[社説]社会保障の危機から目を背けるな

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だんだんと重くなる荷を背負って長い山道を登り続ける。少子高齢化が進む日本の社会保障制度が直面している状況は、こんな光景に例えられるのではないか。

増え続ける負担は誰でも苦しいし、もうイヤだと言いたくなる気持ちはよく分かる。だが投げ出してしまえば国民の生命を守る医療や高齢期の生活を支える介護、年金が成り立たなくなる。

こうした状況に国民のリーダーたる国会議員や政党は何をなすべきか。18日に発足する第2次高市早苗政権や、超党派で新設される「国民会議」に参加する政党は、この点をよくよく考えてほしい。

年金、医療、介護などの社会保障給付は2000年度の78.4兆円から、25年度には予算ベースで140.7兆円に膨らんだ。高齢者数がピークに迫る40年度には、今より約50兆円も多い190兆円程度になると推計されている。

わずか40年間で社会保障の費用が2.4倍にも膨れ上がる。しかも労働力の中核である15〜64歳の人口は約8600万人から約6200万へと4分の3に縮む。日本社会はこんな試練に挑み、打ち克(か)つ必要があるのだ。

先の衆院選では、チームみらいを除く全政党が消費税の減税を公約に掲げた。社会保険料の引き下げを主張する政党も多い。だが社会保障の厳しい現状を直視せず、聞こえの良い「負担減」を叫ぶだけではあまりにも無責任だ。

難路を乗り越えることができる給付と負担のあり方を見定め、改革の必要性を国民に説き、実現していく。これこそが責任政党に求められる姿勢ではないか。

社会保障給付の財源は国民や事業主からの保険料が6割を占め、残る4割を国と地方自治体が拠出する「公費」で賄っている。

25年度予算で約55兆円に上る公費の柱となる財源は消費税だが、その税収(約24.9兆円)では全額を賄いきれない。かなりの部分を国債発行で補っている。

つまり、子どもや孫といった将来世代に負担を先送りする形で、現在世代に医療や介護を提供しているのが実態だ。本来は将来へのツケ回しをやめるため、消費税率を一段と引き上げるなどの負担増こそ議論すべきテーマだ。

この構造を放置したり、代替財源なしで消費税の減税に踏み切ったりすれば、社会保障の財源確保は自転車操業の様相が強まる。制度は不安定になるだろう。

少子高齢化を乗り切る必須の条件は、高齢者を含む全国民に対して「能力に応じた負担」を求める仕組みを徹底することだ。

この視点でみても消費税は有用だ。消費活動には保有資産も含めた家計の状況が反映される。社会保障の財源に組み込んでいけば、ざっくりとはいえ、所得は少ないが資産がある高齢者に能力に応じた負担を求めることができる。

社会保険の適用対象から外れ、保険料の事業主負担を納めていない中小・零細事業所も消費税は納める。すべての個人や法人がオールジャパンの形で少子高齢化という国難に向き合う形になる。

消費税率を引き下げれば、こうした効果は損なわれる。金融資産や不動産といった保有資産を厳密に勘案した負担の枠組みなど、能力のある高齢者に負担増を求める強力な代替策が急務になる。

高市政権は所得税制に給付金の仕組みを組み込む「給付付き税額控除」の設計を国民会議の主要議題とする構えだ。この仕組みは先進各国で普及しており、社会保険料の逆進性によって負担が重くなっている中低所得層を救う有力案といえるだろう。

ただし、年金生活者を給付対象にするなど制度設計を誤れば、現役世代が背負う荷は一段と重くなりかねない。少子高齢化の構造を踏まえた設計が欠かせない。

社会保険料は国民の手取り収入を圧迫している主因だが、これを削減するには税金など他の大きな財源を確保するか、医療などの質の低下を覚悟して給付水準を大胆に下げる必要がある。

こうした対策を示さずに社会保険料の削減を主張するのは、責任ある姿勢とはいえない。

国民会議の議論はデータに基づいて各党が現状認識を一致させるところから始めるべきだろう。負担減の幻想を振りまくばかりでは議論が空転しかねない。

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