ストレスが心臓を直撃する「ブロークンハート症候群」で男性が死ぬ確率は女性の2倍
失恋などの悲しみで心が痛むことを傷心といいますが、主に精神的なストレスで文字通り心臓がダメージを受け、死に至るケースもあることが科学的に裏付けられています。海外で俗に「ブロークンハート症候群(broken heart syndrome)」、専門用語で「たこつぼ心筋症(takotsubo cardiomyopathy)」と呼ばれる突然の心疾患で死亡するリスクは、女性に比べて男性の方が2倍以上高いことが、新しい研究により判明しました。
High Mortality and Complications in Patients Admitted With Takotsubo Cardiomyopathy With More Than Double Mortality in Men Without Improvement in Outcome Over the Years | Journal of the American Heart Association
https://www.ahajournals.org/doi/10.1161/JAHA.124.037219Men Are Dying From 'Broken Heart Syndrome' at Twice The Rate of Women : ScienceAlert
https://www.sciencealert.com/men-are-dying-from-broken-heart-syndrome-at-twice-the-rate-of-womenたこつぼ心筋症は心臓の左心室で発生する可逆的な機能不全で、予後は一般的に良好とされており、自然に治ることも多い心疾患ですが、回復後の経過や合併症についてはほとんどわかっていません。 たこつぼ心筋症とそれに関連する心血管合併症の発生率を明らかにするため、アリゾナ大学の研究グループは、2016年から2020年にかけてアメリカで報告された成人のたこつぼ心筋症患者19万9890人のデータを分析しました。
分析の結果、たこつぼ心筋症患者の83%が女性で、全体的な死亡率は6.5%であり、この死亡率は分析対象となった期間中にほとんど改善されていないことがわかりました。
また合併症の発生率も深刻で、心原性ショックは6.6%、心房細動は20.7%、心停止は3.4%、うっ血性心不全は35.9%、脳卒中は5.3%でした。
アリゾナ大学の心臓専門医で、論文の筆頭著者のモハマド・レザ・モバヘド氏は「5年間の研究期間中、たこつぼ心筋症による死亡率は大きな変化がなかったにもかかわらず比較的高いままで、入院合併症の発生率に至っては増加していたことに驚きました」と話しています。 患者のほとんどが女性だった一方で、死亡リスクは女性の5.5%に対して男性が11.2%と、男性の方が圧倒的に高いことも判明しました。以下は、そのことを表したグラフで、たこつぼ心筋症による死亡の割合が男性(青線)と女性(赤線)で分けて示されています。たこつぼ心筋症で男性が死亡するリスクが高い理由は完全にはわかっていませんが、女性は精神的ストレスがたこつぼ心筋症の原因になるケースが多いのに対し、男性は身体的ストレスがたこつぼ心筋症を引き起こすことが多く、心停止につながる危険性も比較的高いとのこと。こうした男性のたこつぼ心筋症に特有の傾向が死亡率の高さにつながっているおそれがあると、研究グループは推測しています。
また、たこつぼ心筋症の発生メカニズムにはカテコールアミンというホルモンが関係していると考えられていますが、男性はこのホルモンのレベルが高いことが重要な要因になっているとも指摘されています。
モバヘド氏は「死亡率が依然として高いのは憂慮すべき事態であり、より優れた治療法や、この病気に対する新たな治療法を見つけるために、さらなる研究が必要です」と述べました。
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