犬は人間の喜怒哀楽を表情のみで理解、脳スキャン用いた研究が示唆
目覚めた状態のまま、MRIスキャンで脳の活動を測定される犬/Laura V. Cuaya
(CNN) 犬を飼っている人なら誰もが思い当たることだが、今やそれを証明する科学的根拠が得られたかもしれない。どうやら犬は本当に、我々人間の喜怒哀楽を見分けることができるようだ。
10日付の学術誌iScienceに掲載された研究論文によると、科学者たちは犬の脳をスキャンし、幸福、悲しみ、怒り、恐怖など、人間のさまざまな表情を犬がどのように処理しているのかを明らかにした。
ウィーン大学の研究チームが実施したスキャンからは、人間が示す表情によって、犬の脳に異なる反応が表れることがわかった。
研究の上席著者を務めたローラ・クアヤ氏は、大学のウェブサイトに掲載されたプレスリリースで研究結果について説明。犬は人間と全く異なる進化の道を辿(たど)ったものの、「家畜化を通じて我々を理解し、協力するために必要な社会的能力を発達させた」と述べた。
研究者たちは、ボーダーコリー6匹、ラブラドール1匹、ゴールデンレトリーバー1匹の計8匹の脳をスキャンしながら、幸せな表情または無表情の見知らぬ人の画像を見せた。その結果、幸せそうな顔の画像を見ると、側頭皮質と尾状核の活動が高まった。これらは高度な認知処理や報酬処理に関連する脳の部位。
この結果は、幸せそうな人間の顔が犬にとって感情的な意味を持っている可能性を示唆すると、クアヤ氏は述べた。
次に研究者たちは、犬の脳の同じ領域が他の感情にも反応するかどうかを調べようとした。12匹の犬に、幸せ、怒り、恐怖、悲しみを感じている人々の写真を見せ、機械学習を使って犬の脳活動を分析した。
犬の脳は怒り、恐怖、悲しみの表情に対して、幸福な表情の場合と同じようには反応しなかったが、脳全体を対象とした分析では、ネガティブな感情を示す顔に対し、それぞれ異なる活動パターンが現れることが確認された。
「人間は顔の細かな特徴を読み取るのが非常に得意だが、それは犬も同じだ」と、同じくウィーン大学に所属する筆頭著者ラウル・エルナンデスペレス氏は述べた。「だからこそ、犬という存在は非常に興味深い。犬の脳を研究することで、彼らがどのような適応を通じて人間の社会的・感情的側面を理解する驚くべき能力を身につけたかがわかる」
私生活でも仕事上でもパートナー関係にあるクアヤ氏とエルナンデスペレス氏は、オーディンとクン・クンという2匹の犬を飼っている。今回の研究にはこの2匹も参加した。
エルナンデスペレス氏はCNNに対し、「尾状核が幸せそうな顔の処理に関与していることが分かったのは、うれしい驚きだった」と語り、さらにこう付け加えた。「さまざまな種において、この領域は報酬処理との関連が指摘されている。特に犬では、尾状核の活動は食べ物という報酬だけでなく、褒め言葉を聞いたり、親しい人の匂いを感じたりするといった社会的報酬とも関連していることが分かっている」
「犬の主観的な体験に直接アクセスすることはできないが、我々の研究結果から、幸せそうな顔を見ることについては、たとえ見知らぬ人であっても肯定的な感情処理の関与がうかがえる」(エルナンデスペレス氏)
研究チームは、犬が感情を処理する仕組みについて、顔の表情の静止写真を見ることだけでは説明できないと強調。犬は人間のボディーランゲージや声、匂いなど、ほかの要素も考慮に入れるからだ。また、研究に参加した犬がすべて愛情に満ちた家庭で暮らしていたことにも注意が必要だという。路上で暮らす犬は、人間が発する手がかりをまったく異なる方法で処理している可能性がある。
エルナンデスペレス氏はCNNに対し、研究に参加するためには、犬を特別に選抜し、訓練する必要があったと語った。「主にMRI装置の大きさの関係から、犬は中型で健康、大きな音を極端に怖がるといった行動上の問題がないことが必要だった」という。
犬たちにはまず、ただじっとしているように指示を与えた。最初はほんの1~2秒から始め、少しずつ時間を延ばしていった。その後、姿勢や装置、スキャナーの音など、MRI環境のさまざまな要素に徐々に慣れさせる。犬たちは常に自発的に参加しており、いつでもその場を離れることができるようにしているという。
著者らによると、この研究にはいくつかの限界があった。研究に参加した犬の数は少なく、その大半がボーダー・コリーだった。ボーダー・コリーは賢い犬種で、社会的な手がかりに従う能力を備えていることで知られる。
「ボーダー・コリーの場合、人間の表情を解釈する能力が比較的高い可能性はある。人間の表情の知覚について、犬種間で行動や脳の活動に違いがあるかどうかを明らかにするには、今後のさらなる研究が必要になる」。研究論文はそう指摘している。
科学者たちは現在、「より犬中心のアプローチ」を取り入れたいと考えている。それによって犬がこれらのシグナルをどのように活用し、人間を理解しているのかを突き止める方針だ。
エルナンデスペレス氏はCNNの取材に答え、犬が人間の感情に驚くほど注意を払っているという認識を得られれば、人間の方もまた、犬が自らの感情をどのように表現しているのかをより効果的に認識できるようになると示唆。「感情はコミュニケーションの強力な一形態であり、種を超えて我々を結びつけることができる」と語った。