悲劇の深層にあったものは 辺野古沖転覆事故から半年、『偽りの「平和学習」』30日発売
米軍基地移設に反対する抗議船に高校生を乗せて移設工事を見学させる。これはそもそも「平和学習」と呼べるのか―。沖縄・辺野古沖で令和8年3月16日、同志社国際高校2年の武石知華さんら2人が亡くなった転覆事故から半年。同校を巡る教育現場の偏向ぶりなど産経新聞取材班が報じてきた数々のスクープ記事を加筆、再構成した『偽りの「平和学習」』(産経新聞出版)が30日、発売される。これまで聖域とされた沖縄の「平和学習」を巡る高校と反基地団体との知られざる関係に、メディアとして初めて切り込んだ一冊だ。
9/30発売【書籍】偽りの「平和学習」~沖縄・辺野古沖転覆事故の深層≪産経新聞取材班 著≫
文科省を動かした特報
抗議船の無登録運航、高校側のずさんな安全管理の実態、高校への家宅捜索、引率教員の挙動をとらえた防犯カメラ映像…。産経新聞取材班は今回、他紙をリードするスクープを連発してきたが、その中でもインパクトが大きかったのが、反基地団体と学校との深い関係を示唆する文書を報じた3月28日掲載の記事だ。
同志社国際高校が過去に実施した研修旅行の際、生徒に配布したしおりに、反基地団体による座り込みへの参加を呼びかける内容を掲載。学校による政治的活動を禁じた教育基本法に抵触する可能性が浮上した。
「まさか、ここまでひどいとは…」。この報道に文科省幹部は絶句。一本のスクープが、文科省を突き動かす転機となった。調査に乗り出した文科省は、同校の辺野古沖での学習プログラムについて、戦後初めて教育基本法違反と認定。本書では、高校側と文科省との間での駆け引きや違反認定までの水面下での動きなど生々しい内幕を詳述している。
「反基地」牧師との接点
ではなぜ、そもそも同志社国際高校は辺野古との接点をもったのか。取材班はこの点についても精力的に取材を重ねた。
キーパーソンとなったのが、今回の転覆事故で命を落とした金井創船長だ。牧師として同校との関係を持っていた金井氏は北海道生まれ。一度は銀行員となったが、父親と同じ牧師の道を歩む。本書では、キリスト教団体内部の権力闘争を絡めながら、金井氏が辺野古にたどり着くまでの軌跡を、複数の関係者の証言で裏付けた。国家の抑圧下にある人との共闘をキリスト教徒の使命とする金井氏が、いつしか本土の犠牲になった沖縄の人々との共闘に目覚める流れを浮き彫りにした。
その金井氏から令和4年、辺野古沖での乗船プログラムを提案された高校側は何の疑念もなく、危険性を顧みることもなく受け入れ、そして悲劇が起きた。
名指しの批判、取材の困難さ
本書では取材現場の舞台裏についても書かれている。取材班は数多くのスクープを報じてきたが、その取材環境は必ずしも順風ではなかった。むしろ、産経新聞の報道量が目立ったこともあり、基地反対派からは「痛ましい事故の最悪の政治利用」などと疑念を招いたり、取材する記者が名指しで批判にさらされたりしたこともあった。
実際、抗議船を運航する団体の共同代表は、講師を務めた受講者限定の勉強会で産経新聞について「ちょっとしたことに尾ひれをつけて、違う方向に持っていって報道している」などと批判した。そうした声に対し、取材班は音声データや関係者の証言などを積み重ね、事実ベースの報道で論破した。
反対派から批判される一方、危険な抗議活動を放置した玉城デニー前知事に転覆事故に関する認識を質し続けた大竹直樹那覇支局長は、本書のまえがきでこう記している。
「それでもひるまず、取材を続けてこられたのは、真相究明を求める遺族の思いに直接、接してきたからである。事件・事故にイデオロギーは関係ない。右も左もない。われわれ産経新聞取材班は、事故に至った遠因も含め、背景を虚心坦懐に取材してきた。そして、全容が解明されるその日まで、取材を続けるつもりだ」
本書は真相解明の緒についたばかりの事故後、約半年の取材記録である。