ネアンデルタール人の「脂肪工場」がドイツで発見される
あなたが思っている以上にネアンデルタール人は賢いようです。
一度は歴史の授業で聞いたことがある、古代人ネアンデルタール人。数十万年前に存在していた我々の祖先は、狩猟だけでなく資源を貯蔵する工場を運用していたことが調査で明らかになりました。
大規模に骨を処理する最も古い遺跡
研究者たちはドイツで、ネアンデルタール人による古代の「脂肪工場」の証拠を発見しました。およそ12万5000年前に稼働していたとされるこの施設では、大型哺乳類の骨を砕き、骨髄や脂(グリース)を取り出していたと考えられています。どうやら狩猟でゲットした動物を解体し、追加の食料源として貯蔵していたようなんです。
科学者たちによれば、これらは大規模な骨処理の最も古い証拠であり、骨髄と脂の両方を含む処理をネアンデルタール人が行なっていたことを示しています。これは、現生人類(ホモ・サピエンス)がヨーロッパに到達するよりも10万年以上前のことです。
ドイツ・MONREPOS考古学研究センターの考古学者、ルッツ・キンドラー氏は、
これは集中的かつ組織的で、戦略的に行なわれていたことを示しています。ネアンデルタール人は明確に資源を正確に管理していたようです。狩猟計画、死体の運搬、脂を取り出すために決まった場所を使用しています。彼らは脂肪の栄養価と、それを効率的に取り出す方法を理解しており、死体の一部を後で運ぶために特定の場所に隠していたと考えられます。
と述べています。
意志を持って動物を解体していた証拠も
Image: Researchers at work at the Neumark-Nord site. (Kindler et al., Science Advances, 2025)研究チームは、ドイツ東部ハレ市の近くにあるノイマルク=ノルト(Neumark-Nord)と呼ばれる場所で証拠を発見しました。そこでは、馬や鹿など少なくとも172頭の大型哺乳類に由来する10万点以上の骨片が発掘されました。
かなりの割合の骨には切断痕や意図的に砕かれた痕跡が見られていることから、これが狩猟後の単なる残骸ではなく、意図的な解体処理であったことを示しています。同じ場所には道具の使用や火の痕跡もあり、すべてが比較的狭い範囲に集中していました。
これらの発掘結果から総合的に判断すると、一定のルールに則りなおかつ、組織的に骨の処理が行なわれていたことは明らかです。類似の活動が他のネアンデルタール人の遺跡でも指摘されたことはありますが、これほどの規模のものは初めてです。
MONREPOSの考古学者サビーネ・ガウツィンスキー=ヴィントホイザー氏は…
骨脂を作るには、労力に見合う十分な量の骨を集める必要があります。そのため、骨の量が多ければ多いほど、処理の価値も高まるのです
と述べています。
ネアンデルタール人は高い知性を備えていた
今回の発見は、私たちがネアンデルタール人(原始人)と聞いて想像するよりも何倍も賢く、高い知性を備えていたことを裏付ける証拠になりました。最近の研究では、彼らが泳ぎが得意で、ビールを醸造し、抽象的な思考ができたこと、子どもを育て、人間のような話し方をしていたことなどが明らかになっています。
とはいえ、最終的に生き延びたのは現生人類であり、ネアンデルタール人は絶滅しています。なぜそうなったのかについては、考古学者たちが現在も研究を続けています。私たちが今手にして、知ることができるのは、彼らが残した遺骨と遺跡だけですが、今後も新たな発見が期待されています。はるか昔に生きていた私たちの祖先の暮らしは、今の私たちが生きるヒントを与えてくれるかもしれません。今後の研究で何が明らかになるのか楽しみです。
Source: science alert