香取慎吾「幸せです」 初ソロアリーナツアー東京公演、常に期待を超えてくる表現者としての強さ

「これぞホームですよね」

 香取慎吾のライブは、なぜこんなにも幸福感に包まれるのか。6月1日、ソロアリーナツアー『SHINGO KATORI 1st LIVE TOUR Circus Funk 2025』の東京公演・2日目に参加して、その理由が改めてわかった気がした。それは、この場所が30年以上かけて香取が築き上げてきた愛に溢れた遊び場であり、そこに足を踏み入れた誰もがもれなくその一員になることができるから。

「いつまでも一緒に遊んでくれますか?」常に期待を超えてくる強さ

 ソロアリーナツアーのはじまりの地は東京・国立代々木競技場第一体育館。昨年12月3日、4日に初のアリーナフェス『“Circus Funk” Festival』を開催した思い出の場所だ。今回は計2日間約2万人を動員したという。

 3rdアルバム『Circus Funk』を制作する際、香取はまずライブのイメージから考え始めたとインタビューで語っていた。

 このツアーが始まる直前にオンエアされた音楽番組『SONGS』(NHK総合)では「『アルバムを引っ提げて』っていうでしょ? だったらステージの構成があった上で(アルバムを)作ったらよくないか?」と、なぜみんながそうしないのか不思議だといった様子で語っていた。だが、そもそもライブ演出を長年手掛けてきた香取だからこそできること。

 アルバムに収録された1曲1曲にライブ構成上、明確な役割がある。しかし、だからこそ個人的には昨年12月に披露された『“Circus Funk” Festival』の内容とどう異なるのかと、観比べる贅沢さを噛み締めながら会場に向かった。そして、香取は見事にその期待を大きく上回ってくれた。

 フェス形式で行なわれた『“Circus Funk” Festival』では、アルバムでコラボしたアーティストがステージに集結。香取とアーティストたちの絡みも楽しく、こんなにもたくさんの力強い味方ができたのだという喜びに満ちたフェスだった。そう、まさにお祭りのような雰囲気で観客を楽しませてくれたのだ。

 一方、今回はソロライブということで、より歌手・香取慎吾の持つ歌声をじっくりと味わうことができた印象。「SURVIVE(feat. LEO from ALI)」では生命力みなぎる力強い歌声で客席のテンションを一気に上げていく。かと思えば、「Full Moon(feat. 村田陽一)」では低くてずっしりとした豊かなバリトンボイスで夢見心地な気分に。

 そして、「夢々Ticket(feat. 緑黄色社会)」では、私たちが長年親しんできたJ-POPスターらしい爽やかな歌声で魅了⋯⋯と、こんなにもバリエーション豊富な声質の持ち主だったのかと今一度驚かされる。そして、様々な歌声を奏でるその喉は、ライブの終盤になっても衰えない。クライマックスの「Not Too Good Not Too Bad(feat. Yaffle)」で〈そんな君も愛してあげよう〉と振り絞るように歌い上げる姿には思わず身震いしたほどだ。

 新進気鋭からレジェンドまで、あらゆるアーティストとコラボすることで、新たな魅力を開拓してきた。ということは、自身が使い続けてきた慣れた筋肉とは異なる部分を使うことも多かったはず。年齢を、そしてキャリアを重ねるほどに、人は自分の得意なことで勝負し続けたくなるものだが、香取はそんな守りには入らない。根っからの開拓者なのだと唸らせられる。

 そんな表現者としての「強さ」に圧倒されつつ、これぞ私たちの知る香取慎吾なのだ、と誇らしい気持ちになった。そして〈一億人の愛を背負ってる〉(「一億人の恋人(feat. 乃紫)」)という歌詞に、決して歌負けすることのないパーフェクトビジネスアイドルがいること。その人が魅せるエンターテインメントに触れられているこの瞬間に「幸せです」と彼が繰り返し口にする以上に、観客たちも心のなかで呟いていたことだろう。

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