調達は2031年に決定 関連記事:スウェーデン、今すぐ欧州主導の第6世代機開発に参加する必要性はない 関連記事:スウェーデン空軍、次世代戦闘機の戦略立案を11月まで終える

※アイキャッチ画像の出典:SAAB

関連記事: