【日本市況】株が大幅安、「高市トレード」巻き戻し-債券先物は上昇

14日の日本市場は株式が大幅続落。日経平均株価の下げ幅は1200円を超え、4月11日以来の下落率となった。自民党と公明党の連立解消による政局不安に加え、米国の中国に対する関税政策への懸念から売りが膨らんだ。円は対ドルで151円台後半に上昇。債券は前週末の米長期金利低下を受けて上昇(金利は低下)した。

  自公の連立解消を受け、首相指名選挙の行方や新政権の枠組みが見通しにくくなった。自民党総裁の高市早苗氏の首相誕生を前提とした財政・金融政策への期待で進んでいた「高市トレード」が先週に日本株を最高値まで押し上げたが、ここにきて巻き戻しが進んでいる。

  トランプ米大統領は10日、11月1日から中国製品に100%の追加関税を課す方針を示し、特定の米国製ソフトウエアの輸出も制限すると発表した。また 中国商務省は14日、韓国の造船大手ハンファオーシャンの米関連企業5社に対し制裁を科すと発表した。米中関係の悪化が世界経済に与える影響が不安視され、午後に入るとアジア株は総じて下落。為替市場では円が主要通貨に対して全面高となった。

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  ペッパーストーン・グループのシニアリサーチストラテジスト、マイケル・ブラウン氏は、米中の対立が広範にリスク資産を圧迫しているように見えると指摘。米中間の緊張は継続しており、市場参加者が見込む以上に激しくなっていることを再認識させたと話す。  

株式・為替・債券相場の動き-午後3時半過ぎ
  • 日経平均株価の終値は前週末比2.6%安の4万6847円32銭
  • 東証株価指数(TOPIX)は2%安の3133.99
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.3%高の151円78銭
  • 長期国債先物12月物の終値は前週末比43銭高の136円33銭
  • 新発10年債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.66%-午後3時時点
  • 新発40年債利回りは5bp高い3.505%

株式

  株式は大幅続落。国内政局不安や米中貿易摩擦の再燃懸念が強まり、電機や銀行、情報・通信株が売られた。為替相場が円高に振れると、午後に一段安となった。

  大和証券の坪井裕豪チーフストラテジストは、中国はクアルコムに対して攻勢を強めるなど、米中懸念がぬぐい切れていないと指摘。人工知能(AI)や半導体は大丈夫だろうという前提が崩れており、日本株は高値警戒感がある中でどうしても利益確定売りに傾きやすいと語った。

  アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは「新政権の枠組みがどうなるか要注意だ。高市氏は政権運営で苦戦しそう」とみる。野党間の政策面の違いから「首相指名選挙では高市氏が選ばれる可能性が高いというのが現在も市場のコンセンサス」と言う。

為替

   円相場は対ドルで151円台後半に上昇。加藤勝信財務相が閣議後会見で円相場の下落について、為替動向をしっかり見極めるとの見解を示したことや、株価の下げ拡大で円買いが強まった。

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  あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、株価の下げ拡大が投資家のリスク回避姿勢を強め、円買い・ドル売り材料視されたと語った。国内の政局については、高市氏の首相就任の可能性が強まれば高市トレードで円安、その可能性が低下すれば同トレードの巻き返しで円高という反応になりやすいとしている。

  一方、みなと銀行の苅谷将吾ストラテジストは、高市氏の首相指名の可能性が引き続き高いとみられているが、玉木雄一郎国民民主党代表が首相になれば「高市氏以上に財政拡張や金融緩和継続が意識され、円安が一段と進行する」と予想する。

債券

  債券は先物や中長期債が上昇。トランプ政権の中国に対する関税政策への懸念から前週末の米長期金利が大幅に低下した流れを引き継いだ。日本銀行の利上げが後ずれするとの観測も支えになった。一方、15日に行われる20年利付国債入札への警戒感から超長期債は売られた。

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、日銀は政治とのコミュニケーションが一段と取りづらくなり、10月利上げの可能性は低下していると指摘する。スワップ市場が織り込む10月の利上げ確率は1割弱に低下した。

  奥村氏は混沌(こんとん)とする政治情勢について、高市氏が首相に就任しても予算編成が難航し、財政拡張が難しくなるとみる向きがある一方で、玉木氏の首相シナリオも否定できず、「内閣不信任案の提出や解散総選挙も意識され、金利にプレミアム(上乗せ金利)が乗り続ける」とみる。20年債入札は「政局の不透明感から投資家が慎重化し、低調な結果に終わるリスクには注意が必要だ」と言う。

新発国債利回り(午後3時時点)

  2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債   0.890% 1.180% 1.660% 2.715% 3.230% 3.505% 前週末比 -3.0bp -4.5bp -3.0bp +1.0bp +4.5bp +5.0bp

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— 取材協力 Momoka Yokoyama, Aya Wagatsuma and Toshiro Hasegawa

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