中東リスクが上値の重し、最高値迫る米国株にウォール街が警戒感
- JPモルガンは慎重な姿勢、リスクの高まりと反落の可能性が理由
- 地政学リスクや成長減速、業績予想低迷がマイナス要因となる可能性
インフレ懸念や米利下げ時期を巡る懸念に加え、中東情勢で緊張が高まり、ウォール街では少なくとも1社が株価最高値更新の見通しに警戒感を示し始めた。
S&P500種株価指数は16日、イランとイスラエルの対立は全面戦争には激化しないとの望みを手掛かりに上昇したが、米銀JPモルガン・チェースのトレーディング部門は米国株に対する戦術的な強気スタンスを後退させた。リスクの高まりと株価下落の可能性を理由に挙げている。
「今年に入り、悪材料を押し目買いの好機と捉える投資家が報われる場面が続いてきたが、ここはリスクを後退させるのが得策だと考える」と、JPモルガンでグローバル市場インテリジェンス部門を率いるアンドルー・タイラー氏は述べた。同氏は4月以降の数週間にわたる株価上昇を正確に予測していた。16日の顧客向けリポートで、タイラー氏は「イスラエルとイランの問題に関わらず、相場は下落に向かう構えを見せていた」とも指摘した。
S&P500種が4月の安値から21%上昇する中で、それを支えてきたリスクオンの勢いに陰りが見え始めている。同指数はこの1カ月間、6000付近で足踏み状態が続いており、市場の「恐怖指数」とされるVIXも20をわずかに下回る水準で推移している。地政学的リスクなどを背景に、投資家の不安が根強いことを示唆している。
タイラー氏の最新の見解は、S&P500種が16日の取引で反発して終了する前に示された可能性はあるが、ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏なども同じ意見だ。メイリー氏はS&P500種が最高値を再び試したとしても、現在のバリュエーションの水準では、上振れリスクよりも下振れリスクの方が大きいと指摘する。S&P500種は最高値まで1.8%に迫っている。
メイリー氏は「経済成長はなお減速しており、利益見通しも引き続き低迷している」と述べ、「地政学的な不確実性を加えると、良い組み合わせではない」と続けた。
原題:Wall Street Turns Wary as Mideast Risk Caps Stocks Near Record
(抜粋)