交通事故はもちろん、あおり運転の被害に遭った際にも決定的な証拠となるのがドライブレコーダー。普及率は年々上昇しているが24年時点でも51.9%(※ソニー損保『2024年 全国カーライフ実態調査』より)とまだ半数程度だ。 もしドライブレコーダーを搭載していなければ、こちらが被害に遭っても相手が嘘をつく可能性もあり、実際そうしたケースも多数報告されている。 不動産会社に勤める
岡本俊夫さん(仮名・25歳)は大学時代、バイト代を貯めて初めてのマイカーとなる中古車を購入。しかし、金欠だったこともあり、ドライブレコーダーは付けていなかったそうだ。
片側一車線の高速道路で煽られ、先を譲ることもできない
「でも、同じように設置していなかった高校の友人が衝突事故に巻き込まれた際、本来なら9:1でもおかしくない過失割合が6:4という不本意な形になってしまったんです。その話を聞いてすぐにドライブレコーダーを買いました」 前方・後方用の2つカメラがセットになった製品で、メルカリで手に入れた中古品だったので購入価格は約5000円。すると、愛車に搭載してから2か月経ったある日、早速これが役に立つ。片側1車線の高速道路を走行中、後ろから車が煽ってきたからだ。 「その日は同じ大学に通う彼女とのドライブ中でした。後ろから白いワゴン車が制限速度の70㎞を明らかに超えるスピードで迫ってきて、十分な車間距離を取らずに後ろにベタ付き。最初から煽る気満々という感じでした」 1車線しかないので道を譲ることもできず、かといってスピード違反になるので制限速度を超えて運転する気にもなれなかった。だが、そんな岡本さんに相手はイラついているのか、車を左右に振るなど煽り行為を止める気配がなかった。 「ここまで露骨に煽られたのはこの時が初めて。こっちだってノロノロ運転じゃないのに『チンタラ走ってんじゃねぇ!』的な圧力がスゴくて……。自分は比較的冷静でしたが彼女が怯えてしまい、次のICで降りたんです。それでも3~4分は煽られていたと思います」 出口手前の左側のレーンに入った瞬間、後ろのワゴン車はアクセルをふかして勢いよく抜いていったとか。その後、コンビニに立ち寄ってしばらく休憩していたが、恋人が落ち着きを取り戻すと、最愛の彼女を怖がらせたことに対する怒りがふつふつと湧きあがってきたという。 ちなみに車体に企業名が入っていたのは覚えていたため、帰宅後にドライブレコーダーの映像を確認。社名を検索してみると、同じ県に本社のある某企業がヒットする。 そこで会社ホームページの問い合わせから詳しい日時と場所を明かしたうえで、《御社の社名が入った白いワゴン車に煽られたのですが……》との内容のメールをその日のうちに送ったそうだ。 「転送サイトのURLも記載し
《証拠映像をアップロードしましたので、お手数ですがこちらダウンロードしてご確認ください》との一文も添えました。先方の対応次第ではSNS上での公開も考えましたが2日後の昼過ぎ、その会社から返信が届きました。 『現在、事実確認をしております。改めてご連絡いたします』という内容でしたが煽り運転の事実はこの時点で先方も認めており、謝罪の言葉も綴られていました。 メールも送ってきたのも総務部長だったため、少なくとも相手企業からは誠意を感じました。最悪スルーされることも想定していたからホッとしたというのが本音ですけどね」 さらに次の週の月曜日、再び総務部長から連絡があり、当該社員が事情聴取の中で煽り運転の事実を認めたそうだ。ただし、当時はまだコロナ禍だったので対面の謝罪は断り、オンラインでの謝罪という形に。 彼女はこれを辞退したため、岡本さんが煽ってきた運転手と直属の上司である営業課長、それと総務部長の3人が画面越しに謝罪してきた。