7億光年先にある銀河団。淡く輝く2つの銀河を結ぶ「橋」を観測

Image: CTIO / NOIRLab / NSF/AURA / Anthony Englert

地球から約7億光年離れた場所に位置する「エイベル3667」は、巨大な銀河団です。

ブラウン大学の天文学者たちが率いる研究チームは、長年の観測データをもとに、この銀河団のかつてないほど最も詳細な画像を生成しました。

この画像はエイベル3667のこれまで最も深い画像で、画面全体に散らばる小さな点々のほとんどが銀河になります。先日、そんな最新画像からの発見をまとめた論文が、学術誌『The Astrophysical Journal Letters』に発表されました。

銀河団の歴史を知る手がかりを観測

エイベル3667の内部では、最も明るい銀河2つが合体しつつあります。画像にはそんな銀河2つを結ぶように伸びる、淡くて黄色い光の“橋”が見えます。

この光は、形成中の銀河団の巨大な重力によって属していた銀河から引き離された迷子のような星々が放つ非常に微かな光で、銀河間光(ICL)というものです。

研究者たちいわく、このような孤立した星々は「過去における銀河同士の相互作用のささやかな証拠」になるとのこと。

彼らがICLを調べているのは、エイベル3667の過去を探るためです。これまでのX線と電波観測で予測されていたように、エイベル 3667自体も2つの銀河団の急速な合体から形成されたと思われています。

今回の画像は、この認識を裏付ける史上初の目に見える証拠になります。

Video: NOIRLabAstro / YouTube

研究の筆頭著者アンソニー・エングラート氏は、研究のリリースの中でこうコメントしています。

「このスケールと大きさの特徴が近傍銀河団で見つかったのは今回が初めてです。

このような橋が2つの銀河間で形成され得ることは知っていましたが、今に至るまでどこにも記録されていませんでした。こんなにもかすかな特徴を捉えられたことに大いに驚かされました」

積年の観測データを活用

今回の画像は、チリにあるセロ・トロロ・汎米天文台のビクター・M・ブランコ望遠鏡に搭載されたダークエネルギーカメラ(DECam)を使った観測、計28時間分のデータから生成されたもの。長時間露光ということもあって、ディテールを捉えられたそう。

銀河間光の他に画像内に見られる特徴としては、青っぽく光るフィラメント状の構造があります。こちらはシラス(またの名をintegrated flux nebulae)と呼ばれるうっすらと広がる宇宙塵の雲です。

「長年わたって多くの人々がエイベル3667を撮影してきたことは、ただうれしい偶然であり、私たちはそういった観測データを全部重ね合わせられたのです」と同氏は語っていました。

ルービン天文台で得られる成果のプレビュー

銀河団エイベル3667そして銀河間光に関しても、まだ解明されていない謎が存在します。

幸いにもルービン天文台が完成し、以前よりもそれらの詳細な調査を進める設備が整いました。天文学者たちにとっては、まさに完璧なタイミングといえそうです。

「ルービン天文台は私たちとほぼ同じやり方でICLを撮像できるようになりますが、南天の夜空にある近傍銀河団すべてに対して行ないます。

私たちの成果はルービンができるようになることとのほんの一部にすぎません。ルービンはICLの研究を大いに発展させるでしょう」

と、エングラート氏。

ルービン天文台がやがて公開するのは、今回よりもさらに解像度の高い南半球に存在する幾多ある銀河団の画像ということですから、ますます楽しみになりますね。

Source: IOPscience, YouTube, Brown University, Wikipedia, Rubin Observatory,

関連記事: