【米国市況】S&P500、高値警戒感から上昇一服-ドル145円台前半
25日の米株式市場ではS&P500種株価指数がほぼ変わらず。直近の底値からの急回復に疲弊の兆しが出てきた。経済および地政学的リスクがある中、株価上昇は行き過ぎたとの警戒が強まった。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6092.16 -0.02 0.00% ダウ工業株30種平均 42982.43 -106.59 -0.25% ナスダック総合指数 19973.55 61.02 0.31%S&P500種は最高値まであと数ポイントの地点で失速。ナスダック100指数は0.2%高。エヌビディアは最高値を更新した。一方、小型株で構成するラッセル2000指数は1.2%下げた。
議会証言2日目に臨んだパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、関税が消費者物価に及ぼす影響を、金融当局としていまだ見極めきれていないと述べた。また米国は世界で最も強い経済を有しているとし、不確実性の高い時期には慎重に行動することが理にかなっているとの考えを示した。
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BMOプライベート・ウェルスのキャロル・シュレイフ氏は「貿易政策のシフトがもたらす不確実性がなければ、FRBは今夏に利下げを実施することができただろう」と指摘。「FRBの利下げ休止は関税に起因したもので、景気動向を必ずしも反映したものではない。当社では2025年に1-2回の利下げを予想している。9月に始まる可能性が高い」と述べた。
米国市場は今年に入って、新大統領による国際秩序の再編や大規模な関税措置、中東情勢に起因する不確実性といった逆風に直面。これほど多くの向かい風を受けたことは過去にあまりなかった。株式相場はこうした困難を跳ね返してきたが、S&P500種が上昇すればするほど、過熱気味だとの懸念の声も高まっている。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は「相場が一直線に動くことはない」と指摘。「短期的に一息つく必要があるかもしれないとの見方は、それ自体が市場に深刻な懸念をもたらすものではない」と話した。
トランプ米大統領は、米国が来週イランとの会談を行う予定だと明らかにしたが、外交的合意の必要性については懐疑的な見方を示した。
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BMOのシュレイフ氏は「イランとイスラエルの紛争の最悪期は過ぎたと市場は織り込んでいる」と指摘。「現時点では、関税や貿易、税制、インフレ、雇用、金利といった要因の方が株式相場に与える影響ははるかに大きい」と続けた。
国債
米国債は長期債がアンダーパフォームした。イールドカーブのスティープ化が進み、30年債と5年債の利回り差は2021年以来の水準に近づいた。
国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.83% -0.5 -0.10% 米10年債利回り 4.29% -0.8 -0.18% 米2年債利回り 3.78% -4.7 -1.22% 米東部時間 16時55分この日実施された5年債入札(発行額700億ドル=約10兆円)では需要が予想よりも弱く、前日の2年債入札ほどの強い結果とはならなかった。最高落札利回りは3.879%と、入札前取引(WI)水準の3.874%を上回った。
ドイツ銀行のストラテジスト、スティーブン・ゼン氏は5年債入札について、「相場が今週上昇したことによる買い疲れを反映している」と話した。
市場では短期債が長期債をアウトパフォームする、いわゆるイールドカーブのスティープ化を見込むポジションが人気となっている。FRBがいずれ利下げに踏み切る一方で、国債増発への懸念が長期債に下押し圧力をかけるという見方に基づいている。
フォート・ワシントン・インベストメント・アドバイザーズのポートフォリオマネジャー、ダン・カーター氏は「短期金利は低下し得るが、長期債利回りが同じように下がるとの確信はそれほど強くない」と指摘。「当社ではイールドカーブのスティープ化を選好している。それはいくつかのシナリオで奏功する可能性がある。FRBがより積極的に利下げを実施する、あるいは市場が財政見通しへの懸念を強めるといった場合だ」と述べた。
外為
外国為替市場ではブルームバーグ・ドル・スポット指数が3営業日続落。月末の投資資金フローや今後発表される米経済指標に市場の関心は移っている。
円は対ドルで下げ幅を縮小。朝方には一時0.7%安の1ドル=145円95銭近辺まで売られる場面もあった。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1199.66 -1.87 -0.16% ドル/円 ¥145.27 ¥0.33 0.23% ユーロ/ドル $1.1656 $0.0047 0.40% 米東部時間 16時56分米国では今週、耐久財受注や新規失業保険申請件数、個人消費支出(PCE)統計、ミシガン大学消費者マインド指数など指標の発表が相次ぐ。
バークレイズのストラテジストは、トレーダーはポートフォリオ調整に伴い、月末にかけてドルを売る必要があるだろうと指摘。米国株と債券が今月上昇したことを挙げ、米国資産が上昇すると、ポートフォリオ調整でドルが売られる傾向があると説明した。
スコシアバンクのチーフ通貨ストラテジスト、ショーン・オズボーン氏は「地政学リスクは後退したが、くすぶり続ける可能性がある」と指摘。「市場は状況が落ち着く中、米国データの比較的低調なトレンドや、パウエルFRB議長が年内の複数回の利下げに含みを持たせている点に再び注目するかもしれない」と述べた。
UBSインベストメント・バンクのシャハブ・ジャリヌー、アルビス・マリーノ、バシーリ・セレブリアコフ3氏は、FRBは今後数カ月に主要10カ国・地域の他の中央銀行よりも速いペースで利下げを実施する可能性があるとし、そうなればドルに下押し圧力がかかるとの見方を示した。
その上で、これは対ドルでユーロや円を押し上げ、円は140円を再び試す展開も想定しているとした。
原油
ニューヨーク原油相場は反発。トランプ大統領が近い将来における対イラン制裁の緩和に否定的な見方を示したほか、米政府の統計で原油在庫の大幅減が示されたことが手掛かり。
トランプ氏は、米国が来週イランとの会談を行う予定だと明らかにした一方、同国に対する「最大限の圧力」戦略を「放棄するつもりはない」とも述べた。その上で、イランとイスラエルの戦争は「終わった」と語った。
米エネルギー情報局(EIA)のデータによれば、米国の原油在庫は約580万バレル減少。これで5週連続での減少となった。このデータはウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)のプロンプトスプレッドにも影響。期先2限月の価格差である同スプレッドは1.46ドルのバックワーデーション(逆ざや)となり、短期的な需給の引き締まりを示唆する強気のシグナルを発した。
一方、ロシアは石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の次回会合で、必要とされれば増産を容認する構えを見せているとブルームバーグが報道。これが原油の上値を抑えた。OPECプラスは7月6日に会合を開き、8月の追加供給引き上げについて協議する。
CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏は「きょうの原油の動きは売られ過ぎの調整によるテクニカルな反発、イラン制裁に関する前日の意外な発言の修正、原油在庫のデータが市場にプラスの内容となったことなど、複数の要因が影響したようだ」と分析。その上で、「年後半はなお供給過剰が見込まれ、弱気なセンチメントも続いているが、当面の需給バランスは市場全体の動向が示唆するよりも引き締まっているように見受けられる」と述べた。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物8月限は前日比55セント(0.9%)高の1バレル=64.92ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は0.8%上昇の67.68ドル。
金
金スポット相場は小幅高。中東での戦闘停止とパウエルFRB議長の議会証言が意識された。
トランプ大統領の貿易政策や地政学的緊張、中央銀行による購入が相まって、金スポットは今年に入り27%上昇。ただここ数カ月は勢いが衰えており、1オンス=3300-3400ドルで推移している。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時58分現在、7.63ドル(0.2%)高の1オンス3331.30ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は9.20ドル(0.3%)上昇の3343.10ドルで引けた。
原題:S&P 500 Rally Hits a Wall Near Its All-Time Highs: Markets Wrap(抜粋)
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