なぜ私はiPhoneを机に置くとき、いつも画面を伏せるのか
近所のカフェで友人とランチ中、相手は向かいに座っているが距離を感じる。目の前の私ではなく、スマートフォンばかりに夢中だからだ。本人に悪気はないのだろうが、正直冷たく感じてしまう。
こんな経験は誰にでもあるはずだ。逆に自分がスマートフォンに気を取られて誰かを放置することも意図せずあるだろう。
もちろん、緊急のメッセージに返信するのは悪いことではない。だが、私は間違いなく画面を見ている時間が長すぎるし、その大半がつい無意味にスクロールしてしまう、いわゆる「ドゥームスクローリング」(悲観的なニュースや情報を、スマートフォンで延々とスクロールして見続けてしまう行為)だ。
だから最近では、スマートフォンを使わないときは意識的に視界から外し、頭の中からも追い出すようにしている。それでもどうしても手元に置く必要があるときは、必ず画面を下に伏せている。
スマートフォンの画面を伏せておく理由はいくつかあるが、まず最初は実用的な理由だ。画面を下向きにすると、通知が来ても画面がいちいち点灯しないので、バッテリーの節約になる。
もちろん、1回の通知だけでバッテリーが劇的に減るわけではない。だが、その通知が何十回も積み重なると話は別だ。アプリをたくさん入れていて、どれも通知をオンにしていると、特にグループチャットなどでは1日中頻繁に画面が光ることになる。しかもこれは控えめな想定で、十代の若者の中には1日に何百回も通知が来る人も珍しくない。
スマートフォンを伏せて置くことは、社交上のマナーとしても有効だ。誰かと過ごしているとき、画面を隠しておけば「今はあなたに気を取られない」とさりげなく示せる。とくにバーのような薄暗い場所では、数秒ごとに画面が光るのは避けたい。視線は常に目の前の相手に向けておきたいからだ。
臨床心理士のミシェル・デイビス氏によれば、「アイコンタクトは人間同士のつながりを生む最も強力な手段のひとつ」だという。
「神経科学の研究では、二人が目を合わせると脳活動が同期し始め、コミュニケーションが円滑になり共感も高まることが示されています。その同期は、たとえ一瞬でも注意がスマホに移ると途切れてしまいます」
大切な人と一緒にいるときは、目の前の時間に没頭したい。突然の通知が鳴れば、ついちらりと目をやるか、最悪の場合、会話の途中でスマートフォンを手に取ってしまう。
画面を伏せるのには、もっと個人的な理由もある。生活におけるスマートフォンの存在感を少しでも薄めたいのだ。
最近のスマートフォンはサイズが大きすぎるという点でもそうだ。バッテリー持ちは大幅に向上したものの、解像度が上がった大画面が、次々とニュースの見出しや自動再生されるInstagramリールで私を誘う。
「小型スマホ」を各社が発売しなくなって久しい。6インチの大画面越しに表示される内容が現実世界のすべてと競い合うが、しばしば勝ってしまう。それでも、存在感を薄めるためにできる小さな工夫がひとつだけある。できるかぎり画面を自分から背けておくことだ。
とはいえ、スマートフォンからは逃れられない。将来この状況が変わるのか、それともスマートフォン自体が別の形になるのか、私には分からない。少なくとも「自分が見ていないときにスマホから見られないようにする」ことだけは、自分で決められる。
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この記事は海外Ziff Davis発の記事 を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。