猛暑・渇水の影響、ドナウ川水位低下で原発の操業に大きな影響を受ける中東欧諸国…日本も二の舞になるのか?(Wedge(ウェッジ))
7月末から8月の初めにかけ、中東欧諸国の原子力発電所がドナウ川の水位低下により、停止あるいは出力低下に追い込まれているとのニュースが報じられた。 【画像】猛暑・渇水の影響、ドナウ川水位低下で原発の操業に大きな影響を受ける中東欧諸国…日本も二の舞になるのか? 特に大きな影響を受けた国としてハンガリーとルーマニアがあげられている。ルーマニアでは原子力発電所の冷却水の取水量を増やすため、岩盤を爆破し川の流れを変え、さらに爆破された岩石を4隻の艀(はしけ)に積載した上で艀を沈め発電所に向けての流れを確実にする措置まで取られた。 日本では、ドナウ川沿いの原発の出力低下に触れた報道が目立ったが、渇水の影響は欧州中部、東南部の多くの発電設備に出ている。 水位だけではなく熱波の影響もある。取水可能な水量があっても、熱波が水温を上昇させフランスの原子力発電所の操業に影響を与えているニュースがあった。実は熱波の影響は火力発電にも風力発電設備にもある。 川の流量が減少しているので水力発電の発電量も当然減少しているが、水力、原子力発電だけでなく、ほぼすべての発電設備が渇水と熱波の影響を受けている。 欧州の渇水と熱波は電力供給と価格だけではなく、今後の食品価格などにも影響を与えることになる。ドナウ川だけでなくライン川など欧州の主要河川(図-1)も水位が低下している。欧州では内陸水路による輸送も多く輸送費の値上がりを招くからだ。
ドナウ川は、ヨハン・シュトラウスの名曲「美しき青きドナウ」で知られるように、ドイツ南部の森から流れ出て、オーストリア・ウィーン、ハンガリー・ブタペスト、セルビア・ベオグラードを通り黒海にそそぐ2900キロメートルの大河だ。 干ばつと熱波の影響により、ドナウ川の水位はルーマニアとスロバキアでは過去30年間の最低値を記録した。ブタペストでの水位は、8月3日観測史上最低値の10センチを記録している。ドナウ川の観測地点の78%で非常に低い水位が報告されている。 中東欧諸国を中心に、漁業、農業への影響に加え、フェリーの運航停止、観光船の座礁も伝えられている。 中でも、影響を受けているのは、中東欧諸国の電力供給だ。欧州の大河に多い河川水をそのまま取り込み発電する流れ込み式の水力発電所(図-2)は、渇水では能力を発揮することができない。原子力発電も低水位の影響を受けている。 原子力発電所は原子炉の熱により水を水蒸気に変え、発電機につながるタービンを回し発電する。水蒸気を水に戻すのに必要なのが冷却水だ(図-3)。 この冷却水をドナウ川から取り入れている原子力発電所(図-4)が、渇水による水不足に直面している。ドナウ川沿いにあるハンガリーのパスク原発、ルーマニアのチェルナヴォダ原発が、水深の低下により十分な取水ができない状態だ。 4基合計の設備容量200万キロワット(kW)のパスク原発は、8月6日時点で2号機のみが定格出力の約50%の23万kWで稼働している。2基合計130万kWのチェルナヴォダ原発は2基の内1基が停止している。 原発の発電量の低下が欧州で大きなニュースになった理由のひとつに、両国の原発と水力発電への高い依存度ゆえの電力危機がある。ハンガリーは総発電量の42%を原発に依存。ルーマニアは19%だが、渇水の影響を受けている水力への依存が32%ある。 両国は工場の操業停止、ライトアップの中止、オフィス、家庭での節電など電力需要削減策に乗り出している。