細菌がウイルスから身を守るしくみ ウイルスのDNAを記憶し撃退
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人体は精緻な免疫系を備えているが、単細胞の細菌も、それと似た仕組みでウイルスから身を守っている。今から約20年前、細菌がCRISPR(クリスパー)という獲得免疫機構を備えていることが発見された。
ジョンズ・ホプキンズ大学の分子生物学者モデル(Joshua W. Modell)らは、細菌がかつてさらされたことのあるウイルス(細菌に感染するものをファージと呼ぶ)の侵入を再び受けたときにCRISPRを使ってどうやって撃退するのかを明らかにし、Cell Host & Microbe誌に発表した。毎年数百万人の死者を出している薬剤耐性菌感染の治療薬の開発に役立つ可能性がある。
細菌はCRISPR機構によって自身のゲノムを編集する。細菌はウイルスに曝露された後、特別な酵素を使って自分のゲノムに切れ目を入れ、そこにウイルスDNAの小さな断片(スペーサー配列)を挿入する。
科学者はこの酵素を遺伝配列を切る"はさみ"として用い、日常的にDNAを操作している。だがこのプロセスが細菌内部でどのように進んでいるのかはほとんどわかっておらず、「『CRISPRの謎』と呼ばれていた」とモデルはいう。
研究チームは化膿レンサ球菌とそれに感染するファージを使って実験した。ほとんどのファージは感染するとすぐにレンサ球菌を破壊するが、破壊せずレンサ球菌のDNA中に隠れて休眠することもある。
モデルらは実験で一部のレンサ球菌に休眠可能なファージを感染させ、別のレンサ球菌には休眠しないように遺伝子操作したファージを感染させた。その後、生き残ったレンサ球菌を集めてゲノム配列を読み、ファージのDNAに由来するスペーサー配列の数を調べた。
その結果、休眠状態になりうるファージから取り込んだスペーサー配列がより多いことがわかった。レンサ球菌はファージが休眠している間にそのDNA断片を切り取り、自分のゲノムに保存しているとみられる。「CRISPR機構はワクチンと同様、不活性化したウイルスについての記憶を作っている」とモデルは話す。
スペーサー配列を獲得したレンサ球菌に再び同じファージを曝露したところ、レンサ球菌がこれらの配列を用いてファージを認識し、撃退することが観察された。
「素晴らしい発見だ」と蘭デルフト工科大学の微生物学者ブラウンズ(Stan Brouns)は評する。ファージと細菌のこうした相互作用を理解することは、薬剤耐性菌による感染症をウイルスを使って治療する「ファージ療法」を改善するためのカギとなる。
詳細は3月25日発売の日経サイエンス2026年5月号に掲載
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