「昔、駅でよく見たわ」 京急・上大岡駅に“パタパタ”復活 最新の液晶で「残さなくてもいいもの」をよみがえらせたワケ
かつて駅で親しまれた反転フラップ式案内表示器が、京浜急行鉄道(京急)・上大岡駅で新たな姿となって復活した。その狙いとは――。
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懐かしい「パタパタ」が液晶で復活
パタパタパタパタ……。
行き先の表示が小気味よく切り替わる。
「なんだか懐かしいわね。昔、駅でよく見たわ」
表示器を見上げていた50代の女性が、笑顔で言った。
京急の上大岡駅(横浜市港南区)。女性が見ていたのは、列車の案内表示器だ。かつて駅や空港などで使われていた、文字板が次々と切り替わる反転フラップ式案内表示器、通称「パタパタ」である。
「めくれていくところに、独特の味わいがあります」(先の女性)
ただ、このパタパタは、昔のものとは少し違う。
本来のパタパタは、文字を上下に分割して印字したフラップ(開閉板)を回転させ、行き先などを表示する。一方、上大岡駅のものは液晶ディスプレー(LCD)を使い、列車の発車後に表示を切り替える際、文字板が回転しているような視覚効果を再現している。実際にフラップが回転するわけではないため、「パタパタ」という音は鳴らない。
それでも、2026年7月2日の運用開始に合わせて京急が公式X(旧Twitter)で紹介すると、SNSにはさまざまな反響が寄せられた。
「これいい。エモすぎる」「京急さんサイコー」「遊び心のある、粋な計らいですね」……。
京急の担当者は言う。
「パタパタを知る世代の方には懐かしさを、知らない世代の方にはパタパタと順番に文字が切り替わる独特な動きが新鮮に映るのではないかと思います」
京急によると、上大岡駅には7月13日までに、ホームと改札前に合わせて計7台の「デジタルパタパタ」を設置した。ホームの表示器は縦約1メートル、幅約4メートル。3本先までの列車の行き先や、特急、普通といった種別、発車時刻などを表示する。
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見た目は昔のパタパタでも、中身は最新型だ。デジタルパタパタの大きな特徴は、表示できる情報量の多さにある。
「種別と行き先の多言語表示は、LED式のときは日本語と英語の2カ国語でしたが、LCD式になって日本語と英語に加え、中国語と韓国語の4カ国語で表示可能になりました」(京急)
京急では25年2月、青物横丁駅(東京都品川区)にデジタルパタパタを先行導入している。上大岡駅は2駅目だ。両駅が選ばれたのは、表示器が老朽化して更新時期を迎えていたことに加え、かつて実際にパタパタが設置されていた駅だったためだという。
駅の日常を彩った独特の音
そもそも、パタパタはどのように生まれ、なぜ姿を消したのか。
駅の案内表示器は、時代とともに姿を変えてきた。
かつては、行き先などを記した「サボ」と呼ばれる表示板が使われていた。列車ごとに用意され、運行に合わせて掛け替えられたほか、行き先などを印字したフィルムをドラムに巻いて表示する方式もあった。
反転フラップ式の案内表示器(パタパタ)が日本の鉄道駅に導入され始めたのは、1950年代ごろだ。その後、高度経済成長期に入り、列車の本数や急行、特急などの種別が増えるなか、駅の案内表示を効率よく切り替える必要が高まった。
行き先、種別、発車時刻が一斉に切り替わるときの「パタパタ」という独特の音は、やがて駅の日常の一部になった。
京急がパタパタを初めて導入したのは、86年12月25日。京急川崎駅(当時の京浜川崎駅)に設置された。やがて他の駅にも展開され、最も多い時期には10駅ほどに設置されていた。
だが、90年代に入ると、案内表示器はパタパタからLED式へと移行していく。京急では2022年2月、京急川崎駅に残っていた最後のパタパタが姿を消し、LED式に替わった。全国の駅でも同様の動きが進んだ。