【米国市況】S&P500は続落、国債利回り上昇-早期利下げ観測後退

30日の米株式市場ではS&P500種株価指数が小幅ながら続落。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が、9月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合での利下げについては何も決まっていないと述べたことが響いた。ただ、引けにかけて下げ幅を縮小した。国債利回りは上昇。円は対ドルで149円台半ばに下落した。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6362.90 -7.96 -0.12% ダウ工業株30種平均 44461.28 -171.71 -0.38% ナスダック総合指数 21129.67 31.38 0.15%

  FOMCは政策金利を据え置いたものの、声明で景気判断を下方修正したことから、政策発表直後は近く利下げが実施されるとの観測が広がり、株価は上昇していた。しかし、パウエル氏はその後の記者会見で、労働市場は「堅調なようだ」とし、インフレは目標を引き続き上回っていると述べた。市場はこうした発言を受けて、近い将来の政策変更はなさそうだと受けとめた。

  FOMCはフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を4.25-4.5%で維持。ウォラー連邦準備制度理事会(FRB)理事とボウマンFRB副議長が0.25ポイントの利下げを主張し、決定に反対票を投じた。

関連記事:FOMCが金利据え置き、理事2人が反対-景気判断は下方修正 (2)

  eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏は「米金融当局は次回会合に向けて、引き続きデータ次第の姿勢を維持するようだ」と指摘。「利下げに踏み切るには、インフレ上昇が一時的かつ限定的にとどまる、あるいは今後数カ月から数四半期にわたってインフレが継続的に鈍化するという確信を当局が得る必要がある。これは、労働市場に顕著な悪化が見られないことが前提となる」と語った。

  ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)のアシシュ・シャー氏は、「今後2カ月の経済指標が極めて重要になる。関税によるインフレが予想ほど深刻でなかった場合や、労働市場に弱さの兆しが見られた場合は、FRBは今秋にも利下げサイクルを再開する可能性がある」と述べた。

  この日発表された4-6月(第2四半期)の米実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率3%増加した。1-3月(第1四半期)は0.5%減だった。GDPの3分の2を占める個人消費は1.4%増加。2四半期連続のペースとしては、コロナ禍以来の低い伸びにとどまった。

関連記事:米GDP、4-6月は3%増-関税前の駆け込み輸入急増が反転 (2)

  7月の米民間雇用者数は市場予想を上回る伸びとなった。減少した前月から持ち直したが、増加ペースは労働需要の軟化傾向と整合的と言える。ADP民間雇用者数は10万4000人増。エコノミスト予想は7万6000人増だった。

関連記事:米ADP民間雇用者数、予想以上に増加-なお昨年平均は下回る (2)

  SWBCのクリス・ブリガティ氏は、株式相場はまだ今年のピークに達していないとみられるものの、上昇余地は限られているとの見方を示した。市場を牽引する銘柄のバリュエーションが高水準にあることを理由に挙げた。

  「市場は季節的に弱含む時期に入りつつあり、今秋に一時的な調整局面が訪れる可能性が示唆される。その後は2026年に向けて株価は上昇する」と予想した。

国債

  米国債は下げ幅を拡大。パウエルFRB議長がタカ派的な姿勢を示したことから、9月のFOMC会合での利下げ観測が後退した。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.90% 4.2 0.86% 米10年債利回り 4.37% 5.0 1.15% 米2年債利回り 3.94% 7.2 1.85%     米東部時間 16時56分

  パウエル議長は、9月半ばに予定されている次回FOMC会合の政策行動についてはまだ何も決定されていないと述べた。これを受けて、年内の利下げ見通しが後退し、10月会合での利下げ確率は約85%に下がった。パウエル議長の発言前は完全に織り込まれていた。

  オックスフォード・エコノミクスのアナリスト、ジョン・カナバン氏は「市場は労働市場の見通しに焦点を当てて、利下げを期待してきた」と指摘。「労働市場の動向は利下げを促すのに十分との見方をパウエル氏が押し返すほど、FOMCが市場の予想以上に金利を長く据え置くリスクが高まる」と話した。

  ブランディワイン・グローバル・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、トレーシー・チェン氏は「パウエル氏の発言はややタカ派寄りだ。労働市場は均衡しており、インフレは目標を上回っていると認めた」と指摘。「またパウエル氏は経済について、金利が景気抑制的であるような反応を示していないと言及した」と述べた。

  米財務省はこの日、「少なくとも向こう数四半期にわたって」中長期債の入札規模を据え置く見通しだとし、巨額財政赤字を補う資金調達では少なくとも2026年まで短期証券(Tビル)に依存する方針を示した。

  来週の四半期定例入札での発行総額は、市場の予想通り、1250億ドルになると明らかにした。

関連記事:米財務省、2026年まで中長期債の発行規模据え置き示唆-買い戻し強化

外為

  外国為替市場ではドル指数が上昇し、2カ月ぶりの高値を記録。9月利下げは決まっていないとするパウエル議長の発言に反応した。ドルは主要10通貨に対して全面高となった。

  ドル買いが強まる中、円は一時0.7%安の1ドル=149円53銭と、日中としては4月2日以来の円安・ドル高水準となった。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1219.25 9.27 0.77% ドル/円 ¥149.53 ¥1.07 0.72% ユーロ/ドル $1.1402 -$0.0145 -1.26%     米東部時間 16時57分

  ジェフリーズの外国為替グローバル責任者、ブラッド・ベクテル氏は今回のFOMCについて、「ややタカ派寄りではあるが、30年ぶりに2人の反対票も出た。従って、全体としてはどちらの立場にも材料があるが、市場はタカ派的な側面に反応している」と話した。

  クレディ・アグリコルCIBのG10為替調査・戦略責任者、バレンティン・マリノフ氏は「いずれにせよ、FOMCの景気判断は以前よりもやや慎重さを増している」と指摘した。

原油

  ニューヨーク原油相場は3日続伸し、6月以来の高値で引けた。ロシア産原油を購入しているインドに制裁を科すとトランプ米大統領が表明したことで、供給が世界的に逼迫(ひっぱく)するとの懸念が強まった。

関連記事:トランプ氏、インドに25%関税発表-ロシア産品購入の懲罰も示唆 (3)

  トランプ氏はインドへの25%関税賦課や追加ペナルティーの方針をトゥルース・ソーシャルで表明した。

  インドの石油会社ナヤラ・エナジーは対ロシア制裁強化を受けて製油所の稼働率を引き下げており、石油製品市場の逼迫が深刻化して原油価格に波及するとの懸念が高まっている。

  TDセキュリティーズの商品ストラテジスト、ダニエル・ガリ氏は「ロシア産原油に対する二次制裁への懸念が、直近取引でのウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)と北海ブレントの価格を支えた」と指摘。

  「アルゴリズム取引は現在、WTIで『最大限のロング』ポジションに達しており、さらなる資金流入の余地は限られている」とも述べ、上昇相場が勢いを失いつつある可能性を示唆した。

  この日発表された米エネルギー情報局(EIA)データも、原油相場の上値を抑えた。先週の米原油在庫は770万バレル増と、伸びは1月以来の大きさ。WTI原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫も増えた。

  同時に、この時期としては数十年ぶりの低水準となっていたディーゼル油在庫も増加。ディーゼル油の品薄感はこれまで、原油相場の底堅さを支えてきた。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物9月限は前日比79セント(1.1%)高の1バレル=70ドルちょうど。ロンドンICEの北海ブレント9月限は1%上げて73.24ドルで引けた。  

  金スポット相場は反落。ドルと国債利回りが上昇したことが、金相場への重しとなった。

  スポット価格はニューヨーク時間午後4時11分現在、前日比52.89ドル(1.6%)安の1オンス=3273.73ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限はFOMCの決定発表前に、28.40ドル(0.8%)安の3352.80ドルで引けた。 

原題:Wall Street Sees Its Worst Fed Day Since December: Markets Wrap(抜粋)

Treasuries Fall as Traders Pare Bets on Rate Cuts This Year (1)

Dollar Hits Two-Month High as Rate Cut Bets Pared: Inside G-10

Oil Hits One-Month High as Trump Targets Russian Flows to India

Gold Drops After Strong US Data as Traders Await Fed Decision

関連記事: