【ジャパンモビリティショー2025】スズキがワールドプレミアを含む初公開モデル4機種を展示! 最新情報を詳細解説!
スズキ株式会社は東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」(10月29日~11月9日)にコーポレートスローガンの「By Your Side」をテーマとしたブースを出展する。展示車両のうち二輪車は12台、そのうちワールドプレミアは1機種、ジャパンプレミアは3機種を展示予定だ。早速気になるその内容を見ていこう!▶▶▶主なスズキ出展モデルの写真はこちら
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油冷から最新GSX-R、そしてカタナにHAYABUSA……。スズキ系人気モデル向けにオリジナル・クロモリシャフトを開発・販売する京都のプロショップがm-techだ。アフターマーケットでのその黎明期から製品を送り出し続ける同店に、クロモリシャフト作りのポイントから置換による効果まで、教えてもらった。※本企画は『Heritage&Legends』2025年10月号に掲載された記事を再編集したものです。
「はっきりと言ってしまえば純正シャフトを市販のクロモリ製に置き換えるだけで素材の硬度・剛性が変わり、ライダーはその差を感じられます。ただし、大事なのはその先。いかに精密な寸法で作り、平滑性を保つ処理ができるかで、ライダーへのインフォメーションは変わっていくんですよ」と、エムテック代表の松本圭司さん。
▲今夏の鈴鹿8耐、S-PULSE DREAM RACINGのピットで指揮を執るm-techの松本圭司さん(左)。
松本さんは自身もライダーとして参加することからレースに関わり始め、19歳の時からはメカニックの道へ。親交のある生形秀之(おがたひでゆき)選手の主宰する、エスパルスドリームレーシングでは’17-’19年の鈴鹿8耐でも腕を奮った。そして今夏の8耐ではその生形選手の引退レースを飾ろうと、テクニカルディレクターも買って出た人。クロモリシャフトに興味を持ち実戦に投入したのは’00年、当時所属したエイミングスポーツ(故・前田 淳氏主宰)での8耐参戦時だったと振り返る。
▲今夏の鈴鹿8耐、S-PULSE DREAM RACINGの生形秀之選手+GSX-R1000R。この8耐は生形選手のレース人生に区切りをつける引退レースだった。
「当時はクロモリシャフトなんて売られていませんでしたから、データを採りながらワンオフ製作しました。’12〜’15年に、当時の全日本に生形選手と参戦して実戦投入していた時もそうです。今、エムテックで一般に販売するクロモリシャフトは、そうした長い間に収集したデータと培ったノウハウをフィードバックして製作しています。もちろん国産品です」(同)
松本さんによるお客さん向けの、クロモリシャフトの効果説明の言葉を借りれば、まずクロモリ製への素材置換で締結剛性が高くなり、フロントシャフトなら舵角の切れに変化が出るからライダーも変化を受け取りやすく、ピボットシャフトは高速道路でのレーンチェンジなどでクイックさが増して効果が感じられる。そしてリヤシャフトでは、ここはスイングアームの剛性にもよるがねじれ防止の効果も加わる。これらの効果を通して、クロモリシャフトによりバイクの運動性能が底上げされたことが体感できるのだという。
▲今夏の鈴鹿8耐・決勝レースは転倒による修復のため、長時間のピットストップを余儀なくされ周回は157周。残念ながら完走は認められなかったが、これもレースと松本さん。写真はゴール時。生形秀之、ジョナス・フォルガー両選手。
「ウチが市販品に使うシャフトの素材はSCM435で、レース用にはさらに高強度で靱性のあるものを使います。設計・製造も、純正シャフトをコピーするのではなく、精密な削り出しと円筒研磨はもちろん肉厚配分など各部の数値を適正化。真円性と異径部分の同軸性も大事なファクターと考えます。さらに表面にはめっきより硬度が高く平滑性が出せ、耐焼き付き性、耐蝕性に優れ、摺動性も向上するSQP処理を施しています。それだけの作業が必要なほど、クロモリシャフトは緻密に作り込むべきパーツなんです」(同)
製品ラインナップはホームページで確認されたいが、スズキ車以外も年代を問わず、ワンオフ製作にも対応してくれる。走りをブラッシュアップする「本物」は、エムテックで手に入る。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
突き詰めた剛性と精度をストリートにもフィードバック!
シャフトは外面の円筒研磨はもちろん内部肉抜き時のシャフト異径部分への同軸性、各部肉厚も独自データで管理・製作される。
各部寸法を適正化することでフォークやフレーム、スイングアームとの嵌合精度を高め、シャフトの置換効果を高められる。
最新のラインナップ。写真左の2本はフロントシャフトでMTS-007(写真手前・’11〜GSX-R600/750、’16〜GSX-S1000、’17〜GSX-S750、’19〜KATANA適合)とMTS-002(奥・’90〜’94GSX-R750 L/M/WN/WP/WR、’90〜’94GSX-R1100 L/M/N/WP)。
右の3本は初期油冷GSX-R用で手前からフロントシャフトMTS-010(’87GSX-R750H、’87-’88GSX-R1100 H/J)、中はピボットシャフトMTS-209(’86-’88GSX-R1100 G/H/J)、奥がシャフト(’86-’88GSX-R1100 G/H/J)。価格はいずれも5万8300円/1本だ。
0.001秒を争うトップレースではちょっとしたキズや曲がりが命取りと分かる見本を見せてもらった
m-techがクロモリシャフトに許容する製品公差は0.01〜0.02mm。写真の3本は過去のレースで転倒した車両から抜き出したレース用シャフトで、当然のように新品に取り換えられた。モータースポーツの世界ではシャフトはそれほどナーバスなものなのだ。
取材協力:m-tech(エムテック)
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
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▶▶▶写真はこちら|スズキ「Vストローム250SX」(16枚)
SUZUKI「V-STROM250SX」税込価格:59万1800円
全長×全幅×全高:2180×880×1355mm ホイールベース:1440mm シート高:835mm
車両重量:164kg
スズキの「Vストローム250SX」は、249ccの油冷単気筒エンジンを軽量でシャープな車体に搭載したスポーツアドベンチャーツアラー。日本では2023年8月から販売が開始された。
最大の特徴は、独自の油冷エンジン「SOCS」による軽量コンパクト設計と、オフロード走行を意識した装備だ。ホイール径は前19・後17インチであり、セミブロック調パターンのタイヤを装着することで、舗装路の快適性と未舗装路での走破性を両立している。
車体重量は164kgと、同クラスのモデルと比較して軽量に抑えられており、良好な取り回しやすさと軽快な運動性能を実現。
また、アドベンチャーモデルとして求められる装備も充実しており、存在感のあるLEDヘッドライトや、ツーリングに便利なUSBソケット、防風効果を持つウインドスクリーン、ナックルカバー、そして積載性に優れたアルミ製リアキャリアなどが標準で備わっている点も魅力的。
街乗りからツーリング、さらに軽いオフロードまで、幅広いシチュエーションを自由に楽しむことができる万能な一台だ。
2025年モデルでカラーバリエーションが一新され、「チャンピオンイエローNo.2」「ソノマレッドメタリック」「グラススパークルブラック」の3色がラインナップされる。
カラーバリエーション
エンジン形式:油冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒総排気量:249ccボア×ストローク:76.0×54.9mm圧縮比:10.7最高出力:19kW(26PS)/9300rpm最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/7300rpm燃料タンク容量:12L変速機形式:6速リターンキャスター角:27°00' トレール量:97mmブレーキ前・後:シングルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ前・後:100/90-19・140/70-17
スズキ「Vストローム250SX」関連のおすすめ記事
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10月30日からスタートするジャパンモビリティショーでスズキが面白そうなバイクを展示します! これは見に行く価値アリかも?
来る10月30日から東京ビッグサイトで開催スタートとなる『ジャパンモビリティショー2025』には当然スズキも出展するのですが……今年も興味津々のコンセプトモデルが発表されました!
その名は……
e-VanVan
です!
キターーーッ!!!
なんと『電動バンバン』がきました!
二輪EVの現状はようやく実用系シティコミューターが現実的になってきた印象ですが、趣味性の高い「バイク」の分野となるとまだあまりピンときていないのが現状のように思えます。
でもこれは『アリ』なのでは?
レジャーバイクの電動化。単純な話ですが『その手があったか!?』と感心しました。ちなみに原付二種(125ccまで)クラスに相当するEVとして参考出品されます。
こういうのなら楽しそうだし現実味もある!
さっすが『俺たちのスズキ』はひと味違うゼ!?
ちなみに私(北岡)はコミューター系以外の電動バイクに対していつも『電池の部分がそっけないんだよな』と感じていました。でもこのe-バンバンだったら、電池の部分に自分の好きなステッカーとか貼りまくってストリート風に仕上げたい!
あくまでコンセプトモデルなので詳細は不明ですが、前回に発表された原付二種相当の『e-チョイノリ』と今回の原付二種相当『e-バンバン』が本当に発売されたら……EVに対して楽しそうな未来が想像できます。これはいいぞ!?
ジャパンモビリティショーには新型モデルも多数展示!
そしてもちろんスズキブースはe-バンバンだけで終わりじゃありません。
より現実的になってきたのが『e-PO(イーポ)』です。
実際に公道での走行調査が行われたイーポはパッと見だと、これまでと変わりないように思われますがフレームなどが再検討された様子。あくまで推測に過ぎませんが、いよいよ市販化が近くなっている予感がします。
これ、折りたたみができて「車に積みやすい」っていうのが良いんですよ……
電動アシスト自転車と原付スクーターのハイブリッドとも言える新時代のシティコミューター。基本的には原付一種(50ccスクーター)同様の扱いとなるのですが、以前の試乗会で実際に乗ってみた感想はかなり好感触でした。
良い意味で期待を裏切られた。その顛末にご興味があれば下記の記事をご覧ください。
その他にもスズキブースにはサステナブルな未来への提案として、水素エンジンバーグマンやEVスクーター「e-アドレス」、バイオエタノール燃料で走る「ジクサーSF250 FFV」などが展示される予定となっています。
それらも一見の価値アリなのですが……
やはり気になるのは目先の内燃機エンジンの新型モデル。
ジャパンモビリティショーでは発売となったばかりの新型『DR-Z4SM』や、市販予定車として『GSX-8T』シリーズや新型『GSX-R1000R』も展示されるとのこと!
このほかにもスズキはジャパンモビリティショーの会場において、四輪車や次世代モビリティを多数展示する予定となっています。
でもやっぱり……個人的にいちばん気になるのは冒頭の『e-バンバン』です(笑)
だって『こういう未来はいいかもな~』って思えるでしょう?
(下に続きます)
いろんなメーカーが未来のモボリティを提案するのが『ジャパンモビリティショー2025』ですから、スズキブースの他にも楽しめる要素はいっぱいあるはず!
ちなみに高校生以下は入場無料!
さらにファミリーでも参加しやすいようショー会場には限定の『キッザニア』が爆誕します。世のお父さんたちよ……このショーなら胸を張って『みんなで行こうか!』って言えるぞ!
そして隙を見つけ次第……
スズキブースで『気になる車両』と戯れるのだ!
スズキ公式『JAPAN MOBILITY SHOW 2025』特設サイトはこちら!
※タップ(クリック)すると外部サイトへジャンプします
スズキファンのためのWEBサイト!
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スズキ株式会社は東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」(10月29日~11月9日)にコーポレートスローガンの「By Your Side」をテーマとしたブースを出展する。展示車両のうち二輪車は12台、そのうちワールドプレミアは1機種、ジャパンプレミアは3機種を展示予定だ。早速気になるその内容を見ていこう!▶▶▶主なスズキ出展モデルの写真はこちら
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「KLX230 SHERPA」は、2024年12月25日に発売された新型マルチパーパスモデルです。「KLX230 S」をベースモデルとしつつ、林道ツーリングで役立つ装備が標準でさまざま搭載されています。この記事では、オフロード走行に限定した試乗インプレッションをお送りします。文:石神邦比古/写真:Kawasaki Good Times 編集部※この記事はウェブサイト「Kawasaki Good Times」で2025年10月4日に公開されたものを一部編集し転載しています。
▶▶▶2025年9月オープン! カワサキの公式メディアサイト「Kawasaki Good Times」
kawasaki-goodtimes.comKawasaki KLX230 SHERPA 2025年モデル
総排気量:232cc エンジン形式:空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒 シート高:845mm
車両重量:134kg
発売日:2024年12月25日(水) 税込価格:63万8000円
カワサキの軽二輪オフロードモデル「KLX230 S」と車体・エンジンなどといった基本コンポーネンツを共有する兄弟モデルとして、新登場した「KLX230 SHERPA」。
かつてトレッキングモデルという位置づけで販売された「SUPER SHERPA」を想起させるデザインで、アースカラーを採用したカウルや、タフなイメージを強調するスタイリングが特長です。
近年、軽量・コンパクトで気軽に野山に分け入れるようなトレッキングモデルが市場から姿を消していたため、いっそう存在感が際立っていますね。
標準搭載されているスキッドプレート、ハンドガード、スタックパイプはタフなスタイリングを強調するだけでなく、機能的にも活躍必至な魅力の装備です。
KLX230シリーズにおける「KLX230 SHERPA」の特徴は、街乗りからトレイルライディングまで幅広いシーンに対応する扱いやすさと快適性、そして走破性!
▲ライダーの身長174cm・体重60kg
まず、「KLX230」のシート高が880mmなのに対し、「KLX230 SHERPA」は845mmと低めに設定され、オフロードモデルとしては非常に良好な足つき性を誇ります。
ホイールトラベルを短くしつつも、最低地上高は240mmを確保し、オフロード性能をスポイルしない設計となっています。
身長174cmの私が跨ってみた足つきがこちらで、両足がしっかり接地してとても落ち着きます。
コンパクトな車体ながらライディングポジションの自由度は高く、スタンディング姿勢もとりやすくなっています。
「KLX230」シリーズ共通のコンパクトな車体に、低回転からトルクフルな232ccの空冷単気筒エンジンを組み合わせ、低中回転では250ccクラスと遜色ない元気な加速フィールを体感できます。
ダッシュ力も魅力ですが、とにかく低回転でよく粘り、急な上り坂も力強く駆け上がります。タコメーターが装備されていないので細かい数値はわかりませんが、回転数が低くても2速・3速程度までならトコトコと坂を上れました。
低いシート高のおかげで楽に地面に足が届き、軽さも相まって容易に車体を支えられることも「KLX230 SHERPA」の大きな武器。
タイヤが滑ったり、ゆっくり障害物を越える際にとても心強く、林道ツーリングでは間違いなく大きな恩恵を感じるでしょう。
標準のIRC製ブロックタイヤ「GP-21・GP-22」はオンロードでの快適性も考慮し、トレッドパターンは比較的大人しい印象ですが、のんびりと砂利や土、岩場のある山の中を散策するには十分なグリップを発揮し、「KLX230 SHERPA」の走破性を助けてくれます。
そして今回試乗して一番感動したポイントはオフロードでの高い快適性です!
障害物や凹凸による衝撃をサスペンションが驚くほどしなやかに吸収し、こぶし大程度の岩や段差はまるで何もなかったかのように自然に越えていきます。
嫌でも振動の多くなるオフロードで、とても快適な乗り心地を体感できたことに驚きました。
もちろん、フルスロットルで駆け抜けるようなスピードレンジではコントロールがシビアになる印象でしたが、そもそも「KLX230 SHERPA」の強みが活きるのはスピードを追い求める走りではなく、低中速域でのトレイルライディング。
自然の中でじっくりと走行ラインを見極め、確実に前に進んでいく、「KLX230 SHERPA」はそんな遊び方にピッタリな走破性と、気軽にそれに挑戦できる親しみやすさを持ち合わせています。
最後に、充実した装備の数々もこのモーターサイクルを選ぶ上で大きなメリット。
冒頭でも触れましたが、トレイルライディング中の飛び石や障害物からエンジンを守るスキッドプレート、飛び出した木の枝や障害物の接触時に手やブレーキ、クラッチレバーを守るハンドガードが標準装備され、納車した状態ですぐに快適な林道走行を楽しめるパッケージとなっています。
ヘッドライト下にはよりハードな環境をアタックする際に重宝するスタックパイプが用意されているのも玄人ライダーにとって嬉しいポイントでしょう。
2026年モデルでは、より足つき性を高めた「KLX230 SHERPA S」が追加ラインナップされました。
シート高は845mmからさらに低い825mmとなっていて、数値的には少し高めのオンロードモデルと同等程度。
実際に跨るとオフロードモデルのサスペンションは沈み込みが大きいため、数値以上に足つきは良く感じるでしょう。シートが細身で脚をまっすぐ下ろしやすいのもKLX230シリーズの特長です。
「KLX230 SHERPA」が気になっているけれど、足つきが不安……そんな方はぜひ一度、カワサキ正規販売店で跨ってみてください。
絶対的な速さやパワーに捉われず、街中から山の中まであらゆるシーンに対応する「KLX230 SHERPA」は、眺めているだけでも冒険心をくすぐられる一台。
一度乗ってしまうと、林道めぐりやキャンプツーリングなど週末の予定が次々と浮かんでくる……心のワクワクを具現化したようなモーターサイクルでした!
▶▶▶2025年9月オープン! カワサキの公式メディアサイト「Kawasaki Good Times」
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ヤマハ発動機株式会社は、東京ビッグサイトで開催される「ジャパンモビリティショー2025」(10月29日~11月9日)に「感じて動きだす」をテーマとするヤマハブースを出展、ワールドプレミア6モデルを含む16モデルを発表した。早速主な内容をご紹介しよう。▶▶▶主なヤマハ出展モデルの写真はこちら
東5ホール内、ヤマハブースの出展コンセプトは「人と機械による乗り物の未来を感じる」。ボーカロイドの初音ミクがブースのエバンジェリスト(伝道者)を務めるほか、車両以外にも電子楽器等の展示・演奏や、立体音響技術を活かしたダイナミックなステージ演出も予定されている。ここでは主な展示車両を紹介していこう。
「MOTOROiD:Λ」モトロイド ラムダ (ワールドプレミア、参考出展車)
2017年に自立機能を備えた「MOTOROiD」が初登場し、2023年にはヒトとマシンが呼応し合う進化版の「MOTOROiD2」が登場。今回発表された「MOTOROiD:Λ」ではAIを搭載。強化学習を用いて仮想環境で学習し、Sim2Real技術により現実世界での動作を実現する。自ら学習して成長するのが特徴で、まるで生き物のような動きを会場で見ることができるようだ。
車両は自立可能で、アクチュエーターを前後輪とフロントフォーク、アーム部分の4か所に搭載。180度に展開した姿勢から、自らの判断で各部モーターを適切に駆動して車体を起き上がらせ、バランスを保ちながら自立することができる。外骨格デザインは失敗における衝撃を想定した耐久性と軽量化を重視したもので「モビリティ×強化学習による運動制御」という未開拓の領域に踏み込んだモデルとなっている。
「TRICERA proto」トライセラ プロト (ワールドプレミア、参考出展車)
「トライセラ プロト」は3輪のオープンスポーツEV。意のままに操るために3輪手動操舵(3WS)を採用し、ドライバーが最もFUNを感じる旋回制御を通じて、異次元の人機一体感を実現する。走行音をチューニング&調律するサウンドデバイス「αlive AD」も搭載し、操縦に没入するドライバーの高揚感をアシストしてくれる。
前2輪の操舵は通常の4輪車などと同様だが、リアもそうだ可能なのがポイント。リアの操舵は前2輪の操舵に連携して後輪を操舵する「オートモード」と、ドライバーが任意でパドルを動かすことで後輪を動かす「マニュアルモード」が設定されているのも特徴だ。
「PROTO BEV」プロト バッテリー イーブイ (ワールドプレミア、参考出展車)
大型モデルに相当するスーパースポーツタイプのバッテリーEV。ライダーのFUNの最大化を目的に軽量化とコンパクト化を追求し、新感覚の乗り味と扱いやすさを兼ね備えているのが特徴で、車格は「600cc~1000cc相当」とされている。スタイリング的にはYZF-R7に近いものとなっている。
スーパースポーツならではの操縦安定性に、バッテリーEVの魅力であるリニアなスロットルレスポンスと力強くスムーズな加速性能を融合。さらに、車両の状態をライダーに伝えるメータービジュアライザーやサウンドなど、マシンとライダーを密接にリンクさせ、一体感を演出する各種のHMI(ヒューマン‐マシン・インターフェイス)も実装されている。
「H2 Buddy Porter Concept」エイチツー バディ ポーター コンセプト (ワールドプレミア、参考出展車)
カーボンニュートラルの実現に向けて、ひとつの有力な選択肢となっているのが水素エンジン。H2バディ ポーターコンセプトは、水素エンジン搭載二輪車の社会実装を目指し、トヨタ自動車と共同開発中のモデル。ルーフを備えた商用のスクータースタイルが特徴だ。
二輪車では大きな水素タンクのレイアウトが課題となっているが、今回カーゴモデルとすることで、カーゴスペース下にトヨタ自動車が新規開発した小型の高圧水素タンクを搭載。水素満タン時の航続距離じは実走テストで100km以上と発表されている。
「PROTO HEV」プロト ハイブリッド イーブイ (参考出展車)
「静」と「動」、異なる2つの動力性能を自在に操る悦びを提供するシリーズ・パラレル・ハイブリッド(SPHEV)モデル。先に発表されていたモデルだが、今回のモビリティショーで初の一般公開となる。電動モーターと内燃機関を効率的なパッケージング技術で統合し、多彩な走行モードを実現。都市部では静かで滑らかな走りを、郊外ではダイナミックな走りも楽しめる仕様となっている。
車格としてはビッグスクーターのXMAXぐらいのサイズとされており、独自のパワー&エネルギーマネジメント技術により、同じ車格のスクーターより燃費が約35%以上も向上しているのも特徴だ。
「PROTO PHEV」プロト プラグインハイブリッド イーブイ (参考出展車)
HEV同様、先に発表されていたPHEVモデルもモビリティショーで初の一般公開となる。車格としてはMT-07くらいのサイズのようで、エンジンとモーターの駆動を切り替えることで、走行シーンに応じてEV走行やハイブリッド走行を可能にしている。
持ち前のスポーティな走りと省燃費、高い環境性能を実現し、未来に向けた内燃機関エンジン搭載モデルの可能性を広げるモデルだ。
「ジャパンモビリティショー2025」主なヤマハブース出展モデルの写真
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SUZUKI DR-Z4S 2026年モデル
総排気量:398cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 シート高:890mm
車両重量:151kg
発売日:2025年10月8日(水) 税込価格:119万9000円
400ccクラスでは現時点で国内で新車が購入できる唯一の本格デュアルパーパスであるDR-Z4S。前モデルのDR-Z400Sが生産を終了した2009年以来、実に16年ぶりの復活となる待望のモデルだ。
シリンダーヘッドを新作し、カムプロフィールを変更したエンジンは38PSを発揮。チタン製の吸気バルブなど、贅沢な素材も惜しみなく投入されている。フロントフォークはKYB製の倒立フォークをついに採用。リアショックもKYB製で、ガッチリしたスイングアームはアルミ製となっている。
LED1眼のバイファンクションヘッドライトを採用し、インパクトあるフロントマスクを演出。リアのテールランプとウインカーもLEDで、コンパクトな造りが特徴。タンク容量は8.7リットルで、シートは高さを抑えながら、ライディングポジションの自由度を重視した形状としている。
メーターはデュアルパーパスとしては大きめの液晶デジタル。今回から電子制御スロットルを搭載、S.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を採用している。これはG(グラベル)モードを含むSTCS(スズキトラクションコントロールシステム)、SDMS(スズキドライブモードセレクター)、解除モード付ABSなどが含まれており、ライダーのスキルや路面コンディションに応じた多様なライディングを実現している。
ボディカラーはイエローとグレーの2色を展開。価格は119万9000円だ。ストリートからオフロードまで幅広く楽しめる、400ccクラスでは久々となる本格トレールモデルの登場だけに、今後注目が集まりそうだ。
スズキ「DR-Z4S」のカラー・人気投票
スズキ「DR-Z4S」の主なスペック・燃費・価格
スズキ「DR-Z4S」の写真
スズキ「DR-Z4S」のおすすめ関連記事
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SUZUKI DR-Z4SM 2026年モデル
総排気量:398cc エンジン形式:水冷4ストDOHC4バルブ単気筒 シート高:890mm
車両重量:154kg
発売日:2025年10月8日(水) 税込価格:119万9000円
新車で買える400ccクラスの貴重なスーパーモタードモデルとして注目されている、スズキの「DR-Z4SM」がいよいよ2025年10月8日から国内発売になる。デュアルパーパスのDR-Z4Sをベースとした兄弟車だが、走りのポテンシャルは相当期待できそうだ。
エンジンはシリンダーヘッドを新作し、カムプロフィールも一新した事実上の新作で、パワーは38PSを発揮。チタン製の吸気バルブなど、贅沢な素材も惜しみなく投入されている。基本的にフレームはDR-Z4Sと同様で、フロントフォークは倒立、前後ホイールは17インチのワイヤースポークが採用されている。
印象的なフロントマスクを演出するヘッドライトはLED1眼のバイファンクション。リアのテールランプとウインカーもLEDで、コンパクトな造りが特徴。タンク容量は8.7リットルで、シートは高さ890mmながら足つき性にも配慮された形状で、ライディングポジションの自由度も重視されている。
メーターは液晶デジタルで、電子制御デバイスも満載。今回からS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を採用している。これはG(グラベル)モードを含むSTCS(スズキトラクションコントロールシステム)、SDMS(スズキドライブモードセレクター)、解除モード付ABSなどが含まれており、ライダーが状況に応じて自由自在にライディングを楽しめる仕様となっている。
ボディカラーはグレーとホワイトの2色を展開。価格は119万9000円だ。かねてから期待の高かった1台だけに注目が集まりそうだ。
スズキ「DR-Z4SM」のカラー・人気投票
スズキ「DR-Z4SM」の主なスペック・燃費・価格
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京都の老舗バイクショップ、カスノモーターサイクルによるオリジナルブランド、AELLA(アエラ)。高質な削り出しパーツで知られる一方、ドゥカティやBMWといった輸入車向けが主力として知られてきたが、最近では国産車向け製品の開発・製造にも力を注ぐ。そんなAELLAが今、推し出すのがHayabusa用パーツ群だ。この車両は「京の風を纏う、新緑の鼓動。」をテーマにHayabusaをより深く楽しんでほしいという意味も込めてパーツを製作して装着、ブレーキシステムをブレンボにするなどした“Hayabusa KYO-SUI(京翠[きょうすい])”として’25年の東京モーターサイクルショーで披露されたものだ。京翠は同社の所在地である京都から、きれいな水のように浸透していく様を表現した
ということで、ボディは抹茶を思わせるマットグリーンカラーとした。
先にアエラについて補足しておけば、元ヤマハワークスライダーにして’74年にバイクショップ、カスノモーターサイクルを創業したのが糟野雅治さん(現・同社会長)。’91年に興されたのがオリジナルブランドのアエラで、同社は’24年には創業50周年の節目の年も迎えた老舗でもある。’24年春からは雅治さんのご子息の糟野友則さんがアエラ代表として手腕を振るうが、今力を注ぐのが国産車向け製品の開発。Z900RS用を第1弾とし、可変ハンドルやライディングステップなど、独自のアイデアを取り込んだり、輸入車向け同様の質の高いものを製作したりしてリリースしてきた。その流れでの第2弾が、このHayabusa用というわけだ。もうひとつ踏み込んだところを、友則社長に聞いた。
「カスノモーターサイクルがドゥカティやBMWの車両販売を長く主軸としたこともあり、アエラも主に輸入車向けパーツブランドとしてのイメージが強かったと思います。一方でEICMA(ミラノショー)などで海外に出かけると“日本のメーカーなのに、なぜ日本車向け製品を作らないのか”とよく聞かれ、いつかは作らなければいけないと考えていました。そうした中でまずは人気車種のZ900RS用の製品を発売し、私がアエラを任せてもらうようになって次に選んだのがHayabusaというわけです。
同車を選んだのは国内はもとより海外でも人気のモデルであることで、もちろん要望もありました。Hayabusa向け製品の開発はアエラを世界ブランドとして定着させる挑戦とも考えているんですよ。あと、DUCATI チームKAGAYAMA(JSB1000に参戦。アエラもサポートしている)の監督で、親しくお付き合いさせていただいている加賀山就臣さんが、鐵隼でTOTに出ていることも少し意識したかな(笑)」
メイン写真、また部分写真で紹介するように、Hayabusa向けパーツ群はアエラが得意とする高品位ビレットパーツ群、そしてスライダーなどが潤沢に揃う。各パーツにはシックで美しい無電解ニッケルめっきが施されるのも特長で、一部販売中製品も含み、多くがラインナップに加わる予定だ。
「この後に続くのはCB1300SFファイナルエディション向け製品で、国産スーパースポーツ用も検討中です。ドゥカティ各車やBMW S1000RRなどで培ったスポーツパーツのノウハウを国産車オーナーの皆さんにも楽しんでほしいですね」(同)
高品位がモットーの老舗ブランドが推すパーツ群、愛車のグレードアップに、ぜひ注目してほしいところだ。
▶▶▶ヘリテイジ&レジェンズが取材した最新のカスタム・バイクはこちら!
Detailed Description 詳細説明
コクピットまわりを締めるのは4ピース組立式の“アルミ削り出し可変ハンドル”(7万9750円[無電解ニッケルめっき仕様:10万1750円]“トップブリッジ”(7万1280/[9万4380円])。写真のように両者を併用してアップハンドルにすることでフロント荷重をかけやすくなり、長距離走行時にポジションに余裕が出る。アルミ削り出し可変ハンドルはハンドル絞り角は17/19/21(度)の3段階、高さも0mm/+2mmで最適位置が探れる。ここでは左右マスターをブレンボRCSとしている。
“ブレーキレバーガード&バーエンドスライダーセット[内径14mm〜15mm対応]”は2万6400円。AELLAハンドル専用の“ブレーキレバーガード”(1万5400円)、“バーエンドスライダー”(1万4300円)の単品購入も可能だ。
最適化された専用設計で好みのバー位置が選べる“ライディングステップキット”(ポリッシュ8万9100円、ホワイト、ブラック9万4600円)。このデモバイクに装着されている無電解ニッケルめっき仕様は12万5600円。バー位置は純正比で後ろ10/20mm、上10/20mmを組み合わせた4ポジション。
より確実なシフト操作を実現するアルミ削り出しの“シフトホルダー”は9460円。写真の無電解ニッケルめっき仕様(1万4630円)は数量限定販売品となっている。
エンジン右側に付く6角穴タイプのアルミ削り出し“オイルフィラーキャップ”(4620円)はブラック、レッド、ゴールドの3カラーを設定。写真の無電解ニッケルめっき仕様は参考製作品だ。
スクリーンの長さを純正より約75mm延長して風防効果を高め、カーボントリムを採用した“カーボンハイスクリーン・スモーク”は4万8400円。
美しく削り出され肉抜きされたアルミ部品を主に構成されたモノアーム仕様の“ショートナンバープレートホルダー”(3万7840円)にはLEDライセンスランプ、リフレクターも同梱される。
ワイバンとのコラボによるチタンフルエキマフラー(23万4300〜29万7000円)には、AELLAオリジナルのアルミ削り出しエンドキャップを装着する。
カウル等無加工で装着できる“フレームスライダー”(3万5750円)。カウル内側にベースマウント部を配した。
ブレンボ製ラジアルマウントフロントキャリパー用“チタンキャリパーボルト”は2万3100円(4本1セット)。
AELLAロゴも右下隅に入る“ラジエター&オイルクーラープロテクターセット”は3万5200円。ここに紹介した製品はすべて'24年型Hayabusaに適合する。フロントフォーク下端に見えるフロントアクスルスライダーは1万4300円だ。
取材協力:AELLA(アエラ)
レポート:ヘリテイジ&レジェンズ編集部
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北米市場で「実に450らしい450」と評価されてきたヤマハYZ450F。450らしい牙の鋭さはそのままに、アクセル開け始めの素直さとフロント周りの安心感を同じ方向で底上げしてきたのが26年型だ。試乗会場となったSUGOの固い路面でも、コーナー進入は落ち着き、立ち上がりで速い。今回のモデルチェンジの核になるのはフレームとエンジンである
SPECIAL THANKS/Technix
450の現在地と、YZが背負ってきた強さ
450は「上級者だけが扱えるモンスターマシン」という言い回しで括られがちだった。ロードで言えばMotoGPと同格、最上級クラスである。一般人には扱えなくて当然、トップライダーたちですら手こずるのが「ヨンゴー」。現在、バイクメーカー各社は、そのハイパワーをどう扱いやすさと両立させるかで競っている。ヤマハの答えはシンプルで、開発責任者・石埜PL(プロジェクトリーダー)は「スロットルを閉じた状態からの開け始めをライダーが驚かないような自然なつながりにする。トップエンドは犠牲にせず、中低速を厚くする」と言う。もう一つの柱はフロント周りだ。「接地感、安心感、信頼感。不整路を走る以上、余計な心配事を減らしてリラックスして走れること」。この二つの“やりたいこと”を、今回はフレーム側とエンジン側の両方に手を入れて、同じ方向へ揃えてきた。
メインフレーム・吸気に大きく手が入った2026年型
23年に行われたYZ450Fの大幅改良は評価こそ高かったものの、一部ライダーから「フロントの接地感にもう少し信頼性がほしい」という声が残ったという。開発チームは北米のAMA SX/MX、欧州のMXGPチームと隔週でミーティングを重ね、レース現場の感触と市場の声を突き合わせながら、次の一手を選んだ。そこで的を絞ったのが、ダウンチューブの鍛造部品で、26年型ではその形状を新設計した。YZユーザーなら一目見るだけでその違和感に気づくだろう。ダウンチューブの上部が太くなっていて、その代わりに下部は薄く、また内側の作りも合わせて見直されている。エンジンハンガーも新フレームに合わせて左右非対称を選定したそうだ。
YAMAHAYZ450F
¥1,182,500(税込)
メーカーの説明によると「縦・横・ねじれの基礎剛性は従来同等としつつ、路面からの突き上げに対する剛性のみを緩めることでフロントの信頼感を高める」という方向性とのこと。基本の剛性要素を変えずに、突き上げだけに対応することの大変さは想像に難くない。以前のモデルチェンジでは、何度もテストを重ねて数ミリの穴をフレーム内側に穿つことで剛性を最適化したと説明されたが、それを遙かに上回る工程があったのだろう。今回行われたYZ450Fの試乗会場にはフレームの製造部門から説明員が派遣されていて、溶接のやり方を改良することで約80gの軽量化に成功したことを語ってくれた。80グラム。いかにYZ450Fの熟成が細部に、かつ緻密に進められてきたのかわかるだろう。
もう一つの大きなトピックはエンジンの吸気系だ。まず、燃焼室内のタンブル(縦渦)を強めたという。一般にタンブルを強めると開け口の角が取れて穏やかな印象になると言われているが、混合気の流入量が少なくなることでピークパワーを失うトレードオフの関係にもある。そこでヤマハは吸気ポートの断面を長円に近づけることで混合気の流入を最適化してピークを維持する策を採った。マッピングでも低回転域をうまく回す修正が入っている。石埜PLは「今年は“ファーストタッチ”のフィーリング向上にこだわった」と繰り返し説明したが、開け口というよりもマシンに触れた瞬間、マシンを扱う瞬間、いわば第一印象の素性の良さを底上げした、と解釈したい。フレームの改善によって走行時におけるギャップのあたりで柔らかい印象を与え、さらに吸気系の改善によってスロットルを開けた瞬間の印象も改善してきたということだ。
また吸気騒音・排気騒音ともにレゾネーターを仕込むことで抑えているそうだが、抑えた分レブリミットに余裕ができたことでその上限を4%ほど引き上げることが可能になったという。機械的な性能向上ではないものの、体感できるアップデートとしてはかなり効果的なはずだ。そもそも、機械的にはレブリミットを上げられる伸びしろがまだ十分にあったということになる。これも地味にスゴイところだ。
昔を知る熱田孝高が、26年型の“いま”を語る
試乗会場は、YZのメディア試乗会ではおなじみの宮城県スポーツランドSUGO。日本屈指、かつて世界選手権が開催されたこともあるテクニカルかつダイナミックなモトクロスコースである。巨大なKYBジャンプに、シフトアップが求められる長さのストレート、ハードパックの路面が特徴だ。コース整備で均しても固い土質のギャップは鋭く、モトクロッサーにとってかなりアタリが強い。今回の試乗会で新型 YZ125を先にインプレッションした熱田孝高は、乗り慣れた450ccに安堵を覚えたようだった。1977年生まれの熱田世代はもともと2ストで育ってきたが、世界選手権に挑戦していた時期にちょうど4スト化の波に飲み込まれたという。当時の450はキャブレターでボギングもあり、まだ特性は荒く発展途上だった。
「昔の450は乗った感じも重くてね、だから転んだ時の衝撃が半端じゃなかったんですよ。ぶっ飛ぶと痛いんです、大変な思いをしましたね。サスペンションの違いもあるかもしれませんが、転倒時に人間が飛ばされるスピードがすごく速かった気がします。今のバイクはいろんなことを勝手にやってくれていて、いきなり滑ったりすることもないし、イージーです。特に最近の450は燃料がきれいに燃えるよね。このYZ450Fもその上で、パワーもしっかり出てる。ファーストインプレッションは凄く速いなと思ったよ。2ストロークのYZ125は難しいし、僕は普段から450に乗っていることもあって楽な450のほうがしっくりくる。それに、昔の“グワッ”と身体が急に持っていかれる感じがかなり薄いので、怖さが先に来ない。滑っても体ごと持っていかれないので、開けていけば前に出る。だから身構えずに走れる。ある意味、とてもイージーなバイクになったと感じたよ。
今日のスポーツランドSUGOはハードパックで、曲がるきっかけも少なかったんだけど、そんな日でもしっかりトラクションするからすごいと思った。パワーよりも扱いやすさを重視したバイクにありがちな牙を抜かれた感じもない。エンストしづらいのもいい。『ダメなところどこ?』って逆に探すくらいだった。
スタートも試してみたけど、とても良かった。スポーツランドSUGOなら2速で引っ張ったまま1コーナーに飛び込めるね。3速にシフトアップする必要を感じなかった。”レブリミットが伸びた”って話があったんだけど、実際引っぱり切れる感じがした。3速にシフトアップするタイミングのわずかなロスが無いから、SUGOに関しては明らかにアドバンテージになるよ。自分は電子制御に任せっぱなしにしない派だから、トラコンもローンチコントロールもあまり使わないんだ。欲しいところで必ず電子制御がうまく動くとは限らないし、路面は一定じゃないし、湿度で荒れ方も変わる。結局は現場合わせが大事だと思ってるからね。一周しかないサイティングラップの時に路面の食いつき方を試す。そこで“どれくらい掴むか”を体に入れておく。そういうテクニックを効かせるには、ベースが素直で出力が安定してるバイクが必要。今回のYZ450Fはそういう意味で信頼できると思う。
サスは、立ち上がりで駆動を掛けても姿勢の収まりがいい。リアが出にくくて、コーナーは前に乗っていける。ベースバルブ径が28mmに拡大化して、メインのポート数も増えたでしょ。450は強さが要る場面が多いから、そういうアップデートの積み上げでハイレベルな領域での余裕が出てると思う。
『誰でも乗れる』と軽くは言わないけど、少なくとも“怖さで身構えずに速く走れる450”にはなってる。実は今回、足を怪我していたんだけど、そんな状態でも乗れたからね。僕でこう感じるなら、みんなにも“乗れる450”になったんじゃないかな」
細部の積み上げ
ここでまたマシンの話に戻ろう。クラッチに長らくワイヤー式を使ってきたヤマハだが、最後発で油圧式を新採用した。周回を重ねるとクラッチプレートが熱で膨張し、ワイヤー式は遊びが詰まってミート位置がズレていく。これまでのYZは独自のアジャスターで、走行中に遊びの調整をしやすいよう工夫がされていたのだが、油圧はフルードが圧送されることでミート位置のズレを打ち消せる。採用にあたってはミートの分かりやすさと自然なタッチを重視し、スプリング荷重は上げつつ特性を最適化して指の負担を抑えているという。入力側は専用レバーと自己潤滑樹脂カラー、伝達側はプッシュロッド安定化のためミッション軸にブッシュを追加。ハウジングスプリングのシート径を拡大し、プレートの給油孔は並列から千鳥配列に変更して油の回りを広げ、連続周回でもつながり方を安定させているそうだ。一般的に油圧は引き側が軽く、戻し側は重めになりがちなのだが、このあたりのフィーリングの変化を嫌ってヤマハは油圧クラッチ採用を見送ってきていたのだと言う。どちらをよしとするかは価値観の差だが、これでスズキ以外は国産モトクロッサー全車が油圧クラッチになったというわけだ。
サスペンションは新フレームに合わせて専用にセッティングされている。試乗会にはカヤバの説明員も登壇し、同社が掲げるグラウンドフックコンセプトを披露した。路面への追従性にこだわり、まるで路面に固定されているかのようなサスペンションを作る、とのことだった。リアは低速圧側を受け持つベースバルブをφ24→φ28へ大径化し、ピストンのオイル通路は従来の伸圧共通から伸/圧の分離ポートに。極低速での“抜け”を抑え、小さな入力でも減衰がきちんと立ち上がる。中〜高速の伸圧を司るメイン側は、各4ポートから各6ポートに変更して負荷を分散。圧側には手回しのクリックダイヤルが追加され、現地の路面に合わせた微調整がしやすくなっている。また、シート表皮はハニカム調を採用、前方向の体移動は妨げず、加速時には後ろへズレにくい。これは特許申請中だとのことだ。
電装面では「ECUロック」を市販オフロード競技用として初搭載した。「パワーチューナー」アプリでパスワード管理し、ロック時はエンジン始動不可となる。2022年に公開され、第75回カンヌ国際映画祭で「《審査員の心を射抜いた》賞」を受賞した映画「Rodeo(ロデオ)」にもモトクロッサーが盗難されるシーンが描かれていたが、昨今は公道が走れないレーサーであるモトクロッサーすら盗難対象となるご時世だ。このアップデートはオーナーには嬉しい配慮だと言えるだろう。
ノービス稲垣でも怖くは…なかった
2023年のモデルチェンジの時は、やはりここスポーツランドSUGOでYZ450Fに乗った。正直に言えば、その時の印象はまったくよくなかった。路面がハードパックだったこともあって、とにかくスロットルに少しでも触ればタイヤが敏感に反応する。神経質という言葉がぴったりだった。そもそもノービスの僕が、450を試す必要なんてないし、この先所有しようとも思わない。今回もロード雑誌の編集者が、MotoGP 日本GP後のメディア試乗会で一応乗れるならRC213Vに乗ってみたい、そんな動機と対して変わりはしなかった(いや、待てよロード雑誌の編集者ってバイクに乗るのうまい人ばかりだからちょっと違う気もするけど、まぁいいか)。
ただ、昨年ヤマハからYZ450FXを借りて1年乗ったので、450という排気量にもだいぶ慣れたつもりではいた。とはいえ、SUGOでビンビンのモトクロッサー450ccに乗るとなったら話は別。何が起こるのか乗らずともわかっていた。ただただ恐ろしく、なにも面白く感じないはずだ。
ところが、蓋を開けてみたらそうではなかった。吸気系の制御が効いているのか、フレームの改変が効いているのか、PL石埜氏の言うとおり、ファーストタッチの印象がとてもいい。スロットルは僕レベルの言うことをしっかり聞いてくれて、微開にとどめておけば十分に楽しくSUGOを回れるほどだ。直前に乗ったYZ125より、むしろYZ450Fのほうが幾分楽に感じたくらいだ。開け口の角がとれた感触だけでなく、突き上げ方向の車体のまろやかさも影響しているんだろう。まさか2スト125より、4スト450のほうがイージーだと感じる日が来るとは思わなかった(編集部注:個人の感想です)。なんだかんだいって、ヨンゴーはヨンゴー。されどヨンゴー。だが、なんとかなるのも今のヨンゴーだ。来年出てくるであろうYZ450FXの新型は、さらにファーストタッチが良くなっているに違いない。
“450らしい450”の看板を掲げてきたYZが、“扱える強さ”を本気で掘り下げた2025年。フロントの安心感と開け始めの素直さ、その両輪で同じ方向に舵を切った結果、ノービスには難しい硬い路面でも落ち着いて速い。僕にその勇気は無いが、男気ヨンゴーに憧れるあなたは今年こそチャンスかもしれない。あ、そうそう僕が乗ったのはマイルドモードです。スタンダードモード? そんなのついてたかな。
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SUZUKI「V-Strom250」税込価格:66万8800円
全長×全幅×全高:2150×880×1295mm ホイールベース:1425mm シート高:800mm
車両重量:191kg
スズキ「Vストローム250 」は、長距離ツーリングでの快適性と高い実用性で支持される250ccクラスのアドベンチャーツアラー。
丸目一灯の個性的なフロントデザインとVストロームシリーズ共通のクチバシデザイン、そして大柄な車体による存在感が特徴だ。
心臓部には、定評のある248cc水冷4ストロークSOHC2バルブ並列2気筒エンジンを搭載。このエンジンは、高出力・高回転型ではなく、実用域でのトルクを重視したセッティングが施されており、粘り強くスムーズな特性を持つため、市街地から高速道路、ワインディングまで扱いやすい。
また、長距離走行を見据え、17リットルという大容量の燃料タンクを装備しているため、優れた燃費性能と相まって非常に長い航続距離を誇る。
さらに、大型のリアキャリアや調整機能を備えるウインドスクリーン、電源ソケットなど、ツーリングの快適性を高める装備が充実している。
前後輪にはオンロード走行を重視した17インチのロードタイヤを装着しており、安定した舗装路での走行性能が強みだ。
2024年モデルに続いて2025年度においても、車両の基本構成や走行性能など主要な仕様に変更はなく、4色のカラーバリエーションを含めて継続販売されている。
カラーバリエーション
ソリッドダズリンクールイエロー/ パールネブラーブラック(CZX)
ダイヤモンドレッドメタリック/ パールネブラーブラック(BKJ)
ハイテックシルバーメタリック/ パールネブラーブラック(C0X)
マットフラッシュブラックメタリック/ パールネブラーブラック(CKN)
エンジン形式:水冷4ストロークSOHC2バルブ並列2気筒総排気量:248ccボア×ストローク:53.5×55.2mm圧縮比:11.5最高出力:18kW(24PS)/8000rpm最大トルク:22N・m(2.2kgf・m)/6500rpm燃料タンク容量:17L変速機形式:6速リターンキャスター角:25°10' トレール量:100mmブレーキ前・後:シングルディスク・シングルディスク
タイヤサイズ前・後:110/80-17・140/70-17
スズキ「Vストローム250」関連のおすすめ記事
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世界中で高い評価を得ている日本の4大メーカーのバイクたちですが、世界にはまだまだアナタが見たことのないバイクがいっぱい! ということで毎週火曜日に“知る人ぞ知る”激レアモデルを紹介するこの企画。15回目はホンダが発表したばかりの「Square X 125」をご紹介!かつての個性派モデル「ズーマー」を四角くしたようなスタイリングは魅力いっぱい! 早速詳細を見ていきましょう!まとめ:松本正雅
HONDA Square X 125 販売国:中国
総排気量:124cc エンジン形式:空冷4ストSOHC2バルブ単気筒 シート高:740mm
車両重量:122kg
現地価格:1万2680元 ※約26万8507円
バックレストにサイドテーブルまで付いたキャンプのお供!
新大州と五羊、中国のホンダには2つの製造会社がある…ってことはCGX150の回でもご紹介したかと思いますが、今回ご紹介する「Square X 125」は新大州本田が手がけるモデル。新大州はかつて日本でも販売されていたトゥディなどの生産を担当していた会社です。
あれこれ語るより、まずはそのスタイリングを見てください。何か思い出しませんか?
HONDA ZOOMER(2001)
そう! かつての個性派スクーター、ズーマーです!
ちょっと武骨でタフギアっぽいデザインは、ズーマーの血筋を感じさせるもの。この「Square X 125」(スクエアX、なんてなんだか有名なゲーム会社のような名前ですが…)は、まるでズーマーを角ばらせたようなスタイリングが特徴なんです! ズーマーファミリーには以前125ccの「ズーマーX」もありましたが、こういううデザインに心惹かれる人も多いのではないでしょうか?
「前衛的なデザインのマスク」と公式HPで謳われていますが、LEDを無愛想に並べた前後のLEDライトのデザインは他のどのバイクにも見当たらないもの。もう少し工夫があってもいいのでは? といいたくなる、ツッコミどころ満載のライトデザインです。
で、すでにお気づきの方もいるかもしれませんが…サイドになんか、黒い板ついてますよね?
なんと! コレ、サイドテーブルなんです!
このほかにも便利で快適な装備が満載です。メーターは大型5インチのカラー液晶で、スマートキーシステムも標準装備。床下にボックスを配置しているように見えますが、実はコレ5.7L容量の燃料タンク。充電用のUSBアクセサリーポートはUSB-AとUSB-Cのダブル装備です。
そして! タンデムシートは跳ね上げ式でバックレストにもなるほか、シート台座が大型リアキャリアにもなるのです! かつてのPS250を思わせる便利な装備。これはもう、キャンプツーリング行けっていってるようなもんですよね!
空冷124ccエンジンは高い環境性能も実現した「eSP」ユニット。フロントは12インチ、リアは10インチで、装着タイヤはオフロードも意識したブロックパターン。リアのツインショックはイニシャル調整機構付きと、なかなか豪華な内容です。
9時から5時まで働く毎日を忘れて、自由な時間をSquare Xとともに…。そんなキャッチコピーが公式HPに躍るホンダの「Square X 125」。積載能力も高く、サイドテーブルまで付くこのバイクなら、125ccですけど、小さな旅に出てみたくなりますね。まだ発表直後なので市場に出回るのは先でしょうけれど、ぜひ、ぜひ日本で発売していただきたい1台です!
ホンダ「Square X 125」のカラー・人気投票
「Square X 125」のカラーは3色が展開されています。
カタログカラーは「牛油果绿」。これは直訳すると「アボカドグリーン」。アボカドって「牛油果」って言うのね。初めて知りました。残る2色はアイボリーっぽい薄めのイエローとホワイトです。
このスタイルにビビッと来た人も多いことでしょう。きっとそのうち、並行輸入でポツポツ日本に入って来そうなので、ぜひ乗ってみたいですね。ていうか、コレ正式販売して欲しいです!
ホンダ「Square X 125」の主なスペック・製造国・価格
ホンダ「Square X 125」の写真
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愛車のスズキ車をもっと快適に楽しむためのバイク初心者向けノウハウを紹介!夏に走ったバイクの健康状態を簡単に確認できるチェック方法について解説します!
みなさんは今年の夏、どこへツーリングへ行きましたか?
夏の暑さに負けず、風を切って走った爽快なワインディングやシーサイドライン、仲間との週末のひととき……愛車とともに駆け抜けた夏は、きっと思い出の一部になったことでしょう。
しかし、その楽しいサマーシーズンを終えた後……バイクのことをそのままにしていませんか?
夏の高温や長距離走行で少なからず疲れているバイクを放置しておくと、知らず知らずのうちに劣化が進み、秋のツーリングシーズンになって突然トラブルに見舞われることもあります。
だけど少しの手間をかけて確認しておくだけで、これからのシーズンも安全で快適に楽しむことができるのです。
それらのちょっとした確認作業は慣れれば10分程度で終わる簡単なものばかり。夏を走り切った愛車をチェックし、オイルやタイヤ、ブレーキやバッテリー、ラジエーターの状態を見直すことで、秋のツーリングシーズンを心から楽しむ準備が整います。
紅葉の道や涼やかな風を感じる季節に、安全で気持ちのよいライディングを満喫するために、今このタイミングでバイクの健康状態を確認するための『5つの簡単セルフメンテナンス』を解説します!
10分間でできる夏の終わりの簡単チェックはこの5つ
①エンジンオイル
夏のツーリングを終えたあとにまず確認したいのが「バイクの血液」とも呼ばれるエンジンオイルの状態です。エンジンオイルは潤滑や冷却、洗浄、防錆といった大切な役割を果たしており、真夏の長距離走行や渋滞時の高温下では想像以上に負担がかかっています。
点検の方法は難しくなく、時間も10分あれば十分です。最初にエンジンをかけて数分ほどアイドリングさせて油温を適度に上げ、その後にエンジンを停止。2〜3分ほどそのまま置いてオイルがエンジン内部で落ち着くのを待ちます。
そのうえでバイクをできるだけ水平に保ち、点検窓やレベルゲージを見て油量が上限と下限の間にあるかを確認します。
もしオイルが少なかったりした場合は、メーカー指定のオイルを少しずつ継ぎ足します。このときに量を入れすぎたり、銘柄を混ぜたりするのは避けましょう。また、量だけでなく色や透明度にも注目することが大切。真っ黒に濁っていたり、ザラつきが感じられたりする場合は交換時期に達しているサインです。
一般的には5000kmごと、あるいは半年ごとが交換目安ですが、酷暑の中を走り切った後であれば、距離がまだ届いていなくても早めに交換しておくと安心です。初心者の方にとってはエンジンオイルを確認する習慣を持つだけでもトラブル回避の第一歩になりますし、チェック自体はすこし手が汚れる程度で特別な工具も必要ありません。
たった10分の確認作業が、エンジンの寿命を大きく延ばし、次のシーズンを安心して迎えることにつながるのです。
②タイヤチェック
次に確認したいのが、バイクと路面をつなぐ唯一の接点であるタイヤの状態です。真夏の路面は思いのほか高温になり、ゴムが柔らかくなることで摩耗が進みやすい傾向があります。ツーリングで長距離を走れば、さらなる消耗は避けられません。そこで行いたいのはタイヤを一周ぐるっと回して表面を観察し、ひび割れや異物の刺さり、そして摩耗具合をチェックすることです。
スリップサインと呼ばれる溝の限界を示す突起が露出していれば、すぐに交換が必要です。
見た目に問題がなければ次は空気圧の確認です。タイヤの空気は自然に抜けていくため、走行していなくても数週間単位で適正値より下がっていることがあります。規定値はサービスマニュアルや車体のステッカー(コーションラベル)に記載されていますので、それに合わせてエアゲージで測り、低ければ充填しましょう。
空気圧が不足していると接地面が広がってグリップ力が上がるように感じられるかもしれませんが、実際は燃費の悪化や偏摩耗、さらにはバーストの危険性につながります。逆に空気圧が高すぎるとグリップ不足を招きますので必ず指定値に合わせることが大切です。チェックが終わったら、タイヤ全体を手で軽くなぞって異常な凹凸やゴムの剥がれがないかも確認しておくと安心です。
これらの作業は慣れれば5分もかからずに終わりますが、万が一異常を見逃すと走行中のトラブルに直結するため、初心者の方こそ習慣的に点検したいポイントです。安全性、燃費、乗り心地、そのすべてを支えているのがタイヤです。
③ブレーキ
必ず確認しておきたいのが前後ブレーキの状態です。
ブレーキはバイクを安全に止めるための最重要部品であり、エンジンやタイヤが万全でもブレーキに不具合があればすべてが台無しになります。夏にたくさん走って、知らず知らずのうちにパッドの摩耗やフルードの劣化が進んでいる可能性があります。
チェックの方法はシンプルで、まずはバイクを前後に動かしながらブレーキレバーとペダルを操作し、効き具合を確かめます。いつもより握った感触がスカスカしていたり、効き始めが遅く感じられたりしたら注意が必要でしょう。
次にブレーキパッドの残量を目視で確認します。キャリパーの隙間から覗くとパッドの厚みが見えますが、残りが2mm程度まで減っていたら交換時期と考えてよいでしょう。
また、ディスクローターに変色がある場合は熱によるダメージを受けている可能性も。異音や制動力低下の原因となります。
そして忘れがちなのがブレーキフルードの状態です。マスターシリンダーの窓から液量を確認し、減っていないかをチェックします。フルードは吸湿性が高いため、夏の高温多湿な環境で水分を吸うと沸点が下がり、ブレーキの効きが急に悪化する「ベーパーロック」を引き起こす危険もあります。
色が濁っていたり茶色っぽくなっているようであれば早めの交換を考えるべきです。これらの点検はひと通りやっても10分程度で終わり、難しい工具も必要ありません。ブレーキに関しては少しでも違和感を覚えたら早めにプロに相談するのが何よりの安心につながります。
夏を走り切った今こそ、自分の命を守るブレーキにきちんと目を向けるタイミングなのです。
④バッテリー
また、夏の暑さを乗り越えたあとのチェックで意外と忘れられがちなのがバッテリーです。実は気温が高い夏はバッテリーの内部で化学反応が活発になり、電解液の劣化や消耗が進みやすい季節でもあります。そのためシーズンが一段落したところで、簡単なセルフチェックをしておくことが安心につながります。
チェック方法は簡単。まずはセルを回したときの音や始動性を観察します。キーをオンにしたときのランプが暗かったり、セルを回すときに「キュルキュル」ではなく「カチカチ」と弱い音しかしなかったりする場合は、電圧低下のサインです。
最近はシートを外せば簡単にバッテリー本体にアクセスできる車種も多いので、端子の緩みや腐食を目視で確認しておくことも大切です。緑青のような白い粉が付着している場合は接触不良を起こしやすい状態なので注意してください。
夏にあまり乗らずに放置気味だったバイクは、自己放電でバッテリーが弱っていることも珍しくありません。その場合は市販の充電器で補充電しておく必要があるでしょう。
ツーリング先で突然エンジンがかからなくなるトラブルほど困るものはありませんから、今のうちにバッテリーの健康状態を確かめておくことが、次のシーズンを気持ちよく走り出すための準備になるのです。
⑤水冷エンジンはラジエーターのクーラント液もチェック!
最後に、愛車が「水冷エンジン車」の場合に確認しておきたいのがラジエーターを中心とした冷却系です。
夏の暑さはエンジンにとって最大の敵……現代のバイクはオーバーヒート対策がしっかりされていますが、それでもラジエーターや冷却液の点検を怠るとトラブルに直結します。点検の手順はまずリザーブタンクの冷却水量を確認することから始めましょう。
冷却水のタンクには「FULL」と「LOW」の目盛りがあり、エンジンが冷えている状態でその間に水位があれば問題ありません。少なければ専用のクーラントを補充。入れすぎないよう注意します。
同時にキャップ周りやホースの接続部に漏れ跡がないかも目視で確認してください。
乾いた白い跡やにじみがあれば、夏の熱で圧力がかかりすぎた可能性があり、早めに点検を依頼するのが安心です。さらに、ラジエーターのフィンに虫や小石が詰まっていないかも見ておきましょう。夏のツーリングはどうしても虫が多く、冷却効率を下げてしまうことがあります。
柔らかいブラシやエアで優しく清掃するだけでも効果的です。冷却水は2年ごとの交換が目安とされ、古くなると防錆効果が薄れて内部に錆が発生しやすくなりますので、走行距離が少なくても年数が経っていれば交換を検討すべきです。
こうしたラジエーター周りのチェックは、難しそうに感じるかもしれませんが「実際は目で見るだけ」なので、初心者でも10分ほどあれば十分に終えることができます。冷却系の不調はエンジンに大きなダメージを与える場合があるため、この時期に点検しておくことがおすすめです。
簡単チェックで秋のツーリングシーズンを快適に楽しもう!
夏を目いっぱい楽しんだ今こそ、愛車の健康状態を見直す絶好のタイミングです。エンジンオイルやタイヤ、ブレーキ、バッテリー、ラジエーターのそれぞれを簡単にチェックするだけで、次のシーズンに安心して走り出すことができます。
(下に続きます)
秋の紅葉や快適な気候の中でツーリングを楽しむためにも、愛車の夏の疲れをリセットし、万全の状態を整えましょう。
簡単メンテで、これからの秋シーズンを思いっきり楽しんでくださいね!
スズキファンのためのWEBサイト!
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月刊『オートバイ』&webオートバイで投票を募った読者参加型の人気バイク決定戦「ジャパン・バイク・オブ・ザ・イヤー 2025」の投票結果がついに発表! 本記事では、原付一種(50ccクラス)のランキングトップ3に輝いたモデルにフォーカスしてお届けします。まとめ:オートバイ編集部
ホンダ「スーパーカブ110 ライトコンセプト」
Honda Super Cub 110 LITE CONCEPT
価格・発売日未定
新基準に対応した新世代のスーパーカブ
従来の原付一種(50cc)に代わる存在として、2025年4月から新基準原付(排気量125cc以下・最高出力5.4PS以下)の区分ができた。これに適合するトップバッターと目されるのがスーパーカブ110をベースとしたモデル。
3月に公開されたコンセプト車を見る限り既存のスーパーカブ110との違いはなく、吸排気系の小変更で出力を抑えているようだ。仮に規制値上限の5.4PSとすれば現行50ccモデルの約5割増しとなるので実用性も充分だろう。
第2位
ホンダ「クロスカブ50」
Honda CROSS CUB50
排気量:49cc エンジン形式:空冷4ストロークOHC2バルブ単気筒 シート高:740mm
車両重量:100kg
税込価格:30万8000円/31万9000円(くまモン バージョン)
カブにヘビーデューティーさをプラス
スーパーカブには多くの派生モデルがあるが、異色の存在とも言えるのが実用車臭を消してSUV的なルックスにまとめたクロスカブ。特に50cc版はシリーズ唯一の前後14インチホイールを採用し、17インチホイールのクロスカブ110より44mm低い740mmというシート高を実現。
小柄なライダーでも安心して乗れるうえ、見た目の愛らしさも増している。スーパーカブ50同様に年内で生産を終了する予定ということも獲得票数の多さに繋がったようだ。
カラーバリエーション
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2025年10月3日から5日にかけて、マンダリカ・インターナショナル・ストリート・サーキットにてMotoGP第18戦インドネシアGPが行われた。
予選ではマルコ・ベッツェッキ(Aprilia Racing)がレコードタイムを更新する走りでポールポジションを獲得。2番手と3番手には自身初のフロントローとなったフェルミン・アルデゲル(BK8 Gresini Racing MotoGP)とラウル・フェルナンデス(Trackhouse MotoGP Team)が並んだ。
一方、ドゥカティ勢は不調で、ファクトリーチームは今季ワーストの結果に終わった。前戦タイトルを決めたマルク・マルケス(Ducati Lenovo Team)は9番グリッド。チームメイトのフランチェスコ・バニャイア(Ducati Lenovo Team)も日本GPの優勝が嘘のように苦しみ、16番グリッドからのスタートとなった。
気温30度、路面温度52度のドライコンディションのなか、13周のスプリントレースがスタート。ポールシッターのベッツェッキがスタートで出遅れ、6番手まで後退。アルデゲルがホールショットを奪った。
トップのアルデゲルが逃げるなか、2番手ペドロ・アコスタ(Red Bull KTM Factory Racing)と3番手のフェルナンデスとの差は1秒と離される。一方、マルク・マルケスはオープニングラップでアレックス・リンス(Monster Energy Yamaha MotoGP Team)を押し出してしまい、ロングラップペナルティを科されポジションを大きく落としてしまう。
5周目、アコスタがターン2で転倒したこともあり、トップのアルデゲルは2秒のギャップを築き、スプリントでの最年少優勝が近づいてくる。
スタートで出遅れるも次々にライバルを攻略していくベッツェッキ。
しかし、その後ろで猛烈にポジションを上げてきたのがポールシッターのベッツェッキ。ルカ・マリーニ(Honda HRC Castrol)、アレックス・マルケス(BK8 Gresini Racing MotoGP)と捕え、アコスタの転倒もあり表彰台圏内までポジションを回復すると、レース折り返し時点でフェルナンデスも攻略し2番手に上がる。
ベッツェッキはファステストラップを更新する走りでトップを猛追。そして残り2周となったところでアルデゲルの背後にまで接近した。
ファイナルラップに入ると、ベッツェッキがターン10のブレーキングでアルデゲルをオーバーテイク。アルデゲルも反撃を試みたが、 ベッツェッキが抑え込みサンマリノGP以来のスプリントレース勝利となった。
惜しくも優勝とはならなかったが、アルデゲルが2位、3位には自身初表彰台獲得となったフェルナンデスが入った。
マルク・マルケスはロングラップペナルティでポジションを落とすも7位でポイントフィニッシュしポイントを獲得。一方、バニャイアは完走したライダーの中では最下位となる14位に終わった。
ファイナルラップで華麗なオーバーテイクを見せたベッツェッキが優勝。
大本命とチャンピオンがまさかの接触! アルデゲルが最高峰クラス初優勝
迎えた決勝も熱帯らしく蒸し暑い天候に。気温31度、路面温度58度のドライコンディションのなか、27周の決勝レースがスタートした。
スタートではスプリント同様にポールシッターのベッツェッキがホールショットを奪えず、アコスタがトップに浮上した。
スタートではベッツェッキが出遅れ、マルク・マルケスがポジションを上げた。そして……。
ベッツェッキはポジションを落とし、その前には逆にスタートでポジションを上げたマルク・マルケスが走行。今週末の流れを考えると、決勝レースでもベッツェッキが追い上げを見せるかに思われた。
しかし、オープニングラップのターン10へのアプローチ、マルク・マルケスのベッツェッキが接触し転倒。いきなり今季のチャンピオンと優勝候補が姿を消すこととなった。
また、9周目にはバニャイアも単独で転倒しており、ドゥカティファクトリーにとって厳しい週末となってしまった。
アコスタを抜きトップにでたアルデゲルが快調に飛ばすなか、アコスタを先頭とした2位争いが激しさを見せる。マリーニやフェルナンデス、リンスなど複数台によるバトルが展開された。3番手につけていたマリーニが果敢に仕掛けていくも、アコスタがブロック。このバトルが原因で後続のライダーも追いつき、2位集団は10台以上の隊列となってしまった。
2位争いは多くのライダー達により繰り広げられた。
ペースが上がらないものの、2番手を死守するアコスタの後ろではマリーニとフェルナンデスがバトル。しかし、両者バトルによりラインを外れてしまった隙をついたリンスが2台まとめて抜き3番手に浮上した。
ヤマハに移籍後初の表彰台が見えてきたリンスは20周目、アコスタも捕え2番手に浮上。しかし、その後ペースが上がらず同じくポジションを上げてきたアレックス・マルケスに抜かれると、アコスタ、フェルナンデスと次々に抜かれてしまった。
レース序盤から中盤にかけてポジションを守ることに注力していたアコスタだったが、終盤にはペースをあげ、アレックス・マルケスを抜き再び2番手に舞い戻る。
2位集団がバトルを展開し続けたこともあり、アルデゲルは10秒以上のリードを築き独走。ファイナルラップではペースを落とし確実にチェッカーを受け、MotoGPクラス初優勝を果たした。
最高峰クラスでルーキーイヤーに優勝を達成したのは2021年のホルヘ・マルティン以来の快挙であり、2013年のマルク・マルケスに次ぐ史上2番目に若い優勝者となった。
2位はアコスタ、3位はアレックス・マルケスで、グレシーニがワン・スリーフィニッシュを達成。
転倒したマルク・マルケスは検査の結果、肩肩甲骨の烏口突起基部骨折と右肩の靭帯損傷と診断された。過去に右上腕骨の骨折という大怪我をしており、今回の怪我による再発が心配されたが、関連性はないとのこと。しかしながら、次戦の第19戦オーストラリアGPと第20戦マレーシアGPを欠場することが発表されている。
次戦は10月17日から19日にかけて行われるオーストラリアGP。現チャンピオンが不在というなか、どのライダーが優勝を手にするのかに注目が集まる。
2025 MotoGP 第18戦インドネシアGP 決勝結果
グレシーニの2台が揃って表彰台を獲得。アコスタは粘りを見せ2位。
resources.motogp.comレポート:河村大志
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モトクロスの国別対抗戦「モトクロス・オブ・ネイションズ(MXoN)」が、10月3日から5日にかけて行われました。Off1.jpでは会場となるアメリカ・インディアナ州にあるアイアンマン・レースウェイで現地取材を決行。決勝に進んだ日本代表の走りをレポートします
決勝当日、最後まで悩んだグリッド順
大会最終日、予選とB決勝を勝ち抜いた合計20チームが競い合う決勝レースが行われた。コースに整備が入ることはなく、前日の走行で深く掘られたわだちがそのまま残った状態でレースがスタート。硬い路面が剥き出しになり滑りやすく、攻略が難しいコンディションとなった。
MXoNの決勝は全3レースあり、2クラスの混走で行われる。決勝のグリッド順は予選の結果によって決定され、予選で優勝したチームは1番目と21番目、予選2位のチームは2番目と22番目というように、全チームこのパターンでグリッドを選ぶ権利を得る。10位で予選通過した日本は10番目と30番目。決勝は2クラスの混走、つまり異なる排気量が同時にスタートするところがポイントで、450ccと250ccのライダー、どちらに先にグリッドを選ばせるかは毎年悩むところである。
レース前、熱田監督に作戦を聞くと、「MX OPENクラスがあるレースは、丈に良いグリッドを選んでもらえるよう先に行かせます。一番難しいのがMXGPクラスとMX2クラスが混走するレース1で、450ccの大倉か250ccの中島か、どちらを先に行かせれば良いか直前まで悩んでいました。パワーがある450ccの方が前に出られる確率は高いのですが、中島のスタートが調子良いことと、本人からも中盤くらいの位置に出られるという話を聞いて、彼に先に選ばせることにしました」と、ライダーとギリギリまで相談し合いながら決定したという。
日本代表、奮闘の末、総合11位を獲得
大倉と中島が出場するレース1、中島はスターティンググリッド真ん中にあるボックスの一つアウト側を選択。レース後に話を聞くと、イン側は1コーナーにかけて絞られるため前に出ることが難しく、アウト側も外に押し出される可能性が高いため、中央より少しアウト側が一番良いグリッドだったという。10番目でのゲートピックとなったが、狙っていた場所を選ぶことができた。
中島は中央、大倉は中島よりもアウト側からスタート。スタートはやはり450ccに分があり、スタートで飛び出したのはドイツのルーカス・クーネン、続いてオーストラリアのジェット・ローレンス、ドイツのケン・ロクスン、スロベニアのティム・ガイザーと全員450ccに乗るライダーだ。大倉も良い反応を見せて12番手、中島は19番手と両者ともに好位置につけて追い上げを図る。しかし、レース序盤で大倉と中島がともに転倒を喫し後退。中島は30番手、大倉は35番手あたりまでポジションを落とすこととなった。30分+2周というレース時間の中で追い上げるも、前を走るライダーとの差は簡単に縮まらず、結果大倉31位、中島36位という順位でチェッカーを受けた。
上位争いは、ジェットが1周目でクーネンをパスしトップに浮上。そのまま後方を引き離しレースをリードする。クーネンとガイザーが追いかける中、レースの残り時間が3分を切ったところでガイザーにイーライ・トマックが迫り3番手争いを展開。接戦となるがガイザーが守り切り、1位ジェット、2位クーネン、3位ガイザーという順位でフィニッシュ。
レース2は下田と中島が出場。下田はレース1の中島と同じくアウト寄りの中央を選択。中島はそれよりもアウト側の位置につけた。スタートでは下田が抜群の反応を見せ、トップで1コーナーに進入する。しかし、アウト側に膨らむミスがあり、その隙に4台ほど前を譲る形となった。ハンター・ローレンスがレースをリードする中、下田は2周目で前を走るリアム・エバーツをパスし4番手に浮上。後方から迫るRJ・ハンプシャーにパスされるも、前2台をかわして3番手、さらにレース中盤にハンプシャーが転倒したことで2位にポジションを上げる。この時点でトップのハンターとは8秒ほど差があったが、下田はその差を5秒ほどに縮める。しかしタイムアップとなりそのままの順位でフィニッシュ。一方、中島は25番手あたりからスタートするも、混戦の中で順位を上げきれず31位でゴール。トップを譲ることなくチェッカーを受けたハンターが優勝を獲得し、下田は450ccマシンで初となる決勝レースで2位に入賞する快挙を達成した。
最後は大倉と下田が出場するレース3。レース2と同じく真ん中を選んだ下田がホールショットを獲得し、レースをリードしていく。大倉はスタート直後のクラッシュに巻き込まれ転倒。すぐに復帰するも、31番手あたりからの追い上げを強いられる。1周目をトップで通過した下田だが、後方につけるハンターとクーネンが下田を猛追し2周目にパス。3番手でレースが進行する。レース時間15分を過ぎたころ、クーネンが転倒したことで下田が2位に浮上。しかし下田のペースは上がらず、、終盤にかけて徐々に後退。この時のことをレース後に聞くと、体力的にかなりきつかったとのことで、限界を迎えながらの6位フィニッシュとなった。大倉は序盤の転倒から追い上げるも、単独走行となり29位でチェッカー。
MXoNの結果は6つのうちの最下位を除外した順位の合計で決定する。日本代表はレース1で大倉31位/中島36位、レース2で下田2位/中島31位、レース3で下田6位/大倉29位となり、レース1の36位を除いて合計99ポイント。総合11位でレースを終えた。
日本代表が決勝進出するのは2016年以来9年ぶり。2016年は予選11位で通過し、38カ国中18位という結果で終えていることから、今回の結果は2016年を上回る好成績であり、日本代表チーム一人一人の実力が高くなっていることを証明するものとなった。
なお、レース3ではハンターが1位を獲得。これによりオーストラリアが2年連続で優勝を果たし、2位アメリカ、3位フランスという結果になった。
ライダーコメント
「日本チームとして11位を獲得できたことはとてもよかったです。ただ、個人的な結果を見ると、悔しさが残りますし、もう少し数字で貢献できたと思います。なぜあそこで、と思うような場面もありました。もっと良い結果を残したかったというのが正直な気持ちです。 自分的には、MXGPクラスで予選15位くらいを走っていたので、決勝では25位に入ることを目標にしていました。実際、前半はずっと20位以内を走っていたのですが、転倒したことで一気に15位ほど順位を落としてしまいました。もし転倒せずに走りきれていたら、もう少し良い順位になっていたのではないかと思ってしまいます。 これまで出場してきた3年間を振り返ると、初年度は予選でスタート出て転倒せずに24位。2年目は17位で、今年は15位ぐらいを走っている時に吹っ飛んで……。久しぶりにあんな吹っ飛ばされたというぐらいの転倒だったのですが、このチャンスで予選落ちはしたくない! という気持ちが強くて、気持ちより先に身体がバイクに向かっていました。あれだけひどい転倒の中で、19位で終えられたのはだいぶ前向きに捉えられるし、自分自身の成長を感じています。だからこそ決勝で転倒したのは本当に悔しいです。ただ、この年齢でも毎年成長を感じていますし、まだまだ伸びしろがあると実感しています。まだ知らないことがたくさんあると、海外に行って見えてきているので、もっと経験を積んで強くなりたいです」(大倉)
「決勝は予選と違って450ccマシンに乗る選手との混走ということで、レースの迫力が全く変わってきましたし、普段は無いレース環境は特別な経験でした。450ccと250ccのライダーともに、自分が前にいても隙があればすぐに入ってきて抜かれてしまう。それを抑えようとすると自分的にはオーバーペースになり、転倒しそうになったので、そこのコントロールが難しかったです。転倒したら元も子もないので、30分間しっかり走り切ることを意識していました。 バイクはスターレーシングに用意してもらって、ヘイデン・ディーガン選手のバイクをそのまま使ったかたちです。MXoNの1週間ほど前から渡米してスターレーシングの拠点でテストをして、自分に合わせてマシン調整を行いました。エンジンに関してはほぼそのままの状態で、かなりパワーがあります。これがスタートでは有利に働いて前に出ることができました。一方で、上が回るエンジンなので低速が少し弱く、細かいセクションでのギアの使い方に苦労しました。1つ下のギアだとすぐエンジンが回りすぎるし、上のギアだとパワーがついてこない。そこを練習走行の最後10分くらいでようやく慣れて、扱えるようになってきたという感じです。 レース1はスタートからオーバーペースでしたが、周りのペースに合わせて、攻めて走れていました。レース2はこの環境を楽しもうという、レース1よりも気楽な気持ちで挑めたのですが、レース1の方が攻めれていたなと振り返って思います。正直どちらの走りも良いとは思えません。ただ、かといって今の自分に他にできることがあったかと言われてもない気がします。全力は尽くせたと思いますが、もやもやした感じで、結果がもう少し伴っていれば"やりきった"という感覚があったと思います。今は悔しさが大きいです」(中島)
「両ヒートともにスタートが上手く決まって、クリーンに前に出られたのでよかったです。450ccマシンに乗って5日目くらいだったので、自分がクラスの中でどの位置にいるかわからない状態で挑みました。両スタートとも上手く決まったのですが、MX2と混走したレース2の時は、1コーナーでアウト側に膨らんでしまって、そこで後退してしまいました。MXGPと混走したレース3では、レース2のミスを修正して、もう少しちゃんとブレーキをかけて曲がっていきました。実際スタート練習はコースで20回もやっていない状態でしたが、フリープラクティスやウォームアップの時にコースの状況や土質に合わせてトラクションコントロールのフィードバックをして、ちょっとずつ自分のスタートマップを作っていき、それが最後ちゃんと決まったのでよかったです。普段250ccマシンではアウトからスピードを乗せてパッシングするのが当たり前なんですけど、450ccマシンだとパワーがあるのでそれが通用しなくて。450cc相手にレース経験がなかったので、アプローチの仕方を変えてみたりとちょっとずつ工夫しながらレースをしていました。なので、レース2ではちょっと苦戦して、2番手に上がるまでに結局10分ぐらいかかりました。また、前日のフリープラクティス40分と予選20分でかなり体力が削られて、決勝もそれが影響して腕に力が入りづらかったりといつも通りの身体ではなかったです。レース3は序盤からかなりしんどくて、正直体力勝負でした。その中でも2位と6位で終えて、自分が予想していたよりも通用して驚きましたし、スピードは問題ないと感じました。チームとしても総合11位で終えることができてよかったです」(下田)
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かねてよりダカール・ラリー参戦の意思を表明していたトライアIASライダーの藤原慎也が、2026年のダカール・ラリーへの挑戦を正式に発表しました。ベールに包まれていた参戦マシンはホンダCRF450 RX Rally。イタリアのRS moto RACINGと連携して参戦体制を整えます。
藤原選手はこれから2025年モロッコラリーへ2度目に挑戦その後、いよいよ世界最高峰のクロスカントリーラリーに挑む形です。ダカール・ラリー2026は1月3日から17日にかけて開催され、全行程はおよそ8,000kmに及びます。
CRF450 RX Rally、限定50台の特別仕様
CRF450 RX Rallyは、ホンダのCRF450RXをベースに開発されたラリー仕様車で、外装からエンジン内部まで専用設計となっています。HRCの技術が投入され、軽量化と高い耐久性を両立。フレームや燃料タンク容量、ナビゲーション機器の搭載位置もラリー仕様に最適化されています。
このモデルは限定50台で市販される特別仕様車として製作され、競技参戦やトレーニングを目的としたライダーに販売されています。
RS moto RACINGは、ヨーロッパのトップラリーチームとして多くのファクトリー参戦を支援してきた実績を持ちます。藤原は同チームの技術サポートを受け、マシン整備、パーツ供給、現地でのサービス体制を整えるとのこと。
今回の挑戦は、日本人として唯一のエントリーとなる見込みであり、国内ラリーファンにとっても注目の一戦です。