新種のタランチュラ発見。新種認定の理由は…性器がでかすぎるから!
長い性器で命をかけた交尾!
研究チームが新たに4種のタランチュラを発見。というのも、これらのクモの生殖器が異常な長さだったため、新たな分類群を設けざるを得なかったということです。
この4種は、それぞれSatyrex ferox、S. arabicus、S. somalicus、そしてS. speciosusと名付けられました。アラビア半島とアフリカに生息していて、形態的にも遺伝的にも最も近縁とされていたタランチュラの仲間とはあまりに違うため、研究チームはこのクモを新たな属「Satyrex」として再分類しました。
名前の由来は?
研究チームは、先月ZooKeys誌にて発表された論文でこのように述べています。
属名Satyrexは、非常に大きな性器を持つことで知られるギリシャ神話の半人半獣サテュロスと、ラテン語で王を意味するrexを組み合わせたものです。
その名の通り、新種(さらに既知の1種を加えた計5種)は、タランチュラ史上最も長い触肢(生殖器)を持っています。触肢はオスのクモが交尾の際に精子をメスに渡すために使う脚のような器官で、厳密には「陰茎」ではなく「二次性器官」にあたります。
クモの脚って長いけどそれに近い長さ
例えばSatyrex feroxの場合、脚の長さは約14cmですが、オスの触肢の長さは最大で約5cmにもなります。脚に匹敵するほどの長さ!
なぜそんなに長い性器を持っている?
これについては、研究の筆頭著者でありフィンランドのトゥルク大学のクモ学者Alireza Zamani氏は、出版社Pensoftのブログ記事で、 「S. ferox に関しては、オスが交尾中にメスから安全な距離を保ち、攻撃されたり食べられたりするのを避けるために、触肢が長く進化した可能性があると仮説を立てています」と説明しています。 メスから食べられないようにしながら、交尾しなきゃいけないとは!
Zamani氏は「この種は非常に攻撃的で、わずかな刺激に対しても前脚を持ち上げ、威嚇姿勢をとり、前脚の基部の特殊な毛をこすり合わせて大きなシューッという音を出します」と説明しています。ちなみに、名前にもある「ferox」は「獰猛な」、「激しい」という意味です。
要するに、S. ferox は交尾中に食われないために、生殖器をながーく進化させた可能性があるというわけです。まさに命がけの「愛の一刺し」。
S. feroxと比べると他の種の名前は、やや地味め。
S. speciosusはその美しい体色にちなんでいて、S. arabicusとS. somalicusは、それぞれの発見地(アラビア、ソマリア)にちなんで名付けられました。
今回の新属「Satyrex」には、以前はMonocentropus属に分類されていたS. longimanusも含まれることになりました。Zamani氏は、「S. longimanusと今回の新4種の触肢の長さが、MonocentropusではなくSatyrexという新たな属を設ける主な理由となりました。つまり、少なくともタランチュラの分類学においては、サイズが重要というわけです」と付け加えています。