コラム:グリーンランド防衛で結束問われる欧州 トランプ氏の併合発言で

写真はデンマークのフレデリクセン首相。2025年12月、ベルギーのブリュッセルで撮影。REUTERS/Stephanie Lecocq

[ベルリン 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] - デンマークのフレデリクセン首相はトップの座を冷たく、孤独に感じているに違いない。フレデリクセン氏はトランプ米大統領に対し、デンマークの自治領であるグリーンランドを米国が征服すべき領土の候補に挙がるべきでないと警告しようとしているものの、欧州から圧倒的な支持を得られているわけではないのだ。

欧州の指導者たちは米国のベネズエラ急襲に衝撃を受けてほぼ沈黙状態に陥っており、デンマークに連帯を力強く示すことができていない。デンマークは北大西洋条約機構(NATO)および欧州連合(EU)の加盟国であり、トランプ氏はグリーンランド併合への意欲を公然と表明している。

グリーンランドはデンマーク政府だけの問題でなく、欧州全体の問題だ。その戦略的重要性は国内総生産(GDP)がわずか30億ドルしかないという経済的な規模で測れない。欧州にとって再び重大で消耗する危機に直面するのを避ける唯一の方法は、今こそ立ち上がってデンマークの側につくことだ。成功する見込みがある対応とするために、ドイツ、フランス、あるいは英国のような国々がグリーンランドにある程度の部隊を派遣する選択肢も含めるべきだ。

欧州の指導者たちは無気力を振り払うべき理由が二つある。第一にグリーンランドを併合するという脅迫は、誇張癖のある米大統領の気まぐれな放言としてもはや見過ごせなくなっている点だ。トランプ氏は5日、NBCニュースのインタビューで「国家安全保障のためにグリーンランドが必要だ」と改めて表明し、この問題について「極めて真剣だ」と訴えた。欧州が間髪を入れずにデンマークに連帯を示すべき第二の理由として、ベネズエラに対する急襲は意図的なのかそうでなくても、欧州の覚悟が試されているという点である。

Growth in GDP per capita

フレデリクセン氏が指摘したように、米国がグリーンランドを併合すればNATOに深刻な危機をもたらし、おそらく崩壊さえ引き起こしかねない。欧州は米国を敵対的な勢力として見なさなければならないという難題に直面する可能性があるだろう。このような結果を招かないことは欧州自身の利益にかなっている。

欧州の複数の外交筋はBREAKINGVIEWSに対し、欧州が米政府と協力する道を開きつつ、強硬な姿勢を取る方法もあり得ることを認めた。

トランプ氏は証拠を示さないまま、ロシアや中国の敵対的な艦船がグリーンランドの周辺を巡回していると主張している。欧州は航行状況の監視に協力し、自国の艦艇を派遣することを提案できるだろう。

また、トランプ氏がグリーンランドの重要鉱物資源の開発に強い意欲を示しているため、デンマークと欧州の同盟国はレアアース(希土類)やリチウムなどその他の鉱物の鉱床探査、将来的な開発で米国と緊密に協力することも提案できるだろう。

しかし、短期的に見ると欧州は本気になっていることを示す必要がある。デンマーク政府やグリーンランド自治政府が支援を要請した場合、欧州は数百人の部隊と数機の戦闘機をグリーンランドに派遣するべきだ。

一部の国の政府はそのような行動がトランプ氏の反感を買い、欧州に駐留する米軍の縮小につながるのではないかと恐れるかもしれない。だが、欧州の指導者たちは自らの防衛を自らの資金で賄う必要があるというメッセージを既に受け取っているはずだ。今ここで行動することが横暴な相手に立ち向かうための唯一意味のある方法のように思われる。

●背景となるニュース

*デンマークのフレデリクセン首相は1月5日、トランプ米大統領がグリーンランドを領有したいと本気で望んでいると考えており、デンマークとグリーンランドの双方がトランプ氏の望みを明確に拒否していると語った。 もっと見る

フレデリクセン氏は公共放送DRに対して「残念ながら、米大統領がグリーンランドを手に入れたいと言う時、真剣に受け止めるべきだと思う」と言及。さらに、「もしも米国が別のNATO加盟国を攻撃すれば全てが停止する」と話した。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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Pierre Briancon is a Breakingviews columnist, writing on European business and economics. He was previously a writer or editor at Barron’s, Politico, and Breakingviews for a first stint as Paris correspondent and European editor. For the first part of his career he was a foreign correspondent and editor at Libération, the French newspaper. He was also an economics columnist for Le Monde and for French public radio.

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