魚に「心」はある? “釣られた記憶” は2か月以上保持 新潟大学・高橋宏司准教授が解き明かす『魚類心理学』 水産業にも貢献

新潟放送

魚に人間のような『心』はあると思いますか?新潟大学に魚の「心」や「学習能力」に迫る全国でも珍しい『魚類心理学』の研究者がいます。水産業にも応用できるそのユニークな研究とは?

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水槽の中で泳いでいるのは、マダイです。エサを付けた釣り糸をたらすと、簡単に釣られてしまいました。これは、生まれてから一度も釣られたことがないマダイの反応です。しかし、一度でも釣られた経験をすると行動が一変します。明らかに警戒しているようです。■「魚の心を探るような研究をしています」【新潟大学 高橋宏司准教授】「これは全部、1度か2度釣られた経験をした魚の反応です」「食べ方が全然変わっていて。その餌の部分だけをこう上手く、ついばむような形で食べられるようになります」こう話すのは、新潟大学創生学部で魚の研究をする高橋宏司准教授です。【新潟大学 高橋宏司准教授】「魚の心を探るような研究をしています」高橋さんが取り組むテーマは、通称「魚類心理学」と呼ばれる分野です。■魚は経験から学習する【新潟大学 高橋宏司准教授】「その魚の行動を見て彼らの、彼らの行動がどういう風になっているのかなっていうことを考えると、心理学という言葉が一番近いのかなと」研究の方法はとてもシンプルです。水槽の中に魚を入れ、その行動の変化や学習能力をじっくりと観察します。【新潟大学 高橋宏司准教授】「子供の頃からよく釣りをしてたんですけど」「魚たちも釣りの仕掛けっていうのを覚えているんじゃないかな、っていう疑問が幼心からあったりするので」「1回ちょっと調べてみたいなっていう」実験の結果、マダイはわずか1、2回でも釣られるとその経験を学習し、記憶を2か月以上、保持できることが分かりました。■エチゼンクラゲと格闘高橋さんが魚に興味を持ったきっかけは、神奈川県の三浦半島で過ごした子どもの頃の経験でした。【新潟大学 高橋宏司准教授】「海辺に引っ越すからって言われて魚の図鑑もらって、ずっとそれを読んでいた」「魚に興味を持ってきたと。そこで新しく友達になったのが漁師の孫だったんですけど、漁師の孫がすごく海のことに詳しくて」

「実際の魚の様子を教えてもらって、また魚に興味ができた」


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“魚の心” の研究を始めたのは大学院生の頃。幼いアジを手に入れるため、エチゼンクラゲとも格闘しました。【新潟大学 高橋宏司准教授】「クラゲに(アジの稚魚が)ついてるって話を聞いて」「クラゲを見つけて飛び込んだら、本当にこんなちっちゃな、夢に見ていた小アジたちがもう群れをなしていて、これもう取るしかないだろうみたいな形で」Q.痛くなかったんですか?「痛いですね、エチゼンクラゲ、結構(痛い)」■「研究ネタが尽きることはない」【創生学部4年生宮原均さん】「魚のことなら、何を聞いてもすぐに答えてくださって、すごく知識が豊富です」「すごく魚が好きなんだなという風に思う」【創生学部4年生江端一暉さん】「思いつかなかったアイデアを出してくださるので、発想力がすごいと思います」【新潟大学 高橋宏司准教授】「(研究の)ネタが尽きることはないのかなと思います」「今も2000個ぐらい、2000個は言い過ぎかもしれないですけど、1000以上の研究アイデアはあって」■魚も “掃除” します好奇心あふれる高橋さんのアイデアは、日常の素朴な疑問から生まれます。【新潟大学 高橋宏司准教授】「僕は掃除が苦手なので、見ての通りなんですけど」「周りの人にちゃんと掃除しなさいと、人なら当たり前、みたいに良く言われるんですけど。本当にそうかなと」「魚が掃除をするのかな、きっとしないだろうと思って、実験してみた」そこで観察したのがハゼの一種、クモハゼという魚です。クモハゼの巣の中に、ゴミに見立てた重りを入れると、なんと口にくわえて外に捨てました。口でくわえることができない大きいゴミは、口先や尾びれを器用に使って外に捨てています。■水産業に貢献する『魚類心理学』繁殖期のオスが巣を掃除することは知られていましたが、実験では20匹のオスとメス全てが、繁殖期に関係なく掃除をすることが明らかになりました。【新潟大学 高橋宏司准教授】Q.研究結果を知ったわけですよね?その後(デスク回りを)掃除した?「それはまた別の話です」

「掃除をしない理由だったらいくらでも見つかるので(笑)」


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頑なに掃除はしたくないようです。そんな高橋さんが取組む『魚類心理学』は、基礎研究に留まりません。水産業にも貢献しています。新潟県内では、アユの放流などで応用できるのではないかと考えています。【新潟大学 高橋宏司准教授】「飼ってる魚って、外敵がいない水槽で育つので、放流した環境に行くと外敵に食べられやすくなってしまうと言われてます」「私がいままでやってる研究の中に、その魚の学習を利用して魚の性格を変えるみたいなことをやっていて」■訓練された魚は生存率が高い高橋さんは、マダイの稚魚に対して、1日2回、網で追い回すという訓練を3週間行いました。その結果、訓練を受けていないマダイは、網を近づけても、のびのび水槽を泳いでいます。一方で訓練したマダイは、速やかに水草に身を潜めました。2つを比較するとその差は一目瞭然です。警戒心が高いマダイは外敵からの生存率も高くなるそうです。■「彼らの中には心が存在している」【新潟大学 高橋宏司准教授】「アユが新潟で求められてるんだとしたら、それでちょっと貢献できるといいかなと思ったりはしてます」生存率が上がれば放流数を減らすことができ、飼育コストや環境負荷も減らせると高橋さんは考えています。最後に聞きました。魚は人間のような心を持っているのでしょうか?【新潟大学 高橋宏司准教授】「人の心っていうのを魚が持っていると断言することはできない」「しかし実際に彼らの振舞いを見ていると、彼らならではの心というものは、きっと彼らの中には存在しているのではないかと」

「私は少なくとも思う」

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