沖縄・石垣市長に中山氏5選 「オール沖縄」系新人と1800票差 尖閣「防衛」に弾み

5選を確実にし、支援者らと喜ぶ中山義隆氏=17日深夜、沖縄県石垣市(大竹直樹撮影)

尖閣諸島を抱える沖縄県石垣市で、議会から不信任決議を受けた中山義隆氏(58)の失職に伴う市長選が17日投開票され、無所属前職の中山氏=自民、公明推薦=の5選が確実となった。玉城デニー沖縄県知事を支持する「オール沖縄」勢力から実質的な支援を受けた無所属新人の砥板(といた)芳行氏(55)は及ばなかった。選挙結果によっては国の安全保障政策に影響を与える可能性もあったが、国境の島で暮らす市民は中山市政の継続を選択した。

「尖閣諸島の守りの手を緩めたり、中国に配慮するような発言が前に出たりすれば、国際的にも誤ったメッセージを発信してしまう」

中山氏はこう懸念し、有事の際に住民が一時避難できるシェルターの整備や危機管理体制の強化を選挙戦で訴えてきた。

これに対し、砥板氏は「非現実的な避難計画より島を戦場にさせないことを求める」と強調。政府の防衛力整備計画や陸上自衛隊石垣駐屯地の拡大強化に慎重な姿勢を示し、有事に備えた石垣空港の特定利用空港指定、日米共同の軍事訓練には反対の立場を取った。

市議会では執行部が出した専決処分の議案を巡り、決裁の日付の改竄や市の担当課長による虚偽答弁が発覚。6月に中山氏への不信任決議が可決された経緯があり、砥板氏は選挙戦で「独善的な市政運営、長期政権の弊害ここに極まる」と中山氏の政治手法と「多選」批判を展開した。

一方で、選挙事務所には玉城知事をはじめ共産党などオール沖縄勢力の国会議員の「為書き」が並んでいるのに「オール沖縄と連携していない」としてオール沖縄色を排除した。保革問わず「反中山」票を取り込む狙いがあったと考えられる。

尖閣周辺の海域では武装化した中国海警船の航行が常態化しているが、力による一方的な現状変更の試みを先鋭化させている中国に、沖縄県の玉城デニー知事は抗議しない考えを崩していない。

市政刷新を掲げるオール沖縄系市長が誕生していたら、尖閣に関する市のさまざまな施策も後退しかねなかった。過去3度行ってきた尖閣周辺の海洋調査なども、オール沖縄県政と同様に、中国側に配慮して見直される可能性があったためだ。

石垣市は国防の最前線だ。それだけに、この市長選の結果が持つ意味は大きい。尖閣「防衛」に弾みがつきそうだ。(大竹直樹)

▽石垣市長選開票結果(選管最終)

当12923中山義隆 無前

11124砥板芳行 無新

「尖閣上陸調査求め、国を動かしたい」中山氏表明 住民避難計画「万一に備える」

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