【大学駅伝】15年ぶりの箱根駅伝優勝を狙う早稲田大の強力ルーキー 佐々木哲は三大駅伝で飛躍を誓う

3000m障害と三大駅伝での活躍を目標に掲げる佐々木 photo by Wada Satoshi

後編:期待に違わぬ早大駅伝ルーキーズ

15年ぶりの三大駅伝優勝に期待がかかる早稲田大。各学年にエース級を揃えたうえで、その評価をさらに高めているのが強力なルーキーたちである。

その代表格として鈴木琉胤と並び高い評価を受ける佐々木哲は大学デビュー戦で3000m障害のアジア選手権日本代表の座を手にする一方、駅伝シーズンへの意欲も見せる。

鈴木、佐々木以外にも今季は推薦枠外でも好ランナーが集まっているだけに、ルーキー世代の成長ぶりがチーム飛躍のカギを握ることになりそうだ。

前編〉〉〉早稲田大ルーキー・鈴木琉胤が快走連発の衝撃デビュー

【佐々木が抱く1年ごとの日本代表と駅伝シーズンへの思い】

 鈴木より一足早く、佐々木は臙脂を着てレースに臨んだ。

「初めて臙脂のユニフォームで走らせていただいて、大学生となり新たなステージで心機一転、新鮮な気持ちで、体も軽かった」

 その大学デビュー戦となったのが、4月12日に行なわれた金栗記念選抜陸上だった。

 佐々木は3000m障害を得意としており、鈴木とは対照的に、「今シーズンの目標は東京世界陸上」とはっきりと言い切る。その道程において、金栗記念は重要な大会だった。

 東京五輪とパリ五輪代表の青木涼真(Honda)や今季好調の新家裕太郎(愛三工業)といった実力者に、佐々木はレース序盤から果敢に挑んだ。中盤で新家には離されたものの、最後は激しい2位争いを制して、シニアのレースで準優勝を果たした。記録は、自己ベストを約8秒も更新する8分29秒05。大学デビュー戦にして、日本学生歴代8位、U20日本歴代2位の好記録を叩き出した。

 そして、この結果で5月下旬に韓国で開催されるアジア選手権の日本代表にも選出された。「(東京世界選手権は)現実的かと言われたら、まだそこまで近くはないが、自分がどこまで行けるのか挑戦していきたい」

 佐々木は冷静に世界との距離を測るが、少しだけその舞台に近づいた。

 4月の日本学生陸上競技個人選手権は、佐々木にとって「タイムより順位を狙って出場したレース」。ここでも、先輩たちを相手に圧巻の強さを見せた。

「アジア選手権を経験させていただけるので、そういった大会に出るだけの選手にならなきゃいけない。大学のカテゴリーで満足するのではなく、上の舞台を見てやっていかなければいけない。大事なレースではあるんですけど、ここでは負けてはいけないなといった気持ちでした」

 シニアの日本代表が決まった直後とあって、その責任感も背負ったレースで、きっちりと優勝を飾った。これで、鈴木とともにワールドユニバーシティーゲームズの日本代表にも決まった。

 5月の関東インカレは予選を難なく突破したものの、決勝はアキレス腱痛があり、大事をとって棄権した。ともあれ、1戦ごとにテーマを設けてレースに臨む佐々木は、実戦を重ねる度にどんどん強さを増している印象がある。

「佐々木は、どんどんチャレンジしていこうという気持ちがある選手。そういうところも魅力ですね。物怖じしないし、良い意味で型にはまっていない」

 花田勝彦駅伝監督は佐々木をこう評する。

 佐々木は、大学1年目は東京世界選手権、2年目は地元・名古屋で開催されるアジア大会、3年目は北京世界選手権、そして最終学年でロサンゼルス五輪と、「各学年でトラックでは世界で戦うこと」を目標に掲げている。決してビッグマウスというわけではなく、その視座は常に高い。

 また、目標に向けて長いスパンで準備を進めていくのが鈴木ならば、レースを重ねて目標に向かっていくのが佐々木だ。専門種目だけでなくタイプも異なるふたりだが、世界を目指すトラック種目でさっそく結果を出している。

 もちろん駅伝シーズンも、即戦力として期待がかかる。

「臙脂を背負って、これからはトラックだけでなく、駅伝も戦っていかなければいけない。自分のためだけでなく、大学のためであったり、支えてくださる方々のために結果を残したい。覚悟を決めて4年間やっていきたいと思います。箱根駅伝ではしっかりとチームの目標に貢献できるような走りをしていきたいと思います」とは佐々木。

「三大駅伝(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根)は、大学も大事にしているレースなので、メンバーに選ばれたらしっかりと力になりたい。ゆくゆくは区間賞、区間新を狙えるように頑張っていきたい」と鈴木。ともに駅伝にも力を注ぐ覚悟でいる。

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  • 1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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