脚光浴びる「洋上風力発電」、活躍期待の関連株を大選抜 <株探トップ特集>

―カーボンニュートラルの切り札、運転開始プロジェクト複数進行で活躍へ― 「洋上風力発電」に注目が集まっている。多くのプロジェクトが2030年までの運転開始を目指し動き出しており、関連株には強烈な追い風が吹いている。利害関係者との協議会で同意を得て具体的に動き出している促進区域における事業者はすでに大半が選定済みだが、その後も続々と有望区域や準備区域に名が挙がっており、受注に向けて関連各社は攻勢を強めている。四方を海に囲まれた日本は、洋上風力発電設備の広大な設置場所が確保できることもあり、50年の カーボンニュートラル実現の切り札として、政府は建設を加速させる方針だ。大海原で活躍期待が高まる関連銘柄のいまを追った。●2030年度に突発的拡大 洋上風力発電の整備が急ピッチだ。第2次トランプ政権の誕生により、米国では 再生可能エネルギー事業に対して優遇措置が撤廃されるなど風当たりが強い。トランプ大統領の“再エネ嫌い”の本領発揮で、東京株式市場でも関連株の存在感はいま一つ薄い状況だ。ただ、これは株式市場に限った話で、カーボンニュートラルに向けた再生可能エネ推進の動きは進展している。特に、洋上風力発電については巨大プロジェクトが同時進行しており、注目度はいっそう高い。 市場調査会社の富士経済による「再生可能エネルギー関連の国内市場」の調査では、洋上風力発電について「運転開始のプロジェクトが複数進行しているため2030年度に突発的に拡大する。以降も洋上風力が牽引する」と指摘。また、「規模も数百メガワットと大規模化が予想される」という。ここにきては、有望区域に分類されていた北海道の「松前沖・檜山沖」が促進区域に指定された。適地(発電に適した場所)不足が顕在化している陸上風力発電に代わり、洋上風力発電が市場を牽引することが予想されている。●戸田健、26年運転開始に向け急ピッチ

 ただ、洋上風力発電は、コスト高になるというデメリットや、最近では円安に伴う採算の悪化などが聞こえてくるのも事実だ。2月3日、三菱商事 <8058> [東証P]が秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖/秋田県由利本荘市沖/千葉県銚子市沖の3海域での洋上風力発電事業に関して、事業性の再評価を行っていると発表。想定を上回る事業環境の変化を理由とし、事業の採算が取れなくなっていることから「計画をゼロから見直す」ことが伝わっている。こうしたなか、同月6日に三菱商は25年3月期第3四半期累計(24年4~12月)の連結決算を発表し、国内洋上風力発電事業に関して522億円の減損損失を計上した。

 とはいえ、それ以外のプロジェクトは順調に進んでいる。25年度中の運転開始を目指す福岡県の「北九州響灘洋上ウインドファーム」は、今年6月に洋上での風車据付工事について報道機関に現地説明会を行い、順調に進む建設状況を公表。また、長崎県五島市沖の浮体式洋上風力発電事業は、風車などの不具合による運転開始時期の延期など紆余曲折はあったものの、26年1月の運転開始に向け建設が急ピッチだ。日本初となる浮体式による洋上風力発電所で、戸田建設 <1860> [東証P]が建設の中核を担う。4月には、同事業における浮体式洋上風力発電所の名称を「五島洋上ウィンドファーム」に決定したと発表。7月からは、女優の広瀬アリスさんをテレビCMに起用し、浮体式洋上風力発電をテーマに技術力をアピールしている。同社が8日に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業損益は40億5900万円の黒字(前年同期は1億700万円の赤字)に浮上。株価は、今月7日に1072円まで買われ年初来高値を更新。その後は上昇一服も、1000円近辺で頑強展開となっている。

●五洋建など“研究組合”発足

 1月には、国土交通省の認可を受け、浮体式洋上風力発電の大量導入に向けた合理的な建設システムの確立を目的に「浮体式洋上風力建設システム技術研究組合(FLOWCON)」が発足。同組合には、海上工事に実績のある五洋建設 <1893> [東証P]、東亜建設工業 <1885> [東証P]、東洋建設 <1890> [東証P]、若築建設 <1888> [東証P]などの建設会社や、鋼製浮体の設計・製作に実績のある住友重機械工業 <6302> [東証P]のほか、海洋鋼構造物の設計・製作・施工に実績のある日本製鉄 <5401> [東証P]グループの日鉄エンジニアリング、各種大型クレーンなどの楊重機械メーカーでIHI <7013> [東証P]グループのIHI運搬機械の7社が名を連ねている。

 五洋建をはじめ東亜建、若築建は株価も高値圏を快走しており、投資家の視線も熱を帯びている。このなか、五洋建が今月7日に発表した26年3月期第1四半期(4~6月)の連結営業利益は、前年同期比42.5%増の102億7800万円と大幅増益で着地。通期の同利益は、前期比82.0%増の395億円を計画し6期ぶりの過去最高を見込んでいる。●大成建は東洋建と強力タッグ

 また8日には、大成建設 <1801> [東証P]が洋上風力発電などでの連携強化を見込み東洋建の完全子会社化を目的とするTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表。東洋建は、所定の手続きを経て上場廃止となる見通しだ。その大成建だが、海洋土木大手の東洋建をグループ傘下にすることで業容拡大への期待が集まっており、株価も好調。同日発表した第1四半期(4~6月)決算は、連結営業利益が前年同期比2.1倍の392億8700万円で着地しており、26年3月期通期予想に対する進捗率は約39%と順調な滑り出しとなった。

 コスト高という課題を抱えつつも、適地が不足する状況で陸上風力から洋上風力への移行は加速しそうだ。30年までの間に運転開始を目指す促進区域でのプロジェクトは前述の3海域を除いても7カ所が残るうえ、松前沖・檜山沖もこれに加わった。更に、有望区域、準備区域を合わせると20カ所以上が控えていることを忘れてはならない。また、洋上風力発電は、巨大プロジェクトであることに加え、部品点数が数万点にも及ぶといわれるだけに企業の新たな取り組みも加速。幅広い分野への経済波及効果や地域の活性化にもつながることが期待されており、関連銘柄の動向から目が離せない。●攻勢強める応用地質

 地質調査大手の応用地質 <9755> [東証P]は幅広い分野に活躍領域を広げるが、洋上風力発電での攻勢も目を見張る。今年1月には、エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)が公募した「令和6年度洋上風力発電の導入促進に向けた浮体式海底地盤調査実施者に採択」されたと発表。また、4月にも同機構の公募による「令和7年度洋上風力発電の導入促進に向けた山形県酒田市沖海底地盤調査業務の実施者に採択」されたことを発表した。今月12日に発表した25年12月期第2四半期累計(1~6月)の連結営業利益は前年同期比14.6%増の26億8000万円となり、通期計画に対する進捗率は約60%に達した。環境・エネルギー事業では、洋上風力発電関連業務などが安定的に推移しており業績に貢献。株価は、12日に3330円まで買われ年初来高値をつけた後に大幅な調整を入れたが、3000円割れではそろり値ごろ感も。

●ニーズ獲得へ動く大同メ、共和電

 大同メタル工業 <7245> [東証P]は、子会社が次世代洋上風力発電の社会実装に貢献する世界初の軸受メーカー単独でのすべり軸受用ベンチ試験機(軸径1000ミリ)の設置を4月末に完了し、運用を開始した。22年に、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) 「グリーンイノベーション基金事業 (洋上風力発電の低コスト化プロジェクト) 」の助成事業に採択され、佐賀大学などと風車用すべり軸受の開発に取り組んでいる。26年3月期連結業績予想は、営業利益段階で前期比12.8%増の80億円を見込む。株価は4月7日の405円を底に上昇一途、25日には880円まで買われ年初来高値を更新している。

 共和電業 <6853> [東証S]は物体のひずみ具合を計測するセンサー「ひずみゲージ」の大手だが、洋上風力発電でもニーズを捉えようとしている。同社は、風車タワーや基礎部の状態監視などで、実証実験を中心に健全性に関わる計測を実施。今後、洋上風力発電が拡大するなか、エネルギー施設の維持管理は必須であるだけに、活躍のステージが広がりそうだ。同社が今月4日に発表した25年12月期第2四半期累計(1~6月)の連結決算は、売上高80億6000万円(前年同期比6.5%増)、営業利益7億4700万円(同6.5%増)と増収増益となった。通期の営業利益は、14億円(前期比3.2%増)を計画している。環境・防災関連での販売が増加したことに加え、防衛関連での大口案件も寄与している。

●ニチモウ、明電舎、カナモトにも妙味

 漁網、漁具などの大手ニチモウ <8091> [東証P]は、今年2月に日本無線(東京都中野区)と洋上風力発電の地域振興・漁業協調に貢献できるスマートDX漁業システムの開発で、パートナーシップ協定を締結したと発表。洋上風力発電を活用した地域振興や漁業・海洋産業の発展が重要な取り組みとなるなか、両者の強みを生かした地域密着型の新たな漁業者向けのソリューションを生み出していくという。また、明電舎 <6508> [東証P]は老舗の重電メーカーだが、3月には北海道の「せたな町洋上風力発電所」で風車ブレードの雷保護部品であるレセプタの実証試験を開始したと発表している。洋上風力発電設備は構成機器、部品点数が多く、日本の風力関連産業界が40年までに国内調達比率を60%にするという目標に対し、今後レセプタの実証試験を通じて、ブレード雷保護システムの国産化を目指すとともに、保守・メンテナンスサービスとのシナジー創出で攻勢をかける構えだ。

 そのほかでは、北海道地盤に全国展開を進める建機レンタル大手のカナモト <9678> [東証P]にも注目したい。洋上風力発電分野でも、建設工事に要する建機・機材を提供し活躍領域を広げている。23年1月に日本初の商業運転が始まった秋田港および能代港での洋上風力発電プロジェクトの建設の際には、仮設ハウスや敷鉄板、散水車、高所作業車、ユニック車、小物機械など多数の機器を提供しているだけに、今後の動向にも期待が高まる。また、風力発電用ディスクブレーキを手掛ける曙ブレーキ工業 <7238> [東証P]にも目を配っておきたい。

株探ニュース(minkabu PRESS)

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