3Dプリンターで垂直離着陸可能&1回の充電で3時間も飛行できるドローンを自作した猛者が登場

動画

回転翼と固定翼を組み合わせた構造で垂直方向の離着陸と水平方向の巡航が可能であり、1回の充電で3時間も飛行可能な垂直離着陸機(VTOL)型ドローンを、3Dプリンターを使ってわずか90日で製作したと、アメリカのカリフォルニア州在住の起業家であるツォン・シュー氏が報告しました。シュー氏はVTOL型ドローンの製作過程や実際に飛行する様子をまとめた動画を、YouTubeで公開しています。

I made a 3D printed VTOL drone that can fly 130 miles

https://www.tsungxu.com/p/i-made-a-3d-printed-vtol-that-can

シュー氏は今回のプロジェクトに取り組む前、ドローン製作に必要なCADや3Dプリント、空力モデリングといった分野はほとんど初心者だったとのこと。2025年1月に独自のVTOL型ドローンを製作した経験はあったものの、CADのスキルは基本的なものしか持っておらず、使用したBambu Lab A1 3D プリンターも購入してから1カ月ほどしか経過していなかったそうです。

そんなシュー氏がVTOL型ドローンを製作して実際に飛行させてみた様子は、以下のYouTube動画で見ることができます。

I made a 3D printed VTOL that can fly 130 miles (as a CAD beginner) - YouTube

シュー氏は今回のVTOL型ドローンを製作するにあたり、「飛行時間を最大化する」ことを目標に掲げました。

まずは機体をモデル化して、CADで部品を設計します。初心者だったシュー氏は、作業を進めながら必要な知識や技術を学習していったとのこと。

軽量でありながら強度や衝撃耐性が高い発泡PLA(ポリ乳酸樹脂)や、ポリエチレンテレフタラート(PET)を3Dプリンター向けに改良したPETGフィラメントを用いて、3Dプリンターで100個を超える部品を出力しました。

必要な部品やドローン用の装置がそろったら、部品の組み立てとテストに取りかかりました。

部品や装置をざっと並べてみると、すでにドローンっぽい雰囲気があります。

組み立て後はこんな感じ。地面に置いた状態では、問題なく垂直離着陸用のプロペラも回転しました。

さっそく屋外でホバリングのテストを行います。

あお向けにひっくり返って失敗。

ホバリングのテストには何度も何度も失敗し、ドローンはそのたびに壊れました。

シュー氏は約2週間にわたってトラブルシューティングを行いました。

その結果、ドローンのモーター出力を制御する「ESC」という装置が過熱していることが原因だと判明。

シュー氏は部品から機体を再構築することに。

ESCやモーター、配線をアップグレードして、再度ベンチテストを行いました。

一連の改善により、ESCが低温で動作するようになったとのこと。

ホバリングテストの結果も良好。

テストの結果を受けて前後方向の移動を示す「ピッチ」、左右方向の移動を示す「ロール」、旋回の動きを示す「ヨー」をそれぞれ調整しました。

続いて、回転翼を用いたホバリングから固定翼を用いた巡航モードへの切り替えもテストしました。まずは固定翼を装着。

最初はドローン本体を固定したまま、ラジコンで固定翼の可動部がうまく動作するかどうかをチェックします。

その後、実際に屋外でドローンを飛ばしてみることに。

プロペラが回り出します。

垂直離陸に成功。

十分な高度を確保したら、固定翼を用いた巡航モードに移行します。

すると、巡航用のプロペラがしっかりと推力を生み出し、ドローンが水平方向に飛行しました。

自作ドローンが軽やかに飛行しています。

巡航用プロペラを停止して、ホバリングに移行することにも成功。

墜落することなく、安全に着陸させることができました。

シュー氏のテストでは、今回製作したVTOL型ドローンは1回の充電で130マイル(約209km)の距離を飛行し、飛行時間はなんと約3時間に達することが示されました。

今回のドローンはまだ十分に最適化されていませんが、それでも3Dプリンターで製作されたVTOL型ドローンの中では、最も飛行距離が長いものの1つだとのことです。

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