金はどこから来た? 20年前のデータから明らかになった新説「マグネターフレア」
金のような重い元素がどのように生まれたのか? この疑問は多くの天文学者たちが長年研究してきました。
そして、ついに新たな研究結果によってその手がかりが示された可能性があります。
20年前のデータから新発見
最新の研究によると、「マグネター」と呼ばれる非常に強力な磁場を持つ中性子星が、宇宙初期に金などの重元素を作った可能性があるといいます。
この証拠は、20年前のデータの中に埋もれていました。2004年に観測されたマグネターのフレア(閃光)は、膨大なエネルギーを宇宙に放出しました。こうした爆発は、マグネターの地殻が「スタークエイク(星の地震)」によって割れることで起こり、高エネルギーの放射線が放たれます。
ヨーロッパ宇宙機関(ESA)のガンマ線天文衛星「INTEGRAL」(すでに運用終了)は、その際に謎のガンマ線信号を捉えていました。最近になって、研究チームはその信号が重元素生成の“指紋”に酷似していることを突き止めたのです。
マグネターのフレアが金の起源?
コロンビア大学やルイジアナ州立大学の研究者を含むチームは、この巨大フレアが放つ放射線を詳しく調査し、他の原子から重元素の原子が形成される「核合成(nucleosynthesis)」の証拠を探しました。その結果、マグネターが金のような重元素を作る“宇宙の工場”になっていることが判明したのです。
これは世紀の疑問に答える研究であり、ほとんど忘れられていた20年前のアーカイブデータを使って謎を解いたものです。
と、研究共著者であるルイジアナ州立大学の天体物理学者であるEric Burns氏はNASAのリリースで語っています。
従来、金やプラチナ、ウランといった重元素の起源は、中性子星の合体という説が有力でした。これらは星同士が激しく衝突して重元素を宇宙に撒き散らす現象ですが、発生頻度が低く、宇宙史の中でも比較的後期に起こるものとされています。対照的に、マグネターはより古くから存在しており、そのフレアによって初期宇宙で重元素が作られた可能性があるのです。
今後のNASAミッションに期待
チームを率いたコロンビア大学の博士課程学生であるAnirudh Patel氏は、マグネターフレアの後に急速な中性子捕獲反応(r過程)が起きて重元素が生成される仕組みをモデル化しました。そして、2004年のガンマ線データを調べたところ、その信号がモデルと驚くほど一致していたのです。
発見後、1〜2週間は他のことを考えられませんでした。自分のスマホやパソコンの中の物質が、銀河の歴史を彩る超新星爆発で作られたと考えると、本当にクールですね。
とPatel氏は語ります。そんなあなたがクールですよ。
この研究成果は、2027年に打ち上げ予定のNASAの新ミッション「COSI(コンプトン分光撮像機)」によって裏付けられることが期待されています。COSIは、 マグネターの巨大フレアなどの高エネルギー現象を観測し、それによって生成された元素を個別に特定することができます。これにより、マグネターが実際に金を生み出す源であるかどうかが明らかになるでしょう。