【RSウイルス】毎年約3万人の乳幼児が入院、元気な赤ちゃんでも注意が必要なケースも 小児科医に聞く「親が知っておきたい備え」〈PR〉

JA静岡厚生連 静岡厚生病院 小児科診療部長 田中敏博先生

 世界中に広く存在する「RSウイルス」は、乳幼児のほぼ全員が2歳までに一度は感染する(※1)ウイルスですが、生後6カ月ごろまでの赤ちゃんが初めて感染する場合には重症化しやすい(※2)ことが知られています。国内では2歳未満のRSウイルス感染による受診者の約25%が入院を経験している(※2)といわれ、そのうち6カ月未満が約40%を占めていました。赤ちゃんの突然の症状の変化に戸惑う保護者も少なくありません。今回は小児科の現場で親子と向き合う田中敏博先生に、RSウイルス感染症の実態と備えについて聞きました。

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今も残る“やっかいな疾患” RSウイルス感染症

—RSウイルスは、世界的に乳幼児の入院の主な原因となっている(※3)と聞きました。小児科医の視点から、「RSウイルス感染症」はどのような位置付けでしょうか。

田中敏博先生(以下、田中先生)小児医療の現場では、この十数年で各種のワクチンが導入されて普及し、感染症が重症化する場面が大きく減りました。例えば小児の細菌性髄膜炎の原因となるヒブ(インフルエンザ菌b型)や肺炎球菌などは、ワクチンによって稀な疾患となりました。肺炎球菌はそれ以外にも下気道炎や中耳炎の原因にもなりますが、今は減少傾向です(※4)。

そのような状況のなかで、毎年流行を繰り返しているのが「RSウイルス感染症」です。RSウイルス感染症に対するワクチン開発の道のりは険しく、現時点で小児用のワクチンはありません。ワクチンの登場によって多くの感染症がコントロールされてきたことを思うと、現場の感覚としてRSウイルスの振る舞いは、“今も残るやっかいな感染症”という位置付けです。

RSウイルスは飛沫感染や接触感染で広がるウイルスです。感染力が強く、ほぼすべての子どもが2歳までに感染する(※1)とされています。潜伏期は平均4〜5日。初めて感染した乳幼児の約70%は軽症で数日のうちに軽快しますが、約30%では咳が悪化し、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーと呼吸しにくくなること)や呼吸困難、さらに気管支炎の症状が増えます(図1)。重篤な合併症として注意すべきものには、1歳以下では無呼吸発作や急性脳症等があります(※5)。また海外の研究では、乳児期にRSウイルス感染症により入院した経験があるお子さんは、そうでないお子さんと比較して、将来のぜんそくを発症する可能性が高まるという報告があります(図2)(※6)。

図1:RSウイルス感染症の主な症状(※1)
図2:3歳児における喘息発症率の比較(※6)

一度かかれば終わりではなく、成長の過程で何度も感染します。年長児や大人(高齢者を除く)では重症化するケースは少なくなりますが、一方で、 RSウイルスに対する免疫がある兄弟や大人では感染しても症状が軽いか、または無症状の場合も少なくなく、家庭内にRSウイルスを持ち込むと赤ちゃんが感染してしまうケースもあるため、注意が必要です。

生後6カ月未満は重症化しやすい

—赤ちゃんや子どもがRSウイルスに感染している場合、小児科にはどのような症状で受診することが多いのでしょうか。

田中先生 最初は鼻水や咳、微熱など、一般的な風邪と区別がつかず、「上の子の風邪がうつったかもしれません」と保護者の方が言われて受診されるケースもよく見られます。小児科医としては、生後6カ月未満の赤ちゃんで、咳が強い、喘鳴(ぜんめい)や苦しそうな呼吸がある、発熱や粘り気のある鼻水が続く。こうした症状があればRSウイルス感染症を疑い、検査キットを用いた検査につなげていきます。

一方で、RSウイルスそのものを直接退治するというような確立された治療法はなく、症状を和らげる対症療法が中心です(※5)。痰を切りやすくする薬や気管支を拡げる効果のある薬の投与、点滴による水分補給、酸素投与・人工呼吸器で呼吸を助けるなど、子どもの回復力を支える治療が行われます。

—生後6カ月までの赤ちゃんはなぜ重症化しやすいのでしょうか?

田中先生 生まれて間もない赤ちゃんは、RSウイルスに対する十分な免疫を持っていないことが大きな理由です。さらに、感染して気道に炎症が起きると、RSウイルスに特有の粘り気の強い分泌物が増え、元々狭い赤ちゃんの気道がさらに狭くなって呼吸が苦しくなります。また、鼻水や粘膜の腫れによって鼻呼吸がしづらくなると哺乳力が低下し、睡眠も妨げられて、赤ちゃんの体力が消耗していきます。

実際に、生後6カ月未満の赤ちゃんが初めて感染する場合には重症化しやすく、生後1〜2カ月が入院のピークであったという報告(※2)もあります。

入院する乳幼児の約90%は基礎疾患がない健康な子ども

—特に重症化する可能性が高い子どもはいますか?

田中先生 生後間もない赤ちゃんのほか、早産・低体重で生まれてきた赤ちゃん、肺や心臓の病気、免疫不全といった基礎疾患がある乳幼児、ダウン症がある乳幼児などは、重症化しやすいことが知られています(重症化する可能性がある因子=重症化因子)(※2)。

こうした重症化因子のあるお子さんには、RSウイルス感染症を予防、あるいは重症化を抑えるための抗体薬(注射)を保険適用で投与できます。いわば“転ばぬ先の杖”として策が講じられているわけです。

一方で、近年ではRSウイルスで入院した2歳未満の乳幼児の約90%が、もともと基礎疾患を持っていなかったという報告(※2)もあります。つまり、「健康な子だから大丈夫」とは言い切れず、基礎疾患がない子どもでも入院のリスクがある感染症なのです。

—「赤ちゃんはお母さんからもらった免疫があるから大丈夫」とも聞きます。

田中先生 一般的に妊娠中にお母さんの抗体が赤ちゃんに移行するため、生後半年ほどはお母さん由来の免疫で守られると言われています。ただし、その自然に移行する抗体だけで、すべての感染症を十分に防げるわけではありません。RSウイルス感染症もそのひとつで、赤ちゃんでも感染して重症化することがあります。

—入院の基準と治療、経過について教えてください。

田中先生 呼吸状態が悪い、酸素飽和度(血中の酸素量)が低い、哺乳ができないなどで脱水のリスクがある、といった場合が主な入院基準です。ご家庭では、哺乳力低下の兆候は、受診の判断ポイントになります。実際の入院について、その期間は数日から1〜2週間程度が一般的です。退院後も、気道の炎症が完全に治まるまで時間がかかることがあり、咳などの症状が続く場合もあります。

入院のお話をすると、「単なる風邪で、入院するほど悪くなってしまうとは思わなかった」などと驚かれる親御さんも少なくありません。保護者の付き添い入院が必要な場合もあり、仕事の調整や兄弟の世話など、家庭への影響もあります(※7)。RSウイルス感染症は、お子さんだけでなく家族の生活にも関わる感染症だと感じています。

親が知っておきたいRSウイルス予防対策

—基本的な感染対策のほかに、家庭でできる予防対策はありますか。

田中先生 兄姉や大人は気づかないうちにRSウイルスを乳幼児にうつしてしまう可能性があります。特に家族に風邪症状があるときは、乳幼児にうつさないようにしようという配慮の気持ちが大切です。

また、換気を行う、カーペットのこまめな掃除、エアコンのフィルターを清潔に保つなど、日頃から乳幼児の呼吸器への負担を減らす環境づくりも大切です。同居する大人の喫煙は、乳幼児の健康や感染症へのかかりやすさに影響することも認識する必要があります(※8)。

ただし、RSウイルスは感染力が強く、生活の中で完全に防ぐことは難しい感染症です。だからこそ、重症化を防ぐ医療面での予防対策を知っておくことも重要になります。

まず、これから生まれてくる赤ちゃんを守る方法として、RSウイルス感染症による下気道疾患(細気管支炎や肺炎など)の予防を目的に、妊婦さんに接種するRSウイルス母子免疫ワクチンがあります。これは妊婦さんにワクチンを接種することでお母さんの体の中で作られた抗体が赤ちゃんに移行する、という仕組みを利用したものです。生後間もない赤ちゃんの重症化リスクを低減する手段のひとつとされています。定期接種化(A類疾病)されていますので、お住まいの自治体や医療機関で確認してください。

※定期接種(A類疾病)とは、予防接種法で定められた、原則無料(公費負担)で受けられる予防接種のことです。対象となる方は医師にご確認ください。

なお、重症化因子のあるお子さんに対しては、前述のとおり保険適用でRSウイルス感染症を予防・あるいは重症化を抑制するため抗体薬(注射薬)を使うことができます。予防といってもワクチンとは異なり、人工的に作られたモノクローナル抗体を直接投与(注射)するものです。生まれた赤ちゃんに対する抗体薬は2種類あり、それぞれで投与できる対象のお子さんや、回数などが異なりますので、ぜひ小児科医に相談してみてください。

—最後に、保護者の方にメッセージをお願いします。

田中先生 RSウイルス感染症はありふれた疾患ですが、赤ちゃんにとっては決して油断できない存在です。必要以上に怖がることはありませんが、保護者の方が正しい知識を持つことで、早めの対応によって、お子さんの重症化の防止につながります。

また、重症化を予防するための選択肢があることもぜひ知っておいてほしいと思います。正しい情報をもとに、お子さんとご家庭にとって最善の選択を考えていただけたらと願います。

専門家プロフィール 田中敏博(たなか・としひろ )先生 JA静岡厚生連 静岡厚生病院 小児科診療部長。静岡市出身。1992年筑波大学医学専門学群卒。静岡済生会総合病院、聖隷浜松病院、カナダ・トロント小児病院ほかを経て、2010年より現職。予防接種、小児期の感染症、臨床薬理学などに興味を持って取り組む。

データ:

1 堤裕幸: ウイルス 55(1): 77, 2005

2 Kobayashi Y et al.: Pediatr Int 64(1): e14957, 2022

3 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト RSウイルス感染症とは

https://id-info.jihs.go.jp/surveillance/idwr/topics/040/index.html (2026年3月時点)

4 国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト 小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の発生動向および起炎菌血清型変化の解析

https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/11768-515r07.html (2026年3月時点)

国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイト 10道県における小児侵襲性Haemophilus influenzaetype b感染症発生状況の推移:Hibワクチン導入効果の評価 

https://id-info.jihs.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/3709-dj4017.html(2026年3月時点)

厚生労働科学研究成果データベース 新しく開発されたHib、肺炎球菌、ロタウイルス、HPV等の各ワクチンの有効性、安全性並びにその投与方法に関する基礎的・臨床的研究

https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/21456?utm_source=chatgpt.com(2026年3月時点)

5 厚生労働省 RSウイルス感染症Q&A(令和6年5月31日改訂

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/rs_qa.html(2026年3月時点)

6 Sigurs N. et al.:Pediatrics 95(4):500, 1995、Sigurs N. et al.:Am J Respir Crit Care Med 161(5):1501, 2000、Sigurs N. et al.: Am J Respir Crit Care Med 171(2):137, 2005

7 関根英輝ほか: 新薬と臨牀 73(6): 557, 2024

8 Jones L.L. et al.:Respir Res 12(1):5, 2011

ABR45Q037A 2026年5月作成

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