OpenAIがAMD製チップに巨額の投資…これはAIバブルの綱渡りか
AIバブルのドミノ倒し、今はそのドミノを並べている?
AI大手のOpenAIが、次世代AIインフラの基盤として、NVIDIA(エヌビディア)の競合である半導体メーカーAMDの最新世代チップを6ギガワット分購入することがわかりました。その規模は数十億ドル。
AMDは7月の発表イベントで、次世代「Instinct」チップを公開。リサ・スーCEOはOpenAIのサム・アルトマンCEOと共に登壇し、AI大手のOpenAIがAMDの新チップを採用することを発表しています。
今回の導入計画のうち、最初の1ギガワット分は2026年後半に開始予定。さらにOpenAIは導入目標の達成度に応じて、AMD株1億6000万株を1株1セントで段階的に取得すると発表しています。これはAMDの総株式の約10%に相当します。
今も世界の半導体業界をリードするのはNVIDIAですが、米国での最大のライバルがAMD。今回の一連の契約は、同社にとって大きなアドバンテージとなります。
取引の具体的な財務内容は明らかにされていませんが、AMDの最高財務責任者(CFO)ジャン・フー氏は、プレスリリースで両社の提携が「AMDに数百億ドル規模の収益をもたらすと同時に、OpenAIのAIインフラ構築を加速させることになる」と述べています。
「ディールメイキング」という名のゲーム
OpenAIはこのところ数十億ドル規模の取引をいくつも行なっており、今回の案件もその最新事例の1つ。
同社は先月NVIDIAとも長期にわたる提携関係にさらなる大規模な追加投資を発表。NVIDIAがOpenAIに1000億ドル(約15兆円)を投資し、10ギガワットのデータセンターと電力容量の展開を支援することに。そのわずか数日前には、Oracle(オラクル)と3000億ドル(約45兆円)規模のクラウド契約を締結しており、史上最大級のクラウド契約に数えられています。
ほぼ同じ時期、OpenAIはBroadcom(ブロードコム)とも100億ドル(約1兆5000億円)規模の契約を締結し、カスタムAIチップの開発を共同で行なうと報じられました。
OpenAIの共同創業者兼社長グレッグ・ブロックマン氏は、10月6日のプレスリリースで「AIの未来を築くには、技術スタックのあらゆる層にわたる深い連携が必要です」と発言。
Wall Street Journal紙によると、アルトマン氏は取材に対して以下のように述べています。
「今は業界全体が一丸となって、誰もが素晴らしい成果を上げられるような発展段階にある。
こうした流れは、チップ分野でも、データセンター分野でも、サプライチェーンの下流でも、顕著になるだろう」
AI業界はある意味コンパクトな家族経営のような関係です。利害が重複する少数の巨大企業が、互いに数十億ドル規模の投資を無限に繰り返すことでシステムに資金を注入し、自らを支える自己持続的なネットワークを構築しているかのよう…少なくとも現時点では。
それぞれの取引において、企業は株価の大幅な上昇という恩恵も享受しています。10月6日の朝、OpenAIとの取引が市場に伝わると、AMD株は37%以上急騰しました。
AI業界最大手の企業は、過去の例を見ないほど好況の波に乗っています。NVIDIAは時価総額4.5兆ドル(約675兆円)を達成した世界初、そして唯一の企業です。
Oracleのラリー・エリソン会長は、先月一時的にですが世界一の富豪となりました。OpenAIの時価総額は、イーロン・マスク氏のSpaceXやTikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)を上回っています。
しかし、そこには当然リスクもあります。どこか1社が倒れれば、他の企業も共倒れになる恐れが。
そのため懐疑論者の間では、AIバブルへの懸念がさらに高まっています。もし実際にAIバブルが存在するとすれば、その崩壊に壊滅的な結果をもたらす可能性があるのです。