「つながらないドコモ」の声に終止符を。通信改善に「別班」投入する前田社長の秘策(BUSINESS INSIDER JAPAN)
NTTドコモの社長が前田義晃氏になって1年が経過した。 NTTドコモは2023年頃からネットワーク品質の低下が見られ、ユーザーから「つながらない」「速度が遅い」といった不満の声がSNSで上がっていた。最近はかなり改善されたが、それでもかつてのように「ネットワーク品質と言えば断然、NTTドコモ」という状況からはほど遠い。 【全画像をみる】「つながらないドコモ」の声に終止符を。通信改善に「別班」投入する前田社長の秘策 前田氏が社長に就任した直後、ネットワーク品質調査を手がけるオープンシグナルの調査レポートにおいて「2024年度中にナンバーワンを獲る」と宣言していたが、まさかのオープンシグナル自ら「調査データが不十分」という申告があり、結果が公表されなかった。 ただ、NTTドコモが目標としていた調査項目以外では他社に勝っているとは言いがたく、調査会社のデータにおいてもネットワーク品質に対して厳しい評価に変わりはない。
実際のところ、前任の井伊基之社長時代はネットワークに対する設備投資がかなり絞られていた。 しかし、前田社長になって、積極的な設備投資を実施。特にユーザーから不満の多いエリアに関しては、「Sub6」と呼ばれる周波数帯の5G基地局を集中的に展開。全国規模で20%基地局を増やし、特に不満のあるエリアでは70%も基地局を増やしている。 このSub6帯においては「他社並みにしていきたい」(前田社長)と語っており、今後も数を増やしていく計画だ。 他社の場合、KDDIやソフトバンクは2.5GHzという周波数帯において、データ通信に特化した通信技術を投入することで莫大なデータトラフィックをさばいている。また、つながりやすいとされる700MHzの「プラチナバンド」においては、4Gから5Gに転用することで、ネットワークの広さを実現している。 前田社長は他社に比べて転用が遅れている事を認めつつ、今年度中に増強を進める方針だという。
実は1年前、社長に就任したばかりの前田氏が「2024年度中にナンバーワンを獲る」と宣言した際、多くの業界関係者は前田社長のことを鼻で笑っていた。 「わずか1年でそんなことは絶対に無理」というのが業界関係者の見立てであった。 ネットワーク品質を改善する対策の一つとして、街中に基地局を建てるのがてっとり早い。 しかし、例えばビルの屋上に基地局を設置するには、ビルのオーナーと交渉し、屋上に巨大な通信設備を設置した上で耐震性能を満たすかなどの検証も必要となってくる。 渋谷や新宿などのターミナル駅では現在再開発が進んでおり、これまで基地局を設置していたビルが取り壊されることが頻発している。 人が密集して通信量が増大する場所において交渉を行い、電源や通信回線を確保するのは相当な時間がかかる。完成するまでに1年以上の期間が必要になることも珍しくない。 そこで、NTTドコモが秘策として投入しているのが「別班」(前田社長)だという。 2年前、大ヒットしたドラマ「VIVANT」は自衛隊の秘密部隊「別班(BEPPAN)」のことであったが、NTTドコモの別班は、スピード重視のネットワーク品質対策チームのことを指す。 別班がいま展開しているのがNTTグループが持つ資産の活用だ。 街中にある電柱や、人の多い駅前にある公衆電話ボックスの上に、NTTドコモの基地局を設置してしまうという。 電柱や公衆電話ボックスには、すでに電気と通信回線が通っている。そこにアンテナを設置すれば、すぐに基地局として機能するというわけだ。 電柱や公衆電話ボックスを持たない競合他社からは「NTTグループの資産を使ってズルい」とやっかみの声があがりそうだが、NTTドコモとしては背に腹は代えられない状況だ。 前田社長は「神田や秋葉原の駅前の電話ボックスに基地局を設置したところ、その周辺の通信容量の緩和が確認できた」と語っており、今後は駐車場など展開できる場所を増やしていくという。
石川 温[ジャーナリスト]